子供の発達障害は診断を受けるべきか?診断を受けるメリットや流れをご紹介

女の子が診断受けている写真

近年、発達障害の認知度が高まったことで、子供が友達に上手く馴染めない、何度注意しても問題行動が改善されないなどの問題があったときに、発達障害の診断を受けるか悩まれる保護者の方が増えてきています。

本記事では、発達障害の診断を検討している保護者の方々に向けて、診断のメリットとデメリットについて解説します。記事の後半では診断の流れや発達障害の診断が出た後、どうしたらよいか等もご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。

子供が発達障害の診断を受けるメリットとデメリット

医者に診察してもらっている写真

発達障害やその傾向のある子供には、それぞれに合った支援が必要です。その特性に応じた支援を受けられることは、子供自身にとってとても重要です。

診断に抵抗感を持つ方や、疑問を抱く方もいますが、どのようなメリットとデメリットがあるかを知ることが重要です。それぞれの家庭や状況に応じて、適切な判断をしてください。

診断を受ける際のメリット

まずは診断を受けるメリットを3つに絞ってご紹介します。

必要な支援を受けられる

診断を受けることで、給付金を受けながら、障害児向けの福祉サービスを利用できます。福祉サービスには療育を行う通所支援や放課後デイサービス等が含まれます。

また、学校は障害のある子供にも、平等な教育を提供するために、個々の特性や発達に合わせて環境調整やサポートを提供することが義務付けられています。そのため、合理的配慮の依頼が可能になります。

他にも、障害者手帳や障害年金、自立医療支援制度の利用も可能になります。

発達障害の特性による「苦手」を知ることができる

障害特性による「苦手」の例として、ADHDでは忘れ物が多い、落ち着いていられない、ルールを守れないなどがあります。また、ASDではコミュニケーションが苦手、融通が効かない、特定の刺激が苦手などが挙げられます。

診断の結果は、子供の「苦手」の原因や対策についての手がかりとなります。

障害特性によるものであれば、子供自身の努力だけでは克服できないこともあります。個々の特性を考慮し、「できる」ようにするための工夫が重要です。

また、発達障害の子供にとっては、「伝え方」に注意することも重要です。適切な接し方によって、できることを増やしたり、問題行動を減らしたりすることが可能です。感情的に叱るなどの教育方法は、発達障害の子供には適していない場合があります。

育児に役立てることができる

障害特性による苦手さが誤解され、「努力が足りない」「保護者のしつけが悪い」といった理由で子供が自信を失ったり、保護者が疲弊してしまうことがあります。発達障害は生まれつきの脳機能の障害であり、「なぜできないのか」が障害によるものだと理解することで、自己責任感を和らげることができます

また、苦手の原因を知り、適切な対策ができることで、問題解決の道筋が見え、前向きな気持ちになれることもあります。

不安や心配事がある場合は、専門機関である発達障害者支援センターや児童発達支援センターに相談できることも安心材料です。障害児通所支援などのサービスを利用する際には、施設のスタッフや他の保護者と情報交換することもできるので、同じ悩みを持つ人々との交流は大きな支えになります。

診断を受ける際のデメリット

次にデメリットをご紹介します。

子供が小さいうちは確定診断をするのは難しい

発達障害の診断は、子供の状況や行動観察に基づいて行われますが、年齢が低い場合、障害の特性と、年齢や個人の性格との区別が難しいことがあります。例えば、ADHDの多動性やASDのコミュニケーションの障害は、お子さまの性格や年齢によるものとも見誤りやすいです。そのため、経過観察が必要であり、誤診されてしまう可能性もあります。

障害があることを受容しなければならない

自分の子どもに障害があることを認めることには、抵抗感を持つ保護者の方も少なくないかと思います。

障害を明らかにすることで、周囲からの差別や誤解を心配する人もいますが、周囲に理解を広めることは保護者の役割でもあります。保護者が子供の障害に向き合いながら理解を深めることは、子供の人生にとって不可欠です。

将来的に自立した生活を送るためには、適切なタイミングで子供に障害について話し、子供自身が自分の障害を理解することも非常に大切です。

過保護になりすぎてしまうことも

診断を受けた場合、障害があるからと子供の行動を制限したり、過保護になるすぎてしまうことがあります。しかし、子供自身が工夫すればできることもあるので、過保護になることで子供の将来の自立を阻害してしまう可能性もあります。

