発達障害のある子どもは、トイレに行くことを嫌がる傾向があります。その理由を理解し、適切なトイレトレーニング方法を見つけて子どもがトイレに苦手意識を持たないようにサポートすることが大切です。発達障害のある子どもは、感覚特性や環境の変化への適応困難などが原因でトイレトレーニングが難しい場合があります。そこで、この記事では発達障害の子どもがトイレに行かない理由や、効果的なトイレトレーニングの方法、おすすめのアイテムについて解説していきます。
発達障害の子どもがトイレに行かない理由
タイミングや場所などのこだわりを強く持っている
発達障害のある子どもは、日常のルーティンや環境に強いこだわりを持っています。例えば、カーテンの後ろや机の下など特定の場所でしか排泄を行わない、毎回決まった姿勢で排泄を行うなどのこだわりが挙げられます。そのため、急にトイレでの排泄が求められたり、おむつからパンツへの移行を要求されたりすると彼らは強いストレスを感じることがあります。
マイルールを持っている子どもはこのようなこだわりが、彼らの社会的自立を目指す際に課題となります。
こうした課題に対処するためには、子どもが段階的に新しい行動や環境に慣れるよう、時間をかけてできる範囲を増やしていく練習をする必要があります。
明るさや臭いなどの感覚特性がある
発達障害のある子どもの感覚特性には感覚過敏と感覚鈍麻があります。
感覚過敏があると明るさや臭いなどの刺激に対して通常よりも敏感であることから、トイレが明るすぎると、眩しさや過剰な視覚刺激によって不快感を感じ、トイレに行くことを避けることがあります。
また、トイレの臭いが強い場合や、トイレを流す大きな音が苦手で排泄を拒否することがあります。
感覚鈍麻があると、おしっこが溜まる感覚に気づきにくい、排泄がでたことに気づかない、出る感覚が分からないなどの場合もあります。
そのため、トイレトレーニングでは子どもの感覚特性を考慮し、彼らが快適に感じる環境を整え、それぞれの特性に合わせた環境調整や感覚に慣れていくためのサポートをすることが重要です。
寝る時におしっこが我慢できない夜尿症の可能性がある
夜尿症とは、5歳以上の子どもが、月1回以上の頻度で、夜間におしっこを我慢できずにお漏らしをしてしまうことが3ヵ月以上続く状態を指します。発達障害のある子どもは、排尿をコントロールする前頭葉の働きが弱い事から排尿を我慢する機能に遅れが生じることがあります。また、感覚過敏やストレス、不安などの要因も夜尿症を引き起こす可能性があります。
夜尿症は子どもの自尊心や精神的な健康に影響を与える可能性があります。そのため、トイレトレーニングや夜間の排尿管理には、子どもの個別のニーズや特性に配慮することが重要です。泌尿科などに通院し、生活習慣の改善や薬物治療なども検討することをお勧めします。
運動機能がうまくいかずイメージを持つことができない
発達障害のある子どもの中には、運動機能が充分に発達せず、トイレに行くという行為自体が困難である可能性があります。例えば、トイレまでの移動が難しい、トイレでの正しい姿勢をとることができない、おまるではうまく排泄できていたのに便座ではうまくいかないなどが挙げられます。
また、発達障害のある子どもは、尿意や便意を感じにくいため、感覚に気づいたときに焦ってしまい、トイレでいつも通りに排泄できないこともあります。
その為、練習を繰り返しトイレでの行動を定着させることが大切です。
さらに、一部の子どもは、トイレで排便をするというイメージを持つことが難しいという問題を抱えています。トイレに行くという行為は、先にイメージを持ち、そのイメージに基づいて行動を計画し実行する必要があります。しかし、イメージを持つ能力が低い子どもたちは、行動を計画し実行することが困難な場合があります。
トイレの機能を理解してもらい、適切に使用できるよう時間をかけて伝えていきましょう。
トイレトレーニングの方法
まずは「トイレ」に行くことに興味を持たせる
トイレトレーニングは、単に言葉や練習だけでは難しい場合があります。子どもが「おしっこはトイレでするもの」と理解するためには、最初にトイレに行くことに興味を持たせることが重要です。トイレを子どもの好きな空間にするために、カラフルなトイレシートや好きなキャラクターのポスターなどを取り入れてみましょう。子どもの興味を引く要素を取り入れることで、トイレが楽しい場所であると感じさせることができます。
