自閉症の子どもがパニックを起こした時の対処方法

悲しんでいる子供達

自閉症の子どものお悩みとしてよくあげられる「パニック」。自閉症の子どもがパニックを起こす瞬間は、多くの親や関係者にとって深い心配や不安を感じる瞬間です。パニックが起こる背景には、子どもが自分の感情や反応を上手くコントロールできなくなるような要因が影響していることが多いです。

この記事では、自閉症の子どもがパニックを起こした時の具体的な対処方法に焦点を当てています。親や関係者がどのようにして子どもの安全と安心を守り、パニックの状態を和らげることができるのか、具体的な手段やアプローチを紹介していきます。子どもの感受性や状態を理解し、適切なサポートを提供することで、日常の生活の中でのパニックのリスクを低減する助けとなること、また自閉症の子どもとその家族が共に安心して生活できるよう、この記事を通じて必要な情報を参考にしてけると幸いです。是非最後までご覧ください。

自閉症の子どもはパニックを起こしやすい

悩んでいるお母さん

自閉症スペクトラム障害(ASD)は、人の社会的な相互作用やコミュニケーション、興味や行動に特有の特徴を持つ発達障害の一つです。この障害を持つ子どもたちは、パニック状態に陥ることが多いと言われています。では、なぜ自閉症の子どもたちはパニックを起こしやすいのでしょうか。その背景やメカニズム、そして自閉症とパニックの関係について深く探っていきます。自閉症とパニックの関係性を理解することで、サポートやケアの方法についてもより具体的に考えることができるでしょう。。

自閉症スペクトラム障害(ASD)について

自閉症スペクトラム障害は「広汎性発達障害」とも言われ、自閉症、アスペルガー症候群、および特定不能の広汎性発達障害などが含まれ、それぞれ独自の特徴を持っていますが、それぞれの境界が曖昧であるため、「自閉症スペクトラム障害」という総称でまとめられていることが一般的です。

自閉症には大きく2つの特性があり、

・人とのコミュニケーションに異常があること

・強いこだわりがあること

が特徴です。

20世紀初頭にアメリカの小児精神科医レオ•カナーが、自閉症を神経発達に関連する疾患として研究し、自閉症が認知されるようになりました。

パニックとは?

次に、パニックとは、感情や行動の制御が難しく、混乱した状態を指します。このパニックの状態では、不安や怒りなどの感情が制御できず、癇癪や泣き出し、自傷や物を壊すような行動が生じることがよくあります。また、過度な興奮や混乱により、一時的に思考や感情が停止してしまい、パニック状態として外見からは判断しにくい場合もあります。

パニックが生じる主な原因の一例

•新しい環境や予期せぬ変更に対する不確かさ

•感覚の過敏さからくる過度な不快感や苦痛

•自身のルールやこだわりが守れない状況

•疲労や不調による心身の不安定さ

•過去のストレスが再び思い出されるフラッシュバックの経験

パニックが引き起こされる要因は多岐にわたりますが、ストレスの積み重ねにより情報の処理や行動の調整が難しくなり、その結果としてさらなる不安やストレスが生じるという悪循環が生まれることが一般的です。

パニックを生む自閉症の特性

前述したとおり、自閉症には大きく2つの特性があります。

1つ目は人とのコミュニケーションに異常があることです。

自閉症スペクトラムの子どもは、人に対する関心が弱く、相手の気持ちや状況を理解すること、曖昧なことを察するのが苦手で、事実や理屈に基づいた行動をとる傾向にあり、臨機応変に対応することが対人関係において難しく人間関係にトラブルを抱えがちです。

そして、2つ目は強いこだわりがあることです。

「強いこだわり」が、感覚過敏や(触れるものに非常に敏感に反応すること)、聴覚過敏(生活の音などいろいろな音に過敏になること)など様々な症状を引き起こすことがあり、不快感からパニックに至ることがあります。

また、こだわっている自分のルーティーンを壊されたり、熱中していることを妨げられると、パニックを起こしてしまうことがあります。

パニックになるとどうなる?