早い段階で発達障害が分かることで、子供の発達障害の特性による苦手を克服し、サポートをすることができます。特性による苦手で自己肯定感が下がる子供もいますが、適切な支援を受けることで、二次的な問題を防ぎながら発達を促します。

子供の発達障害の初診から診断までの流れ

親子が悩んでいる写真

では、実際に発達障害の検査・診断を受けたいと考えた際、どのような手続きをしたらよいか、発達障害の受診から診断の流れについて説明します。

診断の内容は、問診・行動観察と検査に分かれます。行動観察や保護者との面談、心理検査、発達検査、知能検査、併発障害や疾患の検査などが含まれます。検査内容は症状や障害の種類によって異なりますので、医療機関にお問い合わせください。

受診の準備

発達障害の診断は医師(医療機関)によって行われます。小児科、児童精神科、小児神経科、または発達外来などで受診することができます。診断には医学的な専門知識が必要なため、医療機関での受診が必要です。

地域によっては医療機関リストが提供されている場合もありますので、利用して受診先を探すことができます。また、日本小児神経学会のホームページやネット上の検索も活用することができますが、受診までには予約待ちなどが発生することもあるため、早めの行動が望ましいです。

受診日には下記のものを持って行けるように準備しておくことをオススメします。

•健康保険証(その他、小児医療費受給者証、その他医療助成など)

•母子手帳(持参が可能な場合)

•紹介状(他の医療機関からの紹介の場合)

•お薬手帳

診断時には限られた時間の中で、すべての重要な情報を伝えることが重要です。相談したいことについては整理して、今困っていることはどんなことか、あらかじめメモに書いておくと便利です。

問診

発達障害の診断は、アメリカ精神医学会の「DSM-5」やWHOの「ICD-10」などの国際的な診断基準を用いて行われることが一般的です。検査では、まず、お子さんの症状に関する問診や行動観察が行われ、心理検査や発達検査などが行われます。

医師はこれらの結果や診断基準を総合的に考慮し、お子さんの適応状況を判断します。診断方法は確立されていないため、数度にわたる検査や経過観察が必要な場合もあります

問診では、お子さんや保護者、関係者からの情報収集が行われます。困りごとや生育歴、出産時の状況や病歴、言葉の発達などが聞かれることが一般的です。

学校に通っている場合は、学校での様子も重要な情報となりますので、関係者に話を聞いておくことが勧められます。

面接・行動観察

子どもと面接を行います。もし面接ができない場合は、スタッフと遊んでいるときの様子を観察し、名前を呼ばれたときの反応や言葉の発達状況、視線の合わせ方など、子どもの行動を見ます。

検査

心理士が心理検査、発達検査、知能検査などを行います。必要に応じて医学的検査も実施し、自閉スペクトラム症に関連する他の障害や疾患(注意欠如・多動症、限局性学習症、睡眠障害、てんかんなど)の有無も確認します。

診察だけでは総合的な判断が難しい場合は、経過を観察し、診断に数カ月以上かかる場合もあります。

診断

発達障害の指摘を受けた保護者の方は、育児を振り返りながらもどこかで「何かの間違いだ」「いずれ他の子に成長が追いつくはず」と、複雑な心境になるかと思います。発達障害の子どもには支援が必要で、彼らの特性を理解し、得意なことを伸ばし、苦手なことを補うことで生活上の支障は少なくなります。

しかし、支援によって特徴が目立たなくなっても、完全に解消されることはありません。誤った見通しや期待を持つと、後で本人も家族も苦しむことになります。今後の見通しを専門家と相談し、支援計画を立てましょう。

その結果を評価し、次の支援計画を立てるプロセスを繰り返しながら、子どもに必要な支援を見つけていきます。

検査費用はどれくらいかかる?

発達障害の診断費用は、症状や医療機関によって異なりますが、一般的には1.5万円から4万円(全額自費の場合)とされています。保険が適用される検査とそうでない検査があります。

保険内の検査には、診察料や検査(知能検査、心理検査、血液検査など)が含まれますが、検査内容によっては保険外のものもあります。保険適用外の場合は、診断書や紹介状の作成、相談やカウンセリングなどが該当します。

医療保険が適用される場合、子ども医療費助成制度を利用できる可能性があります。詳細な条件は、お住まいの市区町村のウェブサイトや相談窓口で確認してください。

通院が必要な場合は、自立支援医療制度を利用して医療費の自己負担額を軽減することができます。

診断が出たらどうしたらよいの?

