発達障害の子どもはなぜ疲れやすい?原因と対策をくわしく解説

熱がある女の子

発達障害のある子どもは、感覚の過敏さや多動性、環境への適応努力などにより、日常生活で疲れを感じやすいものです。

「子どもの疲れが日常的に続いている…」

「どうすれば疲れを軽減できるのだろう…」

このようなお悩みを抱えている保護者の方は多いのではないでしょうか。?

この記事では、発達障害のお子さんの疲れやすさでお困りの方へ向けて、その要因と具体的な対処法を解説します。また、専門家への相談のタイミングについても紹介しますので、子どもの健やかな生活のために、ぜひ最後までお読みください。

発達障害の特性が疲れやすさの原因になっている

寝転んでいる男の子

発達障害のある方は、日常生活の中で特有の疲れやすさを感じることが多くあります。これは、脳の働き方が独特であることから生じる特性によるものです。

通常の生活では当たり前に処理できることでも、発達障害のある方は余分なエネルギーを使って対応する必要があるため、疲労が蓄積しやすい傾向にあります。

特に感覚過敏や不器用さ、また周囲との関係を築く際の困難さなど、さまざまな要因が重なることで疲労が増大していきます。このような特性による疲れやすさを理解し、適切な対策を講じることが重要です。

このような疲れやすさは、発達障害の種類によっても特徴が異なります。たとえば、ADHDのある子どもは、多動性や衝動性による身体的な疲れが目立つ傾向にあります。一方、自閉スペクトラム症の子どもは、感覚過敏や社会的な場面での疲れを感じやすいことがあります。

また、知的な能力が高い場合、周囲の期待に応えようとして過度に頑張ってしまい、精神的な疲労が蓄積しやすくなります。このように、発達障害による疲れやすさは、個々の特性や環境によってさまざまな形で現れることを理解しておくことが必要です。

発達障害の子どもが疲れやすい要因

疲れている男の子

環境に合わせようと無理をしてしまう

発達障害のある子どもは、周囲の期待に応えようとして必要以上に頑張ってしまう傾向があります。学校や家庭での決まりごとに従おうとして、自分の特性を無視して無理をすることも少なくありません。

学校生活では特に、集団行動や決められたルールに従うことが求められるため、より多くのエネルギーを消費します。例えば、朝礼で整列する、給食時に決められた時間内で食べる、休み時間の遊び方を調整するなど、さまざまな場面で周囲に合わせる必要があります。

また、学習面でも、教室での一斉指導についていこうとしたり、グループ活動で他の子どもと歩調を合わせようとしたりと、常に周囲のペースを意識する必要があります。このような継続的な適応努力は、大きな精神的負担となるでしょう

このような過度な適応努力は、子どもの心身に大きな負担をかけ、著しい疲労につながってしまいます。

周囲の子どもより動きが多い

多動性のある子どもは、じっとしていることが難しく、常に体を動かしている状態が続きます。教室で授業を受ける際も、椅子で揺れたり、手足をバタバタさせたりと、絶え間ない動きが見られます。

このような継続的な身体活動は、通常以上のエネルギーを消費することになり、早い段階で疲労感を感じることにつながります。

また、この多動性による動きの多さは、精神的な疲労も引き起こしやすく、集中力の低下や情緒の不安定さにもつながることがあります。

多動性による過度な身体活動は、単に体力を消耗するだけでなく、心理的な疲労も引き起こします。常に動いていることで、周囲から注意を受けたり、叱られたりする機会が増え、それによるストレスも蓄積されていきます。

また、授業中の多動性は学習効率にも影響を与えます。椅子に座っているだけでも絶えず体が動いてしまうため、黒板の文字を写すことや教科書を読むことにも余分なエネルギーが必要になります。休み時間も活発に動き回ることが多く、次の授業までに十分な休憩が取れないことも珍しくありません。

音や刺激に過敏でストレスがかかる

感覚過敏のある子どもは、周囲の音や光、触覚などの刺激に対して強い反応を示すのが特徴です。感覚過敏は、視覚、聴覚、触覚、嗅覚など、複数の感覚に及ぶことがあります。教室の蛍光灯のちらつき、エアコンの音、椅子が床をこする音、給食の匂い、体操服の素材感など、日常的な刺激であっても強い不快感を感じることがあります。

このような過敏さにより、常に周囲の刺激に対して警戒心を持った状態となり、神経を使い続けることになりやすいです。その結果、通常以上に脳が疲労してしまい、集中力が続かなくなったり、イライラが募ったりすることがあります。

日常的な刺激への対応だけでも相当なエネルギーを消費してしまうため、学習や活動に使えるエネルギーが減少してしまいます。

これらの刺激は一日中続くため、常に神経を使っての対応が必要です。特に学校行事や校外学習など、普段と異なる環境では、予期せぬ刺激に遭遇する可能性が高く、より大きな負担となります。また、複数の刺激が同時に存在する場合は、その対処にさらに多くのエネルギーを必要とします。

