発達障害の子どもはお風呂をめんどくさがる?理由や対処方法を解説!

男の子がお風呂でゆっくりしている写真

子どもが「まだ遊びたいから!」などの理由で、お風呂に入るのをめんどくさがることは、よくあることですが、多くの子どもにとってお風呂は楽しく、リフレッシュできるひととき。

しかし、発達障害をかかえる子どもの中にはお風呂を過度に嫌がったりするケースがあります。

本記事では、発達障害の子どもがお風呂を嫌がる理由や対策を解説し、楽しい入浴習慣を身に着けられるようなポイントをご紹介します。是非最後までご覧ください。

発達障害のお子様がお風呂をめんどくさがる理由

お風呂で舌を出している写真

お風呂をめんどくさがることと、発達障害は直接関係はありませんが、前述の通り、発達障害を抱える子どもの中には、お風呂を過度に嫌がるケースがあり、その理由にはさまざまな障害特性が潜んでいます。ここでは、『お風呂嫌い』の原因となる代表的な障害特性をいくつか紹介します。お子さまに当てはまるものがあるか、チェックしてみてください

お風呂が「めんどくさい」「苦手」と感じる発達障害の特性

「発達障害」といっても、特性や症状の現れ方は人それぞれです。

障害の種類別にお風呂が苦手な原因になる障害特性をご紹介します。

ただし、特性は単独で現れることもありますが、併存しているケースも考えられるため、参考までにご確認ください。

特性による「苦手」な感覚に対しては、無理に改善を求めるのではなく、適応していく工夫が重要です。お風呂が苦手な理由を理解し、その中で子どもが快適に過ごせるような工夫を考えましょう。

ASDの場合

・感覚過敏

ASDを抱える子どもの中には、「感覚過敏」が特性として現れることがあります。感覚過敏とは、五感(聴覚、視覚、触覚、味覚、嗅覚)のいずれかまたは複数が異常に敏感であり、それによって刺激に過敏に反応する状態を指します。

お風呂ではお湯や石鹸など、さまざまな感触に触れることが避けられず、感覚過敏の子どもにとってお風呂が不快なものとなってしまう場合があります。お風呂が苦手になる理由として考えられる感覚は以下のようなものが挙げられます。

・シャンプーやリンスに対する不快感

・石けんが痛いと感じる

・シャワーの水圧が痛いと感じる

・お湯が熱すぎると感じる

・お風呂の床の感触が苦手

・強いこだわり

ASDの特性の一つとして、「強いこだわり」が見られることがあり、特定のルーティンや行動パターンなどがその対象となり得ます。

例えば、お風呂の手順(体を決まった順に洗う、流すときは〇回流す)などが自分の中で決まっており、その通りにやらなければ気が済まなくなってしまい、手順の多さから「面倒くさい」という気持ちになってしまうことがあります。

・ネガティブな経験や痛みなどがフラッシュバックしやすい

ASDを抱える子どもの傾向として、ネガティブな経験や痛みなどがフラッシュバックしやすい傾向にあり、お風呂に関する嫌な経験が記憶に残っていることで、お風呂に苦手意識を持っている子どもがいます。

お風呂でのトラウマになるケースは下記のような物が挙げられます。

・シャンプーやお湯が目に入っていたかった

・湯船で溺れそうになった

・お湯が熱かった

・他人からの見え方がわからない
ASDの子どもの特性として、抽象的な概念や他者からの見え方を理解するのが苦手です。そのため、清潔という概念や、身だしなみの重要性は抽象的で理解しづらく、お風呂に入る必要性を感じていないため、入浴を拒むケースがあります。

DCDの場合

・手先が不器用

DCD(発達性協調運動障害)とは、基本的な協調運動(複数の身体部位を協力させて行う運動)が困難な発達障害です。そのため、身体を洗ったりこすったりする動作や、頭の泡を洗面器で流すことが苦手です。また、洗い忘れを指摘されることが多いと自信を無くし、お風呂に入ることに抵抗感を持つ場合があります。

