「幼稚園に行きたくない」のは発達障害?行き渋りの原因や対処方法を解説

子供が抱っこされて落ち着いている写真

子どもが「幼稚園に行きたくない!」と嫌がると、楽しく通ってほしいのにと心配になったり、毎日行きたくないと癇癪を起すことにイライラしてしまったり、無理に連れて行くのもかわいそうで、とても悩みますよね。

そんな登園拒否や行き渋りぶりは、発達障害の特性による「苦手」が原因である可能性があります。

この記事では、発達障害の子どもが幼稚園に行きたがらない理由や、登園拒否をした際、どのように対応すればよいか、そのポイントをご紹介します。是非最後までご覧ください。

子供が幼稚園行きたくなくなる原因

子供が泣いている写真

発達障害の有無に限らず、子どもの「行き渋り・登園拒否」として考えられる原因は多岐にわたるので、保護者の方々は子どもと話をしたり、様子を観察しながら原因を特定していく必要があります。

ここでは、発達障害を抱える子どもの「行き渋り・登園拒否」として考えられる理由を3つご紹介します。

母子分離不安

母子分離不安は、子どもが保護者から離れることに対する不安のことを指します。

通常、子どもは「お母さんから見守られている」という経験を通じ、少しずつ自立し、母親との距離を取っていくことができます。

しかし、発達障害のある子どもの場合、以下のような特性により、この距離感がうまくつかめず保護者と離れることが難しいことがあります。

・不安感が強い傾向

・他者視点が難しいため、「お母さんは見守ってくれている」という理解が得られず不安が残る

・お母さんから離れることへの強い抵抗感

他者視点の低さからくる不安に対しては「〇〇のこと、見ているよ。そばにいるよ」といった直接的な言葉を伝えることが効果的です。

子どもを無理に引き離そうとするのではなく、少しずつ距離を取れるように目指しましょう。

環境の変化が不安

発達障害の特性を持つ子どもたちは「初めてのこと・知らないこと」に関する苦手意識や抵抗感が強い傾向にあり、特にASD(自閉症スペクトラム障害)を抱える子どもは不安を感じやすい傾向があります。

また、予測できない出来事や見通しの立たない状況に直面すると、パニックが起こることも。

慣れない場所を嫌がる子どもは発達障害の有無に関係なく多いですが、特性によって、より慣れるまで時間がかかったり、非常に強い不安を抱えることがあるので、環境に慣れるまで無理をさせず、事前に「どんな場所で」「何をするのか」を説明しておくことが重要です。

幼稚園での困りごとがある

多くの子どもは幼稚園で初めて「集団行動」を経験します。

同世代の友達との交流や、園での様々なカリキュラムへの参加を通じて、他の子どもと比較されできないことに気づいたり、発達障害による様々な「苦手」が見られ、園での生活を楽しくないと感じる場合があります。

以下に発達障害の特性から考えられる幼稚園での困りごとを発達障害の種類別にご紹介します。

ASD(自閉スペクトラム症)の場合

ASDの基本特性のひとつに「対人関係や社会的なやりとりの障害」があります。

人との関わりが苦手で、比喩表現や皮肉、相手の気持ちを察すること、暗黙のルールを理解すること、空気を読むことが難しく、言われたことを表面的に受け取ってしまうなどの特徴があります。

そのため、幼稚園でも友達とうまくコミュニケーションが取れず、友達の輪に入れなかったり、一人遊びを好むといったことが考えられます。

また「感覚特性」といって、特定の感覚(感触・音・におい・味等)が苦痛になる子どもの場合だと、室内の蛍光灯や外遊びの際の日光を痛く感じたり、泥遊びや粘土の感触が気持ち悪い、チャイムの音を怖く感じる、給食のにおいや味か苦手などの理由から登園を渋っていることも考えられます。

そしてASDを抱える子どもの中には、強い「こだわり特性」を持ち、工作の時間に自分の思い通りのものが作れないとパニックになり取り組もうとしないことがあります。

ADHD(注意欠陥多動性障害)の場合

ADHDには「衝動性」という障害特性があり、その特性から順番待ちができなかったり、おもちゃを横取りしてしまったり、友達に手を出してしまうなど、友達とのトラブルを抱えやすい傾向があります。

他にもじっとしていることが苦手な「多動」の特性から、先生が話しているときにじっとしていることが苦痛でできなかったり、「不注意」の特性から注意力が散漫で幼稚園でのダンスや工作などのカリキュラムに集中できないといったことがあります。

