愛着障害とADHDの見分け方!特徴や対処法をそれぞれ解説

子供がシャボン玉で遊んでいる写真

愛着障害とADHDは、子供の行動や感情に影響を与える障害です。

愛着障害とADHDは非常に似た症状を発するので、間違えられやすいです。しかし起因も全く異なるもののため、正しい診断と適切な対処法が重要です。

この記事では、愛着障害とADHDの違いを明確にし、それぞれの特徴や見分け方を解説します。

子供の行動や感情をより深く理解し、適切なケアを提供できるよう、それぞれの障害に対する有効な対処法も紹介します。

子供たちが健やかに成長し、適切なサポートを受けることができるよう、この記事を通じて知識を深めましょう!

愛着障害とADHDは似ているようで大きく違う

赤ちゃんがお母さんが見つめ合っている写真

ADHDは先天的で愛着障害は後天的なことが多い

まずADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)と愛着障害は、それぞれの起源や原因が異なります。

ADHDは先天的な要素が強く関与しています。この障害は、個体が生まれつき持っている神経学的な特性や遺伝子の影響が主な要因で、脳内の神経伝達物質のバランスや機能に影響を与えることが考えられています。ADHDの症状は、注意力の欠如や過活動、衝動性などが挙げられます。

一方、愛着障害は後天的な要因が主に関与します。幼少期の環境や子育ての影響です。例えば、安定した愛情やケアが不足したり、親子間の信頼関係が形成されなかった場合などに発症することがあります。愛着障害は、感情の安定性や人間関係の形成に影響を与える可能性があります。

要約すると、ADHDは生まれつきの神経学的な特性に起因し、愛着障害は幼少期の環境や子育ての影響によって後天的に発症する傾向があるということです。

愛着障害の特徴

愛着障害は、幼少期に健全な愛着関係が形成されないことで生じる心理的な障害で、いくつかの特徴があります。主な原因は虐待や養育者との離別などです。

まず、過剰に他人の態度や表情に敏感であり、人の顔色が変わることに過度に気を配る傾向が見られます。親しい人に甘えることが難しく、本音を言いづらいという特徴もあります。

攻撃性や怒りの感情が常に表れ、これが一種の癖になっている場合があります。また、意図的に他人を困らせる行動や、本心とは違う素直でない反応を示すことも特徴的です。

自傷行為や過度の自己責任感、他者への不信感、自己評価の低さが見受けられることもあります。過度に注目を浴びようとし、自己主張をする傾向や、自身の感情や存在に対する現実感の乏しさも愛着障害の特徴です。

愛着が築かれない場合、情緒や対人関係に問題が生じる可能性が高いです。

愛着障害には2種類ある

愛着障害にはそれぞれの特徴によって「反応性愛着障害」「脱抑制愛着障害」の2種類にわけられます。

それぞれの愛着障害は、異なるタイプの困難を抱えています。反応性愛着障害の場合、警戒心が強く信頼を築くのが難しく、脱抑制愛着障害の場合は適切な距離感を保つことが難しい傾向があります。

反応性愛着障害

このタイプの子供は他者に頼ることができず、警戒心や恐怖心が強いのが特徴です。

主な特徴・症状は下記の通りです。

  • 警戒心や恐怖心が強く、人を避ける傾向がある。
  • 他者の言葉や行動に敏感で、深く傷つくことがある。
  • 自傷行為が見られる場合があり、例えば髪の毛や皮膚をかきむしることがある。
  • 小さなことでもすぐに嘘をつくことがある。
  • イライラやおびえることが多く、落ち込みやすい。
  • 謝ることが難しく、自己評価が低い傾向がある。
  • チャレンジを避け、自信がない。
  • 感情が乏しい
  • 常に他者の反応を気にし、不安や緊張を感じることが多い。

おびえているような行動が特徴です。

脱抑制愛着障害

このタイプの子供は無差別に人に甘えようとし、注意を引こうとします。

主な特徴・症状は下記の通りです。

  • しがみついたり大げさな態度を取ったり誰にでもしがみつく傾向があり、無差別に人に甘えようとする。
  • 知らない人に対する態度を調節できず、なれなれしい態度を取ることがある。
  • 注意を引くために大げさな態度を取ることがある。
  • 空気を読めず、場にそぐわない行動を取ることがある。
  • 落ち着きがなく、乱暴な行動をとることがよくある。
  • 過度にわがままで、自分の欲望を優先することがある。
  • 強情で意地っ張りで、自分の意見を曲げにくい。

