小学校への不登校や学校に行きたがらない傾向が見られる子どもの中には、「発達障害」や「グレーゾーン」に当たるケースがあります。
本記事では、発達障害の子供が学校に行きたがらない理由や、発達障害と不登校の関係性を解説します。
また、記事の後半では、家庭内での過ごし方や、不登校の子どもに対するサポート方法や相談先についても、詳しくご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
発達障害と不登校の関係
近年、不登校児の数が増加しており、令和4年度の文部科学省のデータによれば、小中学生の不登校児は約29万人にのぼります。
不登校の原因は様々ですが、一般的に「学校へ行きたくない」原因には以下のようなことが考えられます。中
・人間関係の問題
・いじめの経験
・学業の遅れ
・生活リズムの乱れ
・朝の体調不良
特に、発達障害を抱える子どもたちは、人間関係や学業において課題を抱えやすい傾向があり、不登校になりやすいと言われています。
不登校の原因になり得る発達障害の特性を障害別にご紹介します。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の場合
前述のとおり不登校の主な原因のひとつは、「人間関係」に関するものです。
ASDの子供は人とコミュニケーションを取ることが苦手なため、クラスの友達との関係にトラブルが生じやすく、その結果、不登校に至ることがあります。
更に、ASDの子供たちには、こだわりが強かったり、マルチタスクが苦手などの特性があり、授業で周囲のペースについていけず、取り残される状況が生じることがあります。
他にもASDの特性から学校で直面する困難は以下のようなものがあります。
・授業変更や教室移動でパニックを起こす。
・自身のルールややり方にこだわり、集団行動が難しい。
・手先が不器用で作業が遅れる。
・マルチタスクが難しく、話を聴きながらノートを取ることができない。
・授業中に空気を読まず発言してしまう。
・騒音に敏感でイライラしやすい。
・過去の出来事に固執して仲直りが難しい。
上記のような困難が重なり、学校への不満が積み重なって不登校に至ることがあります。
日本の学校教育が一斉授業であり、個々の特性を十分に考慮しづらい状況も、ASDの子供にとって厳しい環境となっています。
注意欠陥多動性障害(ADHD)の場合
ADHDを抱える子供は、不注意でルールや決まりごとを忘れてしまう、衝動的に何かをしてしまって友達とのトラブルを起こしやすい傾向にあり、それが原因で不登校になることがあります。
また、多動性によりじっとしていられなかったり、周りと同じことができなかったり失敗が続くことで自己肯定感が下がり、無気力になったり、学校に行き渋ったりして、不登校になるケースも多いです。
ADHDの子供が学校で直面する困難な例には以下のようなものがあります。
・順番待ちができず、他の友人を抜いて並んでしまう
・思ったことをすぐに口にしてしまい友人とトラブルになるせ
・自分の話をしゃべり続けてしまうせ
・集中力が続かず、友人と話している最中に別の事を始めてしまうせ
上記のような困難が重なり、不登校に至ることがあります。
学習障害(LD)の場合
学習障害とは、全般的な知的発達には問題がないものの、「読む」「書く」「計算する」などの特定の学習のみに困難が認められる特性です。
そのため、このような学習障害によって学業の成果が得られなかったり、授業についていけないことで、自己肯定感が低下してしまい、不登校になることがあります。
発達障害の子供が小学校に行きたくない理由
先ほどは、不登校の原因になり得る発達障害の特性をご紹介しました。
では、発達障害を抱える子どもがなぜ登校を嫌がるようになるのか、その理由の一つには、特有の「生きづらさ」が関係しています。
ここではその生きづらさの理由をご紹介します。
発達障害の特性による「できないこと」がある
発達障害を持つ子どもは、特性によりできないことが多いです。それが原因で自己肯定感を下げることがあります。また、他の子ができていることができず、学校では「できない子」「トラブルを起こしやすい子」というレッテルを貼られることもあります。
自分の努力にも関わらず周囲に追いつけないと感じると、自信を喪失してしまい、家庭内でも「なんでできないの!」と叱られると、自己肯定感が低下してしまいます。これは発達障害のない子どもにも同様ですが、発達障害を抱える子どもは特に、得手不得手が異なることは当然であり、親は子どもの味方であり続け、できないことを否定せず、注意深く接することが大切です。
