発達障害の「性問題行動」と性教育の必要性について解説

発達障害と書いた積み木

子どもへの性教育の方法についての悩みは、多くの保護者が直面する課題です。

子どもの成長とともに、性に関する興味や疑問が芽生える時期が訪れることは自然なことですが、具体的な指導方法やタイミングについての不安や疑問を持つ保護者は少なくありません。

・性行為に関する正確で分かりやすい説明の方法がわからない。

・子どもの持つ性的な問題行動や言動にどのように対処すればよいかの具体的な方法を知りたい。

保護者の中には、上記のような具体的な悩みや疑問を抱えている方も少なくないでしょう。

特に、発達障害を持つ子どもたちの場合、性に関する理解や認識が一般の子どもたちと異なることがあるので、適切な性教育を行うためのアプローチや方法が必要となります。

本記事では、発達障害を持つ子どもたちに対する性教育の特性や、具体的な事例をもとにしたアプローチについて詳しく解説します。また、子どもの性的な問題行動や言動に対する理解を深め、適切なサポート方法を学ぶことで、保護者が安心して子どもの成長をサポートできるようになることを目指します。不安を感じている保護者の方々は、是非、本記事を是非参考になさってください。

発達障害と性的問題行動の関係性

手を繋ぐ親子

まず、発達障害とは、認知、社会性、コミュニケーションなどの発達の遅れや障害がある状態を指します。具体的な疾患や症状には、自閉症スペクトラム障害(ASD)注意欠陥・多動症(ADHD)学習障害(LD)があります。

続いて、性的問題行動とは、身体の性的な領域、たとえば性器、肛門、胸などに対する触れる、見る、またはこれを他者にさせる、見せるといった行為を指します。

発達障害を持つ子どもは、コミュニケーションが苦手であったり、適切な性教育の理解が難しい場合があります。社会的な孤立や排除感を経験することで、非適切な性的な行動や欲求の表現に繋がることが考えられます。また発達障害にかかわらず、最近ではインターネットなどで容易にさまざまな情報が手に入る中で、誤った「性」に関する知識を身につけてしまう可能性があります。

ただ、全ての発達障害を持つ人が性的問題行動をするのではなく、多くの発達障害の人は健全な性的な関係や行動を持っています。

発達障害別に、思春期(小学校の高学年から成人まで)にどういった行動を取るようになるのかを解説します。

ASDの場合

まず、ASDとは、発達障害の一つであり、急な変化が苦手な特性があります。
そのため、第二次性徴による急な身体の成長に対し自分に何が起こったのか理解できずに、パニックを起こしてしまうことがあります。 また、ASDの特性として、強いこだわりを持つので、好きな相手に対して、付きまといや強い執着を見せることがあります。また、人の立場になることが難しいために、「羞恥心」や「プライバシー」を理解するのが難しいことがあります。

行動例

・男児の場合「声が変わること」に強烈な違和感を持ち、首を絞める、喉をこぶしで叩く

・女児の場合、「身体が丸くなること」で太ったと感じ、過度なダイエットをしようとする

街中で同年代の異性と出会うと不自然に避ける

ADHDの場合

ADHDは「衝動性」という特性がゆえに、 人とかなり距離を詰めすぎてしまう所があります。

そのため、人との距離感が分からず、パーソナルスペースを確保することができなかったり、羞恥心よりもADHDの「衝動性」の特性が勝ってしまい、トイレやお風呂などに着く前に、服を脱ぐなどの行動が見られることがあります

行動例

・人目を気にせず、服を脱ぐ、性器を触ってしまう

抱き着いてしまう、身体を触ってしまう等

LDの場合

LDは学習障害とよばれ、計算や読み書きが苦手な特性があります。

学習障害(LD)を持つ子どもたちは、知的な発達に関しては典型的に発達している子どもたちと同じであり、特有の問題行動は特定されていません。保護者として、子どもが理解しやすい方法で性教育について伝えることが大切です。

事例別!発達障害の問題行動への対処方法

子供が泣いて悩んでいるお父さん

ここからは発達障害を持つ子どもたちの「性的な問題行動」に関する一例をご紹介します。

性的な言及や行動があっても、必ずしも「性的な問題」が背景にあるわけではないので、子どもの行動背後の原因を深く理解し、個人の障害や発達段階に合わせた対応が求められます。

子どもに行動の背景を尋ねる際は、注意深くアプローチすることが肝心です。彼ら自身がその背後の理由に気づいていない場合が多いため、誤解を招く可能性があります。特定の障害により、性的な興味は持っていても、その行動が持つ社会的意味を正確に捉えるのは難しいこともあります。さらに、衝動性が高い特性がある場合、意識していても行動を抑えることが難しいことが考えられます。

