発達障害の子どもが髪を切りたがらない!その理由と具体的な対処法

散髪する男の子

発達障害がある子どもを持つ保護者の方の中には、「髪を切りたいのに子どもが大泣きしてしまう」

「サロンに連れて行こうとすると大騒ぎになる」といったさまざまな悩みを抱えている方が多くいらっしゃいます。

発達障害の子どもは、感覚過敏や新しい環境への不安などが強く出やすく、ヘアカットが苦痛な体験になりがちです。さらに周囲の人に理解してもらえないことで、「どうして切ってあげないの?」と指摘されることもあり、親御さんが精神的に追い詰められてしまうケースもあります。

本記事では、こうした「髪を切りたがらない子ども」が抱える悩みやヘアカットを嫌がる理由を解説しつつ、親としてどのように対応すればよいかをまとめました。ぜひ最後まで読んで、少しでもストレスなくヘアカットを乗り越えられるようなヒントを見つけてください。

発達障害の子のヘアカットでよくある悩み

髪を切る女の子

髪を切りたくないと大泣きしてしまう

発達障害のある子どもは、髪の感触に敏感で、大泣きになりやすいことが珍しくありません。これは首元に何かが触れたときの不快感や、ハサミが髪を切る「チョキチョキ」という音への恐怖など、感覚過敏が大きく影響しているからです。大人から見れば「少し触れるだけ」「ちょっと音がするだけ」でも、子どもにとっては強烈な刺激であることも多いのです。

なかには切った毛先が肌に当たるだけでパニックになり、自宅での簡単なカットすら断固拒否することもあるでしょう。さらに、自分の髪型が変わること自体を受け入れづらい場合もあり、保護者が望むタイミングとの食い違いが起こりがちです。

こうした背景から、髪を切る必要性を感じていても、子どもの「嫌だ」という気持ちを無視して無理に進めるのはおすすめできません。まずは子どもの話をしっかりと聞き、「なぜそんなに嫌がるのか」を丁寧に汲み取ることが大切です。

サロンに連れて行くだけで大騒ぎになる

初めての場所や独特の椅子、ケープの感触など、美容室は子どもにとって大きなストレスになりやすいものです。とくに発達障害の特性がある場合、いつもの環境が変わるだけで落ち着きを失い、大騒ぎに発展しがちです。

実際、「店に入った瞬間から泣き叫ぶ」「椅子に座るのを拒否されてカットに進めない」といったエピソードをよく耳にします。複数のサロンから断られてしまった経験を持つ保護者も多く、受け入れてくれるお店探しに苦労する声が目立ちます。

ただでさえ髪を切られる行為が苦手な子どもにとって、見知らぬ空間と人の多さが不安を増幅させるのは自然な反応です。突然サロンへ連れて行くより、自宅での練習や慣れ親しんだ空間で少しずつ進める工夫を取り入れてみましょう。

周囲から「なんで切らないの?」と質問される

髪が長くなりすぎると、友人や知人から「どうして切らないの?」と声をかけられることは多々あります。発達障害が外見からは分かりにくいこともあり、その特性を理解してもらうのは簡単ではありません。

「切りたいけど切れない事情がある」と言っても、「早く切ったほうがいい」と返されて終わることもあります。さらに、「いつまで放置してるの?」と批判的なニュアンスで言われると、保護者の方が焦りや罪悪感を感じやすくなります。こうした無理解や干渉は、保護者や子どもの心に少しずつ負担を蓄積させてしまいます。

そのため、周りに誤解されそうなときは「実は感覚過敏があって…」と具体的に説明すると、相手が少し理解を示してくれる可能性があります。もしそれでも何度も同じような質問をされるなら、適度に距離をとったり、気にし過ぎないためのメンタルコントロール術を身につけたりすることが大切です。

発達障害の子が髪を切るのを嫌がる理由

散髪に来た男の子

触覚過敏がヘアカットを拒否する原因

触覚過敏とは、身体や肌に触れる感覚を過度に不快に感じてしまう特性です。髪をハサミで切るときに生じる微妙な振動や、頭皮に触れる感覚そのものが大きなストレスとなりやすいのが特徴です。首筋に落ちる髪の毛ですら、耐えがたい不快感となる子もいます。

