発達障害のあるお子さんの「9歳の壁」について、こんな悩みはありませんか?
- 急に勉強についていけなくなった
- 友だちとのトラブルが増えた
- 子どもの変化にどう対応すればいいかわからない
9歳の壁は、発達障害のあるお子さんにとって特に大きな課題となります。しかし、適切な理解と支援があれば、この壁を乗り越えることができます。
この記事では、9歳の壁の特徴や原因、発達障害との関連性を解説します。さらに、子どもを支援する具体的な方法や接し方のポイントもお伝えします。お子さんの成長を支えるヒントとして、ぜひ参考にしてください。
9歳の壁とは?
「9歳の壁」という言葉は、子どもが9歳前後に直面する学習や生活の変化や課題のことです。この年齢は、小学校3年生から4年生にかけての時期にあたり、学習内容や生活環境が大きく変わるため、多くの子どもたちにとって重要な転換点となります。
特に発達障害のある子どもたちにとって、この時期に困難が顕著になることが多いです。学習面でのつまずきや対人関係のトラブルが顕在化しやすく、自尊心の低下や不安の増大につながることがあります。
9歳前後の子どもは、学習内容が急に難しくなったり、友人関係が複雑化したりするため、これまでのスキルや対応力では対処しきれなくなることが増えます。特に自分を理解することや、周囲の人との関わり方を学ぶことが求められるため、劣等感や孤立感を感じやすく、子どもにとって大きな壁となりやすいのです。
発達障害と9歳の壁の関連性
発達障害と9歳の壁には密接な関連性があります。発達障害を持つ子どもたちにとっては特に大きな課題となります。9歳の壁を超えるためには、発達障害の特性がどのように影響するかを理解することが重要です。
発達障害は自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)など、さまざまなタイプがありますが、これらの子どもたちは一般的に、感覚過敏や注意力の分散、社会的なコミュニケーションが難しいといった特徴を持っています。これらの特性が9歳の壁を超える際に大きなハードルとなるのです。例えば、学校のカリキュラムが急に難しくなると、注意力の問題や感覚過敏が学習の妨げとなり、他の子どもたちと同じペースで進めなくなることが多いです。
また、9歳の壁を境に、友人関係がより複雑化し、社会的なスキルが求められる場面が増えます。発達障害を持つ子どもたちは、このような社会的な要求に対する対応が苦手であり、友人関係でのトラブルや孤立を経験することが少なくありません。これにより、自己肯定感が低下し、学校生活全体に対する意欲も減少するリスクがあります。
9歳の壁が生じる原因
勉強についていけなくなる
9歳を境に学習内容が急に高度になり、理解力や記憶力が必要になります。教科書の文章が長く複雑になり、応用問題に対応するための論理的思考が求められます。特に算数では、掛け算や割り算といった複雑な計算が増え、図形の学習も始まるのがこの時期です。
そのため、発達障害を持つ子どもは、これまでと同じ方法では学習についていけなくなり、授業の内容が難しく感じられることが増えます。ADHD傾向のある子どもは集中力の持続が困難で、長文問題に取り組むのが苦手かもしれません。また、学習障害(LD)のある子どもは、読み書きや計算につまずくことが多くなることがあります。
このような状況で適切なサポートが得られないと、学習への意欲低下や自信喪失につながり、勉強をさけるようになってしまいます。
他人と比べて劣等感を感じるようになる
9歳頃になると、子どもたちは自分と他人の違いを強く意識し始めます。学習面での差が明確になったり、友人関係の中で自分の位置づけを考えたりする機会が増えます。
発達障害の子どもは特性により、うまくできないことが目立つようになると、自分は周りの子より劣っていると感じ、劣等感を抱くことがあります。授業中に質問の意味が理解できなかったり、友達との会話についていけなかったりすると、「自分だけができない」という思いを抱きやすくなります。
このような劣等感は、自尊心の低下や学校嫌いにつながる可能性があるため注意が必要です。
友だちとのトラブルが増える
9歳頃になると、友人関係がより複雑化し、グループ活動や協調性が求められる場面が増えます。子どもたちは社会的スキルを学び、他人との関係性を構築する大事な時期だと言えるでしょう。子供たちは社会的なスキルを急速に発展させ始め、友だちとの関係がますます重要になってきます。しかし、一方で自己主張や独立心が強くなり、意見の違いや価値観の相違が頻繁に起こるようになります。結果として友だちとの間での衝突やトラブルが増えるのです。
