自閉症スペクトラムの子どもが一人遊びをするのはなぜ?ごっこ遊びに導くコツ

泣いている男の子

「うちの子は一人遊びばかりで心配…」

「なぜ友だちと一緒に遊ばないのだろう」

「一人遊びをやめさせた方がいいのかな」

一人遊びを続けるお子さんに対して、このような不安や悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

自閉症スペクトラムの子どもの一人遊びには、その子どもなりの理由や意味があります。特性を理解し、適切にサポートすることで、遊びの幅を広げていくことが可能です。

この記事では、自閉症スペクトラムの子どもの一人遊びについて、その理由や特徴を解説します。また、ごっこ遊びを楽しむためのコツや、おすすめの遊び方についても紹介します。お子さんの遊び方の理解や支援の参考として、ぜひ最後までお読みください。

自閉症スペクトラムの子どもが一人遊びをする理由

一人遊びをしている男の子

楽しいと感じる遊びの種類が違う

自閉症スペクトラムの子どもは、一般的な発達の子どもとは異なる遊び方に興味を持つ傾向があります。たとえば、ミニカーを前後に動かしたり並べたりするなど、同じ動作を繰り返す遊びに夢中になりやすいのが特徴です。このような遊びには子どもなりの意味があり、感覚的な心地よさや安心感を得られる大切な活動となっています。

周りの子どもたちにとってはあまり面白く感じられない遊び方かもしれませんが、自閉症スペクトラムの子どもにとっては充実した楽しい時間となります。

そのため、他の子どもたちと一緒に遊ぶよりも、自分の好きな遊びに没頭する一人遊びを選択することが多くなるのです。また、独自の遊び方を見つけることで、ストレス解消や気持ちの安定にもつながっていきます。

一緒に遊んで嫌な経験をした

自閉症スペクトラムの子どもの中には、友だちと遊ぼうとして上手くいかなかった経験を持つ子どもが少なくありません。特に、遊んでいるおもちゃを突然取られたり、遊びを中断されたりする経験を重ねると、他の子どもと一緒に遊ぶことへの不安や抵抗感が生まれます。また、ルールの理解が難しく、うまく参加できなかった経験を持つ子どもも多くいます。

このような経験が積み重なると、他の子どもたちと遊ぶことに不安や緊張を感じるようになり、結果として一人遊びを好むようになることがあります。安心できる一人の時間のほうが、ストレスなく遊べるためです。そのため、一人遊びを続けるのは子どもにとって自然な防衛反応であり、必ずしも否定的に捉える必要はありません。

物を一緒に使うのが難しい

自閉症スペクトラムの子どもは、一度使ったおもちゃを自分のものと認識してしまい、他の子どもと共有して遊ぶことが難しい傾向があります。また、おもちゃの所有権が日によって変わることの理解も困難です。自分の決めた使い方やルールにこだわりがあり、それを変更することに抵抗を感じやすいところも特徴です。

このような特性から、他の子どもと一緒に遊ぶ際にトラブルが生じやすく、結果として一人遊びを選択することが多くなります。自分のペースで好きなように遊べる環境の方が、安心して楽しむことができると感じているためです。物の共有や順番待ちなどのスキルは、成長とともに少しずつ身についていくものなので、焦らずに見守ることが大切です。

コミュニケーションをとりにくい

自閉症スペクトラムの子どもは、言葉の選び方や表情の読み取り、適切なタイミングでの発言など、他者とのコミュニケーションに困難を感じることが多くあります。

友達との遊びでは、「これをして遊ぼう」「次は〇〇しよう」といった話し合いが必要になりますが、自分の考えを適切に伝えることや、相手の提案を理解して応答することが難しい場合が多いのが特徴です。

また、非言語コミュニケーションの理解も苦手なため、相手の表情やジェスチャーから意図を読み取ることも困難です。遊びの中での暗黙のルールや、その場の空気を読むことも難しく感じます

このようなコミュニケーションの難しさから、他の子どもたちと円滑に遊ぶことができず、結果として一人遊びを好むようになることがあります。一人遊びであれば、複雑なコミュニケーションを必要とせずに楽しむことができるためです。

相手の気持ちを理解するのが苦手

自閉症スペクトラムの子どもは、相手の立場に立って考えることや、他者の感情を理解することが苦手です。そのため、友だちが何を考えているのか、何を期待しているのかを理解することが難しく、相手の気持ちに沿った行動をとることができないことがあります。

たとえば、友達が悲しんでいても気づかなかったり、自分の行動が相手を困らせていることに気づかなかったりすることもあるでしょう。

相手の気持ちを理解する困難さから、集団での遊びにおいて誤解が生じたり、トラブルになったりすることがあります。その結果、ストレスを感じないで済む一人遊びを選ぶようになることが多いのです。

