子どもが嘘ばかりついていると、もしかして発達障害がある?虚言癖では?と心配になってしまう保護者の方もいらっしゃるようです。
正直に話してほしいときに嘘をつかれてしまうと、悩んでしまいますよね。
今回はこどもが嘘をつく理由や発達障害との関係性や、子どもが嘘をつく時に保護者がとるべき対処方法を解説します。
子どもの嘘にお悩みの方はぜひ最後までご覧ください。
虚言癖とは?
虚言癖は、嘘をつくことがクセになってしまう状態を指します。簡単に言えば「嘘つき」のことです。些細なことから大きな嘘まで嘘が多く、実際の出来事を歪めて話すことが習慣化されるものです。
虚言癖の原因は複雑で、心の状態や環境など様々な要因が影響すると言われています。
治療には、心理療法やカウンセリングが行われ、本人が自分の言動に気づき、改善するように治療をしていきます。
ただし、子どもが嘘をつくことは必ずしも虚言癖とは限らず、理由があったり、遊びの一環としての嘘もあります。
虚言癖は、嘘が多く、その結果として日常生活に支障が生じる場合のことを指します。
虚言癖とADHDの関係
まず、子どもが嘘をつくことと、ADHDなどの発達障害に直接の関係はないと言われています。
ただ、虚言癖は嘘の内容によって、発達障害が疑われるケースもあります。
ADHDはその特性から、日常生活において周囲から叱られたりすることが多い傾向にあり、自己評価が低いことも多く怒られたり、自己評価が低いことを悟られないように嘘をつくことがあります。
例えば、何度注意しても忘れ物がなくならずよく怒られるので、そのうち忘れ物をなくしたことにしてしまうような場合、子どもがADHDの「忘れ物をしやすい」特性を持っている背景がある可能性があります。
他には発達特性として、他者の気持ちの読み取りが難しい可能性があり、嘘をつくことで周りの人が傷つくことを考えられていないということも考えられます。
また、ADHDの子どもはその衝動性や不注意の傾向から、比較的バレやすい嘘が多く、定型発達の子どもとは違って、嘘がバレやすいため、嘘つきだと認定されてしまいがちです。
もし気になることがあるようでしたら、専門家に相談してみましょう。
なぜADHDの子どもに虚言癖が見られることがあるのか
通常、虚言癖を持つ人は目立ちたがり、わがまま、プライドが高いなどの性格であることが多いと言われていますが、ADHDの子どもに虚言癖が見られる場合は、そうではなくADHDの特性から以下のような理由で嘘をつくことがあるといわれています。
- 本人は嘘だと思っていない
- 叱られることを避けたい
- 注目されたい
では、ひとつずつ順番に解説していきます。
本人は嘘のつもりではない
子どもは空想と現実の区別がつかず、自分で思いついたこと、想像したことを事実だと思ってしまうことがあります。
なので、空想で「こうだったらいいのにな〜」と思うことを、現実のように話すことがあります。
特に6歳位までの子どもは、「現実と空想」の区別がつきにくく、年齢が上がるにつれて、現実と空想の線引きができるようになっていきます。
また、発達障害を抱えている子どもは物事の感じ方、考え方、脳内の情報の処理の仕方が独特で、客観的に見ると事実と違うように誤解されて嘘と思われてしまうことがあります。
話に齟齬があっても、嘘と決めつけず、子どもがどのように感じているか、確認してあげるようにしましょう。
叱られることを避けたい
2つ目は叱られることを避けるために嘘をつく場合です。
ADHDの子どもはその特性から、
- じっとしていることが難しい
- よく物を失くしたり忘れたりする
- ルールや順番を守ることが苦手
など、できないことが注目されがちで、親や周りから叱られることが多い傾向にあります。
叱られてばかりいると、失敗を叱責されないよう嘘をついて自分を守ろうとします。
更に、先のことを考えることが苦手なので、その場を何とかやり過ごすことに必死で、嘘をつくことによる影響を考えれていないこともあります。
そのため、叱られるから嘘をつく→嘘をついたことを怒られる→また嘘をつく…という悪循環に陥ってしまいます。
注目してもらいたい
子どもは注目されるのが大好きなので、保護者や周りの注目を自分に集めるために、嘘をつくことがあります。
子どもが周りの気を引くために嘘をついたりいたずらしたりすることを「試し行動」といいます。
子どもが嘘をつく→親が叱るなど反応をする→反応をしたことに対して「自分のことを見てくれている」という気持ちになる→嘘をつけば自分のことを見てもらえる というループで嘘をつくのがエスカレートしてしまうことがあります。
例えば、子どもが元気なのに腹痛を訴えて体調不良だと嘘をつくということがありますが、これは体調不良を心配してもらうことで保護者の気を引けたという気持ちになり安心を覚えるということが考えられます。
また、ADHDの特性として感情のコントロールが苦手で、目立ちたい!という感情のために、衝動的に思いついたままのことを言ってしまい、結果的に嘘になってしまうということもあります。
虚言癖が子どもに与える影響
では前述したようなような嘘をよくつく状態が続くと、子どもにどのような影響を及ぼすのでしょうか?