睡眠の質に問題がある

発達障害のある子どもは、睡眠の質が十分でないことが多く見られます。寝つきが悪かったり、夜中に何度も目が覚めたりと、安定した睡眠が取れないことがあります。

質の良い睡眠が取れないことで、朝から疲れを感じたり、日中の活動に支障が出たりすることがあります。また、睡眠不足は集中力の低下や情緒の不安定さにもつながります。

体内時計のリズムが乱れやすい傾向もあり、就寝時間が不規則になりがちなことも、慢性的な疲労の原因となっています。

睡眠の問題は、単に寝つきが悪いだけでなく、睡眠の質自体にも影響を与えています。深い眠りに入りにくい、夜中に何度も目が覚める、早朝に目が覚めてしまうなど、あらゆる形で現れます。

また、一日の活動による興奮や緊張が夜まで持続してしまい、なかなかリラックスできないことも多くあります。感覚過敏がある場合は、寝具の触感や室温、環境音などにも敏感に反応してしまい、安定した睡眠を妨げる要因となります。良質な睡眠が取れないことで、翌日も疲れが残り、悪循環に陥りやすい状況です。

集中しすぎる

発達障害のある子どもの中には、興味のある活動に対して強い没入傾向を示す場合があります。一つのことに集中しすぎて、休憩を取ることを忘れてしまったり、周囲の状況に気付かなくなったりすることがあります。

このような過度な集中は、知らず知らずのうちに脳や身体に大きな負担をかけることになります。適度な休憩を取ることができず、結果として強い疲労感を感じることになります。

また、興味のある活動とそうでない活動の切り替えが難しく、その都度大きなエネルギーを使ってしまうことも疲労の要因となっています。

体を上手に動かすのが難しい

不器用さのある子どもは、日常的な動作や運動に必要以上のエネルギーを使ってしまいます。特に、微細運動を必要とする活動(鉛筆を使う、はさみを使う、ボタンを留めるなど)では、過度な力が入ってしまい、手や指が疲れやすくなります。

このような動作の困難さは、通常以上の集中力と身体的な努力が必要です。そのため、短時間の活動でも著しい疲労を感じることが多くなります。また、姿勢を保つことも難しく、座っているだけでも余分な力が入ってしまい、疲れやすい原因となっています。

これらの不器用さは運動面だけでなく、学習効率にも影響を与え、結果として精神的な疲労も引き起こすようになるでしょう。

発達障害の子どもが疲れないための対処法6選

抱っこしてもらっている男の子

周囲に合わせる必要がない環境をつくる

発達障害のある子どもが安心して過ごせるよう、無理に周囲に合わせなくても良い環境を整えることが重要です。たとえば、自宅では好きな姿勢で学習できる場所を用意したり、学校では別室で課題に取り組める時間を設けたりすることが効果的です。

また、苦手な活動については、代替となる方法を提案することで、ストレスを軽減することができます。無理に集団行動に参加させるのではなく、個別の活動を認めることも大切です。

このように、子どもの特性を理解し、柔軟な対応ができる環境づくりを心がけることで、疲労の蓄積を防ぐことができます。

具体的な環境づくりの例として、以下のような工夫が効果的です

・自宅学習スペースに仕切りを設置し、視覚的な刺激を制限する

・教室では窓際や後ろの席など、状況に応じて座席を選択できるようにする

・行事や活動への参加は、無理のない範囲で調整する

・オンライン学習や個別指導など、alternative(代替)の学習方法を取り入れる

リラックスできる方法を身につける

子ども自身がストレスや疲れを感じたときに、自分でリラックスできる方法を持っていることが大切です。深呼吸やストレッチ、好きな音楽を聴くことなど、簡単にできるリラックス法を見つけることをおすすめします。

また、疲れを感じたときに休める場所を事前に決めておくことも効果的です。保健室や図書館など、静かに過ごせる場所を確保しておくことで、安心感につながります。

このようなリラックス方法を日頃から練習しておくことで、疲れを感じたときに自分で対処できるようになります。

年齢や好みに応じた具体的なリラックス方法の例は次のとおりです。

・呼吸法:風船を膨らませるイメージで深呼吸をする

・筋弛緩法:手や足の力を入れて抜くことを繰り返す

・趣味の活動:折り紙、お絵かき、ブロック遊びなど

・自然との触れ合い:散歩や園芸活動

音や刺激をやわらげるグッズを使う

感覚過敏による疲労を軽減するために、音や光などの刺激を和らげるグッズを活用することが効果的です。たとえば、ノイズキャンセリングヘッドホンやイヤーマフを使用することで、不快な音を軽減することができます。