空気を読めない行動や強情さが特徴です。

愛着障害とADHDの見分け方

2人の子供がお母さんと手を繋いでいる写真

両親のことを話す時に変化があるか

ADHDと愛着障害を見分ける一つの手がかりは、両親について話す際の様子です。話すスタイルや内容、感情の表現などに特有の違いが見られます。

ADHDの子供は通常、活発な性格を持ち、話す速度が速く、さまざまな話題に興味を持ちます。そのため興味を持っている話題に集中する傾向があるので、途中で話題が変わることがよくあります。感情の表現が豊かであり、感情を率直に表現し、喜怒哀楽が顔や声に表れやすく、話にも感動や興奮がそのまま表れることがよくあります。

一方で、愛着障害の子供は、両親のことを話すのを避ける傾向があります。自分の内面を他人に開くことが苦手なので、感情や経験を話す際には慎重で控えめな姿勢が見られることが多いです。また、感情のコントロールが難しく、感情をうまく表現できない場合があります。

話す内容自体も異なる傾向があります。ADHDの子供は具体的なエピソードや出来事を挙げて話すことが多い一方、愛着障害の子供は、抽象的な表現や一般的な感想を述べることが多いです。
例えば、ADHDの子供は「昨日、公園で遊んだ時にパパが一緒に滑り台を使ってくれた!」と話すのに対し、愛着障害の子供は「パパはいつも優しい」というような一般的な表現です。

過去に愛を受けて育っていたか

愛着障害の子供は、過去に安定的で温かい愛情を受けられていなかった可能性が高いです。幼少期に限らず、5歳から12歳の間に、明らかな虐待だけでなく、心理的な虐待(例:暴言等)やネグレクトの痕跡がなかったか、確認することが重要です。

家族内でのショッキングな出来事が大きな影響を与えている可能性があるため、以下のような事柄があったか、振り返ってみてください。

  • 親の離婚、別居、再婚などの家族構成の変動
  • 家族内の対立や不和の状態が継続していたこと
  • 親や家族が重病や死に至る病気にかかったこと
  • 母親がうつ病や心理的な不安定な状態を抱えていた
  • 幼少期に、長期間にわたって親以外の人に育てられていたこと
  • 兄弟姉妹の誕生や病気などが親の注意を奪ったこと

一方で、ADHDは神経発達の問題であり、愛情を受けているかどうかとは直接関係がありません。ADHDの特徴として、注意力の散漫さや過剰な運動活動が挙げられます。これは脳の機能に起因するものです。
ただし、養育者の適切な支援や理解が得られる環境であれば、ADHDの症状を管理しやすくなる場合があります。

集団や1対1などの対人面に変化があるか

対人関係における違いも、ADHDと愛着障害の見分け方の一つです。
集団か、二人きりか等、対人場面の違いによって特徴の現れ方が違います。

ADHDの子供は、他者との関係性の障害ではないため社交的であることが多く場面の違い、対人関係の違い、集団か1対1か等によって違いは見られないといわれています。

しかし、注意が続かず、場合によっては他の子供たちとの関係が維持しづらい場合があります。

一方で、愛着障害の子供は、対人関係が不安定であり、信頼を築くのが難しい場合がよく見られます。

特に集団の場面で表れやすく、逆に1対1の状況では表れにくいと言われています。

多動性に変化は見られるか

まず、ADHDの子供は通常、過剰な運動活動が常に見られ、じっとしているのが難しい傾向があります。授業中や集団の中でも、落ち着いて座ることが難しい場合が多く、常に体を動かすことを好みます。

一方、愛着障害の場合、多動性が顕著に現れることは少なく、むしろ内向的で静かな態度がよく見られます。彼らは環境や他人との関係に対する不安から、自らを閉じこもらせる傾向があります。また、気分によってムラがあることも特徴的で、時折、急に興奮しやすかったり、沈んでしまうことがあります。

ADHDの子供は、元気で運動的な特徴が強く現れる傾向があります。このように、多動性の特徴は、ADHDと愛着障害を見分ける際の重要な指標の一つです。

片付けやルールに対して行動できているか

片付けやルールへの対応も、ADHDと愛着障害を見分けるのに役立ちます。

ADHDの子供は、物事を始めることができても、途中で気が散ってしまい、作業が続かないことがあります。これが片付けにおいても顕著で、始めたものの途中で興味を失い、散らかったままになることがよく見られます。

また、「ルールを守らないといけない」という意識があっても、注意力が散漫であるため、日常生活における整理整頓やルールの守りが難しいことがよくあります。

一方で、愛着障害の子供は、「片づけをすると気分がよい」「片づけをしよう」という感情が育っておらず片づけができないケースがあります。また、ルールを守ろうという意識が育っておらず、自分に対するルールや指示を守ることが難しく、反抗的な態度を取る場合があります。これは、過去に安定した愛着関係が築かれなかったことから、他者の指示に従うことに不安や抵抗を感じるためです。