切った髪が肌に触れるたびに「もうやめて!」とパニックになり、カットどころではなくなるケースもあります。このようなときは、こまめに落ちた毛を払い、肌に触れないようタオルやケープでしっかり覆う工夫をするなどの対策が必要です。バリカンの刃が振動する感覚を「痛い」と表現する子もいるため、場合によってはハサミをメインに使うほうが安心できるでしょう。

音や光、匂いなど、五感への過敏な反応

発達障害の子どもは、触覚だけではなく聴覚や視覚、嗅覚など、五感のいずれかが過敏であるケースが多く見られます。ヘアカット時には、バリカンやハサミが触れ合う金属音、ドライヤーの風切り音、鏡に映る強いライトなど、複数の刺激が同時に存在しています。そうした状況では、どれもが気になって落ち着かないという状態に陥りやすいのです。

バリカンの音が苦手な場合は、防音イヤーマフや耳栓、ヘッドフォンなどを活用することで、ある程度不快感を軽減できます。また、シャンプー剤やパーマ液、カラー剤の刺激臭が耐え難い子もいるため、無香料に近い製品を使ってくれるサロンや、香りを最低限に抑えてくれるサロンを探すのも手です。光がまぶしすぎると感じる場合は、サングラスをかけさせてもらう、照明を少し暗くしてもらうなどの配慮をお願いしてみましょう。

こうした五感に対する注意を払うだけで、子どものストレスが大幅に減り、カットに対して前向きに取り組みやすくなります。

見通しの立たない状況への不安とこだわり

発達障害の特性として、先の展開がわからない状況に極度の不安を感じる場合があります。ヘアカットで言えば、「いつまで続くのか」「どんな工程があるのか」が明示されていないと、子どもはとても落ち着かないのです。

そこで有効なのが、「どんな手順で進むか」を事前に伝えることです。たとえば、「髪を濡らす→ハサミで少し切る→ドライヤーで乾かす」といった流れを絵カードや写真で順番に並べて見せると、子どもは「次は何が来るのか」がわかりやすくなります。さらに、カットの所要時間や「何分で終わるのか」もわかると安心度がアップします。

「もう少しで終わるよ」と声をかけながら進めると、「あと少し我慢すればいいんだ」と理解できるため、過剰な不安やパニックを抑えやすくなるでしょう。

過去のトラウマ体験が影響している場合も

以前のヘアカットで無理やり押さえつけられたり、大声で叱られたりした経験があると、それがトラウマとなってしまうことがあります。一度「ヘアカット=怖いもの」という印象が強く刻まれると、次に髪を切ろうとしたときにも同じ恐怖感が呼び起こされるのです。

ほんの少しのケガや失敗でも、子どもにとっては大きな痛みや恐怖として記憶されがちです。トラウマを解消するためには、無理やりヘアカットをするのではなく、「ちょっとだけ切って終わり」というように、短い時間で成功体験を積ませることが有効です。

一度も泣かずに無事にカットできたら、小さなごほうびを用意したり、「頑張ったね」とほめてあげるなど、ポジティブなイメージを上書きしていきましょう。こうした積み重ねが、徐々にトラウマを薄める助けとなります。

髪を切りたがらない子どもへの対応方法

待っている女の子

なぜ髪を切りたがらないのか、子供の気持ちに寄り添う

まずは「何が嫌なのか」を子どもの視点で考えることが重要です。ヘアカットに対する抵抗感は、感覚過敏や不安の強さ、過去に嫌な思いをした経験など、いろいろな要因が重なって生じます。

このとき、どうしても嫌がる理由を本人がうまく言葉にできないことも多いでしょう。だからこそ、まずは気持ちに共感しつつ、「一緒に対策を考えていくよ」と安心させてあげるのがおすすめです。

家庭でできる方法としては、おもちゃのハサミを使ったごっこ遊びや、人形の髪を切る真似を通して、少しずつカットのイメージを緩和させるなどがあります。また、絵本や動画でヘアカットの流れを見せると、「これから何が起こるのか」が具体的に伝わりやすくなるでしょう。

こうしたステップを踏むことで、子どもは「自分の気持ちを大事にしてくれている」と感じやすくなり、不安の軽減につながります。

無理強いせず、根気強く向き合う

嫌がる子どもを押さえつけて無理やりカットしようとすると、髪を切る行為そのものがますます怖いものになってしまいます。子どもが激しく拒否する場合は、別の日に改めて挑戦することも大切です。

