発達障害は食べることに執着する?食べ過ぎ・偏食になる原因や対処方法をご紹介

子供が頂きますと言っている写真

発達障害を抱える子どもの中には、障害の特性から、食べることに対して執着をしてしまい、食べ過ぎてしまったり、食べるものが偏ってしまうことがあります。

「食べること」は子供の成長に欠かせない大切なことなので、偏った食生活が続くと、保護者の方も「偏食だけど栄養は足りてる?」「うちの子、食べ過ぎている気がするけど大丈夫?」と心配になってしまいますよね。

この記事では、発達障害と食事の関係に焦点を当て、発達障害の子供が食べることに執着する理由や対処方法、偏った食事が健康に与える影響について、解説します。是非最後までご覧ください。

食べすぎや偏食を引き起こす発達障害の特性

お父さんが子供にご飯をあげている写真

食べ物に執着する原因として考えられる発達障害の特性とはどのようなものかご紹介します。

食べ過ぎの場合

ASD(自閉症スペクトラム障害)やADHD(注意欠如・多動性障害)の特性により、「満腹に気づかない」や「食欲をコントロールできない」などの課題が生じることがあります。「食べることが好きなのだろう」と単純に受け止めがちですが、特性による食べ過ぎの場合は保護者のサポートが必要です。

以下に、食べ過ぎや過食の原因に関わる特性について詳しく説明していきます。

ADHDの衝動性

ADHDの特性の一つである「衝動性」により、本来ならば既に満腹であるにも関わらず、「もう一口食べたい!」という欲求を抑えきれず、無理にでも食べてしまうことがあります。この欲求の制御が難しいため、食べ過ぎる可能性が高まります。たとえお腹が空いていなくても、お菓子が目に入るとつい手が伸びてしまうこともあります。

「ADHDのある子どもと摂食障害」に関する海外の研究によれば、ADHDの子どもは通常の子どもと比較して、摂食の制御が難しいという特徴が12倍も多いことが示されています。さらに、衝動性が高いほど、「過食」などの摂食の制御が難しい状態がリスクとして高まることも指摘されています。

ASDの感覚鈍麻

「感覚特性」の一つである「感覚鈍麻」が存在する場合、満腹感を感じにくいことがあります。逆に、空腹感に気づかないことも考えられます。

「感覚特性」とは、特定の感覚(視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚など)に対して、異常に敏感または鈍感な状態を指し、外部からの刺激に過敏または不感症であることを意味します。また、温度や痛みに気づかないこともあります。

感覚過敏が見られる子どもでは、「満腹」という感覚を利用して他の苦手な感覚を緩和しようとすることがあるとされています。この特性の子どもは、自分単独では食事量を適切にコントロールすることが難しいため、保護者のサポートが重要です。

偏食の場合

偏食とは「食べられるものが極端に少ない」・「毎日同じものばかりを食べる」ことで、子ども本人の好き嫌いやわがままが原因と思われがちですが発達障害の特性によって引き起こされることがあります。

以下に、偏食の原因に関わる特性について詳しく説明していきます。

ASDの強いこだわり

ASD(自閉症スペクトラム障害)に特有の「こだわり」の特性がある場合、特定の味や食感のものにこだわりが見られ、あるいは逆に特定のものを拒否するケースがよくみられます。例えば、「白い食べ物=美味しい、赤い食べ物=不味い」といった見た目に基づく条件づけや、過去の経験から生じるネガティブなイメージにより、「魚を食べると必ず骨が刺さる」といった思い込みから偏食が生まれることもあります。

特に「ハイコントラスト知覚」の特性がある場合、一度の経験や現在の知識に基づいて「全てそうである」という思い込みがしやすいとされています。また、食事においては様々な「マイルール」が存在し、「スープは熱々じゃないと飲まない」「〇〇は学校の給食だけでしか食べない」「サラダを食べないと、おかずは食べない」「この食器でないと食べない」といった条件に固執することもあります。

ASDの感覚過敏

「感覚特性」の一つである「感覚過敏」が存在する場合、食事の際に様々な「苦手な感覚」が見られることがあります。

例えば、混ざった食べ物の食感が気持ち悪くて耐えられない、ねばねばやどろどろなど特定の食感が苦手、といった感覚に対して耐えられず、吐き出してしまったり、強い拒否感を感じてしまうケースがあります。

食べ物に執着するのは発達障害だから?

