
5歳という年齢に達すると、多くの子どもたちは小学校への入学を控えて、ひらがなの読み書きに関心を示す子どもたちが増えるてきます。
一方で、まだそのスキルを身につけていない子どもの保護者の中には、「うちの子は他の子より遅れているのだろうか?」という心配や不安や、「このままでは小学校でついていけないのでは?」という思いが頭をよぎる方も少なくありません。
しかし、この段階での焦りや不安が、逆に子どもの学習へのモチベーションを低下させてしまう可能性も考えられます。過度なプレッシャーは、子どもの自信喪失や学習への興味喪失に繋がることがあるため、注意が必要です。
そこで、本記事では、ひらがなの効果的な教え方と、文字の読み書きにおける発達障害との関連性に焦点を当てました。正しい知識やアプローチを持つことで、お子さまの学習のサポートがより質の高いものとなるでしょう。この記事を通じて、お子さまの成長と学習の旅路を、より穏やかで確かなものとしていただければ幸いです。
5歳の子どもがひらがなを読めなくても問題ない

冒頭で述べた通り、5歳という年齢になると、多くの子どもたちがひらがなの読み書きに興味を示し始めることが一般的です。ですが、できないからといって、子どもが発達障害を持っていると結論づけることはできません。
小学校への進学後、ひらがなの読み書きに関する困難が続く場合、学習障害やその他の学習に関連する課題が検討されることがありますが、5歳の子どもたちの中には、まだ文字や読み書きに対する興味や関心を持っていない子も多く存在し、成長にも個人差があり、ひとりひとりのペースやタイミングで新しいスキルを獲得していくもので、ひらがなが読めないということだけで過度に心配する必要はありません。
親としては、子どもの成長を温かく見守り、日々の生活の中での学びや経験を大切にすることが、最も大切なサポートとなるでしょう。もちろん、疑問や不安がある場合は、適切な専門家や教育機関との相談を通じて、適切な情報やサポートを得ることも考慮すると良いでしょう。
ひらがなの教えかた

5歳の子どもへのひらがなの教え方のポイントは「とにかく楽しく」です。
子どもは自分の好きなことや楽しいことには集中して取り組むことができます。
なので、ひらがなが読めないのは単に興味がないからかもしれません。
ひらがなの読み書きを遊びのひとつのように取り入れてあげると効果的です。
下記におすすめの取り入れ方や教え方をご紹介します。
ひらがな表を貼る
トイレやお風呂にひらがな表を貼っておきましょう。
湯船につかりながら指さしでひらがなを読んだりするのも楽しそうですね。
よく目に入る場所に貼っておくことで、
ひらがなを覚えたり、興味を持つきっかけになります。
子どもの好きなキャラクターや好きな色だと、より関心を示しやすいかと思います。
絵本の読み聞かせ
聴覚を活用したひらがな学習の方法として、絵本の読み聞かせが効果的です。
子供が興味を持ちやすいキャラクターが出てくる絵本を選ぶと、ひらがなに対する興味も高まります。
特に、ひらがなが大きく表示されているシンプルな絵本がおすすめです。また、長く親しまれているシリーズ絵本や、声を出して楽しく学べるような言葉遊びの絵本も、ひらがなの学習に役立ちます。
さらに、ひらがな学習をサポートするための専用の絵本も多数存在していますので、ぜひチェックしてみてください。
イラストカードを使う
絵や文字のカードを使った、しりとりやかるた、神経衰弱といったゲーム要素の強い学習方法もおすすめです。
子どもが「ひらがな=楽しい」と感じ、文字に興味を持つきっかけにつながります。
ドリルなどの教材を使用
ドリルなど子どもに合った教材を使用するのも効果的です。
ひらがなを学ぶための「知育プリント」もインターネットで無料で提供されているものもあるので、チェックしてみる価値があります。
文字への興味・関心を高める
ひらがなは生活の中で頻繁に見かけるので、日常でのひらがなに興味を持ってもらえるような声かけや遊びを取り入れましょう。
例えば、新聞や広告の中からひらがなを見つける遊び。大きな見出しの文字は特に子供にとって見つけやすいです。子供が選ぶ新聞や広告を使用すると、より興味を持って取り組んでくれるでしょう。他には外出中に標識や看板にひらがなを見つけたら、クイズにしてみたり、子供と一緒にひらがなを探すことで、学習が楽しくなることもありますよ。
ひらがなが読めない子どもにしてはいけないこと