また、兄弟姉妹や他の子どもたちがトイレを利用している場面を見せたり、お人形や絵本を通じてトイレの利用を理解させることも有効です。
おしっこが出てしまった後でも、すぐにトイレに連れて行くことで、子どもはトイレが排泄の場所であることを理解します。
便座に座らせてみる
子どもがトイレに関心を持ち始め、嫌がらなければおまるや補助便座に座らせてみましょう。
実際に座らせることで、子どもはその感覚に慣れていきます。
ただし、子どものペースに合わせて進めることが重要ですので、反応を見ながら段階的に進めてください。無理強いせず、子どもが快適にトイレに慣れるようサポートしましょう。
トイレに誘う
子どもがトイレに行くことに抵抗がなくなったら、起床直後、食事の前後や出かける前、就寝前など適切なタイミングを見計らってトイレに誘ってみましょう。
また、トイレに行って排泄がうまく出た場合は、お子さんと一緒に喜びを共有しましょう。「おしっこが出たね」「うんちができたね」と声をかけることで、排泄の感覚を学ぶ事ができます。また、このようなポジティブな声掛けは、子どもの自信を育み、トイレトレーニングの成功に繋がります。
失敗した場合でも、怒らずに落ち着いてサポートしましょう。
子どもからトイレと言えるよう促す
発達障害のある子どもの中には、感覚統合に問題を抱えている場合があり、これにより、トイレのサインを感じ取りにくくなる可能性があります。しかし先ほどのステップで述べたように、積極的に子どもをトイレに行くよう促すことで、子どもは自分の身体のサインや感覚をより良く理解し始め排泄のタイミングも学ぶことができます。
そして成功体験を積むことで、自発的に「トイレに行く」という意思表示ができるようになります。
このプロセスには時間がかかるかもしれませんが、根気強く待ちましょう。
パンツを履かせてみる
トイレトレーニングが進み、子どもがトイレやおまるで排泄をすることに慣れてきたら、日中は紙おむつを外し、トレーニングパンツや布パンツにステップアップしましょう。
この段階でおもらしをしてしまうこともよくあります。しかしこれも子どもにとって重要な学びの一環です。失敗したときでも叱るのではなく、子どもをサポートしましょう。お漏らしをすると濡れて気持ち悪いという経験をすることで、子どもは徐々におしっこの前にトイレに行く習慣を身につけていきます。
パンツにも慣れてきたら徐々にパンツで過ごす時間を長くしていきましょう。
外でもトイレに挑戦してみる
家庭でのトレーニングに成功したら、次は外出先や保育園、幼稚園などでの公共のトイレにもチャレンジしていきましょう。新しい環境でのトイレの利用はトイレの形や設備に慣れる良い機会でもあります。
また、他の子どもたちと一緒にトイレを利用することで、社会的なスキルを身につけると同時に適応能力を高めることができます。
子どもが外出先や公共の場所でのトイレトレーニングに取り組む際には積極的にサポートしましょう。
発達障害の子どものトイレトレーニングのポイント
トイレに行ったらご褒美を用意してあげる
トイレで上手にできたらご褒美をあげましょう。
目標達成時に提供されるちょっとした楽しみは、子どもにとってモチベーションを高める重要な要素です。
ご褒美は愛情や褒め言葉を重視することも大切です。たっぷりほめて、子どものやる気を応援してあげましょう。そうすることで子どもは親のサポートを感じ、安心して成長することができます。
その他にも、シールを貼るためのカレンダーをトイレに置くことなどが挙げられます。ご褒美にあげたシールを貼ることやカレンダーに目標達成を記録することは、子どもに達成感と自信を与えます。
子どもが嫌がるときは無理矢理させない
発達障害のある子どもは、新しい環境や新しい事に適応することが難しい場合があり,
無理やりさせることで、子どもがトイレに対してトラウマを引き起こしネガティブな感情を抱く可能性が高まります。
また、トイレを嫌がる理由として感覚過敏などが原因でトイレに行くことにストレスを感じている場合もあります。
まずはトイレに行きたくない理由を聞き出し、環境を改善していくことも大切です。
例えばトイレが明るすぎる場合は電球の色を変えてみたり、匂いが原因の場合は防臭剤を置くなど、子どものストレスになる原因を取り除き、心地良い環境を作ることでトイレに苦手意識を持たないようにサポートしていきましょう。
失敗しても怒らずに次は頑張ろうと声をかける
