多くの親御さんが悩む、子どもの癇癪。子どもが家では癇癪を起こすのに、外では癇癪を起こさずに良い子でいることを疑問に思った親御さんもいるのではないでしょうか。
家で癇癪を起こすのに外ではおとなしくするという5歳児の行動は、一見矛盾しているように見えますが、幼児期特有のいくつかの心理的要因が考えられる、自然なことです。
また、発達障害の子どもは癇癪を起こしやすい傾向があります。
今回の記事では、以下の4つについて解説します。
・子どもが家で癇癪を起こすのに外ではおとなしい理由
・癇癪と発達障害の関係
・子どもの癇癪の対策と対応
・癇癪を相談できる場所
ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
ただの癇癪?それとも発達障害?
癇癪とは、強い感情をコントロールできずに泣き叫んだり、暴れることを指します。原因はさまざまですが、主に欲求不満で起こることが多く、1歳前後から始まり、2〜4歳頃にピークを迎え、多くの場合は5歳頃になると自然に落ち着いてきます。
しかし、頻繁に起こったり、長期間にわたって続いたりする場合は、発達障害の可能性も考えられます。
さらに、5歳頃になると、外では癇癪を起こさずに家だけで起こすようになることがあります。
その要因として、以下の3つが挙げられます。
・家庭内と家庭外で、自分の気持ちややりたいことを調整している反動
・家庭で安心しているため、親に甘えたいと思っている
・社会的な役割を理解し、外では良い子の振る舞いをしている
それでは順番に解説していきます。
・家庭内と家庭外で、自分の気持ちややりたいことを調整している反動
幼稚園や学校など、家庭外では周囲に合わせ、子どもたちは自分の気持ちや行動を抑制しています。先生や友達の期待に応えようと、常に「良い子」でいようと努力しているのです。しかし、その反動で家では安心し、抑えていた感情を爆発させて癇癪を起こしてしまうことがあります。
実際に子どもが、幼稚園や学校でどのように過ごしているのかを考えてみてください。例えば、友達と喧嘩をしたり、まだ遊び足りないのに先生に「もうおしまいだよ」と注意されたりするかもしれません。
このように、良い子でいようと自分の気持ちや行動を抑制すると、家で安心して抑えていた感情が爆発してしまい、癇癪を引き起こす原因につながります。
・家庭で安心しているため、親に甘えたいと思っている
家庭は子どもにとっての「安心できる場所」であり、心理的な安全基地となっています。この安全基地である家庭で、子どもは大好きな親に甘えたいと思っています。
子どもにとっての安全基地も「家庭」が中心となっており、その安心できる家庭で親に甘えたいと思っているため、その甘えが叶わないと悲しい気持ちがわがままや癇癪として表れることがあります。
・社会的な役割を理解し、外では良い子の振る舞いをしている
人は状況に応じて異なる役割を演じる社会性を持っています。例えば、職場ではプロフェッショナルな自分、友人とはリラックスした自分、家庭では親や配偶者としての自分などです。
子どもは3歳を過ぎると、このような役割(社会性)を自然と学び始めます。そのため、幼稚園や保育園では、年長として年少に良い手本を見せるなど、求められる姿を演じるようになります。
さらに、同時に幼児期には「恥ずかしい」という感情も芽生えるため、外では甘えられない分、家ではより甘えたいという気持ちが強くなってしまうこともあ。その結果、わがままや癇癪の原因になることがあります。
また、発達障害の子どもは癇癪を起こしやすい傾向があります。
ここでは、癇癪と発達障害について詳しく解説していきます。
癇癪を起こしてしまう子どもの心理
子どもは、3~4歳になると言葉が上手になりますが、自分の意思を言葉でうまく伝えられないことも多く、感情を上手くコントロールできずに癇癪を起こすことがあります。
また、癇癪を起こしているときは、子ども自身も何が起こっているのか理解できず、不安や恐怖を感じています。そのため、大人が冷静に接し、気持ちを理解してあげることが大切です。
それでは、子どもの癇癪の原因について詳しく見ていきましょう。
ストレスが溜まっている
子どもは、大人よりもストレスの影響を受けやすいので、様々な状況でストレスを溜めてしまいます。
ストレスの原因例としては、
・人間関係
・勉強
・習い事
・環境の変化
・空腹
・疲労
・睡眠不足
などが挙げられます。
こどもの癇癪の原因を考え、適切に対処しましょう。
自分の気持ちをうまく表現できない
まだ幼い子どもは、自分の感情を言葉で表現することが苦手です。そのため、怒りや悲しみなどの感情を、癇癪という形で表現してしまうことがあります。
気持ちをうまく表現できない原因は、語彙力不足や感情を理解していない、伝え方がわからないことなどが原因として考えられます。
気持ちを伝える練習法としては、以下のような方法が有効です。
・絵やジェスチャーを使って表現する
・感情の名前を教える
・気持ちを伝える練習をする
ストレスの対処法がわからない