就学を控える子どもをお持ちの保護者の方にとっては、子どもが文字を読めないと、ついつい焦ってしまい無理やり机に向かわせて詰め込みで勉強させようとしてしまったり、怒ったり急かしたりしてしまいがちですが、誤った学習方法を、子どもに押し付けてしまうと、逆に文字への興味が薄れたりなくなってしまったり、勉強に対してのモチベーションが低下してしまう可能性があります。
保護者が子どもに取らないように注意したい行動を3つご紹介します。
周りと比べる
「みんなできているのに、あなただけできていない」「他の子はみんなちゃんとやっている」など、周りと比べるようなことを言ってしまうと、子どもを傷つけ自己肯定感を下げてしまいます。
「(保護者にとって自分は)どうでもいいんだ」と感じて、反抗的になってしまう可能性も。
周りと比べるのではなく、この子自身の成長や頑張りを見つけ出して褒めてあげましょう。
叱る・焦らせる
叱られたり、急かされてばかりでは、やる気もでません。なかなかできないときに「なんでできないの!」と言いたくなる気持ちはよくわかりますが、怒ってばかりでは子どもにとっていい方法とは言えません。できたことを褒めてあげて、子どものやる気を育ててあげましょう。
子どものペースに合わせない
「やればやるほどいい」と思ってしまいがちですが、まずは短時間からスタートしてみましょう。「もっとしたい!」と子どもに思わせることができたら、特別感を出して延長してあげると、学習=楽しいものとなり、苦にならないでしょう。
また、いきなり難しいものをやらせるのではなく、簡単なものからはじめ、子どもの成功体験を積み重ねてあげることも重要です。
読み書き発達の目安

子どもの読み書きの能力はどのように発達していくのでしょうか。年齢を追って見ていきましょう。
2〜3歳ごろ
実際には、ひらがなを書く基礎は0歳の段階から始まっています。ひらがなを書くためには、しっかりとした筆圧や筆使いが必要です。そのため、0歳児はクレヨンなどを使って描く経験を重ねることから始めます。クレヨンで描くと色が出るので、子供たちは喜んで何度も描きます。これにより、握力や手首の動きが徐々に強化されていきます。
0〜2歳の期間中に、子供たちは手を使って形を描く技術を磨きます。この時期、丸を描く動作が見られ、人の顔を模写しようとする子もいます。この過程で大切なのは、「手の細かな動きを制御する能力」です。この能力が不足すると、意図した形に描くことは難しくなります。
3歳になると、お絵かきだけでなく、ハサミやノリを使った工作、折り紙、粘土などの活動が加わります。3歳児向けの活動は基本的で短いステップで構成されることが多いですが、成長に伴い、より精密な動きや調整が必要な作業へとシフトしていきます。
4〜5歳ごろ
4〜5歳頃に、多くの子供がひらがなに興味を持ち、読む能力を身につけ始めます。しかし、この興味や学習の進行速度には、個人ごとの大きな差が存在します。3歳で既にひらがなを読める子もいれば、6歳を過ぎても難しさを感じる子もいます。しかし、読むタイミングの早さや遅さが問題とは言えません。小学校入学前に基本的な読み書きができるようになれば、それで十分です。子供は好奇心が旺盛で、新しいことを学びたいという欲求があります。親や友人が文字を使用する様子を目の当たりにすれば、「自分も読み書きを楽しみたい」という気持ちが芽生え、自然とひらがなに興味を持つようになります。
覚えが悪く、発達障害かもと不安になったら