ADHDの場合

・切り替えが苦手

ADHDの子どもは、自分の興味があるものを優先する傾向が強く、お風呂を後回しにしようとすることがあります。

例えば、ゲームや宿題などの別の作業に没頭している場合、そこからお風呂に入る行為にスムーズに切り替えることができません。

また、お風呂の入る時間が決まっておらず、毎日のスケジュールがバラバラな場合、予定外のタイミングでお風呂に誘われると混乱し、パニックを起こすこともあります。

・見通しが立たないことが苦手

ADHDがある子どもたちは、行動の順番や、それにかかる時間を上手に予測・計画することが難しいため、何をどうすればよいか分からず、不安を感じることがあります。お風呂に入る際には、服を脱ぐ、シャンプー・リンスをする、石けんで体を洗う、湯船に浸かる、頭や体を拭く、髪を乾かす、服を着るなどやらなければならないことが多く、行為の順序や所要時間が見通しにくいため、そこからお風呂が苦手な場合もあります。

発達障害の子どものお風呂嫌いに対する対策

お父さんと一緒にお風呂に入っている写真

楽しくお風呂にはいる工夫をする

お風呂に入る際に、下記のような子どもが楽しく興味を持てるような工夫をしてみましょう。

・入浴剤や泡風呂

カラフルな入浴剤や泡風呂を使って、お風呂に楽しい色や泡を取り入れましょう。お湯で変化する様子やふわふわの泡に子供たちは夢中になります。

・おもちゃ

お風呂用のおもちゃや浮き輪、ボートなどを使って水遊びを楽しんでみてください。

・絵を描く

絵が好きな子供には、お風呂のタイルに特殊なクレヨンや絵の具を使って絵を描くのも楽しめる工夫の一つです。

・絵本や音楽

お風呂用の絵本やお風呂で絵本を読んだり、子供向けの音楽をかけたりして、リラックスした雰囲気を楽しむのもよいでしょう。

・ごっこ遊び

海賊ごっこや動物ごっこ、おままごとなど、お風呂でごっこ遊びをするのもおすすめです。

このような工夫を取り入れてみると、子どもにとってお風呂が楽しい場所になるかもしれませんが、お子さまひとりひとりが異なる好みや感じ方を持っているため、いつもと異なる湯舟(色がついている、泡立っているなど)に抵抗感を感じることもあります。そのため、お子さまの反応を観察しながら工夫していくことが重要です。

「事前予告」をする

行動の切り替えや見通しが苦手な子どもに対しては、事前に具体的な指示を与えることが重要です。

例えば、

「〇時になったら、テレビを終わりにして、お風呂の準備を始めてね」と伝えると良いでしょう。

お風呂に入る際も、「髪の毛をシャワーで濡らして、シャンプーを使って洗うよ。それからスポンジで身体を洗って、最後に身体を拭いてから髪を乾かしてね。全部終わったら、また部屋に戻って遊ぼう」と具体的に説明することで、スムーズな行動切り替えが期待できます。

できるだけ決まった時間にお風呂に入るようにする

発達障害を抱える子どもは、発達障害の特性から変化への適応が苦手なので「予測ができる環境」がとても重要です。そのため、毎日同じ流れで、同じ時間にお風呂に入るルーティンを作ることが、子どもにとって安定感や安心感をもたらし、お風呂時間を毎日のルーティーンとして受け入れやすくなります。

怖さ・痛み・不快感などを感じさせないように探る

お風呂に入ることに「怖さ」を感じているお子さまに対しては、

例えば、シャンプーをするときに、「お母さんが最初にシャンプーをするね。目をぎゅっと閉じてれば、痛くないよ」と伝えたり、「シャンプーハットをかぶっていれば、お湯や泡が目に入らないよ」といった声かけや、保護者が先に手本を見せることで安心感を与えることが有効です。