先ほども説明した通り、子どもは大人よりもストレスを受けやすいです。しかし、どのように対処すれば良いのかを知りません。そのため、癇癪という形でストレスを発散してしまうことがあります。
子どものストレス対処法としては、
・運動
・遊び
・音楽鑑賞
・リラックスできる時間を作る
などが挙げられます。
ストレスの原因を知っておくとともに、子どもに合った対処法も考えておきましょう。
発達障害における癇癪の特性
発達障害の子どもが必ず癇癪を起こすとは限りませんが、癇癪を起こしやすい傾向があります。これは、発達障害によって、以下のような特性が影響していると考えられます。
・コミュニケーションの困難
・感覚過敏
・感情のコントロールの困難
・こだわりの強さ
また、発達障害の種類によって、癇癪の特性も異なります。
ここでは、発達障害の種類別に癇癪の原因となりやすい特性を紹介していきます。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の場合
ASD(自閉スペクトラム障害)とは、「Autism Spectrum Disorder」の略称で、日本語では「自閉スペクトラム症」と呼ばれています。これは、脳の発達が少しだけ異なるために、社会性やコミュニケーション、興味や行動に特徴的な違いが現れる神経発達障害です。
よってASDの子どもは、コミュニケーションの困難や感覚過敏から、癇癪を起こしやすい傾向があります。
ASDの特性による、子どもの癇癪の原因と考えられる例としては、
・自分の気持ちを言葉で伝えられず、イライラしてしまう
・感覚刺激に過敏で、不快な刺激を感じると癇癪を起こしてしまう
・変化に弱く、予定が変更されると癇癪を起こしてしまう
・こだわりが強く、思い通りにならないと癇癪を起こしてしまう
などが挙げられます。
ASDの子どもの癇癪への対処法としては、
・コミュニケーション方法を工夫する
・感覚刺激をコントロールする
・変化に備えて事前に説明する
・こだわりを受け入れる
などが挙げられます。
注意欠陥多動性障害(ADHD)の場合
ADHDは「Attention Deficit Hyperactivity Disorder」の略称で、日本語では「注意欠如・多動性障害」と呼ばれています。これは、脳の発達が少しだけ異なるために、注意や集中力、多動性や衝動性に特徴的な違いが現れる神経発達障害です。
ADHDの特性による、子どもの癇癪の原因と考えられる例としては、
・衝動的に行動してしまい、後で後悔することがある
・自分の感情をコントロールすることが苦手で、すぐに怒ってしまう
・欲求不満に耐えられず、癇癪を起こしてしまう
などが挙げられます。
また、ADHDの子どもの癇癪への対処法としては、
・衝動的な行動を抑制する
・感情のコントロール方法を教える
・欲求不満を解消する方法を教え、一緒に考える
などが挙げられます。
発達障害の子ども向けの癇癪対策
発達障害の子どもは、癇癪を起こしやすい傾向があります。なぜなら、発達障害の特性が癇癪を引き起こす原因につながりやすいからです。
ここでは、発達障害の子どもの癇癪対策として、以下の3つの方法をご紹介します。
好きなことに没頭する時間を作る
好きなことに集中することで、ストレスを解消し、癇癪を予防することができます。絵を描くこと、音楽を聴くこと、ゲームをすることなど、子どもが好きなことをする時間を確保しましょう。そのためにも、子どもの好きなことをよく知っておくことが大切です。
具体的な例としては、
・絵を描くことが好きな子どもには、画材を用意して、自由に絵を描けるようにする
・音楽を聴くことが好きな子どもには、好きな音楽を聴ける環境を作る
・ゲームをすることが好きな子どもには、ゲームの時間を設けるようにする
などが挙げられます。
また、好きなことに没頭するあまり生活のリズムが崩れないようにし、他の活動とのバランスを考慮するように注意しましょう。
体を使う遊びをする
体を動かすことは、ストレスを解消する効果があります。公園で遊んだり、スポーツをしたり、体を動かす遊びを取り入れましょう。
具体的な例としては、
・公園で遊具を使って遊ぶ
・ボール遊びをする
・水泳やダンスなどの習い事をさせる
などが挙げられます。
その際は、安全に配慮し、子どもが無理なく楽しめる運動を選びましょう。
見通しを立てる
子どもは先の予定がわからないと不安になってしまうことがあります。これが癇癪を起こしてしまう原因になってしまう可能性があるため、事前に子どもに予定を伝えるといいでしょう。
具体的な対策としては、
・1日のスケジュールを絵カードや写真を使って伝える
・外出する前に、どこに行くのか、何をするのかを説明する
・予定が変更になった場合は、早めに子どもに伝える
などが挙げられます。
その際は、子どもが理解できる言葉で伝えることや具体的な情報を伝えることが重要です。
保護者ができる癇癪対処法
子どもが癇癪を起こしてしまうと、保護者はどうしたらいいのかパニックになってしまうこともあるでしょう。
しかし、保護者は落ち着いて対処しなければいけません。その時の状況に合った適切な対応ができるようにしておきましょう。
