毎日子どもと向き合っていると、「これって普通なの?」「愛情が足りないのかな」と不安になる場面がありますよね。特に2歳ごろには「イヤイヤ期」もはじまっていて、お家の人の大変さは計り知れません。
そんな子どもの成長の中で、多くのお家の人が不安になる行動のひとつが「噛みつき」行為です。「2歳になっても噛みつき行為をするから発達障害だ」と決まっているわけではありません。それでも、同じ月齢の子どもと比べてしまい、心配になることもあるのではないでしょうか。
この記事では、2歳児の噛みつきの原因や改善方法などを詳しく解説します。子どもの発達に不安を抱えても、適切な知識を持つことで少し心の余裕ができるかもしれません。また、不安なときに相談できる行政機関も紹介しますので、悩んだときは気軽に専門家へ相談しましょう。
2歳児が噛みつく原因
2歳の子どもたちにはさまざまな欲求や感情があるのに、それを上手に表現できません。そんな2歳児が噛みつくときの心理的・身体的な原因は、下記の3つがあります。
- 感情のコントロールが苦手
- 気持ちを言葉でうまく伝えられない
- 手より口の方が発達している
噛みつき行為の理由を知ることで余裕を持って対応できるかもしれないので、その原因を知っておきましょう。
感情のコントロールが苦手
2歳児が噛みつく原因のひとつに、まだ上手に感情がコントロールできないことがあります。本人にとってはあいさつのつもりで噛みつくこともあれば、興奮や怒りなどの感情表現に困って噛みつくこともあるのです。
大人から見ると、2歳児の噛みつきを「攻撃」だと捉えてしまうかもしれません。しかし、噛みつきは子どものコミュニケーションや感情の表現方法であることも多く、不満以外の要素が原因になる場合もあります。
噛みつき行為があっても、もしかしたら「あいさつをしたいのかな」「興奮しているのかな」と考えて落ち着いて対応しましょう。
気持ちを言葉でうまく伝えられない
2歳児は語彙が増えて少しずつ言葉を話せるようになりますが、まだ自分の気持ちを言葉でうまく伝えられるわけではありません。
なので「もっと遊びたい」「イヤだ」などの欲求があっても相手に言葉で伝えられず、もどかしい気持ちから相手に噛みついてしまうのです。
たとえば、「おもちゃを貸してほしい」「〇〇はやりたくない」「すごく楽しいのでもっと遊びたい」のような感情は、2歳児が言葉にするのはまだ難しい可能性があります。
2歳児が噛みついてしまうときは、「何かを伝えたい」のかもしれません。子どもの気持ちに寄り添い、感情を代弁してあげることが大切です。
手より口の方が発達している
子どもは、頭から足に向かって発達するので、手より口の方が先に発達していきます。「やめて」「とって」「ほしい」などの感情を表現するとき、ジェスチャーがひとつの手段といえますが、2歳児にとって細かな身振り手振りで伝えることが難しいかもしれません。
そのため、2歳児は気持ちを言葉で伝えられないときに、とっさに手よりも口が先に反応してしまい、相手に噛みついてしまうのです。
子どもはジェスチャーでうまく伝えられないことを噛みつきで訴えている可能性があります。子どもの手の動きに注目して、伝えようとしている気持ちを受け止めてあげましょう。
噛みつきを改善する3つの方法
子どもの噛みつきが多いと、誰かに怪我をさせないか心配になりますよね。できれば、感情表現のために噛みつかなくて済むように改善していきたいと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。2歳児の噛みつきを改善する方法は、以下の3つです。
- 口や手に刺激を与えるグッズやおもちゃを使う
- 思っていることを絵カードなどで伝えさせる
- 感情を別の方法で発散させる
安心して保育園や幼稚園に預け、子どもを叱る回数を減らすためにも、噛みつきの改善方法を把握しておきましょう。
口や手に刺激を与えるグッズやおもちゃを使う
噛みつきは、自分の口の感覚を刺激するための行動なので、口や手に刺激を与えるグッズやおもちゃを活用すると噛みつきを予防できます。
たとえば、ラッパのような口を使って遊べるおもちゃが効果的です。噛みつき以外で口を刺激することで、とっさの噛みつきの予防につながります。
また、口だけでなく、手や足などを刺激することも有効です。足に刺激を与えられるトランポリンや、手に刺激を与えるお絵かきボードなどが挙げられます。口以外への刺激が増えることで噛みつきを減らすことが期待できるでしょう。
グッズやおもちゃは、こどもが噛みつそうになったときだけでなく日常的に使うことが大切です。遊びを通して、口以外の感覚器官で刺激を感じられるようにしましょう。
思っていることを絵カードなどで伝えさせる