自閉症スペクトラムの子どもはごっこあそびが苦手

しゃがんでいる男の子

想像力が弱い

自閉症スペクトラムの子どもは、目に見えないものを想像することや、現実とは異なる状況を頭の中で作り出すことが苦手な傾向があります。そのため、お店屋さんごっこやヒーローごっこなど、架空の世界を作り出して楽しむ遊びが難しいことがあります。

そのため、おままごとで空の器に食べ物を入れて料理をしたり、積み木を電車に見立てて走らせたりするような想像的な遊びは苦手です。

このような特徴は、社会的想像力の発達と関連しています。現実世界での経験や知識を基に、それを別の場面に応用することが難しいため、「〜のふり」をして楽しむごっこ遊びよりも目の前にある物をそのままの形で使う具体的な遊びを好む傾向にあります。

同じ行動をするのが好き

自閉症スペクトラムの子どもは、一定のパターンを繰り返して遊ぶことに強い興味を持つのが特徴です。おもちゃを並べたり、車を同じコースで走らせたりするなど、パターン化された遊びを好む傾向にあります。このような繰り返しの遊びは、子どもにとって心地よく安心できる時間となります。

一方、ごっこ遊びは場面や状況が次々と変化し、予測できない展開が含まれることが多いため、不安や混乱を感じやすくなります。特に、他の子どもたちと一緒に行うごっこ遊びでは、展開が予測できず、自分のペースで遊べないことがストレスとなることがあるので注意が必要です。

そのため、安心できる同じパターンの遊びを選択することが多く、創造的なごっこ遊びを避けるようになります。ただし、この特徴を理解した上で、少しずつ新しい要素を取り入れていくことで、遊びの幅を広げていくことは可能です。

相手と遊びを共有しにくい

自閉症スペクトラムの子どもは、他の子どもと遊びのイメージを共有することが難しい特徴があります。たとえば、他の子どもが「これはお店です」と設定した場面を理解し、その世界観に合わせて行動することに困難を感じることがあります。また、遊びの中で役割を交代したり、相手の提案を受け入れたりすることも苦手です。

自分の考えた通りに遊びを進めたいという思いが強く、相手と協力してごっこ遊びを発展させていくことは難しくなります。特に、複数の子どもたちがその場で展開する遊びについていくことは大きな課題となるでしょう。

そのため、他の子どもたちと一緒にごっこ遊びを楽しむ機会が限られてしまうことがあります。しかし、大人が適切に仲介役となり、分かりやすい設定や明確なルールを提示することで、少しずつ遊びを共有することを楽しめるようになる場合もあります。

自閉症スペクトラムの子どもをごっこ遊びをさせるコツ

ママと遊んでいる女のこ

大人がお手本を見せる

自閉症スペクトラムの子どもに対しては、大人が具体的な遊び方を示すことが重要です。人形を使って「いただきます」と言いながら食事をする様子を見せたり、電車の運転手になりきって「次は○○駅です」とアナウンスをしたりするなど、実際の場面を再現しながら遊び方を伝えていきます。この時、動作をゆっくりと行い、声に出して説明を加えると、子どもが理解しやすくなります。

ただし、強制せずに子どもが興味を示すまで、根気強く続けることが大切です。時には子どもの隣で並行して遊びながら、自然な形でお手本を見せることも効果的です。同じパターンを繰り返し見せることで、子どもは遊び方を学習していきます。お手本を見せる際は、子どもが興味を示している場面から始めることで、より効果的に学習することができます。

また、成功体験を積み重ねることで、新しい遊び方にも挑戦しやすくなるでしょう。

子どもの興味があるものを探し出す

子どもが関心を持っているものや好きな活動を見つけ出し、それをごっこ遊びに取り入れていくことが効果的です。たとえば、電車が好きな子どもであれば駅員さんごっこを、動物が好きな子どもであれば動物園ごっこを取り入れるなど、子どもの興味に合わせた設定を選びましょう。興味のある題材から始めることで、子どもの意欲や集中力が高まり、遊びに参加しやすくなります

また、好きなキャラクターの人形やおもちゃを使うことで、遊びへの抵抗感が少なくなることもあります。また、普段から子どもがどのようなものに目を輝かせているのか、どんな場面で笑顔になるのかをよく観察し、そこからごっこ遊びのテーマを見つけ出していくのがおすすめです。

子どもの興味は一時的なものもあれば、長期的に続くものもあります。少しずつ関連する要素を加えることで、遊びの幅を広げていくこともできます。

子どもの世界を尊重する

自閉症スペクトラムの子どもは、独自の遊び方やこだわりを持っていることが多いため、それを否定せずに受け入れることが大切です。たとえば、おもちゃを並べることに夢中になっている場合は、その行動を認めた上で、少しずつごっこ遊びの要素を加えていきます。急激な変化は混乱を招く可能性があるため、子どものペースを大切にしながら、少しずつ遊びの幅を広げていくようにします。