DCD(発達性協調運動障害)の場合

DCDは「手先が不器用」「体をうまく動かすことができない」という特性があり、園でのスポーツや工作が苦痛になっている可能性があります。

他にも学習障害から、ひらがなが読めないなどが登園拒否の原因になることがあります。

行き渋りの対策

お母さんが子供をあやしてる写真

対策を進めるには、子どもがなぜ園に行きたくないのかを理解することが鍵となります。
家庭で子どもの登園拒否をサポートするためのポイントをご紹介します。

行きたくない気持ちを否定しない

登園拒否は子どもからの「SOS」なので、嫌だと思う気持ちを否定せず、寄り添うことが大切です。

朝、子どもが泣き出して「幼稚園に行きたくない!」と癇癪を起すと、思わず感情的になってしまうと思いますが、保護者の方が冷静でいることがとても大切です。

叱ったり、無理に行かせようとすることは避け、子どもが自分の気持ちを安心して言えるような環境を用意してあげましょう。

穏やかな声と表情で「そっか~。行きたくないんだね。」と笑顔でアイコンタクトを取りながら子どもの感情を受け入れてあげましょう。

園を休ませた時も、「明日は必ず行きなさい!」などの強い言葉でプレッシャーを与えてしまうことがないよう気をつけてください。

行きたくない理由を探る

小さな子供は言葉で気持ちをうまく表現できないことが多く、感情的になって泣いてしまうこともありますが、登園したくない理由を知らなければ、対処することができません。

子どもが自分の気持ちや考え、幼稚園での出来事を上手く伝えられないとき、はい(うん、そう)か、いいえ(ううん、ちがう)で答えられるような問いかけをして、原因を探ってみましょう。

ただし、保護者の意見を押し付けて無理に誘導せず、色々な可能性を考えてあらゆる角度から問いかけてみるのがいいでしょう。

子どもが理由や事情を話すのが難しい場合、園の先生に相談してみましょう。また、特性によっては、子どもの認識と実際に起きたことが異なるため、園での出来事について事実確認をすることがおすすめです。

原因ごとにサポートをする

原因が分かった後には、原因ごとにサポートをしていきます。

・保護者と一緒にいたいという場合

保護者と離れる不安は、3歳ごろまではよく見られます。保護者と離れられるようになるためには、子どもの甘えを受け入れ、共に過ごす時間を増やすことが効果的だといわれています。

徐々に物理的な距離を広げ、子どもが安心して離れた場所でも親に愛されている、見守られていると感じられるようにサポートしましょう。

・不安ある場合

子どもが初めての経験や環境に抵抗感を抱いている場合、その環境に慣れるためには、保護者とともに園内を見学したり、子供が独りで過ごせるスペースを提供してもらうなどの方法があります。

焦らずに時間をかけ、保護者が子供の不安に寄り添うことが大切です。

また、園でのスケジュールを事前に伝えることも有効です。事前にどこで、誰と、何をするのかが分かることで、子供は安心感を得ることができます。さらに、前向きな言葉を使って明るくサポートすることも大切です。「明日は楽しい粘土遊びの日だね!」「一緒に行こうね」といったポジティブな言葉は子どもの心を開くのに効果的です。

・発達障害の特性から苦手なことがある場合

特定の特性によって「できない」ことがある場合には、責めるのではなく、事前に家庭で練習したり、園に特性に関する配慮をお願いすることが必要です。

ただし、特性に応じた適切なアプローチは難しい場合もあるため、後ほどご紹介する専門機関に相談したり、療育サービスを活用して訓練を受けるなどの方法も検討しましょう。

登園拒否をする子供への効果的な接し方

お母さんが女の子に話しかけている写真

登園拒否をする子供に対して、普段から取り入れられる効果的な接し方をご紹介します。

スキンシップをとる

スキンシップは愛情をダイレクトに伝えることができ、子どもの心の安心や健康につながります。

子供が嫌がらない場合は、特に朝ぐずりが多い子供に対して、前日の夜にたくさんのスキンシップを行うことがおすすめです

抱っこ、ぎゅーっとハグ、手をつなぐ、一緒にお風呂に入る、手遊びをする、膝に乗せて絵本の読み聞かせなど、穏やかなスキンシップが効果的です。また、体重が軽い幼児であれば、相撲や「こちょこちょ」など、遊びの中にスキンシップを取り入れることも良いでしょう。

子供の脳は就寝中に日中の記憶や感情を整理しています。登園しぶり予防のためにも、夜寝る前の親子のスキンシップを大切にし、子供が安心感を得て寝入りやすくなるよう心がけることが重要です。

スキンシップを実践している方も、子供の気持ちに寄り添う意識で行うとより効果的です。子供がお母さんが自分を理解してくれると感じ、登園をしぶっている理由を話してくれることもあります。

