ワーキングメモリが低い子どもは発達障害?特徴・困りごと・家庭でできるサポートを解説

?と子ども

「うちの子、何度言っても忘れてしまう」「学校の先生から”話を聞いていない”と言われた」

そのような悩みを抱えて、このページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。

頑張っていないわけではないのに、指示を忘れる、忘れ物が多い、授業についていけない。周囲から「やる気がない」と誤解され、子ども自身が自信を失っていく姿を見るのは、親としてとてもつらいことです。

実は、こうした困りごとの背景には「ワーキングメモリ」という脳の働きの弱さが関係しているケースがあり、発達障害との関連も指摘されています。

この記事では、ワーキングメモリの基礎知識から、低い子どもの特徴、発達障害との関係、家庭で今日からできるサポート方法までをわかりやすく解説します。

ワーキングメモリとは?

考えている女学生

ワーキングメモリは情報を一時的に保持・処理する力

ワーキングメモリとは、必要な情報を頭の中に一時的に置きながら、同時にそれを使って考えたり行動したりする脳の働きです。

たとえば、先生が「教科書の32ページを開いて、3番の問題を解いてください」と言ったとき、「32ページ」「3番」を覚えたまま教科書を探してページをめくる、この一連の動作を支えているのがワーキングメモリです。

よく「脳の作業台」にたとえられます。作業台が狭い人は情報があふれてしまい、途中で何をしていたかわからなくなることがあります。

ワーキングメモリは勉強だけでなく、会話、料理、買い物など日常のあらゆる場面で使われています。子どもの「困った行動」の多くが、実はこのワーキングメモリの力と深く関わっているのです。

短期記憶との違い|「覚える」だけでなく「使う」力

短期記憶は情報をそのまま短い時間だけ覚えておく力です。一方、ワーキングメモリは覚えた情報を使いながら別の作業もこなす力を指します。

短期記憶ワーキングメモリ
役割情報を一時的に「覚える」覚えた情報を「使いながら考える」
電話番号を聞いてメモする暗算で繰り上がりを覚えたまま計算する

ワーキングメモリは「記憶+処理」の同時進行が求められる、より高度な脳の力です。この違いを知っておくと、子どもが「覚えてはいるのにうまくできない」という状況の理由が理解しやすくなります。

ワーキングメモリの容量には個人差がある

ワーキングメモリの容量は人によって異なり、努力や性格の問題ではなく、生まれ持った脳の特性による部分が大きいとされています。

容量が小さいからといって「頭が悪い」わけではありません。ワーキングメモリはあくまで脳の機能のひとつであり、知能全体を表すものではありません。容量が小さい子どもでも、周囲の理解と適切なサポートがあれば、困りごとを大きく減らすことができます。

ワーキングメモリが低い子どもに見られる特徴

考えて計算している男の子

複数の指示を覚えられず行動できない

「手を洗って、カバンを片付けて、宿題を出してね」と3つの指示を伝えたとき、最初のひとつだけ覚えていて、あとの2つを忘れてしまう。これは脳の作業台に一度に載せられる情報の量を超えてしまうために起こります。

学校でも「ノートを出して、日付を書いて、黒板を写して」といった連続指示は日常的に飛び交います。そのたびについていけないと、子どもは「自分はダメなんだ」と感じてしまいがちです。

「何度言ってもできない」のは、やる気の問題ではなく、脳の容量の問題だと理解することが、サポートの第一歩になります。

授業中に集中が続かない・話を聞き逃す

先生の説明が長くなると、話の前半を覚えておくことに精一杯になり、後半が頭に入りません。結果として「聞いていなかった」ように見えてしまいます。

脳の中で「聞く」「覚える」「考える」を同時にこなすことが難しい状態であり、叱るよりも情報を受け取りやすい方法を一緒に考えることが大切です。

読み書きや計算でつまずきやすい

文章読解では前の文の内容を覚えながら次を読み進める必要があり、計算では繰り上がりの数を保持しながら次のステップに進まなければなりません。途中で情報が抜け落ちると、正しい結果にたどり着けません。