性的な行動の問題が生じたとき、強い非難や叱責だけでは、子どもが自身の行動背後の理由を共有することが難しくなるリスクがあります。

まず、冷静に子どもの意見や感じていることを受け入れ、彼らが自分の気持ちや考えを伝えやすい状況を作ることが重要です。彼らの背景や気持ちを理解した上で、適切な質問や対応を心掛けましょう。

事例1:ストーカ行為

クラスメイトを、毎日待ち伏せし、つきまとってしまう中学生のASDを抱える子どもの事例です。

・原因

ASDには他人の心を読むのが苦手な為、勘違いしやすいという特徴があります。また、ASDの特性である「強いこだわり」により、特定の人物に強い執着をしてしまってストーカー行為に繋がってしまったと考えられます。

・対処方法

遠回しに伝えてもわからないため、待ち伏せやつきまといは「ストーカー規制法」と呼ばれる法律に触れることがあることを説明。

事例2:異性を凝視する

通学の電車で異性を凝視してしまい、注意されてしまった中学生のASDを抱える子どもの事例です。

・原因

異性への興味・関心があった

・対処方法

・「知らない女性をじっと見てはいけない」と叱ったところ、女性が道を通るたびに不自然に避けたり、目をふさぐようになってしまったので、〇秒しか見ないようにと時間を指定するなどして「チラ見」をする練習を行った。その結果、「凝視」をすることはなくなった。

・異性に興味を持つことを否定せずに、思春期において訪れることを説明する

事例3:衝動的に告白してしまう

クラスメイトが大勢いる前で、好意を寄せる異性に告白をしてしまった高校生のADHDを抱える子どもの事例です。

原因

・行動に対し、告白の相手や周囲にいる人がどう思うのかの想像がつかず、迷惑がられることが理解できなかった

・ADHDの「衝動性」の特性で、突発的に行動をしてしまう

対処方法

ソーシャルスキルトレーニングを通して、他者との関わり方や適切な接し方を身につけさせる

性教育はいつ始めたらよい?

女性のお医者さん

性教育の重要性は紹介しましたが、いつから家庭での「性教育」をおこなうべきなのでしょうか?

発達障害の子どもの性教育は早くから始めた方がよい

発達障害を持つ子どもたちの中には、心や体の急な変動に対して過度な不安やパニックになり、

自傷に走ってしまうケースも珍しくありません。さらに、発達障害を持つ子どもたちは、性犯罪の被害者となるリスクが高いというデータも示唆されています。また、子どもの性的問題行動は早期に発見し、適切に対処すれば再発率はとても少ないことが海外の多くの研究で実証されています。

このため、早期に適切な性教育を行うことが重要とされます。

幼児期から徐々に

早い段階での性教育について疑問を持つ方も多いかと思います。しかし、前述した通り、ゆっくりと時間をかけて子どもの理解を深めることで、思春期の身体的変化に対する衝撃を和らげることができます。

思春期になると、親との性教育の話し合いを避ける傾向が強まることや、反抗的な態度が表れることも考えられます。そのため、早めの段階からのアプローチが重要です。

初めに、未就学児(3~5歳前後)の段階から、身体の機能・役割のことや、「プライベートゾーン(水着ゾーン)」と呼ばれる性に関わる、触らせたり見せたりしてはいけない身体の部位を、わかりやすい言葉で教えることが大切です。「身体のここは大切な部分」と理解をさせることで、その後の性教育がスムーズになります。

子供が性的な発言をしたら

未就学児から小学校の低学年の子どもたちが示す性的な行動、例えば「ちんちん!」と叫ぶことやスカートを持ち上げる行為などは、子どもらしい好奇心から来るものです。しかし、これらの行動に対しては「子どものすること」と軽視せず、適切な行動とその理由を教えることが重要です。

性器に手を触れるなどの行動も同様に、その時々でなぜそのような行動をしてはいけないのかを説明しましょう。例えば、「トイレやお風呂の時は見ることができるけれど、他の場所では見せないようにしましょう」といった具体的な場面を指摘しながら、理解を深めていきます。単に「それは恥ずかしい」といった感情的な言葉よりも、理由を明確に伝えることが大切です。

スカートを持ち上げる行為をした男の子に対して注意する際、障害を持つ子どもに対しても、その子に合わせた方法での接し方が必要です。大人に近づいてきた時に、自然と性に関する知識が身につくと考えるのは誤りです。

適切な行動、その背後にある理由、そしてそれを避ける方法について、子どもが理解できるような言葉で伝えることが大切です。

性に興味を持ったら

「赤ちゃんはどこからやってくるの?」や「セックスって何?」といった、子どもからの予想外の質問に対して、多くの親は戸惑いを感じることでしょう。しかしそのような時こそ、子どもの成長と性教育の始まりと捉え、適切に向き合うことが重要です。

