愛着障害の子どもが「試し行動」?その原因と対処方法について解説

2人の子供がベビーカーに乗っている写真

試し行動は、「リミットテスティング」とも呼ばれ、わざと良くない行動をして、相手の反応をみることです。子どもが「試し行動」を起こすことは、愛着障害に悩む保護者にとって大変な心理的負担となることも多く、叱るべきか、どのように接すればよいのか、悩む方も多いことでしょう。

定型発達の子どもも成長の過程でこのような行動をとることがありますが、アプローチには独特のポイントが存在します。

子どもが故意に良くない行動をとる場合、保護者や先生の反応をうかがう姿勢が見られることがあります。この行動に対する適切な対応は、愛着障害の子どもにとって非常に重要です。

本記事では、愛着障害を抱える子どもの「試し行動」について、その原因の見極めと適切なアプローチについて探っていきます。安心して子どもと向き合い、成長をサポートできるような有益な情報をお届けします。

子どもの「試し行動」とは

「試し行動」とは、子どもが自らの限界や周囲の大人の反応を確かめるために行う挑戦的な言動や態度を指します。この行動は善悪の区別がつかないのではなく、自分の行動がどの程度受け入れられるのかを知るために行われます。

試し行動は子どもたちの成長や発達にとって重要であり、自己確認や人間関係の構築、環境への適応力を身につけるための一環です。しかし、過剰になると周囲に悪影響を与える場合もあります。そのため、保護者や大人は適切な対応が求められます。

試し行動を理解し、適切に対処することで、子どもとの信頼関係を築きやすくなります。成長をサポートし、健全な人間関係を築くために、愛着障害を抱える子どもの試し行動に適切に対応することが重要です。

「試し行動」とは、子ども自身が「良くない」と理解して、以下のような問題行動を起こすことです。下記は試し行動の具体的な例です

  • 授業中に教師の指示を無視する。
  • 親の言うことに耳を貸さず、自分の意見を通そうとする
  • 強い言葉で相手を非難する
  • 人に手を出す
  • 自分の思いや感情を過剰に表現し、周囲の注意を引こうとする
  • 故意におもちゃを投げたり壊したりする
  • 食べ物や飲み物をわざとこぼしたり吐き出したりする
  • 年齢や状況に応じずに過度に甘える
  • 走ってはいけないところで走り回る

試し行動をする理由

子どもが試し行動をする理由は複数ありますが、試し行動は「自分が愛されているか」「どこまで許されるのか」を確認することが主な目的です。

試し行動は、子どもが自分の行動に対する反応で、他者との関係性を探り、自分が受け入れられる範囲や大人の対応を確認します。

子どもが愛情を確認したいから

子どもが試し行動に出る背景には、愛情を確かめたいという気持ちがあることがあります。子どもは親がどれほど自分を愛してくれているのか、自分のことを嫌いにならないか、知りたいと感じることがあります。

教育方針に問題のある家庭や愛着障害のある子、虐待経験がある子に限らず、どんな子どもでも愛情不足を感じる可能性が起こり得ます。

例えば、仕事で遅くなる日が増えたり、妹・弟が生まれたりすると、以前よりかまってもらう機会が少なくなり愛情を感じる時間が減少したことで不安になることがあります。

そして、愛情そのものが減ったわけではないことを理解し、自己肯定感を取り戻すために、試し行動に出ることがあるのです。常日頃から子どもに愛情が伝わるような声がけをするようにし、愛情を示す時間を持つことが重要です。

知らない人のことを知りたいから

子どもが試し行動に至る一因として、知らないの人を試すことで、相手の本質を理解しようとすることが挙げられます。子どもは新しい人間関係の中で、相手が自分をどの程度受け入れてくれるのか、またどのような限度があるのかを把握しようとします。

例えば、初めての保育園や学校で、新しい先生や友達との出会いの場面がわかりやすく、このような場面で、子どもは自らの行動が受け入れられる範囲や適切な距離感を見つけるため、故意にルールを破ったり言い訳をしたりする「試し行動」に出ることがあります。

環境の変化で不安やストレスを感じているから

試し行動は、新しい状況や環境に対する対応の一環として行われることがあり、新しい状況や環境への適応が難しい場合、子供は不安を払拭するために試し行動を取ることがあります。

例えば、親が多忙で急にかまえなくなる、家族構成に変化があった、転校や引っ越しなどによる生活環境や家庭環境の変化です。

子どもの試し行動への対処方法

子供がご飯を食べている写真

ではどのように、対処すればよいのでしょうか?

