発達障害と赤ちゃんのハイハイの関係は?特徴的な仕方、促し方、相談先を解説

ハイハイする赤ちゃん

子どものハイハイの仕方や時期が周りの子と少し違うことで、発達に不安を感じてしまう親御さんは少なくありません。

特に「発達障害」という言葉が頭をよぎると、どう向き合えば良いのか、正しい情報を探すのも一苦労かと思います。

この記事では、まず赤ちゃんのハイハイの基本的な知識を解説し、発達障害とハイハイの関係性について詳しく掘り下げていきます。

さらに、家庭でできるハイハイの具体的なサポート方法や、不安な時に頼りになる専門の相談先、利用できる支援についても紹介します。

この記事を読んで、お子さんの今の姿をより深く理解し、親としてできるサポートを見つけましょう。そして、穏やかな気持ちで成長を見守るヒントをつかんでください。

赤ちゃんの「ハイハイ」の基本

ハイハイする男の子

ハイハイの定義と重要性

ハイハイとは、赤ちゃんが腕と脚の力を使って、お腹を床から持ち上げて前進する移動運動を指します。一般的には、手のひらと膝をつく四つん這いの姿勢が知られていますが、その形式は一つではありません。

ハイハイの動きは、赤ちゃんの心身の発達において、非常に重要な役割を担っています。物理的な面では、体幹や手足の筋力を強化し、全身のバランス感覚を養う効果があります。

また、左右の手足を交互に動かす協調運動は、右脳と左脳の連携を促し、脳機能の発達にも良い影響を与えると考えられています。何よりも、ハイハイは赤ちゃんが自らの意志で移動する最初の手段であり、好奇心や探求心を育む大きなきっかけとなるでしょう。

目標の物まで自分でたどり着くという成功体験は、赤ちゃんの自立心や自己肯定感を育む上で大切なステップです。

ハイハイの開始時期と期間

多くの赤ちゃんがハイハイを開始するのは、お座りの姿勢が安定する生後7ヶ月から10ヶ月頃が一般的な目安とされています。ただし、これはあくまで平均的なデータであり、すべての赤ちゃんに当てはまるわけではありません。

赤ちゃんの成長の速度や順序には大きな個人差があり、その子自身のペースで発達していきます。そのため、目安の時期よりも開始が遅いというだけで、過度に心配する必要はありません

ハイハイを行う期間についても同様に個人差が大きく、数ヶ月間にわたって移動を楽しむ子もいれば、比較的短期間でつかまり立ちや伝い歩きへと移行する子もいます。

重要なのは「いつから始めたか」という時期そのものよりも、赤ちゃん自身が移動への意欲を示しているかどうかという点にあると言えるでしょう。

ハイハイの種類

ハイハイには、一般的にイメージされる四つん這い以外にも、赤ちゃんが自ら編み出す多様なスタイルが存在します。

もし子どもの進み方が独特であったとしても、それは発達の過程で見られる自然な個性の一つと捉えることができるでしょう。

代表的なハイハイの種類をいくつか紹介します。

  • ずりばい:お腹を床につけたまま、腕や足の力で進むスタイル
  • 四つばいハイハイ:手のひらと膝を床につけ、リズミカルに手足を交互に出して進む、最も基本的なスタイル
  • 高ばい(クマ歩き):膝を床につけず、手のひらと足の裏で体を支え、お尻を高く持ち上げて進むスタイル
  • シャフリング(いざりばい):お座りの姿勢のまま、手やお尻を使って移動するスタイル

これらの動きは全て、赤ちゃんが目的を達成するために工夫した結果であり、発達の一環です。

ハイハイをしない赤ちゃんもいる

赤ちゃんの中には、ハイハイの段階を経ずに、つかまり立ちや伝い歩きといった次のステップへ進む子もいます。

「ハイハイをしないと体の発達に影響があるのでは」という懸念をもつかもしれませんが、ハイハイを省略することが、必ずしも発達上の問題を示すわけではないことがわかっています。