話してくれたら、「よく話してくれたね」と伝え、親子関係を深める一助となります。スキンシップは今日から実践可能ですので、ぜひ試してみてください。

ただし、発達障害グレーゾーンにいる子供たちの中にはスキンシップが苦手なケースもあるため、注意が必要です。

安心感を与える

登園拒否の対応では、子供の不安を軽減することがとても重要です。

嫌なことがあれば、先生に話すことを約束したり、手をつないで教室の前まで送り届けるようなサポートを提供したり、可能な限り早く迎えに行くよう心がけたりするなど、少しでも安心感を与えられるように工夫してみましょう。

新しい環境で過ごす不安が大きい子供には、家にあるものやお気に入りのものを持っていくことをおすすめします。

おもちゃやキーホルダーなどは壊れることがあり、園によっては使用が禁止されている場合もあるので、特におすすめなのはハンドタオルやハンカチです。

これらはもともと園に毎日持っていくもので、手に持ちやすく丈夫なため、子供が心地よく感じるアイテムです。

お気に入りのハンドタオルやハンカチを2〜3枚用意しておくと、新しい場所での緊張や不安な状況に役立ちます。

ちなみに、タオルやハンカチは15×15cmサイズがおすすめです。ポケットにも簡単に入れられ、子供が自分で扱いやすいサイズです。

親が精神的に安定していること

親が安定していると、子供も自らの感情をコントロールしやすくなり、逆に、親が不安やストレスに満ちていると、子供も同様の感情を抱く可能性が高まります。

親が不安そうな表情でいると、子供は登園後に楽しく過ごしていたとしても、その良い記憶がかすんでしまうほど不安になります。笑顔で子どもの送り迎えができるよう、保護者が精神的に安定していることも、とても重要です。

カレンダーに記録

卓上カレンダーを使って、幼稚園に行けた日や嬉しい出来事があった日に、子どもと一緒に楽しい会話をしながらカレンダーにシールを貼り、幼稚園での楽しい出来事をメモのように書き込むのもおすすめです。

例えば、芋ほりが楽しかった日には芋のイラストを描いたり、良い気分の日だったときにはニコちゃんマークを書きこんだり等、楽しみながら子供とのコミュニケーションを深めることができます。

アルバムを作る

子どもが幼稚園で楽しんでいた瞬間の写真を現像し、アルバムを作ることも効果的です。

リビングの目につく場所にアルバムを置き、その中で楽しい思い出を振り返ってみましょう。

写真を見ることで、日々の生活を振り返り、「こんなに楽しい瞬間があったんだ」と感じることができます。特にASD(自閉症スペクトラム障害)の幼児にとって、情報を見て確認することが得意で、視覚的な記憶が残りやすいという傾向があります。「行けた日がこんなにある!」と自信を持っているようです。

ネガティブな記憶を優先的に貯めてしまう特性は変わりにくいかもしれませんが、保護者が積極的にポジティブな記憶をインプットしてあげるようにしましょう。

こどもの登園拒否の相談先

お母さんが頭を抱えている写真

子供の登園拒否に関する相談先はいくつかあります。もちろん、最初に相談すべきは、子供が通っている保育園や幼稚園の担任の先生やスタッフですが、ここでは専門機関についてご紹介します。

児童発達支援事業所

児童発達支援事業所は発達に関する課題を抱える子供たちとその家族に対して、様々な支援を提供する機関です。子どもが健やかに発達し、社会参加できるように支援することを目的としています。

通所が容易であり、地域に多く配置され、身近な場所で支援を行っています。

児童発達支援事業所は、子どもだけでなくその家族への情報提供、相談、教育プログラムなどが行われるので、登園についての相談もできるでしょう。

子供相談窓口

各自治体にはそれぞれ子育ての相談窓口があります。

子供相談窓口は、誰でも無料で利用できます。

「○○市/区 子供 相談」と検索してみてください。

発達支援センター

児童発達支援センターは、地域の主要な障害児通所施設として、障害の種別に拘らず専門的な支援を提供しています。

児童発達支援センターは、地域の中核的な支援機関としての役割を担い、放課後等デイサービスを併設している施設もあります。

まとめ

子供を抱っこしようとしている写真

本日は発達障害の子供の幼稚園の行き渋りについて、原因や対策、相談先をご紹介しました。

大好きな保護者と自分の好きなように過ごせる自宅とは異なる環境で、 幼い子どもにとっては、ストレスや強い不安を感じることも少なくありません。

子どもの登園拒否は、甘えやわがままと一概に決めつけるべきではありません。そのような気持ちに至っている理由にしっかり向き合い、なぜそう感じているのかを理解することが大切です。保護者が子どもの気持ちを理解し、気にかけていることを伝えることで、子どもの気持ちも少しずつ落ち着くことも。焦らず、あたたかく見守りながら、子どものペースに合わせて慎重に対応していきましょう。

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ウィズ・ユー編集部

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