子供の試し行動に対しては、以下のような対応は避けるべきです。

  • 無視:子供の試し行動を無視することは避けてください。子供の不安感を増加させる可能性があります。
  • 過度に叱る・怒る:子どもの自信を損なう可能性があります。
  • 感情を否定する:子供の感情を無視したり、軽んじたりすることは避けてください。
  • 他と比較する:他の子供や過去の自分と比較するような発言や態度は自己評価を低くする原因になります。
  • 押し付ける:自分の意見や解決策を押し付けるような姿勢は避け、子供にも選択肢や意見を尊重し、聞く耳を持つことが重要です。
  • 緊張感を与える:過度に緊張させるような言動や態度は避け、子供には安心感を提供することが重要です。
  • 一方的な解決策を押し付ける:子供の意見や考えを尊重し、一緒に考える姿勢が大切です。

上記の対応は、試し行動の悪化に繋がる可能性があります。一方、対応が適切であれば、試し行動が親や保育士と子どもの信頼関係を築くきっかけとなる場合もあります。

次には子どもが試し行動をした際の対応方法を6つ紹介します。

理由を聞く

試し行動は、反抗期や一時的な感情の表れと混同されやすいですが、子供が自分の感情や状況に戸惑い、それに対処しようとするための自然な反応です。なので、子供の気持ちを理解し、なぜそのような行動を取ったのかを尋ね、子供の行動の裏にある理由を理解しようとする姿勢が重要です。

前述したとおり、環境の変化による不安が、試し行動の主な原因のひとつとされています。

例えば、新しい家族が増えたり、転園や保育園に通い始めたりする際に「もう少し私にかまって!」と感じた場合に試し行動が起こることがあります。

自分の言葉や行動にも何か試し行動の原因になることはないか、一度考えてみましょう。

もし試し行動の原因が保護者によるものになっている場合、子どもに寄り添った声がけをしましょう。「もっと一緒に過ごしたいね」「遊んであげられなくてごめんね」など優しい言葉で、子供が安心感を得られるように配慮しましょう。

感情的になって叱責せず、ため息をついたりしないよう心掛けましょう。

子どもの感情に寄り添い、試し行動の理由を受け入れることがポイントです。

ダメな行動ははっきりと叱る

子どもの自己評価を損なうことなく、問題のある「行動」に対して叱ることが重要です。「その行動がなぜ良くないのか、またどんな適切な行動があるのかを、子どもの理解度に合わせて具体的に説明しましょう。

下記のような叱り方はNG例です。

  • 侮辱や威嚇を含む叱り方

例: お前は馬鹿なのか?何度言えば分かるんだ?

  • 感情の爆発や怒りっぽい態度

例: もううんざりだ!

  • 一方的な指示や理由の説明がない叱り方

 例:だからやめろって言っただろう?

  • 感情を無視する叱り方

例: 泣いても何も解決しないから黙っていろ!

  • 比較や否定を用いる叱り方

例: 他の子はもっとまともにできているのに…

  • 罰を与える前に話し合いの機会を与えない叱り方

例: “もうテレビは見るな!

  • 子供の気持ちや視点を考慮に入れない叱り方

例:そんなことで何で怒っているの?