2歳児はまだ感情を上手く表現できず思っていることをうまく伝えられません。何かを感じていても噛みつきでしか思っていることを伝えられないのです。
噛みつきがある子どもには、別のコミュニケーション方法を教えてあげることで、噛みつきが改善することがあります。まだ言語化が難しい子どもには、絵カードで気持ちを伝える訓練が効果的です。
上手に言語化できないからこそ、子どもでもわかるように絵カードや写真を活用しましょう。「ごはん」「おもちゃ」「散歩」など、できるだけ子どもの欲求とリンクする物を用意してください。子どもの欲求を視覚的を噛みつき以外の方法で伝えられるよう訓練することで、スムーズな意思疎通ができるようになります。
感情を別の方法で発散させる
感情の発散がうまくいかない場合も、噛みつきが起こりやすくなります。2歳の子どもは「もっと遊びたい」や「これは嫌だ」などの感情をうまく表現できないと、人に噛みつくことで相手に伝えようとしてしまうのです。
子どもの感情を別の方法で発散させてあげることで、噛みつきを予防できることがあります。お気に入りのおもちゃで遊ばせてあげたり、行きたい所に連れて行ってあげることなどが効果的です。夢中になって遊んでいる間に、抱えていた上手く表現できない感情を発散できます。遊びを通して、子どもが抱えている感情を表現できるかもしれません。
好きなことで感情を発散する訓練をすることで、噛みつき以外の方法で感情を発散したり調節したりすること学べるでしょう。
気になるサイン!2歳児の発達障害の特徴
発達障害の2歳児に見られる特徴は、以下の8つです。
- 言葉の発達が遅い
- 繰り返し同じ動きをする
- こだわりが強い
- 音に敏感
- 1人で遊ぶことを好む
- 表情が乏しい
- 目が合わない
- 寝つきが悪い
それぞれ解説します。
言葉の発達が遅い
発達障害の子どもは、2歳ごろから言葉の遅れが目立ち始めます。一般的に2歳ごろの子どもは「ワンワンいた」のように、2つの言葉をつなげておしゃべりできることが多いです。
しかし、発達障害がある子どもは、「上手に言葉をつなぎ合わせられない」「オウム返しで話す」などの特徴があります。また、あまり周囲に関心がないと発語が少なくなる傾向があるので、言葉を話さないときも注意が必要です。
繰り返し同じ動きをする
発達障害の子どもは、目的のない行動を頻繁に繰り返す傾向があります。発達障害の子どもに見られる行動は、以下のようなものです。
- 手をたたく
- 机や壁をたたく
- くるくる回る
- 身体をゆらす
- 物を回す
- 手をひらひらさせる
- 爪を噛む
上記のような行動は「常同行動」と言われており、3歳までの子どもに現れ、基本的に年齢とともに減少していきます。繰り返し同じ動きをする状況に困ったときは1人だけで悩まず、早めに専門家に相談しましょう。
こだわりが強い
発達障害の子どもは、特定のものに強いこだわりを示す傾向があります。服の色や食器などがいつもと同じでないと拒否することも少なくありません。発達障害の子どもは心の切り替えが苦手なので、一度拒否すると気持ちを持ち直すのが難しくなります。
また、強いこだわりは物に対してだけではありません。毎日の散歩の時間や毎日のルーティンの順番など、物以外のことについても過度にこだわってしまうこともあります。例えば、毎日同じ時間に散歩に行くことがこだわりであれば、「雨だから今日はお散歩は無しね」といっても子どもには受け入れらないのです。
こだわりには個人差があるので「どんなときに、どんなものにこだわっているのか」をよく観察して、その特性に寄り添うことが大切です。
音に敏感
発達障害の子どもは、音に敏感なことが多いです。とくに、スピーカーから聞こえる音や緊急車両のサイレン、雷などの大きな音を嫌がる傾向があり、泣き出してしまう子も少なくありません。
子どもによっては特定の音が聞こえたときにパニックになるおそれもあります。特定の音に敏感すぎると感じたときは、どんな音を嫌がっているのか把握しておきましょう。日常生活に困るほど音に敏感な場合は、できるだけ早く専門家へ相談することをおすすめします。
1人で遊ぶことを好む
子どもは3歳前後になると、周りの子どもと複数人で遊ぶことが多くなります。周りに興味を持ち、コミュニケーションを取りたいと感じ始めるからです。
しかし、発達障害を抱える子どもは周囲への関心が薄く、1人で遊ぶことを好む場合が多いです。数人で集まって遊ぶための「臨機応変な対応」や「コミュニケーション」が難しく、友だちを作りたいという欲求を示しにくい傾向があります。
また、慣れていないものへの強い拒否感から「極端な人見知り」が起こり、行き渋りや登園拒否につながる場合もあります。ただし、2歳児の人見知りは個性や性格であることも多いので、過度な心配は必要ありません。
表情が乏しい
