子どもの発達障害は遺伝する?兄弟・姉妹との遺伝確率や特徴など解説

兄弟姉妹でおもちゃ遊びしている様子。

発達障害の子どもがいるご家庭の場合、「発達障害は兄弟間で遺伝する?」「生まれてくる子どもに遺伝したらどうしよう」と気になる方もいるでしょう。

子どもの発達障害には遺伝子が関係していると考えられていますが、未だ明確になっていません。特定の遺伝子だけではなく、複数の遺伝子や環境的な要因が加わって発現するともいわれています。

兄弟全員が発達障害であるケースや1人だけが発達障害であるケースなどがあり、必ずしも兄弟間で遺伝するとはいえないでしょう。

この記事では、発達障害が兄弟・姉妹から遺伝する確率や主な原因、障害の種類などを詳しく解説します。兄弟間の遺伝を不安に思われている方は、相談先についても紹介していますので参考にしてください。

発達障害と遺伝子の関係

発達障害と遺伝子の関係。

発達障害と遺伝子は密接に関係しているといわれていますが、人の遺伝子は無限にあるため原因となる遺伝子は特定されていません。いくつかの遺伝子が影響を与えていたり、環境的な要因が重なって発現したりといった関連性があります。

実際に、発達障害の親から発達障害の子どもが産まれることや、兄弟全員が発達障害を持っていることもあるでしょう。しかし、健常の親から発達障害の子どもが産まれたり、兄弟の中で1人だけ発達障害であったりするケースもあります。

このように、発達障害と遺伝子の関係は未だ分からないことが多く、発達障害を持つすべての人に「発達障害の原因は遺伝子である」と特定できないです。

兄弟姉妹から発達障害が遺伝する確率

兄弟姉妹が仲良く寄り添う様子。

兄弟姉妹から発達障害が遺伝する確率は、未だ明確な数値は明らかにされていません。
しかし、兄弟姉妹の間で遺伝的要因が関係することは、専門家の研究によって明らかになりつつあります。つまり、確率が0%ではないのかもしれません。

発達障害は、多くの要因が影響して生み出されます。要因のひとつに遺伝が影響している場合、兄弟・姉妹の発達障害が遺伝する確率は、やや高まる可能性があると言えるでしょう。

しかし、発達障害を引き起こす原因は遺伝子だけではなく、環境的な要因も複雑に影響しているものです。
兄弟間で遺伝的要因が関係している可能性があることをは常に念頭におき、広い範囲で発達障害の要因をみていく必要があるでしょう。

発達障害は子育てが原因ではない

夫婦が赤ちゃんを優しく見つめる様子。

発達障害は教育者からのしつけや愛情不足、育て方が原因と誤解されやすく、そのせいで不安になってしまう方も多くいるでしょう。

しかし、子どもの発達障害は先天的な脳の機能障害である場合がほとんどであり、子育てが直接の原因ではありません。発達障害の原因として、遺伝子や妊娠中の過ごし方、出産時のトラブルなどが考えられています。

とくに、遺伝的な要因が高いともいわれていますが、医学的な原因ははっきりと解明されていないのが現状です。

つまり、子どもの発達障害は、何らかの先天的な要因と環境的な要因が複雑に関係し合った結果、脳機能の障害として発言されるといえるでしょう。

発達障害になる主な原因

妊娠中の女性と寄り添う男性。

発達障害が発現される主な原因として、以下の5つが関係しています。

  • 遺伝子
  • 受胎時の親の年齢
  • 妊娠中の食事
  • 出産時に起きた合併症
  • 妊娠中の公害や薬剤

ただし、この5つの原因があることで、必ずしも発達障害を引き起こすわけではありません。さまざまな要因が複雑に関わっていると考えられ、発達障害の子ども全員にあてはまる明確な原因はないと言えます。

ここでは、発達障害を発現する可能性がある5つの原因について、詳しく解説します。

遺伝子

発達障害の遺伝については明確にされていませんが、両親や兄弟間で遺伝子の一致率は高いことから、遺伝子による影響は大きいと考えられています。

発達障害の親から発達障害の子どもが産まれる場合や、子ども全員が発達障害である家庭も多く、遺伝子が関係しているといえるでしょう。

一方で、健常の親から発達障害の子どもが産まれたり兄弟の中で1人だけが発達障害であったりするケースもあり、すべての子どもに「必ず遺伝する」と断言できません。

遺伝子が発達障害と密接に関わっている可能性はありますが、要因のひとつに過ぎないといえます。

受胎時の親の年齢

女性の高齢出産のリスクについては注目されており、受胎時の母親の年齢と発達障害は関連していると分かっています。しかし、発達障害を持つ子どもが産まれることは、父親の年齢も強く影響しているとも考えられています。