質問に対する答えは、恥ずかしさを感じずに冷静に、しかし適切な形で行うことが大切です。子どもが保護者の反応を楽しむことや、「性」に対して後ろめたさを感じることは、不適切なアプローチとなります。性に関するトピックは確かにプライベートな部分もありますが、「タブー」として過度に捉えてしまうと、子どもが健全な性の認識を持つのを妨げる恐れがあります。

家庭での性教育のポイント

親子で会話する

性教育の際に最も重要なのは、日常的に子どもたちが自由に気軽に話せる環境と、互いの信頼関係を深めることです。大人の一方的な価値観で対応すると、子どもは「この人には心の中を話せない」と感じてしまいます。子どもの気持ちや疑問をしっかりと受け止め、安心して話せる雰囲気を作り上げることが大切です。その上で、性教育を行う際の3つのポイントをご紹介します。これらのアドバイスを参考に、子どもたちとのコミュニケーションを深めてください。

子どもにわかりやすい言葉で伝える

性教育は早めが良い」という考え方は、子どもの成長や知識の形成を促進するためのものですが、その内容や言葉遣いは、子どもの年齢や心の成熟度に合わせて柔軟に対応することが必要です。

例えば、未就学児に対するプライベートゾーンの説明には、「水着の部分は大切な場所だから、他の人には見せたり触らせたりしないでね」といった、子どもが理解しやすい言葉や表現を選ぶことが求められます。このように、情報の提供方法や言葉の選び方を工夫することで、子どもが適切な知識を身につける手助けをすることができます。

親が性教育に苦手意識を持たない

身体の部位や性に関する説明を行う際、ネガティブな言葉や表現、例えば、「性器は不潔だから触らない」といった言い方は避けるべきです。

保護者が戸惑った態度を示すと、子どもは性や体の一部にネガティブなイメージを持つ可能性があります。

代わりに、「性器は子どもを作るための重要な部分です」といった肯定的かつ冷静な言葉で説明することが、子どもの健全な性教育に繋がります。

また、子どもからセックスや性に関する質問を受けた際、多くの保護者は動揺を感じるものです。しかし、その場で答えに詰まったり、嘘をついたり適当な回答をするのではなく、真摯に向き合うことが大切です。

たとえば、「赤ちゃんはコウノトリが運んでくる」というような返答は、一時的に子どもを安心させるかもしれませんが、将来的にはその真実に気づいたときの混乱や信頼の喪失を招きかねません。また、性に関する話題をタブーとして扱うことで、子どもが真剣な問題や悩みを内緒にしてしまう可能性が高まります。

子どもの信頼を勝ち取るためには、どんな質問や悩みも真摯に受け止め、適切に対応する姿勢が求められます。特に、性的な問題や疑問に対しても、相談しやすい環境を整えることが、子どもの健全な成長にとって不可欠です。

同性の保護者から伝える

性教育は、同性の保護者がすることをおすすめします。

まず、同性の保護者が性教育を担当することで、子どもが気軽に疑問や不安を共有する機会が増えます。特に性に関する質問や悩みは、初めての経験や感情の変動とともに、子どもにとって大きな興味や不安の対象となることが多いため、オープンなコミュニケーションの場が非常に重要です。

また、大人になった際に異性に対しても性的な話をする際の誤解やトラブルを防ぐためにも、同性の保護者が性教育を担当することが効果的です。異性との間でのコミュニケーションや認識の違いを適切に理解し、尊重することは、健全な人間関係の形成においても非常に重要です。

まとめ

変顔をする子供

本日は発達障害と性的な問題行動の関係性や、性教育について解説しました。

様々なポイントをご紹介しましたが、性教育を除いても一番大切にしたいのは「親子間のコミュニケーション」です。子どもの感じていること、学んでいることを知ることは、親としての役割の中でも最も基本的で重要な要素です。子供の気持ちや疑問に耳を傾け、共感し、サポートすることで、子どもは自分を理解してもらえていると安心感を得ることができます。そして、保護者も子どもの日々の進歩や成長を肌で感じることができるでしょう。

また、発達障害の特性によっては、家庭内でのサポートだけでは限界がある場面もあります。そうしたときには、一人で悩まずに専門の支援機関や専門家との協力や相談を検討することが大切です。専門家の知識や経験を借りることで、子どものニーズに合わせた適切なサポートやアドバイスを受けることができるでしょう。

親としての役割は決して簡単なものではありませんが、子どもの成長をサポートするための手助けやツールは多く存在します。最善の方法を選ぶためにも、日常の親子のコミュニケーションを大切にし、必要な場合は専門家のサポートを求めることが鍵となります。

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ウィズ・ユー編集部

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