発達障害を抱える子どもは、感情表現が苦手な場合が多いです。他人への関心が薄いので、そもそも他人の顔を見ることを嫌がる傾向があります。また、他者への興味や関心がないので、部屋に1人でいても泣かないこともあります。
ただし、表情が乏しいとしても何も感じていないということではありません。普段の会話の中で、子どもの気持ちに寄り添い、感じていることを聞いてあげるようにしましょう。
目が合わない
子どもと目が合いにくいのも、発達障害の特徴のひとつです。発達障害のある子どもは、以下の理由で人と目を合わせないことがあります。
- 他人の表情に興味がない(別のことに気が散る)
- 人と目を合わせることで不安やストレスを感じる
- 認知機能が遅れており、親しい人でも目を見れない
- 過度の人見知り
目が合わないことでコミュニケーションに課題が生まれる場合もあるので、注意が必要です。発達障害の子どもは視線が合わないだけでなく、手をつながない・抱っこを嫌がる傾向もあります。
日常生活の中で目が合わないことに悩んでいても、大人の工夫次第で目が合うようになる場合もあります。子どもの特性に寄り添って、目を合わせる工夫をしてみるのも良いかもしれません。
寝つきが悪い
発達障害を抱える子どもは、睡眠障害も抱えている場合が多いです。睡眠障害には、以下のような課題があります。
- 寝つきが悪い
- 夜中にに何度も目が覚めてしまう
- 睡眠時間が短い
- 日中に眠たくなってしまう
- 朝決まった時間に起きることが難しい
睡眠不足が起こると、日中に発達障害の症状が強く現われてしまい、問題行動につながることも少なくありません。子どもの睡眠不足は成長に悪いだけでなく、お家の人の悩みにもなるので、課題を感じるときは早めに専門家へ相談しましょう。
3つのタイプ|発達障害
発達障害にはいくつかの種類があり、それぞれで特性が異なります。ここでは、発達障害の中から以下の3タイプを紹介します。
- 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)
- 注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)
- 限局性学習症/限局性学習障害(SLD)
発達障害は愛情不足や教育の失敗で起こるものではなく、生まれつき「脳の機能に違いがある状態」です。特性に合わせた支援を行うためにも、タイプごとに異なる特性を知っておきましょう。
自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)
A自閉症スペクトラム障害(ASD)は、「社会的なコミュニケーションに欠陥があること」「行動や感情に限定的な様式が見られること」などの特性を持っているといわれています。幼いころから症状が現れる場合が多く、2〜3歳までに診断されることがあります。自閉スペクトラム症の子どもに見られる症状は、以下のとおりです。
- 目が合わない
- 笑いかけても笑い返さない
- 周りの人の動きや声を真似しない
- 言葉の遅れがありバリエーションが増えない
- こだわりが強い
- 感覚過敏がある
- 同世代の集団に入っていけない
1歳半検診や3歳児検診のタイミングで指摘されることもあれば、就学後や成人後に診断を受けることもあります。ひと言に自閉症スペクトラム障害(ASD)といっても、その特性や生き辛さは同じではありません。一人ひとりの子どもに寄り添った支援が大切です。
注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)
注意欠如・多動性障害(ADHD)とは、「不注意(気が散る・物をなくしやすいなど)」と「多動(静かにできない・じっとしていられないなど)」の特性を持っています。具体的には、以下のような症状があります。
- いつも落ち着きがない
- 気になることがあるとすぐに飛びつく
- 物をよく無くす
- 忘れ物が多い
- みんなが静かでも1人で騒いでしまう
注意欠如・多動性障害(ADHD)の特性があると「できないこと」が多く、叱る大人と叱られる子ども、どちらも疲弊しがちです。お家の人が困っているときは子ども自身も困っているときなので、思いつめる前に子育て支援センターや児童相談所などの専門家へ相談しましょう。
限局性学習症/限局性学習障害(SLD)
限局性学習障害(SLD)を抱えていても幼少時に気づくのは難しく、年齢が上がるにつれて苦手なことがわかってきます。局性学習障害(SLD)の症状例としては、以下の通りです。
- はさみや折り紙、のりづけができない
- 視線を合わせられない
- ボタンのかけはずしが中々できない
- かんしゃくを起す