漢字の書き取りでも、お手本を見て覚えた形を思い出しながら書くという作業にワーキングメモリが使われます。「見て、覚えて、書く」の流れの中で情報が抜け落ちると、何度練習しても正しく書けないことがあります。

勉強が苦手に見える子どもの中には、理解力ではなくワーキングメモリの弱さがつまずきの原因になっているケースが少なくありません。

忘れ物・なくしものが多い

「明日は体操服がいる」と聞いても、帰りの支度や友達との会話のうちに情報が脳の作業台から落ちてしまいます。

「だらしない」のではなく、覚えておける情報の量に限りがあるのだと捉え直すことで、仕組みで防ぐ工夫に目を向けやすくなります。

会話がかみ合わず友達関係で悩むことも

会話では、相手の話を聞きながら自分の返答を考える同時処理が必要です。ワーキングメモリが低いと話題がずれた返答をしてしまい、「空気が読めない」と思われがちです。

こうした困りごとが続くと、子どもは友達関係に自信をなくしてしまうことがあります。早めに特性を理解し、適切に関わることが重要です。

ワーキングメモリが低いと発達障害?

ADHD

発達障害の子どもはワーキングメモリが低い傾向

ADHD(注意欠如多動症)や学習障害(LD)、自閉スペクトラム症(ASD:対人関係やコミュニケーションに特性がある発達障害)の子どもは、ワーキングメモリの得点が低い傾向にあると多くの研究で報告されています。

大切なのは、ワーキングメモリの低さを発達障害かどうかの唯一の判断基準にしないことです。子どもの困りごとを理解するためのひとつの手がかりとして捉えてください。

ADHD(注意欠如多動症)との関連

ADHDでは注意を持続させる脳の機能に特性があるため、情報を頭にとどめておくこと自体が難しくなりやすいです。

「指示を忘れる」「話を聞き逃す」「忘れ物が多い」といった特徴は、ワーキングメモリの低さと重なる部分が多くあります。

ワーキングメモリの弱さが不注意の症状をさらに強める場合もあり、この2つは相互に影響し合っていると考えられています。

学習障害(LD)との関連

学習障害とは、知的な遅れはないものの「読む」「書く」「計算する」に著しい困難が見られる障害です。

文字を音に変換しながら意味を考えたり、計算の途中経過を保持しながら次に進むといった処理にはワーキングメモリが深く関わっています。

学習のつまずきが続く場合は、「努力不足」と決めつけず、ワーキングメモリの弱さが背景にある可能性も視野に入れてみてください

ワーキングメモリが低い=発達障害とは限らない

発達障害の診断がなくても、平均より低いワーキングメモリを持つ子どもは一定数います。また、睡眠不足や強いストレスなどの一時的な要因で本来の力を発揮できないこともあります。

「低い=発達障害」と安易に結びつけず、子どもが何に困っているかを丁寧に見ることが最も大切です。

ワーキングメモリは鍛えられる?家庭でできる工夫

壁に可愛い絵を描く女の子

「ワーキングメモリ自体を増やす」ことは難しいとされている

現時点の研究では、ワーキングメモリの容量そのものを大きく増やすことは難しいとされています。

「容量を増やす」ことよりも、「少ない容量でも困らない環境を整える」という発想の転換がポイントです。

鍛えるよりも「負担を減らす」環境づくりが効果的

最も効果的なのは、脳にかかる負担を減らす工夫です。

  • 指示を紙やホワイトボードに書く:聞くだけでは消える情報を目に見える形で残す
  • 手順をチェックリストにする:「次に何をすればいいか」を自分で確認できるようにする
  • 机の上や周囲を整理する:余計な情報が目に入らない環境をつくり、脳の負担を減らす
  • 一度にやることを減らす:タスクを細かく分け、ひとつずつ取り組ませる