ここでは、保護者ができる対処法を6つご紹介します。
まずは安全を確保する
子どもが癇癪を起こしたときは、暴れたり物を投げてしまったりする可能性があります。よって、けがをしないように安全を確保するようにしましょう。
安全を確保するためにできる有効な具体例としては、
・周囲に危険なものがないか確認する
・子どもが暴れて怪我をしないようにする
・安全が確保できたら、次に落ち着くのを待ちます
などが挙げられます。
具体的には、以下のような行動をとるといいでしょう。
・割れ物や鋭利な物は手の届かないところに置く
・子どもが転んだ時に怪我をしないように、床にクッションなどを敷く
・子どもが暴れて家具などを壊してしまう可能性がある場合は、別の部屋に移動させる
子どもが癇癪を起こしたときは、まずは子どもの安全を確保するようにしましょう。
ものを投げる場合、硬いものや尖ったものなど危険なものは遠ざけます。また、頭を床や壁に打ちつけるなどの癇癪の場合は、クッションを挟むなどして怪我を防ぎます。
クールダウンするのを待つ
周りに危険なものがなく、人があまりいない場所に連れていき安全を確保した後、クールダウンするのを待ちましょう。
具体的な例としては、
・子どもを責めたり、怒鳴ったりせずに静かに見守る
・子どもが安心して落ち着くまで、優しく抱きしめてあげる
などが挙げられます。
癇癪を起こした子どもは興奮しているため、無理に子どもに話を聞かせても理解できない可能性があります。安全を確保してから落ち着くまで待ちましょう。
落ち着いたら褒める
子どもが落ち着いたら、「よく頑張ったね」「自分で気持ちを落ち着かせられたね」など、具体的に褒めてあげましょう。褒められることで、子どもは自分の気持ちをコントロールできたという自信を持つことができます。
子どもの気持ちを吐き出せる場所を作る
子どもが癇癪を起こすときは、まず気持ちを吐き出すことが大切です。子どもが安心して気持ちを話せる場所を作ってあげましょう。
具体的には、以下のような方法が有効です。
・ぬいぐるみや人形など、子どもが話しやすい相手を用意する
・子どもが好きな遊び道具やおもちゃを用意する
・子どもが落ち着ける場所(秘密基地など)を作る
また、子どもが気持ちを話しているときは、否定したり批判したりせず、ただ話を聞いてあげることも大切です。
子どもの癇癪の原因を把握する
子どもが癇癪を起こす原因は様々なので、まずは、子どもの癇癪の原因を把握することが大切です。原因がわかれば、それに応じた対策を考えることができます。
言葉で伝える練習をしてあげる
子どもが言葉をうまく話せないと、癇癪を引き起こす原因となってしまいます。
そのため、日頃から子どもが自分の気持ちを言葉で伝えられるように練習をしてあげることが大切です。
具体的には、以下のような方法が有効です。
・日常生活の中で、子どもの気持ちを言葉にしてあげる
・絵カードやジェスチャーを使ってコミュニケーションを取る
・簡単な言葉から、少しずつ言葉を覚えていく
言葉で伝える練習をすることで、子どもは自分の気持ちをうまく伝えられるようになり、癇癪を減らすことができます。
癇癪を相談できる場所は?
子どもが癇癪を起こすのはよくあることですが、頻繁に起こったり、ひどい暴言や暴力が見られたりする場合は、一人で抱え込まずに、周囲に相談することがおすすめです。
ここでは、癇癪を相談できる場所を3つご紹介します。
発達支援センター
発達支援センターは、発達に遅れや気になる点がある子どもとその家族を支援する施設です。心理士や言語聴覚士などの専門家が在籍しており、癇癪の原因や対処法について相談することができます。
また、療育プログラムや親子教室などのサービスも提供しています。
医療機関
小児科や児童精神科などの医療機関でも、癇癪について相談することができます。
医師による診察や検査を受けることで、癇癪の原因が医学的な問題によるものではないか確認することができます。
市区町村の子育て担当課・福祉担当課
市区町村の子育て担当課や福祉担当課では、子育てに関するさまざまな相談を受け付けています。
癇癪に関する相談も受け付けており、地域の相談機関や支援団体を紹介してくれることもあり、育児支援事業や助成金制度などの情報も得ることができます。
まとめ
5歳の子どもが家で癇癪を起こすのに外ではおとなしい理由として、以下の3点が挙げられます。
・家庭外での、自分の気持ちややりたいことを調整している反動
・家庭で安心しているため、親に甘えたいと思っている
・社会的な役割を理解し、外では良い子のふるまいをしている
子どもの癇癪は、決して親の接し方や育て方が原因で起こるものではなく、発達障害の可能性があります。そのため成長段階で起こっているものなのか、支援が必要なのかを見極める必要があります。
また、癇癪への対処法は子ども一人ひとりによって違うため、保護者だけで悩まず、支援施設のサポートをうまく活用するなど、専門機関のアドバイスを受けながらお子さまの成長をサポートするようにしましょう。