最初は美容室に入るだけでもOK、その次は椅子に座るだけ、次はハサミで少し毛先を切るだけ、といったように、子どもの負担が少ないレベルから徐々にステップアップしていきましょう。

少しでもカットに協力してくれたら、「すごいね、がんばったね」と大いにほめるといった、ポジティブなフィードバックを行えば、子どもの「次も頑張ろう」という気持ちにつながりやすいでしょう。

周りの人に理解を求める

子どものヘアカットをスムーズにするためには、美容師さんや家族、保育園・学校の先生など、周囲のサポートが欠かせません。特に美容室を予約する際は、「うちの子は感覚過敏があって…」「大きな音が苦手で…」など、子どもの特性を事前に伝えておくと、お店側が心構えをしたり、個室や静かな席を用意してくれたりする場合があります。

また、近年では発達障害の子どもへの対応経験が豊富な理美容師さんが在籍するサロンも増えてきました。インターネットで「発達障害 美容室 対応」などと検索すると、そういったサロンが見つかることもあります。訪問美容サービスを利用すれば、自宅でのカットが可能になるため、「子どもの慣れた環境でならなんとか切れるかも」という状況を作り出せます。

保育園や学校でも、「髪の毛を切ることが難しくて長くなってしまう子がいる」という理解を広めておくと、子どもが周囲から不必要な指摘をされずに済む場合があります。必要なサポートを得られれば、保護者の気持ちもぐっと楽になるはずです。

親自身の心のケアも大切

子どもがヘアカットを嫌がって長髪になっていたりすると、周囲の目が気になって親がストレスを抱えてしまう場合もあります。「親のしつけがなっていない」「放置している」と思われるのではないか、と気に病むこともあるでしょう。

しかし、発達障害の特性は一朝一夕で改善するものではなく、焦れば焦るほど子どもも親もつらくなってしまいます。だからこそ、保護者自身がメンタルを保ち、子どもに穏やかに接する余裕を持つことが重要です。

気分転換に友人と会ったり、同じ発達障害を持つ子どもの親同士で情報交換をしたり、専門家に相談する機会を設けたりして、孤独や疲れをため込まないようにしましょう。親の心が落ち着いていれば、子どもも安心感を得やすくなります。小さなことであっても、自分をいたわる時間を意識的に確保し、無理なくヘアカットに向き合える環境を整えるのが理想です。

髪を切りたがらない子どものヘアカットをする方法

髪を切っている女の子

事前にしっかりと説明し、見通しを持たせる

発達障害の子どもは、予測不能な出来事に対して強い不安を抱きがちです。ヘアカットでも、「どんな道具を使うのか」「どれくらいの時間がかかるのか」「痛みはあるのか」などを把握できずにいると、拒否反応が高まる場合があります。

そこで、事前に「今日はこれくらい切るよ」「ハサミの先は丸くて安全だよ」といった情報を説明し、絵本や動画でイメージをつかませると効果的です。子ども向けのアニメーションでキャラクターが髪を切る場面を見せると、「髪を切っても痛くないんだ」「こういう手順で切るんだ」ということが理解しやすくなるでしょう。

視覚的にわかりやすい情報を提供することで、「もう少し我慢すれば終わる」「終わったらこうなる」という見通しが持てるようになります。ゴールが明確に見えれば、不安が減り、カットへの協力姿勢が少しずつ引き出されます。

子どもがリラックスできる環境をつくる

カットをする場所や雰囲気を整えてあげることも、成功のカギです。自宅でカットをする場合、子どもが好きな動画やテレビ番組を見せながら少しずつ髪を切るだけでも、不安感が紛らわせられます。テーブルの上にお気に入りのぬいぐるみやグッズを置いておくと、「大好きなものがそばにあるから安心」という気持ちになりやすいでしょう。

美容室でカットする場合は、「混雑の少ない時間帯に予約する」「施術する席を個室にしてもらう」「音楽や照明を調整してもらう」などの配慮をあらかじめお願いしておくのがおすすめです。子どもの特性を理解している美容師さんなら、対応してくれることも増えています。

もしどうしても美容室が難しいと感じる場合、訪問美容を依頼するという選択肢もあります。自宅のリビングや子どもの部屋など、慣れた場所で施術を受けられるため、子どもの緊張がいくらか和らぐはずです。