  • 一貫性がなく、混乱を招く叱り方

例: 今日は許すけど、明日からはもうダメだからね

上記は感情的になったり、侮辱的な言葉を使ったり、子供の気持ちや理解を考えない叱り方の例です。このような叱り方は、子供の自己評価を損ない、信頼関係を崩す原因となります。

愛情をちゃんと伝えてあげる

子どもに対する叱り方は、愛情を伝えながら行うことが重要です。子どもが「試し行動」を通じて保護者の愛情を確かめようとする行為の場合がありますので、この際、理解せずに叱るだけでは、子どもの自己肯定感が低下していまったり、「そんなことをしたから嫌いだ」「そんなことをする子は知らない」「それをやるのは悪い子だ」と子どもの存在を否定したり、無視したりするような叱り方をしてしまうと、子どもは遠ざけられたり嫌われたりすると感じ不安が増してしまいますので逆効果です。

「あなた自身は大好きだけれども、その行動は良くない」と冷静に、愛情をもって伝えることが大切です。

叱るだけで終わらせず、適切な行動を示し、その行動を褒めることも大事です。例えば、叱る理由を丁寧に説明し、「こうしたらどうかな?」と適切な行動を示しましょう。そして、子どもがその行動を取った際には、褒めてあげることでポジティブなフィードバックを与えます。「叱る⇒正しい行動を示す⇒褒める」というステップを必ずセットで行うことがおすすめです。これによって、子どもは自分の行動に対する適切な反応を学び、愛情を感じながら健全に成長することができるでしょう。

過剰に反応してはいけない

試し行動に過剰に反応することは注意が必要です。

過剰に反応すると、子どもはその反応を見て、保護者が自分に強い興味を持っていると感じます。そのため、同様の行動を続けることで、保護者の注意を引こうとする傾向が生まれます。

つまり子どもは試し行動が自分に注意を向けてもらうのに効果的であると認識してしまい、不適切な行動をするだけで愛情を得られると誤解してしまうことがあるのです。

ですから、「試し行動」が起こった際には、普段通りの対応を心がけましょう。過度なリアクションを避け、一貫して冷静で適切な対応をすることが重要です。

子どもの気持ちを受け止める

試し行動への対応では、子どもの気持ちを受け止めることが不可欠です。子どもの感情や不安を無視せず、理解しようと努め、大切に思っていることを態度で示すことが安心感を提供します。

まず、子どもが話す際には目線を合わせて聞くことが重要です。これによって子どもは自分の言葉がちゃんと届いていると感じ、安心します。相槌を打ちながら共感を示すことも効果的です。子どもが自分の気持ちが理解されていると感じると、自分を表現しやすくなります。

また、子どもが自分の気持ちを伝え終えるまで待つことで、子どもは自分の気持ちを尊重してもらえると感じ、安心します。

上記の方法によって、試し行動の背後にある原因や問題を見つける手がかりを得ることができます。子どもが安心して自分の気持ちを表現できる環境を提供することで、より健全なコミュニケーションが築かれ、子どもの成長をサポートすることができます。

子どもとスキンシップを増やす

子どもとのスキンシップを増やすことにはいくつかのメリットがあります。

まず第一に、スキンシップを通じて子供は安心感や愛情を感じやすくなります。体の触れ合いは、子供にとって心地よく安心できる環境を提供します。これによって、子供は自分が大切に思われていることを実感し、精神的な安定感を得ることができます。

さらに、スキンシップは子供のストレスや不安を和らげる助けになります。抱っこやハグ、手をつなぐなどのスキンシップは、子供の緊張を緩和し、リラックスさせる効果があります。特に新しい環境や状況での不安を感じている時に、親や保育者との触れ合いが安心感をもたらします。

また、スキンシップを通じて親や保育者と子供の信頼関係を築くことができます。身体的な接触は、お互いの信頼を深め、感情的なつながりを強化します。これによって、子供は自分の感情や悩みをオープンに表現しやすくなります。

最後に、スキンシップは子供からの要求がないときにも行うことが重要です。定期的なスキンシップは、子供が愛情や安心感を常に感じられる環境を提供します。ただし、子供が本当に嫌がっている場合は無理に行わないよう注意が必要です。

