子供がうんちだけがトイレできない、なかなかおむつが外れないなど、トイレトレーニング(以下、トイトレ)がうまくいかないことは、保護者にとって深刻な悩みの種ですよね。
特に幼稚園に入る頃には、おむつを外すことを求める園もあり、「なぜうちの子はできないの?」と焦っている保護者の方もいらっしゃるかと思います。
本記事では、発達障害の子供のトイトレが難しい理由や、トイトレの進め方やコツをご紹介します。トイトレが進まないことに発達障害が影響を与えている場合は、一般的なトイレトレーニングの方法だけではうまくいかない場合がありますので、ぜひ最後までご覧ください。
トイレでうんちができないのは発達障害が関係している?
ここでは発達障害でトイトレがうまくいかない場合、考えられる原因を紹介します。
感覚特性
ASD(自閉症スペクトラム障害)の感覚特性(感覚過敏・感覚鈍麻)がある場合、
•聴覚過敏で、トイレを流す音や手を乾かすジェットタオルの音が苦手
•触覚過敏で、便座の質感が苦手な場合
•触覚鈍麻で、おしっこやうんちが出たことに気づかず、出る感覚が分からない場合
上記のようなことが原因で、トイトレが進んでいないことが考えられます。
感覚過敏があると、トイレの明るさやにおい、音などがストレスとなり、「トイレに行くこと自体が苦手」と感じる子供もいます。
感覚鈍麻があると、トイレに行くタイミングがつかめないことがあります。適切な環境調整や感覚に慣れるためのサポートが必要です。
こだわりの強さ
ASD(自閉症スペクトラム障害)のこだわり特性がある場合、
•決まった姿勢でしかトイレができない
•おむつからパンツに変わることにストレスを感じる
•家でしかトイレができない
•トイレットペーパーの種類やにおいにこだわりがある
上記のようなことが原因で、トイトレが進んでいないことが考えられます。
ASDの子供は自分が慣れている環境からの変化に対して強い抵抗感を示すことがあります。
急に「パンツ」に変わり、トイレでしなければならなくなることは、今まで「おむつ」に自分の好きな「タイミング」「場所」「体勢」でしていた子供からすると、大きな環境の変化なので、苦痛やストレスになることがあります。
また、おむつからパンツに変わることだけではなく、特定の場所(部屋の隅やカーテンの後ろなど)でしか排泄できない等、こだわりによるマイルールがある場合は、正しい姿勢で排泄することに慣れるまで時間がかかることがあります。
ボディイメージが持てない
DCD(発達性協調運動障害)の特性がある場合、
•おしっこやうんちが溜まっている感覚に対する鈍さがある
•排泄する際にどこに力を入れれば良いかが分からない
•座ったままで力を入れることができない
•トイレットペーパーでうまく拭けない
上記のようなことが原因で、トイトレが進んでいないことが考えられます。
発達障害の子供は、尿意や便意に気づくのが遅れることがあるため、感覚に気づいたときに焦ってしまい、普段通りに行動できなくなることがあります。
焦っている状況で指示を出しても、状況判断ができずに混乱し、失敗する可能性があるため、注意が必要です。
我慢する機能が弱い、行動の制御ができない
ADHD(注意欠如・多動性障害)がある場合、
•おしっこを我慢する機能が弱く、排尿をコントロールする前頭葉の働きが十分でないこと
•行動の抑制が苦手で、寝る前に水分を摂りすぎること
上記のようなことが原因で、トイトレが進んでいない可能性があります。
また、上記のようなことから、睡眠中に無意識におしっこをしてしまうことがあります。この場合は、泌尿科などの専門医に相談し、生活習慣の改善や医学的なアプローチ(薬物療法など)を検討する必要があります。
発達障害の子供のトイレトレーニングの進め方
ここまではトイレトレーニングがうまくいかない発達障害の特性をご紹介しました。
ここからはトイレトレーニングの進め方をご紹介します。
いつから始めたらいいの?