発達障害だからと言って食に対するこだわりがあるというわけではありませんが、発達障害を抱える半数以上の子どもが、先ほどご紹介したような特性により何らかの食事に対する問題を抱えているとされています。

発達障害を抱える子どもの「偏食」や「食べ過ぎ」を単にわがままと捉えず、「個性」として受け入れることで、保護者の不安やストレスを和らげる手助けにもなります。

食べ過ぎや偏食の健康への影響は?

子供がご飯を嫌がっている写真

では食べすぎや偏食は健康にどのような影響を与えるのでしょうか?

食べ過ぎの場合

乳幼児期から幼児期初めの子どもは、脳の満腹中枢が未熟で、自己調節が難しいため、食欲にまかせて過剰に食べることがよく見られますが、成長に伴い、食欲も適量に落ち着いてきます。子供の自然な成長過程なので心配しなくても大丈夫です。

もし食べ過ぎを心配する場合は、成長曲線や指標を確認し、子供が標準的な体重範囲内にあれば問題ありません。過剰なカロリー摂取は肥満のリスクを増加させ、心血管疾患や糖尿病などの慢性疾患の発症につながる可能性があり、また大量の食物を摂ることが胃や腸に負担をかけ、消化器系のトラブルを引き起こす可能性があるので、保護者が子供の食事内容や食べ方を確認し、食品の品数を増やす、食物繊維を摂る、油脂の控えめな調理法を取り入れるなど、食事の工夫をすることも必要です。

偏食の場合

特定の食品を好まない場合、必要な噛む習慣が不足する可能性があり、歯並びなど歯の健康に影響を与えることがあります。偏食が長期間続くと、新しい食材に触れる機会が減り、食品アレルギーのリスクが増加するといわれています。また、偏食は栄養不足のリスクを高め、免疫機能の低下や鉄欠乏性貧血などの健康問題を引き起こす可能性があります。多様な食材を摂取し、バランスの取れた食事が望ましいです。

食べることに執着するときの対処方法

子供が自分でご飯を食べている写真

偏食と過食、それぞれについての対処方法をご紹介します。

偏食の場合

発達障害のある子どもは、脳の特性から嫌な経験が強く残りやすいため、無理に苦手なものを食べさせたり、食べないことを叱ったりすると、「食事」自体が嫌いになる可能性があります。

「好き嫌いなく食べられることが正しい」「偏食はわがまま」といった先入観を持たず、お子さまの個々の感覚に敏感に対応することが求められます。特に、「感覚過敏」の場合は、苦手な感覚に対して強い不快感やストレスを感じることがあります。

克服を強要するのではなく、お子さまと協力して、どのようにすれば苦手な感覚を避けることができるかを共に考えていくことが重要です。

子どもの感覚を理解する

子どもには、味覚(どんな味が苦手か)、触覚(どんな舌触りや口当たりが苦手か)、嗅覚(どんなにおいが苦手か)、視覚(どんな見た目が苦手か)など、どの感覚がどのように苦手かを尋ねてみましょう。複数の苦手な食材がある場合には、共通点が見えてくることがあります。

過去の嫌な経験やマイルールによって食わず嫌いをしている場合には、「苦手だけど、頑張ってみたい」「我慢してでも、食べてみよう」という強いモチベーションをを高めるために、「ご褒美」を用意するのもおすすめです。ただし、通常は難しいと思われる要求(例:ゲームを買ってあげる、遊園地に連れて行ってあげるなど)で子どもが強く希望しているものが、より効果的です。ただし、ご褒美を与えるまでに時間が長すぎると、達成感が落ちる可能性があるため、注意が必要です。

食べられる調理方法を探る

食べ物の食感や味が苦手な場合、調理方法を工夫をすることで苦手な感覚を軽減させることができます。たとえば、苦手なものをすり下ろしたり、細かく刻んだりして好きな食べものに混ぜることで、食べ物の味を調整することが可能です。

また、食感が苦手な場合には、揚げたり、固めたり、煮たりすると食感が変わり食べられるようになることも。ただし、特性のある子どもの場合は、少しの感覚でも敏感に感じ取ってしまうことがあるため、注意が必要です。工夫する際には子どもの反応を注意深く観察しながら、適切なアプローチを選ぶことが重要です。

ひとくちから練習

苦手な食材に一気に挑戦するのは難しいため、まずは一口から始めましょう。一口食べられたら、その場で褒めてあげ、そこで終了してください。その後は、「二口」「小さなお皿」「中くらいのお皿」など、段階的に苦手な食材に慣れていくように進めます。徐々に進めることで、苦手な食材にも食べられるようになる可能性があります。