子どもの「できた」という成功体験を大切にすることで、新しい遊び方にも挑戦しやすくなります。また、子どもが安心して遊べる環境を整えることも重要です。静かな場所で、余計な刺激を減らすことで、集中して遊びに取り組めるようになることもあるでしょう。

さりげなくごっこ遊びをサポートする

ごっこ遊びを無理強いせず、自然な形で支援することが重要です。たとえば、子どもが積み木で遊んでいる時に、「これはお城かな?」と声をかけたり、「お城に住んでいるお姫様はどこかな?」と問いかけたりすることで、想像的な要素を取り入れていきます。また、子どもが混乱しないよう、シンプルな設定から始め、少しずつ複雑な展開を加えていくことが効果的です。

失敗を責めたり、強制したりせず、子どもが楽しめる範囲でサポートを続けることが、ごっこ遊びの発展につながります。子どもの反応を見ながら、適切なタイミングで介入することも大切です。時には見守るだけでもよく、子どもの主体性を尊重しながら支援を行うことが重要です。

自閉症スペクトラムの子どもにおすすめの遊び方

楽しそうな男の子

日常を再現するごっこ遊び

自閉症スペクトラムの子どもにとって、身近な日常生活の場面を再現する遊びは取り組みやすいのでおすすめです。たとえば、お買い物ごっこやお料理ごっこ、お医者さんごっこなど、実際の体験に基づいた遊びを行うことで、イメージを持ちやすくなります。日常的に経験する場面を遊びに取り入れることで、安心して楽しむことができるでしょう。

このような遊びでは、実際に使用する道具を模したおもちゃを用意すると、より具体的に遊びを展開できます。「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」といった決まったフレーズを使うことで、コミュニケーションの練習になります。また、実物に近いおもちゃを使用したり、実際の場面で使用する言葉を取り入れたりすることで、より理解しやすくなるでしょう。

キャラクターのなりきり

好きなアニメやテレビ番組のキャラクターになりきって遊ぶことは、自閉症スペクトラムの子どもにとって有効な遊び方の一つです。特に興味のあるキャラクターの場合、セリフや動きを詳細に覚えていることが多く、それを再現することを楽しめます。このような遊びは、子どもの得意分野を活かしながら、創造的な活動に取り組むきっかけとなります。

ヒーローになりきって決めポーズをとったり、アニメのキャラクターの特徴的な動きを真似たりすることで、自然と表現力や想像力を育むことが可能です。さらに、衣装や小物を用意すると、よりキャラクターになりきりやすくなります。

最初は一人でなりきって遊ぶことから始め、少しずつ他の人と掛け合いのある遊びに発展させていくとよいでしょう。好きなキャラクターを通じて、感情表現やコミュニケーションの幅を広げていくことができます。また、キャラクターの行動を真似ることで、社会的なスキルを学ぶ機会にもなります。

友だち数人と行うごっこ遊び

自閉症スペクトラムの子どもが友だちと一緒にごっこ遊びを楽しむ際は、少人数で始めることが望ましいです。大人が仲介役となり、「〇〇くんはお客さん役」「△△ちゃんは店員さん役」というように、それぞれの役割を明確に示すことで参加しやすくなります。また、遊びのルールや展開をあらかじめ決めておくと、予測可能性が高まり安心して参加できます。

時間を決めて交代で役割を変えることで、様々な立場を経験することもできます。このような小規模な集団での遊びを通じて、少しずつ社会性を育んでいくことができます。

最初は短時間から始め、子どもの様子を見ながら少しずつ時間を延ばしていくことで、無理なく継続できるでしょう。成功体験を積み重ねることで、より大きな集団での遊びにも参加できるようになっていきます。

まとめ

遊んでいる3人の男の子

自閉症スペクトラムの子どもが一人遊びを好む背景には、独自の楽しみ方や、コミュニケーションの難しさなど、さまざまな理由があります。一人遊びは決して悪いことではなく、子どもにとって大切な時間となっています。

一方で、ごっこ遊びなど他の子どもたちと一緒に楽しむ遊びを経験することも、子どもの成長にとって重要です。そのため、子どもの特性を理解した上で、以下のようなポイントを意識しながら支援していくことが大切です。

・子どもの興味や好みを活かした遊びを選ぶ

・大人が具体的な遊び方を示す

・子どものペースを尊重する

・無理強いせず、さりげなくサポートする

また、日常生活を再現する遊びやキャラクターのなりきり遊び、少人数での遊びなど、子どもが取り組みやすい方法から始めることで、少しずつ遊びの幅を広げていけるようになります。

一人ひとりの子どもに合った遊び方を見つけ、楽しみながら成長していけるよう、焦らず気長にサポートしていくことが大切です。

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この記事を書いた人

ウィズ・ユー編集部

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