以上のように、子供とのスキンシップは愛情や安心感を提供し、信頼関係を築く重要な手段です。子供の心身の健康をサポートするために、積極的に取り入れていきましょう。

愛着障害の子どもは試し行動との見極めが必要

お母さんが子供と一緒に遊んでいる写真

「回避型愛着」の子ども

回避型愛着の子どもは、他人と一定の距離を保とうとする傾向があります。

例えば、親から引き離されてもほとんど無反応であったり、人と目を合わせず、自分から抱っこされようともしません。

以下は回避型愛着の子どもの特徴です。

  • 親しみにくさ:一見冷淡で親しみにくいように見えることがあり、抱っこや触れ合いを避ける場合があります。
  • 独立心が強い:他人の助けを求めることを避ける傾向があります。
  • 感情の表現が控えめ:感情を表に出すことが少なく、自分の内面を他人にはあまり見せません。
  • 他人との親密な関係が苦手:愛着関係を築くことが難しく、親しい友達や家族との絆を築くのが難しい場合があります。
  • 他人への依存が少ない:他人に依存することなく、自分の力で物事を解決しようとする傾向があります。
  • 感情の抑制が得意:割り切って感情を抑え、冷静に物事を考えることができる場合があります。
  • ひとり遊びが得意:他の子供たちと比べて、独自の遊び方や興味を持つことが多いです。

上記のように回避型愛着の子どもは、愛着関係において距離を保つことで、自分を保護しようとする傾向があります。

「葛藤型愛着」の子ども

葛藤型愛着の子どもは、いつも心が落ち着かず、愛着関係において相反する感情や行動が交錯するような特徴が見られます。

例えば、親から離されると激しく泣いて強い不安を示すのに、母親が再び現れて抱っこをしようとしても嫌がったりするのに、再度くっつくとなかなか離れようとしません。

親がかまってくれるときと無関心なときの差が大きい場合や、神経質で厳しく過干渉な親の場合が多いです。

  • 相反する感情の表現:愛情と他者と距離を保とうとする衝動が同時に現れることがあります。
  • 依存と独立の間で揺れ動く:時には親や保護者に依存しようとし、また別の瞬間には自立心を見せることがあります。
  • 愛着行動の一貫性がない:時折親しみにくい態度を示す一方、急に求めてくることがあるなど、愛着行動が一貫しない場合があります。
  • 感情の不安定さ:感情の起伏が激しい場合があり、急に泣き出すことや急に笑顔になることがみられるかもしれません。

上記のように葛藤型愛着の子どもは、愛着関係に対して複雑な感情や反応を示す傾向があります。

「混乱型愛着」の子ども

混乱型愛着の子どもは、一貫性のない無秩序な行動パターンを示すのが特徴です。

例えば無反応かと思うと、激しく泣いたり怒りを表したり、また恐れているような反応をみせたと思えば突然叩いたりすることもあります。

混乱型愛着パターンは、虐待を受けている子や精神状態がひどく不安定な親の子どもにみられやすく、親の行動が予測不能であることが多いです。

以下は混乱型愛着の子どもの特徴です。

  • 安定しない感情表現:愛情や不安、怒りなどの感情が安定せず、一貫性が見られない場合があります。
  • 対人関係の混乱:他人との関係が安定せず、親しみや距離を保つ姿勢が無秩序に現れることがあります。
  • 過度な心配や不安:小さなことでも過度に心配し、不安を感じやすい場合があります。
  • 自己評価の不安定さ:自己評価が不安定で、自分をどのように評価すべきか分からない場合があります。

混乱型愛着の子どもは、愛着関係に対する感情や行動が安定せず、安心感を得るのが難しい場合があります。

まとめ

赤ちゃんが口を開けている写真

この記事では、愛着障害を抱える子どもたちの「試し行動」に焦点を当てました。試し行動は、愛着障害の子どもたちが愛情や安心感を求めながらも、その信頼を試すような行動を取ります。

愛着障害の原因には、過去の愛着関係の不安定さや虐待経験、信頼の欠如が影響している場合があります。また、安心感を得られない状況下で育ったため、愛情を受け入れることに対する不安や葛藤も一因です。

試し行動の対処方法としては、まず子どもの感情や不安を受け止め、理解することが重要です。愛情や支持を示し、安心感を提供することで、試し行動を通じて子どもが自己肯定感を高め、安定した愛着関係を築く手助けをします。

積極的なコミュニケーションや愛情の表現、適切な叱り方などが有効なアプローチ方法となります。

試し行動子と向き合う際には、忍耐と理解が求められますが、適切なサポートを提供することで、子どもの成長と安定した愛着関係を築くことができるでしょう。

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ウィズ・ユー編集部

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