一般的にはトイトレを始めるタイミングとして、以下の条件を満たした場合が良いとされています。
•トイレまで一人で歩いて行ける
•トイレに座ることができる
•言葉での意思疎通ができ、“うんち”、“おしっこ”、“トイレ”の意味を理解している
•おしっこの間隔が2時間以上空いている
また、子どもの体と心の準備が整うことはもちろんですが、親側もトイトレについて予習をし、準備をしておきましょう。トイトレにはじっくりと時間をかけられるだけの余裕があることが重要です。具体的には、
•時間的、精神的な余裕があること
•子供との関係が安定していること
特に、発達障害を抱える子供のトイレトレーニングは進み方にばらつきがありますので、失敗しても当たり前とおおらかに考え、決して子供を叱責したりしてしまわないように意識しましょう。
トイレトレーニングの進め方
では、実際にトイレトレーニングを進めていく方法を解説していきます。
発達障害を抱える子供は一般的なトイトレの方法だけでは、習得が難しいことがあります。
スモールステップで段階的に、そして繰り返し練習していき、定着させるまで、根気よく続けることが大切です。
トイレに行くことに興味を持ってもらう
まずは「トイレに行く」という行動についての興味や理解を促すことが重要です。
トイレトレーニングが難しいのは、子供が普段の生活で「排泄する」という行為を目にする機会が少ないためです。
保護者の方がトイレに行く様子を見せることも良いですし、ペットがいる場合は、ペットの排泄を一緒に観察してみるのも良いでしょう。さらに、「うんち」や「おしっこ」という言葉の意味を理解させるために、絵本や映像教材、アプリなどを活用すると、子供が興味を持ちやすくなります。
トイレに行って便座に座ってみる
子供がトイレに興味を持ち始めたら、トイレに行ってみて、嫌がらなければ、補助便座やおまるに座らせてみてください。無理に座らせる必要はありません。
目的はトイレに慣れることですので、様子を見ながら進めてください。トイレに入るのを嫌がるようなら、再度、興味を持ってもらうステップから始めることを検討しましょう。
タイミングごとにトイレに誘ってみる
トイレに行くことに抵抗がなくなったら、食事の前後、出かける前、起床直後、就寝前など、タイミングを見てトイレに誘ってみましょう。
トイレに行っておしっこやうんちがうまく出た場合は、「おしっこが出たね」「うんちができたね」とお子さんと一緒に確認することで、お子さんが自分で「おしっこ(うんち)が出た」と言えるようになるでしょう。
自分からトイレと言えるようになる
先ほどのステップで偶然にでも、トイレができる経験を積むことで、自然に「トイレに行く」と言えるようになっていきます。
最初は、数時間おきにトイレに座る習慣を作ってあげて、うまくおしっこやうんちが出たら、たくさん褒めてあげてください。
パンツを履いてみる
トイレに何度か成功できるようになったら、昼間にパンツを履かせてみましょう。
失敗を繰り返すことはあるかもしれませんが、「トイレに行っておしっこしたい」「おしっこしたいからトイレに行こう」という気持ちになるよう、保護者の方は決して叱らず、大らかな気持ちで接してあげてください。
外出先でもトイレ挑戦してみる
昼間にパンツで過ごせるようになったら、外出先でのトイレにも挑戦してみましょう。
まずは失敗しても大丈夫な場所(公園、児童館など)を選び、子ども用のトイレがある場所を事前に調べておくことがオススメです。また、脱ぎ着しやすい服装を選び、着替えは多めに用意しておくと安心です。
トイレでうんちができない子供への接し方ポイント
トイトレがうまくいかない子供にはどのように接したらよいか、ポイントを3つご紹介します。
段階的にトイレに慣れていくように焦らない
前述の通り、まずは「トイレに興味を持つ」ところか始め、段階的にトイレに慣れていくよう根気強く付き合いましょう。
特に感覚過敏のある子供は、トイレの環境に抵抗を感じることがあります。
徐々に慣れさせるために、「パンツを着たまま便座に座る」、「素肌で座る」、「水を流す音を聞く」などの段階的に練習を行いましょう。
明るさやにおいなど、苦手な要素を減らすために、電球の色を調整したり、防臭剤を使用したりするなどのサポートも重要です。
また、「おしっこが出てしまった後でも、トイレに連れて行く」ことで、「おしっこはトイレでするもの」という理解を促すことも重要です。
トイレで必要な動作がうまくいかない場合は、「パンツを着たままおしりを拭く」など、子供の特性に合わせた練習や工夫を取り入れていきましょう。
「小さな成功体験」を積み重ねられるようにする
トイトレがうまくいかなかったときに、注意されたり、保護者の方にがっかりされたりすると、自己肯定感が低下したり、トイレに対する抵抗感や恐怖心が生じることがあります。
特に発達障害を抱える子供は特性上、不安を感じるやすく、おしっこやうんちをしてしまった場合には「隠す」という行動に走ることもあります。