環境を整えることは、子どもの「できない」を「できた」に変える一番の近道です。トレーニングに時間をかけるよりも、まずは毎日の暮らしの中で困りごとを減らすことから始めましょう。

遊びながらできるトレーニング

日常的に脳の「同時処理」を使う経験を積むことには意味があります。遊びの中で自然に取り組みましょう。

  • しりとり:前の言葉を覚えながら次を考える
  • 神経衰弱:カードの位置を覚えながらペアを探す
  • 料理のお手伝い:手順を覚えながら材料を準備する

「間違えても大丈夫」という安心感の中でこそ、子どもは伸び伸びと力を発揮できます。

長期記憶を活用して困りごとを減らす方法

「朝の支度」の手順を毎日同じ順番で繰り返すと、やがて体が覚えて自動的にできるようになります。これはワーキングメモリに頼らず、長期記憶で行動できている状態です。

ルーティンを定着させることは、ワーキングメモリの弱さを補う強力な方法です。「考えなくてもできること」を日常の中で増やしていきましょう。

今日から実践できる!親の声かけ・サポート5つのポイント

お母さんと塗り絵をしている子ども

指示は「一つずつ・短く・具体的に」伝える

「ちゃんとして」のような抽象的な声かけでは、子どもは何をすればいいかわかりません。効果的な伝え方のポイントは3つです。

  • 一つずつ:「まず手を洗おう」→終わったら→「次はカバンを棚に置こう」
  • 短く:1文を10〜15語程度に収める
  • 具体的に:「片付けて」ではなく「本を本棚の2段目に入れて」

「伝え方を変える」だけで、子どもの行動がスムーズに変わることは珍しくありません。

視覚的なサポートを取り入れる|メモ・絵カード・チェックリスト

耳から入る情報はすぐ消えますが、目から入る情報はその場にとどまります。

やることリストを壁に貼る、絵カードで手順を示す、ホワイトボードに持ち物を書き出すなどの工夫が有効です。タイマーを使って残り時間を「見える化」するのも、時間の感覚が弱い子どもには効果的です。

視覚的なサポートは「甘やかし」ではなく、子どもが自分の力で動けるようになるための足場です。安心して取り入れてください。

できたことに注目して自己肯定感を守る

ワーキングメモリが低い子どもは「できない体験」を積み重ねやすく、自己肯定感が下がりがちです。3つ頼んだうちの1つしかできなくても、「1つ覚えていられたね」と伝えてください。

注意したいのは、「すごいね」「えらいね」のような漠然とした褒め方よりも、「自分で時間割を揃えられたね」のように具体的な行動を認める声かけのほうが効果的だということです。

子どもの自己肯定感を守ることは、サポートの中でもより効果が高い方法です。

学校と連携して配慮をお願いする方法

担任の先生に「複数の指示を一度に覚えるのが苦手です」と具体的に伝えることから始めましょう。

指示を板書でも示してもらう、連絡帳を書く時間を確保してもらう、席を先生の近くにしてもらい個別にフォローしてもらうなどの配慮をお願いできます。

配慮のお願いは「特別扱い」ではなく、子どもが安心して学べる環境をつくるための協力依頼です。必要に応じて、スクールカウンセラーや特別支援コーディネーターに相談することもできます。

睡眠・生活リズムを整えてワーキングメモリの力を引き出す

睡眠不足の状態ではワーキングメモリの機能が著しく低下します。もともと容量が小さい子どもが寝不足になると、使える容量がさらに減ってしまいます。

生活リズムを整えるための基本は次のとおりです。

  • 小学生は9〜11時間の睡眠を確保する
  • 毎日なるべく同じ時間に寝て、同じ時間に起きる
  • 寝る前のスマートフォンやタブレットの使用を控える
  • 朝食をしっかり摂る