ハイハイをしない理由としては、うつ伏せ姿勢が苦手、床の感触への敏感さ、あるいは早く立ちたいという意欲の強さなど、さまざまな要因が考えられます。重要なのは、ハイハイという特定の形にこだわるのではなく、赤ちゃんが移動への意欲や周囲の環境への好奇心を示しているかという点です。

もし、移動そのものに全く関心がない、呼びかけへの反応が乏しいなど、他の側面でも気になる様子があれば、専門家への相談を検討すると良いでしょう。そうでなければ、その子の成長の個性として、温かく見守ることが大切です。

発達障害とハイハイの関係

発達障害の赤ちゃん特有のハイハイはない

「このハイハイをすれば発達障害」と断定できる特有の動きは存在しません。

さまざまな情報源から得られる断片的な情報によって、不安が増してしまうこともあるでしょう。しかし、発達障害の診断は、ハイハイのような単一の運動機能だけで行われるものでは決してありません

専門医による診断は、言葉の発達、コミュニケーションのあり方、対人関係、遊び方といった、子どもの行動や発達の全体像を、時間をかけて多角的に評価した上で慎重に行われます。

子どものハイハイが少し独特だったり、始まる時期が平均と違っていても、それだけで発達障害を過度に心配する必要はありません。それよりも、その動きを子どもならではの工夫や個性として受け止めることが大切です。

発達障害との関連を指摘される場合があるハイハイ

ハイハイの時期がずれている

ハイハイを開始する時期が、平均的な月齢よりも著しく遅れる場合、発達の様子を注意深く見るための一つの指標となることがあります。

例えば、1歳を過ぎても、自ら手足を使って前進しようとする意欲が見られないといったケースです。ただし、これはあくまで子どもの発達全体を評価する上での、数ある情報の一つに過ぎません。

多くの場合、それは単にその子の発達ペースがゆっくりであることや、ハイハイ以外の活動への関心が強いことの表れです。大切なのは、月齢という数字に一喜一憂するのではなく、子ども自身に動こうとする意志があるかどうかを観察することです。

特徴的な動きをしている

ハイハイの動きに極端な左右差が見られたり、手足の協調が取れていないように見えたりする場合、専門家が発達を評価する上での参考情報とすることがあります。

具体例としては、常に片側の手足ばかりを使って進む、あるいは右手と右足、左手と左足を同時に出す動き(同側性ハイハイ)が長期間続く、といった場合が挙げられます。

こうした動きは、体の使い方や左右の脳の連携に何らかの課題が潜んでいる可能性を示すこともあるからです。

しかし、ハイハイを始めたばかりの赤ちゃんは、誰でも動きが不器用でぎこちないのが通です。練習を重ねるにつれて、動きは次第に洗練されていきます。

一時的な癖なのか、あるいは持続的な特徴なのかを見極めることが重要です。動画で記録しておくと、専門家に相談する際に客観的な情報として役立ちます。

床の感触を極端に嫌がる

赤ちゃんが床に手やお腹が触れることを極端に嫌がり、その結果としてハイハイを避けることがあります。

この背景には、「感覚過敏」という特性が隠れている可能性があります。感覚過敏とは、特定の感覚刺激(この場合は触覚)を、他者よりも著しく強く、不快に感じてしまう状態を指します。

大人には快適なフローリングやカーペットの質感が、その子にとっては耐えがたい刺激となっているのかもしれません。発達障害、特に自閉スペクトラム症のある子どもの中には、こうした感覚の過敏さや、その逆の鈍感さを併せ持つことが報告されています。

もし特定の素材の上でしかうつ伏せにならないなど、感覚への強いこだわりが見られる場合は、その子の特性として理解し、快適なマットを敷くなどの環境調整を行うことが有効です。

周囲への関心が薄い

ハイハイの根本的な動機は、「あそこに行きたい」「あれに触れたい」という知的な好奇心にあります。もし、赤ちゃんが人や物への関心が薄く、動きたいという意欲もあまり見られないときは、社会性の発達を慎重に見守ることが大切です。