その理由として、父親が子どもを持つ年齢が高いほど、変異した遺伝子が子どもに多く伝わるからです。20代の父親と比べて、40代、50代と年齢が重なるごとに遺伝の確率が高まる傾向があります。母親の出産年齢では20代と比べて、30代や40代以上でも大きな差が認められていません。

つまり、高齢で父親になる男性の場合、発達障害の子どもが産まれる可能性が高くなるといえるでしょう。

妊娠中の食事

妊娠中の食事は、お腹の中にいる赤ちゃんの脳や身体的な健康に影響を与えるといわれています。

とくに、妊娠中に母親が脂質の多い加工食品や、糖質の多い甘いお菓子など不健康な食事をとる生活を送っていると、発達障害の子どもになる可能性があるでしょう。

また、妊娠初期の段階でお肉やお魚などのタンパク質の摂取が極端に不足している場合、その母親から産まれた子どもは発達障害になりやすいと言われています。

このように、母親の妊娠中に栄養バランスが取れていない食事をすることで、発達障害の子どもが産まれる可能性が高くなるといえるのです。

出産時に起きた合併症

子どもの発達障害は、妊娠や出産時の状況も大きく関係しているといわれています。とくに、妊娠35週未満で産まれてきた低出生体重児や未熟児は、通常の週数で出産される子どもと比べて、発達障害になる確率が高くなる傾向があるのです。

また、帝王切開で出産した場合や切迫流産の経験がある場合は、発達障害になる傾向が増大すると示されています。

このように、赤ちゃんの発達が未熟な週数で産まれることや出産時の状況によっては、発達障害になる子どもの傾向が高まる可能性があるといえるでしょう。

妊娠中の公害や薬剤

妊娠中に公害の暴露や薬剤の使用があった場合、お腹の中にいる赤ちゃんに影響を及ぼし、発達障害の子どもが産まれる可能性があるでしょう。

公害の暴露として、魚介類に含まれる水銀や農薬・殺虫剤の成分、発電所や工場などから出る大気汚染の物質などが挙げられます。

また、妊娠中の薬剤で注意が必要なのは、解熱鎮痛剤の成分であるアセトアミノフェンの使用です。アセトアミノフェンの長期的な使用や、高容量の使用は避けることが大切といわれています。

発達障害|3つの種類

3人の子どもが手を繋いで遊ぶ様子。

発達障害には、生まれつきの脳機能の障害であり、大きく分けて以下の3種類があります。

  • 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)
  • 注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)
  • 限局性学習症/限局性学習障害(SLD)

3つに分類されますが、「ASDの症状だけ」「ASDとSLDのどちらの症状もある」のように、子どもによって複数の症状が現れる場合も多いことが特徴です。

ここでは、3つの発達障害について詳しく解説します。

自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)

自閉症スペクトラム障害(ASD)は、これまでの自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害と呼ばれていたものが統一された診断名です。

ASDの子どもには、以下の特徴があります。

  • 学校で友達とうまく人間関係を築くことが難しい
  • 相手の気持ちや感情を想像することが苦手
  • 人の話を聞いて理解するのが苦手
  • 集団行動が苦手で、一人でいる方が落ち着く
  • 1つのことに集中、強いこだわりがある
  • 物事を同時に進める、気持ちを切り替えるのが苦手
  • ルールに沿った行動は得意

このように、ASDの子どもの場合は、対人関係やコミュニケーション、想像力に対して苦手さを持つことが特徴です。一方で、興味関心のあることには追求心があり、周りを驚かせる才能を発揮するケースも多いでしょう。

注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)

注意欠如・多動性障害(ADHD)は、集中力や落ち着きの無さなどが組み合わさり、不注意優位型と多動性優位型、混合型の3タイプがある障害です。

ADHDの子どもには、以下の特徴があります。

  • すぐに他のことに注意が向く
  • 作業の優先順位がつけられない
  • 他人の言葉を遮って話す、思ったことをすぐに発言する
  • 持ち物をすぐなくしてしまう
  • 順番待ちや時間を守ることが苦手
  • 活発で発想力がある
  • 整理整頓が苦手