下記はパニック時に起こり得る行動の一例です。

•大声での叫び声や繰り返しの言葉

•暴力的な発言

•突然の暴れや走り出し

•物を投げたり、蹴り飛ばすなどの破壊行為

•自傷行為

•身体や言葉のフリーズ、反応の停止

•過呼吸、過呼吸による呼吸困難

•心拍数の上昇

また、パニックをたびたび起こしていると、不安定になり、よりパニックを起こしやすくなるので、できるだけパニックを起こさずに済ませるよう、どんな状況や場面で不快や不安、緊張を感じるかが予測し、パニックを起こすような事態にならないよう回避することが大切です。

パニックを起こした時の対処方法

ティッシュで遊ぶお母さん

子供が突然の状況によってパニックを起こしてしまうことは、とても心配な瞬間ですよね。

彼らがパニック状態になる理由は様々で、対処するためには冷静な判断が求められます。

ここからは、実際に子どもがパニックを起こしてしまった際の対処方法を解説します。

子供の感情や心の状態に理解を示し、適切なサポートを提供することで、安心感を取り戻し、パニック状態を乗り越える手助けができます。パニック状態の子どもには以下のポイントに留意して対応してみましょう。

安全を確保

まず、周囲の安全確保が最優先です。危険な物は取り除き、他の人々を安全な場所へ案内します。特に、突然の行動や刺激によっては、周囲の人々も驚くことがあるため、冷静に対応し、騒がずに落ち着かせることが重要です。

明るい照明、大きな音、鮮やかな色などが刺激となることがあるため、刺激となるものは遠ざけるようにしましょう。また、温かい飲み物や柔らかい音楽など、落ち着きを取り戻すための手段も考慮に入れましょう。

危険なアイテムや鋭利なもの、転倒する可能性のある物を確認し、それらを本人の届かない場所に移動させます。特に、ガラス製品や電気製品、鋭利な刃物などは、特別な注意が必要です。

自傷の可能性がある場合、クッション、衣服などを使って本人を保護します。さらに、深呼吸やリラックスを促す方法、好きな物や安心できるアイテムを手元に置くことで、落ち着きを取り戻すサポートが必要です。

このような状況では、冷静かつ迅速な判断が求められます。周囲の人々と連携し、安全な環境を作り出すことが最も大切です。

おさまるまで待つ

子どもがパニックになってしまったとき、どうにかして止めなければ!と無理に制止をしようとするケースがありますが、パニック発作は多くの場合は数分から数十分で治るので、本人が落ち着くのを待つようにしましょう。

パニック状態にある子どもは自らの感情や行動をコントロールするのが難しいです。焦らず、刺激を避けて落ち着くまで待つことが最も効果的です。

以下は避けるべき行動の例です。

•大声で非難する

•強制的に抑える

•無理になだめる

•原因を何度も尋ねる

パニックの背景には様々な要因が考えられ、その原因を理解することは重要ですが、子どもが自分のペースで情報を共有できるように配慮することが大切です。

サポートや理解を示すことで、お子さまの安心感が増すことも期待できます。

話を聞く

落ち着いた後、落ち着いたことを褒めてから、パニックの背景が不明な場合、原因を共有できるように、話を聞いてみましょう。落ち着いて見えても、内心は興奮していることも。だからこそ、急がずに本人が完全に冷静になるのを待つことが大切です。パニックの発作は予期せぬ要因により引き起こされることが多いので、具体的なトリガーを見つけるのは難しい場合もあります。家族や関係者とのコミュニケーションを深めることで、繰り返しの発作を未然に防ぐ手助けにもなります。また、専門家のアドバイスやサポートも有益です。安心感を持たせる環境を作り、お子さまの心の健康を支える取り組みが求められます。

パニックを防ぐためにできる工夫

ものづくりをしている子供

パニックは、私たちの体が非常に強烈な緊急時の反応として示す現象の一つです。この反応は、危機的な状況や強いストレスに直面した際に、体が自らを防御しようとする自然なメカニズムの一部として起こります。具体的には、呼吸困難、心拍数の上昇、そして現実感の喪失など、身体や感覚に関するさまざまな強烈な症状を伴うことが多いです。しかし、このような反応が出る背景には、私たちの体や脳が持つ自己防衛の仕組みが関与しています。そして、このような緊急時の反応を適切に理解し、予防や対処の方法を知ることで、パニックの発生を大きく減少させることができるのです。本記事では、パニックの背景やその予防策について、詳しく解説していきます。

気持ちの落ちつき方を教える

心が落ち着いていない時は、呼吸が乱れていたり、情緒が不安定になっていたりする可能性も高いです。

不安になった時の気持ちの落ち着け方をあらかじめ準備しておくと良いでしょう。

おすすめしたい心を落ち着かせる方法

深呼吸・・・深く呼吸をすることで、副交感神経が活性化されてリラックスできます。最初に4秒鼻から息を吸ってから7秒息を止め、最後に8秒数えながら息を吐き出す「4・7・8呼吸法」がおすすめです。

まったく関係ないことを考える・・・心が落ち着かない時は、ずっとそのことばかりを考えてしまいがち。思考が一辺倒になってしまい、どんどん不安が募ってしまうため、全く関係ないことを考えて気を紛らわすのもおすすめ。