これらは、自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害に見られる社会的コミュニケーションの特性と関連する場合があります。もちろん、生まれつき穏やかで物静かな気質の赤ちゃんもいますし、気分や体調によって反応は変動します。

一時的なものか、一貫した傾向なのかを、焦らずに見守ることが大切です。

「変わったハイハイ」は発達障害のサイン?見極めのポイント

赤ちゃんの足の裏

子どもの「変わったハイハイ」が、直接的に発達障害のサインとなるわけではありません。単に運動機能だけに注目するのではなく、子どもの発達を総合的な視点で見守ることが重要です。

見極めのポイントとして、以下の点を参考に、子どもの様子を観察してみてください。

  • 運動への意欲:「向こうへ行きたい」という前向きな意志や、体を動かそうとする様子が見られるか
  • 他の発達領域との関連:お座りや物をつかむ動作など、ハイハイ以外の運動機能は順調に発達しているか
  • 社会的コミュニケーション:保護者と視線を合わせるか。呼びかけに反応するか。あやすと笑顔を見せるか
  • 感情の表出:嬉しい、楽しい、嫌だといった感情が、表情や声、態度で表現されているか

これらの点で、年齢に応じた発達がおおむね見られるのであれば、ハイハイの仕方が個性的であっても、過度に心配する必要はないと考えられます。

発達は、さまざまな要素が影響し合いながら進む複雑な過程です。ひとつの出来事にとらわれず、子ども全体を温かく見守ることが大切です。

赤ちゃんのハイハイを優しくサポートする方法

ハイハイしている男の子

赤ちゃんのペースを尊重する

赤ちゃんのハイハイを支えるうえで最も大切なのは、赤ちゃん自身のペースを尊重することです。ほかの子と比べて焦りを感じることもあるかもしれませんが、期待をかけ過ぎると赤ちゃんには大きなストレスになります。無理に「練習」をさせてしまうと、ハイハイそのものを嫌いになるおそれもあります。

赤ちゃんには、心と体の準備がそろうタイミングがそれぞれにあります。今は筋力をつけている段階かもしれませんし、周囲を観察して情報を集めている時期かもしれません。保護者の役割は、急かすのではなく、「やってみよう」と赤ちゃんが思った瞬間に、安心して挑戦できる環境を整えることです。

赤ちゃんのタイミングを信じ、温かく見守る姿勢こそが、健やかな発達を促すうえで何より大切です。

安全な環境を作る

赤ちゃんが安心してハイハイに挑戦し、探求心を広げるためには、安全な環境設定が不可欠です。赤ちゃんが自由に、かつ安全に動き回れる空間を提供することが、自発的な行動を促します。

大人の視点ではなく、ハイハイをする赤ちゃんの目線に立って、室内の安全点検を行いましょう。安全が確保された環境は、赤ちゃんにとっての「安心基地」となり、恐れることなく探求活動に乗り出す土台となります。

うつ伏せ遊びをする

ハイハイに必要となる首、背中、腕の筋力を、遊びながら自然に鍛えることができるのが「うつ伏せ遊び(タミータイム)」です。

うつ伏せの姿勢は、赤ちゃんが自力で頭を持ち上げ、視界を広げる練習となり、ハイハイへのスムーズな移行を助けます。

うつ伏せ遊びをするときは、まず保護者が仰向けになり、胸やお腹の上に赤ちゃんをうつ伏せで乗せます。目を合わせられるので、赤ちゃんは安心できます。赤ちゃんの少し前に音の鳴るおもちゃや鏡、カラフルな絵本などを置くと、興味をひかれて自然に顔を上げる動きを促せます。さらに、授乳クッションを胸の下に差し込むと上体への負担が減り、無理なくうつ伏せ姿勢を保てます。

最初はうつ伏せを嫌がる子どももいるため、機嫌の良い時に短い時間から始め、徐々に慣らしていくと良いでしょう。うつ伏せ遊びは「訓練」ではなく、親子の愛着形成を深める大切なふれあいの時間と捉え、楽しむことが重要です。