子どもがお漏らしをしてしまった際に怒ったり責めたりしてしまうと、子どもの自己肯定感が下がり、自尊心を傷つけトレーニングへの意欲が失われることがあります。また、親の不機嫌な態度や表情は子どもの心を不安定にし、「おしっこを漏らしたら怒られる」という考えが強まることで結果的に漏らしてしまう回数が増えたり、漏らしてしまったことを隠そうとすることもあります。
一度できたとしても、次に失敗してしまうこともあるでしょう。
しかし、失敗してしまうことは当たり前なので気長に根気強く取り組んでいくようにしましょう。
また、失敗してしまった際は「大丈夫だよ。ズボンが濡れっちゃって気持ち悪いね。お着替えしてスッキリしよう!」などと優しく前向きに声掛けをすることで子どもは安心してトレーニングに取り組むことができ、ポジティブな学習環境が作れます。
周囲の子どもと比べずにゆっくりとトレーニングする
同じ年頃の周囲の子どもがオムツを卒業していく姿を見ると焦りを感じてしまうかもしれません。
しかし、発達のスピードには個人差があるため、オムツがとれる時期にも個人差があります。
ですので周囲の子どもと比べることは必要ありません。子どもひとりひとりのペースを尊重しましょう。
また、他の子どもと比べるとストレスやプレッシャーを引き起こす可能性があり、成果が出にくくなります。ゆっくりその子に合ったペースで進めていき、子どもがストレスやプレッシャーを感じることなく、トレーニングができる環境を作ってあげましょう。
トイレトレーニングにおすすめのアイテム
トイレがしやすいおまるで練習する
おまるとは持ち運びのできる便器のことで、子ども用に作られているため小さな子どもでも足がつきやすく、踏ん張りやすい体勢で排出する事ができるためトイレに慣れる前段階として使用できます。
軽いため、子どもがリラックスできる場所に簡単にトイレを設置できる利便性があります。
このため、トイレ空間を嫌がる子どもにも適しており、寒い季節や暑い季節にも関係なく快適な環境で排泄できるのもおまるの大きなメリットです。
補助便座で練習する
補助便座は便座に乗せるだけで子ども用の便座サイズになるため、子どもが安定して座ることができます。
このため、初めからトイレの空間でトレーニングを始めることができ、子どもがトイレでの排泄に慣れることに役立ちます。さらに、トイレで排泄する環境に慣れることで、子どもはその部屋が排泄をする場所であるという認識を早く身につけることができます。
また、トイレで排泄した後通常のトイレと同様に水を流すだけで洗浄が完了するため、便座を洗浄をする必要がなく、余分な手間や時間を省くことができます。
最近では様々な補助便座が販売されており、持ち手付きのものや補助便座にパンツを脱いで座った際にひんやりしないものなどもあるので、子どもに合ったものを選んであげましょう。
踏み台でトイレをしやすくしてあげる
補助便座を使用してトイレトレーニングを行う際、踏み台がないと子どもの足が宙に浮いた状態になり、力の入れ方が難しくなるため排泄がうまくいかないことがあります。その場合、足が宙に浮いてしまうことを防ぐために「トイレ用踏み台」が必要です。この踏み台を使用することで、子どもは排泄時に足をしっかりと踏みしめることができ、トイレの高さによる不安や怖さも軽減できます。
さらに、子どもが一人でトイレに行けるようになってからも踏み台が必要になるので必要に応じて踏み台を用意してあげましょう。
トイレに関する絵本やおもちゃで興味を持たせる
トイレに対して恐怖心やマイナスなイメージを抱いている子どもも少なくはありません。
そこでトイレに関連するおもちゃや映像教材、絵本などで子どもの興味を引き、パンツへの興味や「トイレでおしっこやうんちができると気持ちいい」といったプラスのイメージを持たせトイレが身近で安全な場所であることを教える事ができます。
子どもが好きなキャラクターやお話でトレーニングへのモチベーションを高めましょう。
まとめ
発達障害のある子どものトイレトレーニングは先が見えず、周りとも比較してしまい、不安や焦りを感じてしまうことも多いでしょう。
しかし、子どものペースを尊重し、無理強いせずに時間をかけてゆっくりとサポートすることが大切です。
まずはトイレに興味を持たせる工夫や、居心地のいいトイレの環境をつくる事から始め、段階的に進めていきましょう。
また、失敗してしまった時は怒るのではなく、前向きな言葉で励まし、成功した時は一緒に喜んであげましょう。
この記事が、発達障害のあるお子様を持つご家庭のトイレトレーニングにお役に立てれば幸いです。