周りと「同じこと」ができない
学校では、集団行動が基本であり、みんなが同じように行動することが求められます。
しかし、発達障害を抱える子供は特性からグループワークなどの集団活動も苦手であり、適切な役割を果たすことや友人との協力が難しいことも大きなストレスの原因となります。
また、「同じこと」ができないことで、先生に注意されるだけでなく、友人からからかわれることもあります。これにより、お子さんの自己肯定感が低下してしまうことがあります。
二次障害
発達障害を抱える子どもたちは、精神的な問題や社会生活の難しさを引き起こす可能性があります。これらの問題を、発達障害による「二次障害」と呼びます。
例えば、発達障害の子供は特性から他者とのコミュニケーションをとることが苦手なケースが多く、孤独感や孤立感からうつ病や適応障害などの精神疾患にかかり、そこから登校ができないことも考えられます。
小学校に行きたくない発達障害の子供のサポート方法
ここまでは発達障害を抱える子供がなぜ学校に行くのを嫌がるのかを紹介しました。
ここでは、そのような子供をどのようにサポートしたらよいかご紹介します。
行きたくない気持ちを否定しない
不登校の子供とのコミュニケーションでは、「意見を否定しない」ことがポイントです。子供が相談してきた場合は、丁寧に耳を傾けてその意見を尊重しましょう。
子どもが自分の言葉がしっかり聞かれていると感じることは、親子の信頼関係を築く上で重要であり、この信頼関係が不登校の問題解決に役立ちます。時には驚いたり慌てたりして否定したくなるかもしれませんが、それでは子どもが自分の味方ではないと感じ、孤独や疎外感を抱く可能性があります。
子どもの意見を受け入れる姿勢を崩さず、大人の目から見て非現実的な意見であれば、サポート団体などと相談して今後の対応を考えるよう心がけましょう。
勉強のサポートをしてあげる
学校以外にも、フリースクールや塾、家庭教師など、さまざまな学びの場があります。お子さんの勉強に関心がある場合や、「学校には行きたくないけど勉強はしたい」という場合には、これらの選択肢を提案してみましょう。
一部のフリースクールでは、在籍している学校の校長の承認があれば、通った日数を学校の出席として扱うこともできます。学校への通学を嫌がる場合には、家庭教師の利用も有効です。
家庭教師は、学力の向上だけでなく、コミュニケーションを通じて、家族以外との対人関係を構築する助けにもなります。
生活リズムを整える
不登校の子どもは、学校の枠がないため、生活の自己管理が難しいという側面があります。
昼間に仕事や家事をしている親御さんも、「もし、自分に仕事や家事がなかったら?」と考えてみると、毎日、決まった時間に起きて規則正しい生活ができるか想像してみてください。自己管理は大人でもなかなか難しいものです。
昼夜逆転を防ぐためには、一日のスケジュールや見通しを立ててあげるようにしましょう。タイマーやスケジュール表を使って決めた時間を守るよう心がけたり、ゲームに没頭しすぎないよう、一日のゲーム時間を制限したり、本人の不安やストレスを考慮した上で外出の習慣を作ったりするのがおすすめです。
専門家に相談する
「専門家に相談すること」も非常に大切です。
別の言い方をすると、「親だけで問題を抱え込まないこと」が重要です。親子だけで解決しようとすると、行き詰まったり、家庭の雰囲気が暗くなったりして、解決策が見つからないことがあります。
不登校の問題に取り組んできた専門家なら、子供の事情を考慮した上で適切なアドバイスを提供してくれます。自分で解決しなければと思うのは自然なことですが、自身のストレスを軽減するためにも、専門家の利用を強くお勧めします。
どのような専門家に相談したら良いかは記事の最後にお伝えします。
学校を休んだ時の過ごし方
子どもが「学校に行きたくない」と言って学校を休んだ場合の対応方法を2つご紹介します。
ゆっくり休む
1つ目は、ゆっくり休むことです。まず、学校を休むことを否定的に捉えないように心がけましょう。
「学校を休んだからといって、家でだらだらしているのは良くない」「何かしなくてはいけない」と考えがちですが、学校を休むことは心や体が疲れているサインかもしれません。
そのため、ゆっくり休むことが重要です。やる気がなく一日中寝ていても、疲れていると考え、起こさずに休ませたり、起きた後も普段通りの会話をして、リラックスした雰囲気を作ってあげてください。
好きなことをしてみる