過食の場合

保護者が気づかないうちに大食いをしているか、食べた後に吐いている様子が繰り返し見られる場合は、子どもに理由を尋ねてみることが大切です。

また、子どもに対して「食べ過ぎ」の原因を尋ねるだけでなく、食事の様子を観察することも必要です。

発達障害の特性が原因の場合、子どもの年齢や発達段階、特性によってアプローチが異なります。満腹感に気づかない場合は「適切な食事の量」を教えることが重要であり、食欲のコントロールが難しい場合は「食べる量の調整」と「ルールの設定」がポイントです。

一回の食事を個別の皿に盛りつける

1人分ずつ料理を取り分けて提供することで子どもが食べた量を確認しやすく、苦手な食べ物を把握しやすくなり、また体調管理もしやすくなります。

大皿だと食べる側が自分の食べられる分だけを食べてしまい、気づかぬうちに食べ過ぎてしまうことがあり、食べ過ぎや食べずに終わるといった問題も予防することができます。

また、お皿のサイズを小さくすると、満腹感を得やすくなるという研究結果があります。

コーネル大学のブライアン・ウォンシンク教授らが225人の被験者を対象に行った実験では、お皿のサイズを変えることで食事の摂取量がどれだけ変わるかを調査しました。

その結果、お皿の直径を30センチから25センチに変えただけで、カロリー摂取量が平均で22%も低下することが分かりました。この結果からお皿のサイズを小さくするだけで、食事の量が増えるように感じ、満足感を得やすくなることがわかります。

咀嚼が多い食材を与える

食物を咀嚼することは、体が消化が始まったと捉え、消化吸収の準備に入る過程に必要です。

咀嚼回数を増やすと、脳の満腹中枢を刺激して満腹感をもたらすぶどう糖(グルコース)や神経性ヒスタミンが増加し、満腹中枢を刺激することも分かっています。

一方で、早食いは、満腹中枢が刺激される前に過剰な量を摂取しやすく、これが食べ過ぎにつながっていることもあります。ゆっくりと食べ、よく噛むよう指導することが重要です。

おかわりのルールを決める(1回まで、全部食べ終えてから等)

前述の通り、食欲のコントロールが難しい場合は「食べる量の調整」と「ルールの設定」が大切です。

子どもが何度もおかわりをして食べ過ぎてしまう場合は、おかわりのルールを1回までにする、好きなものばかり何度もおかわりをする場合は全てを食べ終えてからなどルールをしっかり話し合って決めておきましょう。

お菓子などの食料を見えない場所にしまう

お菓子は大人も子どもも誰でも目の前にあるとついつい食べたくなります。また、直射日光や空気に触れて中身が劣化するのを防ぐためにも、お菓子は引出しや戸棚など見えないところに隠しておくのもおすすめです。

また、冷凍庫を活用するアイデアもあります。お菓子を冷凍することで、解凍には手間がかかるため、衝動的に食べることがなくなります。

発達障害以外の過食や偏食の場合も

子供が悲しんでいる写真

過食や偏食の原因は、様々な要因が絡み合っています。

特に発達障害の特性からくる「偏食」と単なる「好き嫌い」の区別は非常に難しいので、神経質にならず、無理に克服をさせようとせず、徐々に食べられるよう子どもと一緒に対策を考えていきましょう。

栄養不足が心配な場合はサプリメントなどで代用するのも手です。

過食の場合、「ごはんの前に好きなおやつを食べ過ぎた」や「バイキングで調子に乗ってごはんを取り過ぎた」など、年齢(幼児期で満腹中枢がまだ発達していない可能性もある)や一時的なものである場合や、単に「ご飯を食べることが好き」である場合など、「食べ過ぎ」の原因が特性によるものでない可能性も多く考えられます。

またうつ病などの精神疾患やストレスを解消するために、短時間で大量の食べ物を詰め込むようにして食べるようなケースも見られます。摂食障害がみられる場合には、医療機関に相談することをおすすめします。

まとめ

子供がご飯を楽しみにしている写真

本日は発達障害と食べ過ぎや偏食の関係とその対処方法についてご紹介しました。

発達障害やその特性による困難さは周囲から気づかれにくく、特に今回紹介した「食べ過ぎ」や「偏食」は、特性がない子どもにもよく見られますが、発達障害の特性が背景にある場合には、一般的な対処法がうまくいかなかったり、かえって状況を悪化させてしまうことがあります。

偏食や食べ過ぎに対する注意を特定の瞬間に集中させるのではなく、日常的な環境で理解を深め、子どもが成長する過程で、適切な食事の量や栄養素を知り、食欲をコントロールすることをサポートしていきましょう。

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ウィズ・ユー編集部

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