感覚過敏によって「苦痛」がある場合には、

シャワーが嫌な場合は桶を使ったり、お風呂の温度を調整したり、刺激の弱いスポンジや手で身体を洗ったりすることが効果的です。

シャンプーが苦手な場合には、シャンプーハットをかぶったり、ガーゼで目を隠したり、水中眼鏡をかけたりするなどの工夫が役立つかもしれません。

お風呂の必要性をこどものわかる言葉で話す

自閉症スペクトラム障害(ASD)のお子さまは一般的に「自分視点」で物事を捉える傾向があるため、「他人からどう思われているか」を気にすることが苦手で、身だしなみを整えることが「当たり前」でない場合があります。自分視点でしか物事をとらえにくいので「自分が損をする」という説明がポイントです。論理的な理由を交えて、「清潔」でいるべき理由を説明してみましょう。

例えば、

「 シャンプーをしないと、髪の毛がくさくなって、お友達が遊んでくれなくなるかもしれないよ。」

「 身体を洗わずに、汚れが肌についたままだと、病気になることがあるよ。」

など、自分の健康や人間関係に対して直接的に関わることを話すと、清潔に保つことの意義を理解しやすくなります。

入れたら褒めることを忘れない

子どもの成長スピードは個人によって異なります。ひとりひとりに合わせ、スモールステップで少しずつ目標を達成していくことが大切です。

例えば、

・湯船に1分以上浸かれるようになる

・駄々をこねずにお風呂に向かえる

・一人でお風呂に入る

など、年齢や状況に応じた目標を設定しましょう。

できた際は、その瞬間に具体的に褒めるよう心がけましょう。適切な褒め言葉は自己肯定感を高め、行動を継続しやすくします。

一方で、できなかった場合は叱ったり、説教やネガティブな言葉は避けましょう。モチベーションが下がり、せっかくの努力も報われないと感じてしまうことがあります。ポジティブなアプローチでサポートし、子どもたちが自ら進んで行動する喜びを感じられるようにしましょう。

お風呂に入れない子どもにしてはいけないこと

お父さんが子供を拭きあげている写真

お風呂に入れないことを叱責する

子どもがお風呂に入れなかった場合でも、叱るべきではありません。発達障害のある子どもたちは、叱られた経験を強く記憶し、それがトラウマとなってしまい余計にお風呂が苦手になってしまう可能性があります。代わりに、肯定的な言葉や励ましを通じて、子どもに自信を持たせ、失敗や困難に対するポジティブなアプローチを促進することが望ましいです。

無理やりお風呂に入れる

嫌がる子どもを、無理やりお風呂に入れるべきではありません。

特に発達障害のある子どもたちは、単にお風呂が嫌いだからというだけでなく、拒否には様々な理由が潜んでいます。

生活スタイルの変化に適応できない、目先の楽しいことに気を取られて集中できないなど、その子がお風呂に入りたがらない理由を探ることが非常に重要です。

なぜお風呂を嫌がるのかを理解し、お子さまの感情を尊重し、コミュニケーションを通じて、お風呂に入れるようアプローチしていくことが大切です。

入浴で得られる効果4選

お風呂の湯舟をためている写真

子どもにとって、毎日ちゃんとお風呂に入ることは、健康で元気な体を維持するために欠かせません。

なぜお風呂に入る必要があるのか、お風呂に入ることで得られる効果を4つ紹介します。

良質な睡眠がとれる

子どもの成長において、良質な睡眠は不可欠です。良い睡眠を確保するためには、就寝前に一度体温を上昇させ、その後深部体温を下げることが鍵を握ります。

シャワーだけでお風呂を済ませると、深部体温が上昇せず、体温が低いままとなりがちです。ただし、就寝前に深部体温を下げることも重要です。入浴によって上がった体温を急降下させることで、眠気を誘い、心地よい入眠をサポートします。お風呂で芯まで温まることで深部体温が上昇し、良質な睡眠に導かれるのです。

良質な睡眠が確保されると、エネルギーが生まれ、カラダの機能が整います。さらに、睡眠中には成長ホルモンが豊富に分泌されるため、子どもの健やかな成長をサポートします。

