愛着障害の子どもが示す行動の特徴を紹介!愛着が大切な理由と種類についても解説

保護者が赤ちゃんを抱きかかえている様子。

愛着障害とは、乳幼児期に何らかの原因で両親や祖父母など、特定の養育者と愛着が形成されず、子どもの情緒や人間関係に問題がある状態です。子どもを育てる人の中には、「そもそも愛着障害とは?」「自分の子どもが愛着障害かもしれない」と感じる方もいるのではないでしょうか?

この記事では、愛着障害の子どもが示す行動の特徴や愛着が大切な理由、種類を解説します。「愛着障害のある子どもの特徴を知りたい」「愛着障害は治せるの?」と悩む方はぜひ参考にしてください。

【特徴】愛着障害の子どもがおこす行動 

赤ちゃんが泣きながら何かを伝えようとしている様子。

愛着障害は、乳幼児期に子どもと特定の養育者との間で作られる「心理的な結びつき」に何らかの問題がある状態ことです。愛着障害は、養育者との離別や虐待などが原因で、子どもと養育者の間に愛着が形成されないことで起こります。

愛着障害のある子どもは情緒が不安定になることがあり、人とのコミュニケーションが難しい場合があります。愛着障害のある子どもが起こす行動の特徴は、以下の通りです。

  • 自傷行為をする(髪の毛を抜く、爪をかむなど)
  • 愛情試し行動を取る
  • 理由もなく嘘をつく
  • 大人や友達に暴力をふるう
  • わざと物を投げる、壊す

また、行動の特徴だけでなく、「風邪をひきやすい」「不眠、食欲不振」のような健康面に特徴が出ることもあります。
ただし、上記のような行動が必ずしも愛着障害だとは限りません。健常であることや他の発達障害の可能性もあります。子どもの行動に不安を感じる場合は、専門家へ相談して判断することが必要です。

愛着障害|2つの種類

小さい男の子がおもちゃで遊ぶ様子。

医学的に分類されている愛着障害の種類としては、以下の2つです。

  • 反応性愛着障害
  • 脱陽性愛着障害

それぞれ解説します。

反応性愛着障害:頼ることができない

反応性愛着障害は、人に頼ることができないことが特徴の愛着障害です。「反応性アタッチメント障害」とも呼ばれています。
反応性愛着障害がある子どもは、どんなに辛く苦しい状況や助けが必要な環境でも、人に頼る努力ができないのです。相手が養育者であっても、極端に心の距離をとってしまいます。

反応性愛着障害のある子どもの特徴例は、以下の通りです。

  • 養育者へ抱きついたり、泣きついたりしない
  • 友達に興味を示さず、交流しない
  • 警戒心が強く、人を避ける
  • 愛情試し行動をする
  • ちょっとしたことですぐに落ち込む
  • 自傷行為がある
  • 自己評価が異常に低い
  • 「嫌われたらどうしよう」とおびえる
  • 体が小さいことが多い

反応性愛着障害になる子どもは、養育者からの虐待や厳格すぎるしつけなどが原因といわれています。心が落ち着ける場所がなかったことで起きるタイプです。

脱抑制型愛着障害:無差別に人に甘える

脱抑制愛着障害は、反応性愛着障害とは対照的に、無差別に人に甘えることが特徴です。「脱抑制性対人交流障害」とも呼ばれています。
脱抑制愛着障害がある子どもは、誰に対してもなれなれしく接しますが、仲間との協調はできません。自分に目を向けてほしいときに暴力的になることもあります。

脱抑制愛着障害の子どもの特徴は、以下の通りです。

  • 全く知らない人にためらいなく近づく
  • 知らない人に抱きついたり、慰めを求めたりする
  • 周りの注意を引くために大げさになる
  • 暴力的になる
  • ちなれなれしい
  • 過度にわがまま
  • 強情でいじっぱり
  • 謝れない
  • すぐに嘘をつく

脱抑制愛着障害は、幼少期に養育者が複数回替わることで起こりやすくなるといわれています。

愛着が大切な理由 

保護者と小さい男の子が絵本を見ている写真。

子どもに愛着が大切な理由は、以下の3つです。

  • 人間を信頼できるようになる
  • コミュニケーション能力が高まる
  • 心理的な安心感を得る

それぞれ説明します。

人間を信頼できるようになる

「遊んでほしい」「抱っこしてほしい」など、子どもの行動に親や教育者がしっかり応えることで、子どもは安心感を得て、人への信頼を覚えます。子どもの愛されている、安心できる場所があるなどの感覚は、愛着によって生まれるのです。

愛着によって信頼を覚えることで、人と話したり遊んだりする楽しさや喜びも身に付けるようになるでしょう。また、人間を信頼することは自己肯定感の成長にもつながるため、子どもは積極的に行動できるようになります。