2つ目の方法は、子供の好きなことや興味のあることをすることです。
子供が元気で安定しているようなら、「学校に行っていないからこそ、やりたいことを楽しもう!」と考え、子供の興味や好きなことを探り、楽しめること、好きなことをさせてみましょう。そこから、気持ちが前向きになり、やる気が湧いてくることがあります。
発達障害を抱える子供は発達障害の特性から疲れやすいことがありますが、前向きに過ごすことで学校へのリハビリにもなります。子供が「学校に行きたくない」と言ったら、まずはその気持ちを受け入れ、子供の気持ちに寄り添った対応を心がけましょう。そして、学校を休んだ日にはゆっくり休むことや好きなことをすることを意識し、子供と楽しい時間を過ごしましょう。
不登校の支援や相談先
在籍している学校
まずは、担任の先生やスクールカウンセラーに相談することから始めましょう。担任の先生やスクールカウンセラーに相談するメリットは以下の通りです。
•子どもを既に知っているため、性格や学業に関する前提を共有しながら相談できる。
•クラスの状況や雰囲気を把握しているため、より実情に即した話ができる。
担任の先生は、子供の学校での事情や性格に詳しく、また、進級や進路相談などの「先のこと」まで話せます。
もし担任の先生と折り合いが悪い場合は、養護教諭や学年主任の先生など、学校の別の先生に相談することも考えられます。
また、スクールカウンセラーなどからは、学校外のサポート団体を紹介してもらえることもあります。学校全体が協力的でない場合は、他の相談先を積極的に利用することを検討しましょう。
教育支援センター
教育支援センターは、不登校の子どもや特性のある子どものために設置された公的機関で、教育委員会等が運営しています。指導には教員や心理、福祉の専門家が関わり、学習支援やカウンセリングなど様々な活動が行われています。
施設によって内容は異なりますが、個別指導やカウンセリングが中心であり、保護者への支援も行われています。また、季節行事や社会体験などの活動も提供されています。
教育相談室
各市町村にある教育相談室では、生徒や保護者向けに、不登校やいじめ、友達関係、学業不振などの悩みに関する教育相談を提供しています。
面接相談では、保護者からの電話で予約を受け付け、臨床心理士や教職経験者が対応し、必要に応じて専門機関への紹介も行われます。
就学前の相談では言葉の遅れやくせに関する相談が多く、小学生の相談では集団不適応や学業不振が主な悩みとして挙げられています。
電話相談では、子育てに関する不安や悩みを匿名で受け付けており、必要に応じて面接相談への案内も行われます。
児童家庭支援センター
児童家庭支援センターでは、18歳未満の子供やそのご家族を対象として、子育てやしつけの悩み、発達障害、子どもの行動上の問題などについて相談することができます。
電話や来所による相談を受け付けており、さらに一部の自治体では子どものショートステイ事業も提供しています。子育てに関する知識や技術を提供し、子育て支援講座を開催しながら、子育てで悩む家庭に寄り添ったサポートを提供しています。深刻な問題がなくても、初めての子育てに関するアドバイスを受ける場として、気軽に活用することができます。
フリースクール
フリースクールは、民間の教育機関であり、主に不登校や引きこもり、身体障害や発達障害を抱える学生が利用できます。
施設によっては学校と連携し、出席扱いとなる場合もありますが、義務教育の過程に限られます。
教育方針は施設ごとに異なり、子どもや親の教育理念と合致するかを注意して選ぶ必要があります。
医療機関
不登校だからといって医療機関を受診しなくてはいけない訳ではありませんが、不登校に伴い、頭痛や腹痛など身体の症状がある時は、一度小児科など近くのかかりつけの医師へ相談することをおすすめします。
また、不登校の原因が精神疾患等の場合、治療が必要な場合もあります。児童精神科では、実は不登校もよくある相談事例です。
まとめ
本日は発達障害と小学校への不登校、行き渋りの関係や原因、サポート方法などをご紹介しました。
子どもの不登校の原因は多岐に渡りますが、発達障害の特性が関連している場合もあります。その際、適切な支援が遅れると不登校が長引いたり、さらに二次障害が発生する可能性もあります。子どもの感情を理解しながら、適切な対応を心がけることが大切です。
親が一人で悩まずに、必要に応じて相談機関に頼って連携し、支援を行う方法もあります。不登校支援では、学校への復帰だけでなく、子どもの将来についても考慮し、彼らの意見を尊重しながら進めることが重要です。