風邪をひきにくくなる

お風呂につからないと、体温が十分に上昇しません。ごくまれな場合を除いて、シャワーだけで入浴する習慣が身につくと、血行不良が起こり、体温が低下することも。体温が低下すると、内臓が冷え、自律神経の乱れや内臓機能の低下につながります。

その結果、免疫力が低下し、風邪を引きやすくなったり、体調不良を感じやすくなります。特に女の子は男の子よりも筋肉の量が少ないため、体が冷えやすく、体調不良になりやすいリスクが高まります。

毎日入浴することで、深部の体温が上昇し、血液の循環が良くなります。体が温まることで、正常な体温が維持され、免疫力が向上し、風邪を引きにくくなる効果も期待できます。

体の老廃物を流しだす

人間は、ノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返すことで、安定して高品質な睡眠を得ることができ、蓄積された疲労や体内にたまった老廃物は、深い眠りである「ノンレム睡眠」の時間帯に排出できます。ノンレム睡眠の時間帯は、肉体の疲労だけでなく、成長ホルモンの分泌が活発になる重要な時間帯でもあります。

子どもたちが健康に成長し、疲れを次の日に持ち越さず元気に毎日を過ごすためには、しっかりとした入浴が欠かせません。

集中力や記憶力アップにつながる

温かい湯船に浸かることで、心身ともにリラックスしているため、記憶力が向上し物事をより良く覚えることができます。

浴槽につかりながら、九九を覚えたり、読み書きの学習をするなど、入浴を通じた学習、いわゆる”浴育”は子どもの成長に良い影響をもたらすので、積極的に取り入れるべき習慣の一つと言えます。

入浴時のポイント

女の子がお風呂に入っている写真

お湯の温度

子どもと一緒に入浴する際は、大人がぬるいと感じるくらいが最適で、一般的には38~39度程度が適温とされています。この温度のお湯に浸かることで、子どもの心臓や血管に負担をかけずに血行を促進できます。冬季など気温が下がる時には、39~40℃程度と1度ほど高めに設定すると良いでしょう。

入浴時間

入浴時間は15分程度が望ましく、長くても20分程度にとどめておくことが理想的です。

子どもはお風呂で遊ぶことが多く、つい入浴時間が長引いてしまうことがあります。しかし、長時間お風呂に入ると、カラダが温まりすぎて交感神経が刺激される可能性が。また、水圧により体力を消耗するため、子どもの方が大人よりも体力が少ないため、過度な入浴はカラダに負担がかかりすぎることがあります。

食後の入浴を避ける

夕食を終えて直ぐにお風呂に入るという方もいるかもしれませんが、

食後すぐの入浴は避け、少なくとも1時間ほどの時間をおいてからお風呂に入るよう心がけましょう。食後まもなくは胃腸を含む消化器官に血液が集中しています。お風呂に入ることで全身の血行が良くなり、その分消化器官に供給される血液が減少します。これにより、内臓の機能が低下し、食べ物の消化が十分に行われなくなる可能性があります。

消化不良は吐き気や膨満感、食欲不振を引き起こす可能性があります。

就寝から1~2時間前に済ませる

入浴により上昇した体温は、時間が経つにつれてゆっくりと下がります。体温が下がると同時に眠気も強くなりますが、入浴直後はまだ体温が完全に下がっていないため、良質な睡眠を得るには適していません。

入浴によって温まった体は、通常の体温に戻るのに1~2時間かかります。そのため、就寝の1~2時間前に入浴を済ませると、夜更かしをせずにしっかりと眠りにつくことができます。

まとめ

湯船で男の子が笑っている写真

本日は発達障害のこどもがお風呂を嫌がる理由や対処方法をご紹介しました。子どものお風呂への苦手意識や不快感を改善するには、まずその理由を探ることが重要です。

どのような理由でお風呂が苦手なのかを確認した上で、子どもに合った対策方法を考え、子どもが快適に入浴できる環境を整えてあげましょう。

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この記事を書いた人

ウィズ・ユー編集部

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