小学生になり授業がはじまると、より顕著に症状が現れます。局性学習障害(SLD)は子どもにとって大きな困りごとになり、不登校へつながる可能性も少なくありません。勉強不足や努力不足が原因だと責めるのではなく、子どもの特性に最適な支援や声かけを行うことが大切です。
不安になったら相談しよう!相談できる場所
「もしかして、この子は発達障害なのかも……」と不安に感じたら、1人で抱え込む前に専門家や子育ての相談ができる機関へ相談しましょう。ここでは、発達障害や子育てに関する悩みを相談できる5つの機関を紹介します。
- 発達障害者支援センター
- 市町村保健センター
- 児童相談所
- 子育て支援センター
- 児童発達支援事業所・放課後等デイサービス
お家の人の困りごとは、子ども自身の困りごとかもしれません。1人で我慢するのではなく大切な子どものためにも、まずは専門家へ相談してみましょう。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害児(者)を支援するための専門的な機関です。都道府県・指定都市や都道府県知事などが指定した社会福祉法人・特定非営利活動法人などが運営しています。
発達障害の子どもとお家の人などから日常生活の中で気になること・困っていることなど、さまざまな悩みを相談できます。また、家庭での療育方法のアドバイスや発達検査を受けることも可能です。
また、子どもの特性に合った療育や教育、支援の具体的な方法について、支援計画の作成・助言をしてもらえます。困りごとがあるときは、近くの発達障害者支援センターに相談してみましょう。
市町村保健センター
市町村保健センターは、健康相談や保健指導、健康診断などの地域保健に関する事業を地域住民に行うための施設です。市町村ごとに設置されていて、保健師や臨床心理士、看護師などが在籍しています。
市町村保健センターでは、妊娠から子育てに関するさまざまな支援を受けることが可能です。保健師はお家の人の困りごとに対応できるプロなので、子どもの発達の遅れや気になることがあれば気軽に相談しましょう。
児童相談所
児童相談所は、児童福祉法に基づいて設置される行政機関です。原則18歳未満の子どもに関する相談を受けつけています。児童相談所には児童福祉司や児童心理司、医師、保健師などが在籍しており、発達障害に関する専門的なアドバイスを受けることが可能です。児童相談所では、以下のような相談を受け付けています。
- 障害
- 養護
- 保険
- 育成
- 非行
児童相談所は全都道府県と政令指定都市に設置されているので、「すぐに誰かに聞いてほしい」と感じている方は、お近くの児童相談所に気軽に相談してみてください。
子育て支援センター
子育て支援センターは、乳幼児を子育て中のお家の人同士が交流できる施設です。子育てに関する相談や講習会、情報提供なども開催しています。
子育てしていると「相談できる人がいない」「同じ月齢の子どもを持つ知り合いがいない」と、孤立してしまいがちです。子どもに発達障害があると悩みはさらに大きくなるでしょう。
同じ悩みを持つ人と交流して友達になれれば、心の負担を軽くでき、孤独感を軽減させられるかもしれません。
子育て支援センターは各自治体や地域に設置されており、子育てについて無料で相談できます。発達障害の悩みや不安を抱えている方は、お近くの子育て支援センターへ気軽に相談してみてください。
児童発達支援事業所・放課後等デイサービス
児童発達支援事業所と放課後等デイサービスは、障害がある子どもを対象とした福祉サービスです。
子どもが自発的に活動ができるように、個別療育や集団活動、基本的な動作の習得など、子ども一人ひとりに合わせた支援を提供しています。
施設によってサービス内容はさまざまですが、児童発達支援事業所は0歳から6歳の「未就学児」、放課後等デイサービスは6歳から18歳までの「就学児」を対象としているのが違いです。
児童発達支援事業所と放課後等デイサービスは、子どもだけでなく保護者への支援体制が整っており、子育てに不安がある方や、悩みがある方に対して相談に乗ってくれる環境があります。
「子どもが発達障害かもしれない」「発達障害の症状がある子どもとの接し方がわからない」など、子育ての悩みや相談がある方は、お近くの施設に問い合わせてみましょう。
まとめ
2歳児に見られる行動のひとつに、噛みつき行為があります。2歳児はまだ感情の表現や気持ちの伝達がままならず、相手に自分の気持ちを表現するために噛みついてしまうことがあるのです。
2歳児に噛みつきが見られたときは、「口や手に刺激を与えるおもちゃを使う」「噛みつく以外の感情表現を訓練する」などの方法で改善が期待できます。
子どもに噛みつきが見られると「自分の子どもは発達障害なのかもしれない」と不安になるかもしれません。子育てに関する悩みや不安がある場合は、一人で抱え込まずに発達障害者支援センターや児童相談所などの専門機関へ相談しましょう。