何か食べたり、飲み物を飲む・・・何かを食べたり飲んだりして気を紛らわせることも気持ちを落ち着ける方法です。

興味のあるもので注意を引く・・・お気に入りのおもちゃで遊ばせる、好きなビデオを見せる、好きな歌を聴くなどさせてみましょう。

予測をする

自閉症の子供がパニックを感じる理由を知ることは大切です。環境の変化や大きな音、わかりにくい言葉などが原因となることが多いです。

「かんしゃく」と「パニック」は違います。かんしゃくは子供が怒って反応することで、何かを求めています。しかし、パニックは子供がとても怖くなってしまい、自分の気持ちを止められない状態です。

保護者は子供のパニックの原因を見つけて、記録することで、次に同じことが起きたときに、早く対処できるようになります。事前準備

子供が日常のルーティンに慣れていると、次に何が起こるのかを予想しやすくなり、安心できます。

一週間や一日のスケジュールをイラスト付きで示すことで、子供は直感的にスケジュールの流れを掴むことができます。

予定の変更がある場合は、できるだけ早く子供に伝え、何度も繰り返し確認しましょう。変更の内容はシンプルに、そして明確に伝えることが大切です。

新しい場所への訪問は、騒音や混雑が少ない時間を選んで計画するのがおすすめです。

自閉症の相談はどこにしたらよい?

相談をしている

自閉スペクトラム症(ASD)は、前述したとおり、人との関わりや特定の興味・こだわりが強く、日常の中でさまざまな課題が生じることが多く、ASDの子供が直面する問題を軽減するためには、その子の個性やニーズを理解し、適切なサポートを提供することが大切です。
そんなサポートを受けるためにはどこに相談したらよいのでしょうか?

相談先

自閉スペクトラム症の子どもの支援は、医療機関だけではなく、地域の子育て支援機関や療育機関などでも行われているようです。

下記は相談先の一例です。

・専門の小児科医や精神科医

・教育心理士やカウンセラー

・地域の自閉症支援団体やNPO

・特別支援学校や通所支援施設

・社会福祉士やソーシャルワーカー

・育児相談センター

・オンラインの自閉症関連フォーラムやコミュニティ

・パーソナルサポートワーカーやホームヘルパー

・病院やクリニックのカウンセリングサービス

必要に応じて支援を提供してもらえるほか、専門の医療機関につなげてくれるので、子どものことで相談したい場合は問い合わせてみるといいでしょう。

相談の流れやタイミング

続いて、自閉症の検査や相談から診断されるまでの一連の流れについてお伝えいたします。

①相談

保護者が自閉症の症状や懸念を持った場合、地域の医療機関や専門家、学校のカウンセラーなどに相談することが始まりです。

②診察

専門家や精神科医、小児科医などが子供の行動や発達に関する評価を行います。これには、面接、観察、質問紙やテストなどが含まれることが多いです。

必要に応じて、心理学的な評価や診断テストが行われる場合があります。これにより、自閉症スペクトラムやその他の発達障害の可能性を詳しく評価します。

③診断

評価や検査結果を基に、医師や専門家が自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断を行います。この診断は、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)やICD-10(国際疾患分類)などの基準に基づいています。

④フィードバックとサポート

自閉症の診断が確定した場合、家族や関係者に対してその結果と次のステップ、そして必要なサポートや介入方法についての情報提供や指導が行われます。

⑤継続的なフォローアップ

診断後も、子供の発達や状態の変化に応じて、定期的なフォローアップや再評価が必要となることが多いです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?本日は自閉症とパニックの関係について、自閉症の特性として、環境の変化や予期せぬ出来事に対する過度な反応があり、これが急激な不安や恐怖を引き起こし、パニック状態に至ることがあることを解説しました。

パニック発生時に最も重要なのは、子供の安全を確保することで、静かな場所に移動させたり、過度な刺激や騒音を避け外部の刺激を遮断するなど、子供が安心できる環境を整えることが重要で、無理にパニックを揺さぶったり、押さえつけたりせず、治まるのを待ってあげることが重要でした。

また、家族の理解と知識の向上も不可欠です。自閉症の子供がパニックに陥る原因やトリガーを理解し、それに対する適切な対処法を身につけることで、再発のリスクを低減することが期待できます。

自閉症の子供がパニックになった時の対処は、状況を冷静に判断し、子供の安全と安心を最優先に考えることが鍵となります。継続的なサポートと理解の下、子供の成長と安定した日常生活をサポートすることを心がけましょう。

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ウィズ・ユー編集部

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