ハイハイの誘い方を工夫する

赤ちゃんの「やってみたい」という自発的な気持ちを引き出すために、ハイハイへの誘い方に工夫を凝らすことが有効です。重要なのは、それが「練習」ではなく、あくまで「楽しい遊び」の延長線上にあることです。

親子が共に楽しみながら、赤ちゃんの挑戦を自然な形で後押ししましょう。どのような方法であれ、赤ちゃんが楽しんで取り組んでいる様子が見られれば、それが最も良いサポートと言えます。

できたらたくさんほめる

赤ちゃんがほんの少しでも自力で前へ進もうとしたら、そのがんばりを具体的に、そして思いきり褒めてあげましょう。「すごいね!」「がんばったね!」という肯定的な言葉と笑顔は、赤ちゃんにとって最高のごほうびです。

ずりばいで少し前へ進む、お尻を持ち上げる、その一つひとつの挑戦は、赤ちゃんには大きな進歩です。結果だけでなく、「挑戦しようとした気持ち」そのものを認め、言葉にして伝えることが大切です。努力の過程を評価される経験は自己肯定感を育み、次のステップへの意欲を引き出します。

こうして褒められる喜びを通じて、ハイハイは「楽しい成功体験」として記憶され、さらなる発達段階への健全なモチベーションになります。

ハイハイのことで心配になったときの相談先

男女の先生 

かかりつけの小児科医

赤ちゃんのハイハイや発達が気になるときは、まず「かかりつけの小児科医」に相談しましょう。生まれたときから成長や健康状態を見守ってくれている、もっとも身近な専門家です。

予防接種や定期健診のときに、「ハイハイの様子が少し気になります」と伝えてみてください。医師は診察で体の発達に問題がないか確認し、大丈夫なら安心できる説明をしてくれます。もし詳しい評価や支援が必要と判断された場合は、適切な専門機関を紹介してもらえます。

一人で悩まず、専門家の客観的な意見を聞くことで、不安を軽くできることが多いものです。

地域の保健センター・子育て支援センター

住んでいる地域にある「保健センター」や「子育て支援センター」は、子育てをサポートしてくれる心強い公的機関です。保健師・助産師・栄養士・心理士などの専門スタッフが常駐しており、発達に関する相談を無料で受け付けています。定期健診のときだけでなく、電話や訪問などでも気軽に個別相談ができます。

専門家は豊富な知識と経験をもとに、保護者の悩みに寄り添い、具体的なアドバイスや情報を提供してくれます。また、同じ悩みを抱える保護者同士が交流できる場があるのも大きなメリットです。経験を共有することで孤独感がやわらぎ、有益な情報も得られるでしょう。

一人で抱え込まず、こうした地域の支援資源を積極的に活用することをおすすめします。

児童相談所

児童相談所というと虐待対応を思い浮かべがちですが、実は0〜18歳の子どもに関するあらゆる悩みを受け付ける専門機関です。発達の遅れや言葉の発達、行動面の心配など、子育ての幅広い相談に対応しています。

所内には児童福祉司や児童心理司が常駐し、必要に応じて発達検査を行い、療育などの支援につなげることも可能です。相談は無料で秘密も守られるので、「どこに相談したらいいかわからない」ときの総合窓口として覚えておくと安心です。

まとめ

ハイハイ途中の赤ちゃん

本記事では、赤ちゃんのハイハイに関する基本的な知識から、発達障害との関連性、ご家庭でのサポート方法、そして専門的な相談先までを解説しました。

ハイハイのスタイルや時期には大きな個人差があり、その特徴が直接的に発達障害を示すものではありません。一つの運動機能に固執するのではなく、子どもの発達を総合的に見守る視点が大切です。

そして、日々の関わりの中では、遊びを通じて子どもの「やってみたい」という意欲を楽しく引き出してあげてください。もし、どうしても不安が解消されない場合は、決して一人で抱え込まず、本記事で紹介したような専門家や機関に相談してみましょう。

子ども一人ひとりのユニークな成長の道のりを、保護者が確かな知識と穏やかな気持ちで見守れるよう、心から願っています。

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この記事を書いた人

ウィズ・ユー編集部

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