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子供の発達障害の診断が出て、これからどうしたらよいの?と不安な方もいらっしゃる方もおられるかもしれません。そのような場合は「療育」が有効です。

発達障害へのアプローチは「療育」が有効

障害を持つ子供たちが自立した生活を送るために支援することを「療育」と言います。ここではどんなことをするのか、どんなものなのか解説します。

療育とは

療育は、障がいを持つ子どもたちが社会的に自立し生活できるよう、個々の状況に応じた支援を提供し、発達を促進する取り組みです。もともとは手足の不自由な児童を対象に「治療をしながら教育すること」を指していましたが、近年では身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む)に該当する18歳未満の子どもが支援の対象となっています。

障害者手帳や療育手帳は必要ではありませんが、障害児通所給付費支給申請と専門家の意見書があれば療育を受けることができます。

療育には抵抗感を持つ人もいますが、早期に始めることが効果的とされています。早期の療育は社会適応能力を向上させ、より安定した生活を送る手助けとなります。

療育って何をするの?

療育では、単に勉強や他の子どもと同じペースで進むことではなく、ライフスキル(食事や金銭感覚)、運動能力、認知能力、ソーシャルスキルなど、必要な分野で特性を伸ばすトレーニングを行います。すべての特性を個性として受け入れ、ストレスを最小限に抑えることが重要です。また、親にも子どもとの接し方や生活上の工夫などを具体的に指導し、サポートします。

療育は集団の個別の2つに分かれ、それぞれ異なる役割と効果があります。発達障害の特性に応じて適切な療育を行います。個別療育では、子どもの個々の特性に焦点を当てながら、苦手な部分や伸ばすべき点を見つけます。一方、集団療育では、人との関わり方やコミュニケーション能力を向上させます。どちらの方法も、子どもが自信を持ち、自己肯定感を高め、自己否定感を軽減することが目指されています。

集団療育

集団療育では、複数の子どもがグループで指導員と共に行動します。約5人のグループが形成され、主にソーシャルスキルの向上に焦点が当てられます。友達との交流を通じて、さまざまなシチュエーションでの適切なコミュニケーションや態度を学びます。集団療育はコミュニケーション能力の向上に特化しています。

集団療育には以下のようなメリットがあります。

  • 社会性やコミュニーケーション能力が身に付く
  • 見て学ぶチカラがつく
  • 競争心・協調性・メンタリティが養われる
個別療育

個別療育では、指導員が直接サポートを提供し、マンツーマンで、言語、運動、認知などの療育を行います。子どもの特性に合わせたプログラムが提供され、指導員と親が連携し、療育を進めていきます

個別療育には以下のようなメリットがあります。

  • 子どもに細かく合わせた支援を受けられる
  • マンツーマンなので成功体験をより多く実感できる
  • 子供がスタッフとの信頼関係を築きやすい

どちらの療育方法が適しているかは、子どもの特性や性格、目標に合わせて慎重に検討する必要があります。

療育を行う施設

発達障害の療育を受けられる場所はいくつかありますが、まずは公的な機関や医療機関で相談しましょう。公的な機関では、子育て・発達支援室、療育センター、児童相談所、障害福祉課などで相談できます。その後、必要に応じて検査機関を紹介してもらえます。

症状が気になる場合は、まず医療機関を受診しましょう。そこでは、必要な検査や支援制度について説明してもらえるはずです。

また、受給者証の申請など自治体での手続きが必要な場合もありますので、公的な機関に問い合わせて今後の流れを確認することが重要です。専門家や医療従事者と相談し、最適な療育プログラムを見つけることが大切です。

まとめ

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発達障害という言葉は広く知られるようになりましたが、その中には様々な種類があります。注意欠陥・多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害、発達性協調運動障害(DCD)などが挙げられます。それぞれの障害には異なる特性があり、それに応じた適切な支援が必要です。早期の支援や適切な療育プログラムが子どもの成長や生活の質を改善することに役立ちます。

また、発達障害には個々の特性や症状に応じた多面的なアプローチが必要です。心理療法や言語療法、行動療法、または薬物療法など、さまざまな治療方法があります。

そのため、専門的なアセスメントや診断が必要であり、早めの相談と適切な支援を受けることが重要です。家族や学校、地域社会との連携も重要であり、包括的な支援体制の構築が必要です。

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この記事を書いた人

ウィズ・ユー編集部

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