視覚支援ツールを活用する

発達障害の子どもにとって、言葉だけでの説明は理解しづらいことがあります。そんなときは、視覚的な情報を使ってヘアカットの手順を示す方法が有効です。

タブレットなどを使って、事前に「髪を切る手順動画」を見せたり、カットの様子をアニメーションで教えたりなどの工夫をしてみましょう。視覚支援を積極的に取り入れることで、子ども自身も「これは何のために、どのように行うのか」を把握しやすくなります

少しずつ慣らしていく

ヘアカットに強い抵抗がある子どもには、一度にすべてを切り終えることを目標にしないほうが、結果的にスムーズに進むことが多いです。たとえば、最初は「今日は前髪だけ切ろうね」と決めて、後ろ髪には一切触れないというように、小さな成功体験から積み上げていきます。

少しカットできたときは大げさなくらいほめ、「頑張ってくれてありがとう」と伝えると、次回も協力しようと思いやすくなります。長い目で見て、子どものペースに合わせながら徐々にゴールへ近づくほうが、最終的にはヘアカットへの拒否感が減るのです。

不安にさせないために声かけする

カット中は、子どもがいま何をされているのか分からなくならないように、適度に声かけをして不安を和らげるのが効果的です。たとえば、「次は耳のあたりをちょっとだけ切るね」といったように、次の動きを短い言葉で説明しながら進めましょう。

また、「もうちょっとで終わるから頑張ろうね」とこまめに子どもの感情に寄り添って声をかけると、パニックに陥る前に気持ちを落ち着かせられる場合があります。途中で「もう無理!」というサインを出したら、一旦休憩し、頭や首を触るのをやめてあげるなど、柔軟に対応してあげることも大切です。

無理矢理進めてしまうと、「やっぱり髪を切るのは怖い」と強く印象づけてしまうリスクがあります。子どものペースを尊重しながら、終始穏やかな雰囲気で進めていくのがポイントです。

発達障害のヘアカットで配慮すべきポイント

髪を切るのを嫌がっている男の子

髪型へのこだわりが強い子どもの場合

発達障害の子どもの中には、髪型やファッションなど、自分なりの「こだわり」が非常に強い場合があります。「この髪型だけは嫌」「ここは絶対に切らないでほしい」という思いがあると、ヘアカット自体を拒否してしまうことも多いでしょう。

こうした場合は、まず「どんな髪型なら受け入れられるのか」を一緒に考えることが大切です。写真やイラストを見ながら、「この長さなら大丈夫かな?」と具体的に意見を聞いてあげましょう。本人が納得できるスタイルをあらかじめ決めておくと、カット中に「こんなはずじゃなかった」となりづらくなります。

また、子どもの髪型への執着が強いときは、一気に大幅なイメージチェンジをするよりも、少しずつ毛先を整えるなど小さな変化にとどめる方法が有効です。大きな変化を嫌がる子ほど、慎重に段階を踏んで「ちょっとずつ切るなら安心」という気持ちを持ってもらうとよいでしょう。

触覚過敏の子どもの場合

触覚過敏がある子は、首まわりに落ちる髪の毛や、バリカンの微細な振動、ケープで締め付けられる感覚などがとても苦痛に感じられることがあります。こうした場合は、できるだけ肌に毛がつかないようにタオルやケープを工夫し、落ちた髪をすぐに払い落とすサポートが必要です。

バリカンが苦手な子には、ハサミでゆっくり切っていくほうがよいでしょう。ドライヤーの熱風や掃除機の音を怖がる子もいるため、必要最低限にとどめるか、静音設計の道具を使うなどの対策が考えられます。

もし美容室へ行く場合は、事前にスタッフさんへ「触覚過敏があるので、刺激を最小限にしてほしい」と伝えておくことが重要です。

まとめ

機嫌よく髪を切る女の子

ヘアカットで大切なのは、お子さんの特性に寄り添いながら、安心して過ごせる環境と方法を整えることです。髪型へのこだわりが強い子には希望を尊重したスタイルの選び方を、触覚過敏がある子どもには刺激を最小限に抑えたケアを意識してみてください。

無理せず段階的にアプローチし、少しずつ慣れさせることで「また切ってもいいかも」と前向きに思えるようになるはずです。

焦らず丁寧に向き合いながら、親子で快適なヘアカット体験を築いていきましょう。

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この記事を書いた人

ウィズ・ユー編集部

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