また、まぶしさを感じる場合はサングラスやキャップを活用したり、教室の蛍光灯のちらつきが気になる場合は座席の位置を工夫したりすることも有効です。

触覚の過敏さがある場合は、着心地の良い服を選んだり、タグを切除したりするなど、身体的な不快感を減らす工夫も大切です。

年齢や場面に応じたグッズの選び方

・学校での使用:透明な遮光フィルム、やわらかい素材のイヤーマフ

・自宅での工夫:間接照明、遮光カーテン、防音マット

・持ち運びやすいグッズ:折りたたみ式のサンバイザー、小型の扇風機

効果的にアラームを使う

時間の管理が苦手な子どもには、アラームを活用することで、活動の切り替えや休憩のタイミングを知らせることができます。スマートフォンやタイマーを使って、定期的に休憩を促すことが効果的です。

特に、没入傾向のある子どもは、アラームによって活動を区切ることで、適度な休憩を取ることができます。ただし、アラーム音は刺激が強すぎないものを選ぶことが重要です。

また、アラームと併せて視覚的なスケジュール表を活用することで、見通しを持って活動することができ、心理的な負担も軽減されます。

定期的に休憩する

集中力の維持や疲労の予防のために、計画的に休憩を取ることが大切です。一般的に、20-30分の活動ごとに5-10分程度の休憩を入れることが推奨されます。

休憩時間には、体を動かしたり、水分を補給したり、軽いストレッチをしたりするなど、リフレッシュできる活動を取り入れることが効果的です。

ただし、休憩の取り方は個人差が大きいため、子どもの状態や好みに合わせて、適切な休憩時間と方法を見つけることが重要です。

日常の生活リズムを整える

規則正しい生活リズムを保つことは、疲労の予防と回復に大きな効果があります。睡眠時間を十分に確保し、決まった時間に起床・就寝することで、体内時計が整い、疲れにくい体づくりができます。

また、食事の時間も規則的にし、栄養バランスの良い食事を心がけることで、体力の維持につながります。間食についても時間を決めて適度に摂ることが大切です。

運動についても、無理のない範囲で定期的に行うことで、体力づくりと共に、睡眠の質の向上も期待できます。

疲れがなかなか取れないときは、専門家に相談する

先生と話すお母さん

上記の対処法を試しても疲れが改善されない場合や、日常生活に支障をきたすほどの強い疲労感が続く場合は、専門家に相談することが重要です。発達障害の専門医や心理士、作業療法士などの専門家は、子どもの個別の状況を詳しく評価し、適切な対応策を提案することができます。

専門家への相談では、子どもの日常生活の様子や疲れの具体的な症状、これまでに試した対処法とその効果などを詳しく伝えることが大切です。また、睡眠の質や食事の内容、学校や家庭での様子など、生活全般に関する情報も重要なポイントです。これらの情報をもとに、専門家は子どもの特性に合わせた個別の支援計画を立てることができます。

場合によっては、薬物療法や認知行動療法などの専門的な治療が必要となることもあります。特に、疲れやすさの背景に睡眠障害や不安障害などの二次的な問題がある場合は、それらに対する適切な治療が効果的です。

また、専門家は学校や職場との連携を図り、環境調整や合理的配慮の提案を行うこともできます。これにより、子どもの特性に合わせた学習環境や就労環境を整えることができ、疲労の軽減につながります。

相談先の選び方としては以下を参考にしてみてください。

・かかりつけ医:基本的な体調管理や生活習慣の相談

・発達支援センター:発達特性に応じた具体的な支援方法の相談

・臨床心理士:心理面のケアや対処法の相談

・作業療法士:感覚統合や運動面での支援の相談

相談するときは、次のような内容を記録して持参することをおすすめします。

・疲れを感じる時間帯や状況

・休憩を取った際の回復具合

・睡眠時間と質

・食事の内容と量

・体調の変化

・学校や家庭での様子

まとめ

笑っている親子

発達障害のある子どもの疲れやすさは、その特性から生じる自然な反応です。感覚過敏による刺激への反応、多動性による過度な身体活動、環境への適応努力など、さまざまな要因が重なって疲労が蓄積されやすい状態にあります。

このような疲れやすさに対しては、以下のような対策が効果的です。

  • 無理に周囲に合わせる必要のない、安心できる環境づくり
  • リラックス方法の習得と実践
  • 感覚過敏に配慮したグッズの活用
  • アラームを使った適切な時間管理
  • 計画的な休憩の実施
  • 規則正しい生活リズムの確立

これらの対策は、一度にすべてを実践する必要はありません。子どもの状態や生活環境に合わせて、できることから少しずつ取り入れていくことが大切です。

また、疲れが継続的に見られる場合は、専門家への相談も検討してください。医療機関や発達支援センターなどの専門家に相談することで、より適切な対応方法を見つけることができます。

子どもの特性を理解し、適切なサポートを行うことで、より快適な生活を送ることができるようになるでしょう。

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この記事を書いた人

ウィズ・ユー編集部

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