病的な症状へと進行する場合がある
虚言癖だからといって病気や障害というわけではありませんが、あまりにも嘘がひどいと病的な症状へと進行する可能性があります。
嘘をつく障害、疾患は以下のようなものがあります。
妄想性パーソナリティ障害
周りの人を異様に疑ってしまうパーソナリティ障害です。
技性パーソナリティ障害
過剰に人の注目を集めようとするパーソナリティ障害です。愛情不足の子どもに多く見られます。
虚偽性障害/作為症
体や精神に病的な症状があるふりをしたり、症状を捏造したりする精神疾患です。
酷くなった場合はわざと怪我をしたりすることもあるため、注意が必要です。
子どもがどのような嘘をついているか、親はしっかりと見極めて、嘘をつくのが当たり前にならないうちに子どもと向き合っていくことが大切です。
友達をなくす可能性がある
虚言が繰り返されると、いくら仲が良い友達同士でも信じるもらうことが難しくなり、信頼関係が築けません。
友情は信頼の上に成り立っているため、嘘ばかりついていることで友達関係がうまくいかなくなる可能性があります。
そして「あの子は嘘ばかりつく」という評判が広まってしまった場合、自分の周りからの信頼も崩れてしまい、孤立する可能性もあります。
どうすれば子どもの虚言癖を治せる?
ここまでは嘘をつく理由について紹介してきました。
わが子が正直に本音を話さない、嘘をつくのが治らないとなると、どうしたら良いか不安になってしまったり、自分の育て方が大丈夫なのか心配になってしまいますよね。
子どもが嘘をつく場合、嘘の内容によって対処方法が変わります。子どもが嘘をつくときの対処法を、前述した理由別に解説します。
噓のつもりではないときの対処法
まずは子どもの話を否定せずに聞いてあげましょう。
どうしても大人は、子どもが現実と違うことを言うと、叱って正そうとしたりイラっとしたりしてしまいますが、自分の願望や空想を実際あったことのように話すのは幼児期特有のものなので、成長とともに現実との区別がつくようになれば、自然となくなっていくので、あまり気にしなくて大丈夫です。
むしろ、空想は子どもが想像力や思いやりを育む上で必要なものです。
親も一緒に子どもの想像の世界にはいって、楽しんで聞いてあげられたらいいですね。
叱られるのを避けているときの対処法
普段から躾が厳しかったり、親が怒ってばかりいると、「また怒られる」と感じてしまったり、親の期待に応えよう、いい子と思われたいという思いから、本音で話せなくなって嘘をついてしまうことがあります。
保護者自身が、今の子どものレベルに見合った躾ができているか、怒鳴ったりきつく叱りすぎていないか、まず一度考え直しましょう。
そして、嘘をついてしまった場合、まずはなぜ嘘をついたのか、落ち着いて理由を聞いてあげましょう。
正直に話せたら「ちゃんと話してくれてありがとう」と寄り添ってあげましょう。
それを繰り返すことで、子どもも自分の本心を安心して話せるようになっていくでしょう。
注目を集めようとする時の対処法
保護者の気を引こうとして嘘をつく場合は相手にしないことが効果的です。
叱ってしまうと、嘘をつくことで「自分を見てもらえている」と言う気持ちになってしまうので、嘘をついても得にはならないことを子どもに感じてもらうことが大切です。
また、嘘をついて気を引かなくても保護者が関心を持ってくれていると感じる環境作りも大切です。
日常的にスキンシップを取って触れ合う習慣を作ったり、子どもの話を聞く時間を意識的に作りましょう。
家庭での対応例
先ほどは嘘をついたときの対処法を理由別に紹介しましたが、そもそも嘘をつかないようにするには家庭で、どのように子どもに接すればよいかを解説します。
嘘をつかなくていい環境作り
生まれつき嘘をつく子どもはいません。まずは嘘をつくに至ってしまった背景をきちんと把握することが重要です。
例えば、
- 保護者が働いていないのに仕事をしていると周囲に話すのは、家庭環境にコンプレックスがあるから
- 元気なのに体調が悪いと言うのは、保護者からの愛情不足
など、子供がなぜ嘘をつくのか、どんな状況で嘘をついてしまうのか家庭環境や親の行動を振り返ってみてください。子どもに安心感を与え、感情や不安を素直に表現できる環境を提供することが重要です。
どの子どもも保護者に愛されたいと思うものです。嘘が悪いと決めつける前に、一度穏やかに子供の意見を聞いてあげてください。
嘘の背後にある不安と向き合う
前述した嘘をつかなくてもいい環境作りに似ていますが、子どもが保護者に嘘をつくのは、保護者に対して恐怖心や不信感をを抱えていることが考えられます。
また、保護者によく思われたい、何か心配をかけないようにしていることも考えられます。
小さな子どもでも保護者の機嫌が悪いことやあまり笑ってないということには敏感です。
そんなときに、保護者がなんでもないように振る舞えば、『嘘をついているな』と子どもながらに感じてしまい、子どもに悲しいことがあっても、心配をかけないように振る舞うようになってしまいます。
大切な感情を偽って嘘をついていることになり、将来的に親子関係に歪みが生じる原因にもなりますので、親自身が嘘をつかずに、自然体で子どもに接することが必要です。
専門家に相談する
子どもの虚言癖が深刻である場合、悩まずに専門家に相談しましょう。
心理カウンセラーや精神科医に相談することで、虚言の背後にある心理的な問題や状況を理解することができ、適切な対応をすることができます。
専門家の助言を受けることで、子どもが健康的なコミュニケーションや行動パターンを身につけるサポートが得られます。
子どもの健やかな発達を促進するためには、早い段階での専門家への相談が有益です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?本記事では、子供の虚言癖とADHDの関連性に焦点を当て、対応方法をご紹介しました。
子どもが嘘をつくと、育て方が悪い?発達障害では?と不安になってしまったり、ついつい嘘をついてはいけない!ときつく叱ってしまったりイライラしたりすることもあるかもしれません。
しかし、嘘をつく子どもの原因は色々あり、保護者だけが悪い、子どもだけが悪いということではありません。
保護者としては、まず子供と向き合うことです。向き合って、お互いの気持ちを理解し合うことで親子の絆も深まることでしょう。
そして、困った時は保護者だけで抱え込まず、専門家、学校と協力して子供をサポートしてあげましょう。