また、愛着障害の子供は自己肯定感が低く、自己価値感が不安定であることが多いため、他者のルールや期待に対応することが難しい場合があります。

環境の変化で症状が和らいだりすることがあるか

ADHDと愛着障害の違いを見極める際には、環境の変化が症状に与える影響も考慮すべきです。

ADHDの場合、環境が刺激的であれば注意が向きやすく、逆に刺激が少ない場合は注意力が散漫になる傾向があります。

愛着障害の子供は、環境の変化に敏感で、不安や不安定感が強まる場合がよく見られます。
また、愛着障害による疑似ADHDの場合、環境の変化が顕著に症状に影響します。

環境が安定し、愛着を築ける人に出会うことで、ADHDのような症状が軽減されるケースが多く見受けられます。実際、一部の人々では、ADHDに似た症状が完全に消失したということもあります。環境が持つ大きな影響は、注意深く追跡・検討すべき重要なポイントです。

意図的な無視に対する反応

意図的な無視に対する反応も、ADHDと愛着障害の見分けに有益な情報源です。

ADHDの子供は、不適切な行動場面で意図的に無視されると、通常はその行動が持続することが少なくなる傾向があります。注意力が散漫であり、刺激を求めることが多いため、無視されることで刺激が減少し、一時的に問題行動が収まることがよくあります。

また、周囲の出来事に気を取られがちであるため、他人の反応に気づきにくく、自分が無視されていることに気付かないことも多いです。

一方で、愛着障害の子供は、無視されることで不安や怒りが増し、さらに問題の行動が強まる場合があります。無視されたことに対して敏感に反応し、自分の感情を分かってくれない!という思いを誘発し、感情を逆なでしたように、不安や怒りを表す場合があります。無視されることでもっと注目してもらうための問題行動なので、その行動が増えることがあります。

したがって、愛着障害の子供に対しては、計画的な無視は適切ではありません

上記の両者の特徴的な反応をもとに、適切な支援やアプローチを提供することが、子供たちの発達や心理的な健康にとって有益でしょう。

愛着障害の接し方

赤ちゃんの手の写真

「安全基地」を用意してあげる

では、愛着障害の子供にはどのように接したらよいでしょうか。

愛着障害の子供と接する際に重要なのは、「安全基地」を提供することです。安全基地とはつまり「心の支え」です。精神的に安定し、保護された環境のことを指します。

現在の不安や心配事、無力感や苦しみなどを受け入れてくれる存在が、克服への最初の一歩となります。幼少期に養育者との愛着が十分に築けなかったとしても、成長する過程で友人、恋人、先生など新たな出会いが愛着の対象となり、絆を築くことは可能です。信頼を築き、困難があれば助けてくれる存在をつくることは非常に重要です。

もちろんそれは心療内科や精神科、カウンセラーが、日常生活での不安や恐れなどを定期的に話せる環境を提供することでも成立します。

子供が信頼できる大人(安全基地)がいることで、自己発信的で自主的な成長の機会を作ることができます。安心して戻れる場所と、困った際に助けてくれる安全基地の存在は、非常に重要です。

子供にとって安心できる場所や人間関係を提供することで、感情の安定や信頼関係の築き方が支援されます。愛着障害の子供は、繰り返し安心感を提供することで、安定感を築けるようになります。

まとめ

女の子がとうもろこしを持っている写真

ADHDと愛着障害の違いを見分けるための要点について説明しました。

愛着障害とADHDは似たような症状を示すことがありますが、その根本的な原因や特徴には重要な違いがあります。

愛着障害は、養育者との安定した愛着関係が形成されなかった場合(後天的)に起こるものです。子供は他者との信頼関係を築くのが難しく、内向的で閉じこもる傾向があります。感情のコントロールが難しい場合が多く、他者の無視や拒絶に強く反応します。愛着障害の場合は信頼できる存在をつくり、不安や苦しみを受け入れてあげられる環境を提供しましょう。

ADHDは主に注意力散漫や過剰な運動活動が中心であり、先天的なものでした。子供はじっとしていることが難しく、注意がすぐに他のことに移ってしまう傾向があります。感情の表現が豊かであり、感動や興奮がそのまま表れることがよくあります。ADHDの場合は構造化された環境を提供し、注意力を持続させられる環境づくりをしましょう。

適切な対応を選ぶためには、それぞれの状況や子供の特性を理解することが大切です。
適切な支援やアプローチを提供できるように上記のポイントを押さえながら、子供の行動や特徴をよく観察し、専門家の助言も得ながら、子供の健やかな成長をサポートしましょう。

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ウィズ・ユー編集部

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