生活リズムを整えることは、特別な道具も費用も不要な、最もシンプルで効果的なサポートです。まずは「早寝早起き」から見直してみてください。

ワーキングメモリの検査方法|WISC検査でわかること

数字とノートと鉛筆

WISC-IV・WISC-Vのワーキングメモリ指標(WMI)とは

WISC(ウィスク)検査は5歳〜16歳を対象とした知能検査で、子どもの認知能力をいくつかの領域に分けて測定します。そのうち「ワーキングメモリ指標(WMI)」がワーキングメモリの力を表す数値です。

現在日本では「WISC-IV(第4版)」と「WISC-V(第5版)」の両方が使われています。どちらでもWMIは測定でき、数字を聞いて覚えて答える課題などを通じて、子どものワーキングメモリの力を数値化します。

WMIの平均は100で、85以下は「低い」傾向にあると解釈されることが多いです。ただし数値だけでなく、他の指標とのバランスや日常の困りごとと合わせて総合的に理解することが重要です。

検査はどこで受けられる?費用と流れ

WISC検査は、小児科や児童精神科などの医療機関(保険適用の場合あり)、教育センターなどの教育機関(無料のことが多い)、民間の相談機関(自費で5,000〜20,000円程度が目安)で受けられます。所要時間はおおむね60〜90分です。

「検査を受ける=障害を確定する」意味でなく、子どもの得意・不得意を知り、より良いサポートにつなげるためのステップです。

検査結果を子どもの支援にどう活かすか

たとえばWMIが低くVCI(言語理解指標)が高い場合、「言葉で理解する力はあるが情報を保持するのが苦手」とわかり、視覚的サポートを増やすなどの具体的な対応策を立てやすくなります。

結果を学校に共有すれば、個別の支援計画の作成にもつながります。また、放課後等デイサービスなどの支援機関でも、検査結果に基づいた療育プログラムを組んでもらえます。

検査結果は「レッテル」ではなく「子どもに合ったサポートの地図」です。学校や支援機関と共有し、上手に活用していきましょう。

専門機関を活用しよう|児童発達支援・放課後等デイサービスという選択肢

笑顔の女性

児童発達支援や放デイでは何をしてくれるのか

児童発達支援は未就学児、放課後等デイサービス(放デイ)は就学児を対象とした通所支援サービスです。受給者証があれば利用でき、自己負担は原則1割です。

子ども一人ひとりに合わせた個別支援計画のもと、ソーシャルスキルトレーニング(人との関わり方の練習)、学習支援、運動プログラムなどが提供されます。早い段階からの支援が子どもの成長に良い影響を与えることは、多くの研究で示されています。

個別療育でワーキングメモリの弱さをカバーする

専門機関では、視覚的な手がかりを使った課題や、段階的に指示の数を増やす練習、成功体験を重ねて自己肯定感を高める関わりなど、家庭だけでは難しい専門的なアプローチが受けられます

保護者向けの「ペアレントトレーニング」で、家庭での接し方を学ぶこともできます。

家庭だけで抱え込まないことが子どもの成長につながる

ワーキングメモリの弱さは育て方の問題ではなく、脳の特性によるものです。専門家の力を借りながら支えていくことが、子どもにとっても親にとっても最善の選択です。

「助けを求めること」は弱さではなく、子どもの未来のためにできる最も前向きな一歩です。一人で抱え込まず、まずは身近な相談先に声をかけてみてください

まとめ

勉強に集中している男の子

ワーキングメモリとは情報を一時的に保持しながら処理する脳の力で、容量には個人差があります。

ワーキングメモリが低い子どもは指示を忘れる・集中が続かないなどの困りごとを抱えやすく、発達障害との関連も指摘されていますが、低いからといって必ず発達障害とは限りません。

大切なのは容量を増やすことよりも、指示を短くする・視覚的サポートを使う・生活リズムを整えるといった「負担を減らす環境づくり」です。

気になる場合はWISC検査で客観的に把握し、専門機関の力も借りながら、子どもに合ったサポートを見つけていきましょう。

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ウィズ・ユー編集部

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