特に発達障害のある子どもたちにとって、この変化への適応は難しい場合があります。ASDの特性がある子どもは、他者の気持ちを推し量ることや、暗黙のルールを理解することが苦手です。また、ADHD傾向のある子どもは、衝動的な言動によってトラブルを引き起こしやすいことがあります。
その結果、友だちとのトラブルが増え、人間関係がうまくいかなくなることがあります。トラブルを繰り返すことで、対人関係への不安が増し、ますます友だちづくりが難しくなるのが問題です。
悩みを相談できずに自分で抱えるようになる
9歳頃になると、子どもたちは自分の悩みや問題を認識する能力が高まります。自立心が芽生え始めるため、悩みや困難を自分で解決しようとする傾向が強くなるのもこの時期です。しかし同時に、悩みを他人に相談することへのとまどいも生じやすくなります。
しかし、発達障害の子どもは、適切な言葉で自分の気持ちを表現することが難しいため、周囲に相談できずに悩みを抱え込んでしまうことが多いです。そのため、悩みを一人で抱え込んでしまいがちです。これは精神的なストレスの蓄積や、問題の深刻化につながる恐れがあります。
放課後の居場所がなくなる
9歳頃になると、子どもたちは小学校の高学年に入り、クラブ活動などが増えるため、これまで利用していた学童保育や地域の子どもクラブから卒業することが多くなります。特に親が共働きの場合、子どもたちは放課後の時間をどこで過ごすかが大きな問題となります。そのため、学校以外の時間を過ごす場所や仲間を見つけることも、9歳の壁を乗り越えるためには重要です。
このような状況になると、子どもたちは自宅で一人で過ごす時間が増えることになりますが、「一人の時間」が増えることは必ずしも良い結果をもたらすとは限りません。一人で過ごす時間が長くなると、孤独感や不安感を抱えることがあり、また自己管理が十分にできない場合、勉強や生活習慣に悪影響を及ぼす可能性もあります。
また、発達障害の子どもは、放課後の習い事やクラブ活動でのコミュニケーションが難しいことがあり、自然と居場所がなくなってしまうことがあります。親としても、「9歳の壁」に直面すると、子どもの放課後の過ごし方について悩むことが多くなります。
9歳を迎えることで発達障害の子どもたちの放課後の居場所がなくなる問題は、子どもの心身の健康や成長に大きな影響を与えます。そのため、子どもたちが安心して過ごせる環境を整えることが必要です。
9歳の壁を乗り越えるための方法
積極的にほめて自信をつける
9歳の壁を乗り越えるには、子どもの自信を育むことが重要です。特に発達障害のある子どもたちは、つまずきや失敗を経験しやすいため、積極的にほめることで自己肯定感を高める必要があります。
小さな進歩や努力を見逃さず、即座にほめてあげることが効果的です。宿題に集中して取り組めた時間をほめたり、友達と上手くコミュニケーションが取れたら「よくできたね」と声をかけてあげましょう。
また、結果だけでなく、プロセスをほめることで、粘り強さや挑戦する姿勢を育むことができます。
ほめるときも「すごいね」だけでなく、何がどうよかったのかを具体的に伝えることで、子どもの理解が深まります。このような肯定的な声かけの積み重ねが、自信につながり、9歳の壁を乗り越える力となるのです。
子どもの自主性を尊重する
9歳前後の子どもは、自立心が芽生え始める時期でもあります。発達障害の特性を持つ子どもにとっては、自分のペースで物事を進めることが成功のカギとなるため、無理に指示を与えるのではなく、自主性を尊重することが重要です。自分で選択し決定する経験は、自信と責任感を育む重要な機会となります。
具体的には、日常生活の中で選択肢を与え、自分で決める場面を増やしていきます。宿題の取り組む順番を決めてもらったり、休日の過ごし方を一緒に計画したりしてみてください。もし失敗してもその経験を通じて学べるように見守ることで、成長を促すことができます。
ただし、全てを任せるのではなく、適切なガイダンスを与えることが重要です。選択した結果を一緒に振り返り、良かった点や改善点を話し合うことで、自己理解を深めることができるようになるでしょう。
学習をサポートする
発達障害を持つ子どもは、学習に対する困難が多いことから、9歳の壁を乗り越えるためには適切なサポートが必要です。この時期、学習内容が急激に難しくなるため、特に発達障害のある子どもたちは戸惑いを感じやすくなります。個々の特性に合わせて対応することが子どものつまずきを防ぎ、自信を持って学習に取り組む助けとなります。
集中力の持続が難しい子どもには、学習内容を細かく区切り、無理のないペースで進めることで理解しやすくなります。また、絵やカードなどの視覚的な教材を使用して、抽象的な概念を理解しやすくすることも効果的です。さらに、子どもが興味を持てるような方法を取り入れると、学習への意欲が高まります。