乳幼児期に愛着を形成する中で人間を信頼できるようになることが、子どもの心の成長にとても大切な理由のひとつです。

コミュニケーション能力が高まる

乳幼児期の愛着形成は、将来多くの人とコミュニケーションを取るときに影響を与えます。

愛着が形成されると、子どもは自分の気持ちや要求を伝えることができるようになります。さらに、相手が言ったことや要求を受け入れられるように成長するのです。このようなやりとりを繰り返すことで、子どもは「どうしたら自分の思いを相手にわかりやすく伝えられるか」を学びます。

この過程は、子どものコミュニケーション能力や表現力を豊かにしていく大切なステップです。繰り返し行うことで、子どもの表現の仕方や人との関わり方が上手くなっていきます。

「自分の要求を伝える」「相手の要求を受け入れる」ことで、多くの表現方法が身につき、安心感や積極性を持って相手と良好な関係を築くことができるでしょう。

心理的な安心感を得る

子どもが積極的に行動できるようにするためには、養育者が「安心・安全基地」となることが大切です。安心・安全基地とは、自分が辛いときや不安なときなどに、心理的に安心できる人や場所のことを指します。

子どもにとって未知のものや新しい環境に触れることは、不安や恐怖を感じるものです。その時に、自分を絶対に守ってくれる存在がいることで安心して冒険でき、新しい驚きや喜びを知ります。

子どもが不安を感じずに積極的に行動できるよう安心・安全基地を作って、ストレス耐性も身につけられるようにすることが大切です。

愛着障害の原因

愛着障害の原因。

愛着障害には、特定の養育者との愛着形成がうまくいかないことが影響しています。愛着障害の原因は、以下のようなものです。

  • 養育者との死別や離別
  • 養育者によるネグレクトや虐待、無視
  • 養育者が頻繁に替わる
  • 幼少期からの厳格なしつけ、過度に厳しい教育
  • 明らかな兄弟差別
  • 褒められることがない環境

このように、愛着障害は養育者や発育環境、愛情の与えられ方などが複雑に絡み合って起こるのです。
「愛着障害は愛情不足」と言われることがありますが、必ずしも愛情の量だけが愛着障害につながるわけではありません。子どもに愛着障害の症状がみられても、「自分の育て方が悪かった」と過度に悩む必要はないのです。

【治し方】愛着障害は克服できる 

大人と女の子がお話している様子。

5歳までの親の接し方によって愛着スタイルが左右されることから、時間が経って諦めてしまったり、ひどく後悔してしまったりしたことがある養育者もいるのではないでしょうか。

就学期以降に抱える愛着障害であっても、子どもとの接し方やカウンセリング、周囲の協力によって徐々に改善していくことが可能です。

愛着障害は、養育者と親密なコミュニケ―ションがとれる人間関係を作ることが克服につながります。具体的な愛着障害の改善方法は、下記の通りです。

  • 「いってらっしゃい」「おかえり」「大好き」など毎日言葉で伝える
  • 安心・安全基地、安心基地を作る
  • 子どもの気持ちに寄り添う
  • 子どもの困っていることに向き合い、整理する
  • 寝る前に読み聞かせを行うなど子どもとの時間を大切にする
  • 無条件に褒める
  • 手を繋いだり、頭をなでたりと積極的にスキンシップを取る
  • 無理に人との距離を考えさせない

仕事でなかなか子どもと向き合えないお母さんでも、ちょっとした時間でコミュニュケーションを取ることが可能です。子どもへの接し方を見直し、向き合う時間を作りましょう。

愛着障害とADHDの見分け方  

愛着障害とADHDの見分け方。

愛着障害とADHDは症状が似ていることも多く、診断がむつかしいと言われています。どちらも「落ち着きがなく、じっとしていられない」という特徴があるからです。

しかし、愛着障害とADHDはじっとしていられない、落ち着きがないといった行動の起こり方、現れ方が違います。その他に、さまざまな行動に至る背景や原因が違うのです。

愛着障害とADHDの見分け方を、「多動の現れ方」と「片付け」の観点に分けて、以下の表で解説します。

【多動の現れ方】(※多動とは、多動性(じっとしていられない、落ち着きがなく行動する)という意味)

愛着障害ADHD
多動の原因感情の問題行動の問題
タイミングムラのある多動いつも多動
特徴・ネガティブな感情が高まっている時に起こりやすい
・急に落ち着きがなくなることもある
・気持ちや感情とは無関係
・状況に関係なく生じる