ADHDの子どもは、物の管理や時間管理、集中力を保つことに苦手さを持つことが特徴です。一方で、コミュニケーション力や行動力があり、誰も思い付かないようなアイデアで豊かな想像力を発揮するケースも多くあります。

限局性学習症/限局性学習障害(SLD)

限局性学習障害(SLD)は、全体的な知的の遅れはないのにもかかわらず、「読み」「書き」「計算」などの学習に大きな困難さがある障害です。

SLDの子どもには、以下の特徴があります。

  • 文字が歪んだり、逆さまに見えたりする
  • 文字を目で追えず、文章を飛ばし読みする
  • 文章になると理解できない
  • 文字は読めても、綺麗に書けない
  • 耳で聞いたことを文字で書くのが苦手
  • 数字の大小を理解することが苦手
  • 時計を見て時間を認知することが難しい

このように、SLDの子どもは国語や算数ができないというわけではなく、特定の認知能力に苦手さを持つことが特徴です。

【相談先】子どもの発達障害に関する不安

保護者と子ども、相談者で話す様子。

子どもの発達障害について不安や悩みがある場合は、地域や自治体など、身近にある相談機関を利用してみましょう。主な相談先は、以下の6つです。

  • 発達障害者(児)支援センター
  • 子ども家庭支援センター
  • 自治体の障害福祉課や保健センター
  • 当事者団体や親の会
  • 子育て支援センター
  • 放課後等デイサービス・児童発達支援事業所

それぞれ詳しく紹介します。

発達障害者(児)支援センター

発達障害者(児)支援センターは、発達障害者(児)への専門的な支援を行うために、各都道府県に設置されている機関です。

保健や医療、福祉、教育、労働などの関係機関と連携し、発達障害者(児)とその家族が安心して地域で暮らせるよう総合的にサポートしてくれます。

子ども家庭支援センター

子ども家庭支援センターは、18歳未満の子どもや子育て家庭におけるあらゆる相談に対応してくれる、身近な相談機関です。

遊びの広場や子ども食堂、発達支援・相談、虐待相談など総合的に支援を行い、必要時は関係機関との橋渡しの役割を持っています。

自治体の障害福祉課や保健センター

障害福祉課や保健センターは、各都道府県や市区町村に設置されている地域の相談窓口です。

障害福祉課は、障害のある方が自立した日常生活や社会生活を送れるように、福祉施策についてさまざまな事業を行っています。

保健センターには保健師が常駐しており、妊娠や子育て、さまざまな病気に関する相談・支援を行う機関です。子どもの発達を心配される家庭の相談や、必要な機関との連携を調整するといった役割があります。

当事者団体や親の会

当事者団体や親の会は、発達障害の当事者や発達障害の子どもを持つ親が集まり、それぞれの気持ちを吐き出したり分かち合ったりできる団体や会のことです。

活動内容は団体や会によって大きく異なりますが、入会していない方に対しても相談を受け付けている場合があります。

子育て支援センター

子育て支援センターは、乳幼児とその保育者のために遊びや触れ合いの場所を提供している機関です。季節のイベントや身体測定、お誕生日会などの楽しめる催しがあり、施設ごとに工夫されています。

保育士や保健師など専門のスタッフが常駐しているため、発達障害に関する不安や子育ての悩みなどを気軽に相談できます。

児童発達支援事業所・放課後等デイサービス

児童発達支援事業所と放課後等デイサービスは、自治体から発行される「通所受給者証」があれば利用できる、障害がある子どもを対象とした福祉サービスです。

児童発達支援事業所は0歳から6歳の「未就学児」が対象で、発達に心配があったり、障害のある子どもが、保護者とともに療育や発達のサポートとして利用できます。

放課後等デイサービスは6歳から18歳までの「就学児」を対象としており、子どもの発育や発達にあわせた取り組みやサポートを提供しているのが特徴です。

まとめ

家族で談笑する様子。

子どもの発達障害は、兄弟間で遺伝する可能性はありますが、そのほかにも環境的な要因が複雑に重なって障害が発現すると考えられます。また、発達障害を引き起こす原因やメカニズムなどは未だ明確になっておらず、原因の特定は難しいでしょう。

療育が必要な子どもにおいては、発達障害の原因に目を向けるだけではなく、子どもの症状や状況に応じた発達支援を受けることが大切です。

さまざまな成功や失敗の体験を繰り返し、子どもの自信と成長を促せる環境を整えてあげましょう。

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ウィズ・ユー編集部

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