さらに、子どもの得意分野を活かした学習方法もおすすめです。算数が苦手でも図形が得意な子どもには、図形を使って数の概念を説明するなど、強みを生かした方法を見つけていきましょう。
学校以外の居場所を探す
9歳の壁を乗り越えるためには、学校以外の居場所を見つけることも有効な手段です。発達障害の子どもは、学校での活動にストレスを感じることが多いため、リラックスできる場所や安心して過ごせる環境を提供することが必要です。このような居場所は、子どもの個性や才能を発揮する機会を提供し、新たな可能性を開くきっかけとなります。
おすすめの居場所としては、地域の子ども向け活動や習い事などがあげられます。地域の放課後デイサービスや音楽教室、児童館など、子どもの興味に合わせた活動を探してみましょう。また、図書館や公民館で行われる子ども向けイベントも、機会があれば参加してみてください。
また、家庭でも安心して過ごせる環境を整えることで、子どもの心の安定につながります。このように、学校以外の居場所を見つけることで、子どもはストレスを軽減し、9歳の壁を乗り越える力を養うことができます。
9歳の壁の子どもに接するときのポイント
聞き手になる
9歳の壁に直面している子どもたちにとって、自分の気持ちや考えを表現する機会を持つことは非常に重要です。そのため、大人が積極的に聞き手になることが大切です。子どもの話に耳を傾け、じっくりと聞くことで、子どもは自分の思いを整理し、表現する力を養うことができます。
具体的な聞き方としては、まず、子どもが話しやすい環境を整えることから始めます。静かな場所で、目線を合わせて座り、子どもの話に集中する姿勢を示します。話の途中で口を挟まず、相づちを打ちながら最後まで聞くことも大切です。
また、開かれた質問を用いることで、子どもの思考を促進させることができます。「その時どう感じたの?」「どうしてそう思ったの?」といった質問を投げかけることで、子どもの内面をより深く理解することができます。このように、子どもの声に真摯に耳を傾けることが、9歳の壁を乗り越える大きな支えとなるでしょう。
ありのままを受け止める
発達障害を持つ子どもにとって、9歳の壁は自分の特性が周囲と違うことを意識する時期でもあります。このとき、大人が子どものありのままの姿を受け止めることは、自己肯定感を高めるために重要です。学習の遅れや友だちとのトラブルがあっても、その事実を否定するのではなく、「それでもあなたは素晴らしい」という姿勢で接することが大切です。
子どもの言動を批判せず、まずは受け入れる姿勢を示しましょう。子どもが苦手なことに挑戦して失敗しても、その努力を認め、「チャレンジしたこと自体がすごいね」と伝えます。また、子どもの個性や特性を「個性」として肯定的に捉え、「〇〇くんらしいね」と伝えることも効果的です。
ただし、ありのままを受け止めることは、全ての行動を容認することではありません。不適切な行動に対しては、子どもの気持ちを受け止めつつも、適切な対応方法を一緒に考えることが大切です。
共感を態度で示す
共感を態度で示すことは、9歳の壁に直面する子どもに対して安心感を与える大切な方法です。子どもが悩みや困難を抱えているとき、「つらいね」「わかるよ」といった言葉だけでなく、優しくうなずいたり、温かい表情を見せたりすることで、共感の気持ちを伝えることができます。
特に発達障害のある子どもたちは、自分の感情を適切に表現することが難しい場合があります。そのため、大人が積極的に共感を示すことで、子どもは安心して自己表現できるようになるでしょう。
まず、子どもの感情を言葉で表現してあげましょう。「そういう時は、とても悲しかったんだね」「そんな風に言われて、怒る気持ちもわかるよ」といった言葉かけをします。これにより、子どもは自分の感情が正当なものだと認識できます。
また、言葉だけでなく、表情やジェスチャーを使ったコミュニケーションも重要です。子どもの話を聞く際に、うなずいたり、適切な表情を示したりすることで、より深い共感を伝えることができます。共感を態度で示すことで、子どもは自分が理解され、受け入れられていると感じることができます。子どもは「自分の気持ちを理解してくれる存在がいる」と感じ、9歳の壁を乗り越えるための支えとなるでしょう。
まとめ
9歳の壁は、発達障害の子どもにとって大きな試練となり得ます。しかし、その特性や困難を理解し、適切なサポートや接し方を取り入れることで、この壁を乗り越える力を育むことができます。積極的にほめて自信をつけたり、自主性を尊重することは、子どもの成長を促す大きな力となります。
また、学校以外の居場所を見つけることで、安心して過ごせる環境を提供することも大切です。9歳の壁を理解し、共感を持ってサポートすることで、子どもたちが自分らしく成長できるよう、ぜひ今日から取り組んでみてください。