【片付け】

愛着障害ADHD
原因気持ちの問題実行機能の問題
特徴・「片付けたら気持ちがいい」「片付けたい」という気持ちそのものが育っていない
・そんな気持ちになれない
・実行機能の問題があるため「片付け」という一連の行動が困難
・片付けるという行動、片付け方が身につかない

その他にも、「愛着障害の特徴的な症状が見られるか」「集団場面や対人場面で愛着障害の特徴が見られるか」などでも見分けることができるでしょう。

愛着障害の可能性があると感じたときの相談先 

大人2人が一人の女性に相談する様子。

愛着障害の悩み相談を受け付けている主な相談先は、以下の4つです。

  • 地域の保健所や保健センター
  • 精神保健福祉センター
  • 児童相談所
  • 児童発達支援事業所・放課後等デイサービス

それぞれ紹介します。

地域の保健所や保健センター

「自分の子どもが愛着障害かもしれない」と感じた場合は、地域の保健所や保健センターに相談できます。

保健所や保健センターには、保健師や心理士、母子相談員が在籍しているので、愛着障害に関する悩みや対策方法などについて的確にアドバイスしてもらえます。

また、愛着障害に関する悩みを打ち明けるだけでも養育者のストレスが減ることもあります。相談は無料でできるので、近くの保健所や保健センターへ気軽に相談してみましょう。

精神保健福祉センター

子どもの愛着障害について、より専門的なアドバイスを受けたい方は、精神保健福祉センターに相談することも可能です。

精神保健福祉センターでは心の問題で悩む方やその家族の相談を受け付け、社会に順応できるようにカウンセリングや援助をしてくれます。

医師や精神保健福祉士、臨床心理士などが在籍していることが多く、愛着障害の子どもに関するお悩み相談や医療機関や支援機関からの情報提供などのサポートを受けられます。

各センターによって規模は異なりますが、専門的な医療スタッフに相談できるので、養育者の方は安心して悩みを相談できるでしょう。

精神保健福祉センターは各都道府県・政令指定都市に設置されているので、お気軽に相談してみてください。

児童相談所

児童相談所は、児童福祉法に基づいて設置される行政機関です。18歳未満の子どもに関する相談を、どのような人からも受けています。児童相談所と聞くと、家庭内の問題や虐待、ネグレクトなどの状況から子どもを保護するイメージが強いですが、子どもに関する悩みごとの相談もできるのです。

児童相談所には、児童福祉司・児童心理司・医師・保健師などの専門スタッフが在籍しており、専門知識のある人へ相談が可能です。また、愛着障害に関連する情報の提供や適切なサポートを受けられるように案内してもらえます。

「落ち着きがない」「自己評価が異常に低くて心配」など小さな悩みでも聞いてもらえるので、不安に思ったら、近くの児童相談所へ相談しにいきましょう。

児童発達支援事業所・放課後等デイサービス

児童発達支援事業所と放課後等デイサービスは、どちらも「障害児通所支援事業」という事業で、障害のある子どもが対象の福祉サービスです。

児童発達支援事業所は0歳から6歳の「未就学児」、放課後等デイサービスは6歳から18歳までの「就学児」を対象としています。サービスの利用は、障害者手帳の取得は必須ではなく、自治体から発行の「通所受給者証」があれば利用できるのが特徴です。

施設によってサービス内容はさまざまですが、主に集団生活の適応、基本的な動作の習得など、子ども一人ひとりに合わせた支援支援を提供しています。また、保護者との面談相談、助言など、教育者の支援サービスも行っているため、子どもに関する悩みも親身になって相談に乗ってくれるでしょう。

児童発達支援事業所と放課後等デイサービスは、支援内容に共通点が多く、施設によっては両方のサービスを提供している場合がありますので、近くの施設や気になる施設に問い合わせてみましょう。

まとめ

愛着障害の子どもが示す行動の特徴を紹介!愛着が大切な理由と種類についても解説のまとめ。

愛着障害は、子どもと特定の養育者との間に愛着がうまく形成されないことで、子どもの心に問題が起こる状態です。

愛着障害は「反応性愛着障害」と「脱抑制愛着障害」の2種類です。それぞれの障害がある子どもの特徴は異なりますが、いずれも乳幼児期の環境や養育状況が大きく影響しています。

愛着障害を治すためには、愛着を養育者との間に形成することが大切です。安心・安全基地を作ってあげたり、子どもの気持ちに寄り添って声をかけたりすることを繰り返し、ゆっくり愛着を形成していきましょう。

「自分の子どもは愛着障害かもしれない」と感じた場合は、地域の保健所や保健センターや放課後等デイサービスの施設などに相談してみましょう。無料で相談を受け付けていますので、お気軽に相談してみてください。

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この記事を書いた人

ウィズ・ユー編集部

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