トイレを嫌いにならないようにするためには、小さな成功体験を積み重ね、成功したら積極的に褒めることが大切です。何度も失敗することがあるかもしれませんが、根気よく取り組ち、お子さまのペースで段階的に「できた!」を増やし、できたときはたくさん褒めてあげましょう。
子供の発達段階に合わせて、段階的に成功体験を積むことがとても大切です。
トイトレを行う意味をわかってもらう
おむつのままでいることやおもらしをすることがなぜよくないのかが理解できていない場合、なぜ練習をする必要があるのか理解できず、混乱したり、練習が嫌になったりすることがあります。
そんな時は、トイレに好きなキャラクターのポスターを貼って子どもが「好きな空間」にしたり、トイレに行けたらご褒美シールをあげるなど、「うれしいことが起こる場所」にしたり、子ども向けトイトレ動画などを見せて「トイレでおしっこできるのがかっこいい」と理解させたりするようにしましょう。
トイレをポジティブなイメージ(自分にとってメリットのある場所)にするために、お子さんに合わせた工夫を取り入れていきましょう。
発達障害を抱える子どものトイレトレーニングのコツ4選
先ほどご紹介したトイトレの進め方や子供との接し方を踏まえて、トイレトレーニングを成功させるコツを4つに絞って紹介します。
ご褒美を用意する
まず、子供への一番のご褒美は、ものよりも愛情や褒め言葉です。
物によるご褒美は少なめにして、子供が目標を達成するたびに、たくさん褒めてあげましょう。
トイレで上手にできたら、シールを貼るためのカレンダーをトイレに置くなど、目標達成時にちょっとした楽しみを作ってあげることも、効果的です。
子供の欲しいものを、用意して、トイレに座っているときに見える場所に置くのも効果的ですが、あまりにやりすぎると、新しい手順をマスターすることよりも、物をもらうことに意識が向いてしまいます。
嫌がるときは無理に進めない
子供がトイレに行くことを嫌がる場合、警戒心が高まっているか、トイレに対するネガティブなイメージがある可能性があります。
そのような場合は、無理には進めず、まずはトイレの環境を見直してみましょう。
特に、感覚過敏があると、「明るさ」「におい」「音」などにも、ストレスを感じてしまい、「トイレに行くこと自体が苦手」という子どもも少なくありません。
トイレの明るさを調整する、子供の好きなにおいの芳香剤を置く、好きなキャラクターのポスターを貼るなどで状況が改善することがあります。
失敗しても怒らない
トイトレでは失敗や後退がよくあることですが、それは自然なことです。失敗しても決して怒らず、子供を信じて、根気強くサポートし続けることが大切です。
周りの子どもと比べない
まわりの子供がどんどんオムツを外していく様子を見ると、つい焦ってしまうかもしれませんが、一番大切なのは子供のペースを尊重することです。
他の子と比較せず、子供を信じて待ってあげましょう。
トイレトレーニングにおすすめのアイテム
ここではトイレトレーニングにおすすめのアイテムを4つご紹介します。ぜひ取り入れてみてください。
トイレにかかわる絵本やおもちゃ
繰り返しになりますが、トイトレを始める際にはまず、子供にトイレに「興味を持ってもらうこと」が大切です。
トイレに関わる絵本や映像教材、アプリなどを活用すると、子供が「トイレに行ってみよう!」「パンツっていいな」と思うようになることもあります。
また、遊びながらトイレを覚えられるおもちゃもおすすめです。
補助便座
補助便座のメリットは、最初からトイレ空間とトイレでの排泄に慣れさせることができ、おまるを使うときのように「おまるでできるようになったから次はトイレで練習」という二度手間がかからないことも大きなメリットです。
また、トイレの水を流すだけで洗浄が完了するので、余分な手間や時間がかかることはありません。
踏み台
大人のトイレに子どもが座ると、足が宙に浮いてしまうのを防ぐことができる「トイレ用踏み台」は、排泄時に足をしっかりと踏みしめることができ、トイレの高さによる怖さを軽減できるため、用意しておくことをおすすめします。
おまる
おまるは、子ども用に作られているので足がつき排泄するときに踏ん張りやすいことと、トイレ以外の場所にも設置ができること。足を踏ん張れば排泄しやすいので、子どものトイレトレーニングには最適です。
また、トイレ以外の場所でも排泄できるようになるので、トイレ空間を嫌がる子どもにも適しています。夏や冬の暑さ・寒さも関係なく、快適な気温の場所でトイレができることも大きなメリットですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。本日は発達障害を抱える子供のトイレトレーニングについて、うまくいかない原因や、進め方、コツを紹介しました。
周りの子供のおむつが外れていくと、焦って怒ってしまったり一気に進めてしまおうとしてしまいがちですが、小さな一歩を少しずつ積み重ねることが効果的です。ちょっとした進歩を褒めて、焦らずに進めていきましょう。本記事が家庭でのトイレトレーニングに役立ち、うまくいくことを願っています。