発達障害の中に「学習障害」というものがあります。
学習障害には、文字の読み書きが苦手な特性があります。どのような症状があるか紹介します。
学習障害とは
学習障害とは、全般的に知的発達に遅れはないが、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった学習に必要な基礎的な能力のうち、一つないし複数の特定の能力についてなかなか習得できなかったり、うまく発揮することができなかったりすることによって、学習上、様々な困難に直面している状態をいいます。
出典:文部科学省HP
学習障害とは前述のとおり、
•文字を読むことが困難(ディスレクシア)
•計算が困難(ディスカルキャリア)
•文字を書くことが困難(ディスグラフィア)
など、様々な形で現れます。
知的障害との違いは、知的障害は全般的な知能の落ち込みがありますが、学習障害はおおよその能力は平均的であるにも関わらず、特定の分野のみに著しい苦手さを示すことが多いです。
原因は明確にはわかっておりませんが、以下の要因が関与していると言われています。
•遺伝的要因…学習障害を持つ人の家族にも、同様の問題を抱えている人が多いと言われています。
•神経発達の問題…脳の特定の領域や神経回路の問題が学習障害を引き起こすと考えられています
•環境要因…早産、低体重での出生、母親が妊娠中に病気にかかった、薬物を使用したなども学習障害をはじめとする発達障害のリスクを高めることがあると言われています。
学習障害の特徴
前述したとおり、学習障害は様々な形で現れます。
特徴別に症状を紹介します。
文字や文章を読むことが苦手
文字の読み書きに特有の困難が生じるものをディスレクシアといい、1896年にイギリスのMorgan先生によって発見されました。この障害は知的能力の低さや勉強不足ではなく、特定の脳機能の発達上の問題に起因しています。2013年の米国精神医学会のDSM-5では、この読字に関する症状を示すタイプの学習障害に「dyslexia(ディスレクシア)」という用語が導入されました。また、書字の障害も伴うため、日本では「発達性読み書き障害」とも称されます。初期の症状については以下にまとめてあります。
ディスレクシアの症状
•幼少期には文字に対する興味や意欲が低く、主動的に学ぼうとしない。
•文字を一つずつ順番に読み上げる(逐次読みの傾向)。
•言葉や文の途中で不自然に区切ってしまう。
•読む際に、文字を指で追って確認する習慣がある。
•文字の間隔や行間が狭いと、読解が難しくなる。
•音読よりも、黙読の方が初めは困難に感じる。
•初回の音読を経て、二度目の読みは流れるようになることが多い。
•文章の終わりなど、内容に応じて自分なりに変更して読んでしまう。
•長い時間本を読んでいると、すぐに疲れを感じる。
書くことが苦手
文字や文章の書きに困難を感じる学習障害のことをディスグラフィアといい、特定の科目には問題がない子どもでも、文字の書き方にだけ苦労している場合、この症状が疑われることがあります。
ディスグラフィアの症状
•言葉や意味を十分に理解していても、文字を正確に書くことが難しい。
•漢字の部首や構造を誤って書くことがある。
•文字のバランスや形が不均衡であることが多い。
•文字の筆順が規則的でない場合がある。
•左右の位置関係が逆転した文字を書くことがある。
•似通った文字を混同して使用することがある。
•文字の書き取り練習の時に形や位置が不規則である。
•接続詞や文法の使用において誤りが多い。
計算することが苦手
学習障害(LD)の中で、計算や図形に関する困難が特に顕著なものを『ディスカリキュア』と呼びます。この障害は、小学校の初級段階ではすぐに気づきにくいものの、学年を進めるにつれて算数の学習でのつまずきが顕著になります。
ディスカリキュアの特徴
•数や記号を理解することが難しい
•繰り上げや繰り下がりなど簡単な計算が出来ない
•数の大小の区別がつきにくい
•文章問題が理解しずらい
•グラフや図形を解読することが困難
5歳では学習障害の特徴は見えにくい
学習障害(LD)は小学校入学以降、学校生活が進む中で見つかることが多いです。未就学の時には、文字の書き取り、読み取りが難しくても、「まだ早いだけ」と考えがちですが、就学後もその状況が続くと、子どもは「他の子どもたちと比べて、なぜ自分だけがこんなにも苦労するのか」と感じてしまい、不安になったり混乱を起こしたりする可能性が高まります。
そして、学習障害を持つ子どもは一般的に勉強の成績が伴わず「努力しても報われない」と感じやすい傾向にあるようです。
そこから悲観的な気持ちや怒りを抱えてしまい、学校に行くことを避けたり、部屋に引きこもってしまうなどの二次障害が生じることもあるので、注意が必要です。
まとめ

最後までご覧いただき、ありがとうございました。
本記事では、ひらがなが読めない子どもたちへの教え方や、学習障害の症状や特徴を深く探るものでした。
5歳という年齢において、すべての子どもが同じペースでひらがなを読めるわけではなく、それぞれの成長段階や環境、体験に基づき、学習のスピードや方法は異なります。
ひらがなを読むことができないという状態に焦りや不安を感じる保護者の方々も多いかと思いますが、重要なのは、子どもの学習のペースやスタイルを尊重し、ストレスなく、かつ楽しく学べる環境を作り上げることです。焦りやプレッシャーは、子どもの学習意欲を低下させる原因となることがあるため、できるだけリラックスした雰囲気での学習を心がけることが大切です。また、就学後もひらがなが読めない原因として、視覚的な認識の問題や、言語処理の遅れなど、様々な要因が考えられます。専門家や教育機関との連携をとりながら、具体的なサポートやアドバイスを求めることも、子どもの学習サポートの一環として考えられます。
最後に、すべての子どもたちが自分のペースで学び、成長していくことを願っています。ひらがなの学習は、お子さまと一緒に楽しむ時間として捉え、温かく見守っていただければと思います。