ADHDによくみられる行動はどれか?よくある困りごとや症状を解説

女の子がジョウロで遊んでいる

ADHDは、じっとしていられない、集中が続かないといった特徴を持つ発達障害の一つです。

我が子が他の子に比べて落ち着きがなかったり、衝動的な行動で周りとのトラブルを抱えていたりすると、「もしかしてADHD?」と不安になる保護者も少なくありません。

この記事では、ADHDを持つ子供たちの特徴的な行動や、ADHDの症状を解説します。

記事の後半では治療方法などもご紹介します。是非、最後までご覧ください。

ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは?

男の子が疲れている

注意欠如・多動症(ADHD)は、発達の過程で注意を長く続けるのが難しい、計画的な行動が難しい、落ち着きがなく、待機するのが難しい、また行動のコントロールが難しいという持続的な特徴があり、これによって日常のさまざまな場面で問題が生じる状態を指します。学校や家庭、仕事など、さまざまな場所で困難が確認される場合に診断されることが多いです。

ADHDの症状には個人差があり、また症状の程度も異なりますが、ADHDには「多動性」「不注意」「衝動性」という3つの主な行動特性が存在します。これらはそれぞれ異なる特徴を持ちますので順に解説していきます。

ADHDの分類と主な症状

前述した通り、ADHDは3つの主な行動特性があります。

不注意

「不注意」は注意を継続することが難しく、細かい作業や長時間の集中が困難な特性です。

下記は不注意の行動の一例です

・細かい指示や指導を見落とすことが多い。

・継続的なタスクに対してすぐに興味を失い、途中で放置する。

・宿題やプロジェクトの期限を忘れてしまう、または延ばしてしまう。

・身の回りのものを失くしやすい(例えば鍵や財布。)

・他人の話を聞いている最中に気を散らすことが多い。

・一つのことに集中しているときでも、他のことに気が取られやすい。

・複数のタスクを同時に行おうとして、どれも完了しない状態になることがある。

・話し手の顔を見ているのに、話の内容を忘れてしまうことがある。

・時間の経過を感じ取りにくく、待ち時間やスケジュールを守るのが難しい。

・組織的な手続きや計画を立てることが苦手で、混乱することが多い。

多動性

「多動性」は、静かにしていること・じっとしていることが苦手な特性です。

下記は多動性の行動の一例です

・座っていられる時間が短く、常に動き回る。

・机や椅子をたたく、足をバタバタとさせる。

・順序立てた行動が難しく、思考や行動が飛躍的に変わることがある。

・他人の話を遮ってしまうことが頻繁にある。

・静かな場所や待機時間に苦痛を感じ、落ち着きがない。

・指示やルールを守るのが難しく、規則を破ることが多い。

・一つのタスクに集中するのが難しく、複数のことを同時に行おうとする。

・常に何かを手に持ち、触っている状態が多い。

・過度なエネルギーを持っており、常にアクティブである。

・他人との待機時間や静かな活動に参加することが難しく、自分だけが動きたくなる。

衝動性

「衝動性」は思考や行動が先走ってしまい、我慢ができない特性です。

下記は衝動性の行動の一例です

・危険な行為や冒険的な活動に軽易に参加する。

・感情や感覚に基づいて即座に行動する、考える前に行動する。

・他人の発言や行動を遮って中断することが頻繁にある。

・予測可能な結果を考慮せずに意思決定を行う。

・金銭的な選択を急いで行い、後で後悔することがある。

・社会的な規範やルールを破ることが多い。

・言葉を選ぶ前に発言してしまい、後悔することがある。

・食べ物や飲み物を過度に摂取する、または無計画に食事をする。

・他人との対人関係で衝動的に反応し、関係を損なうことがある。

・短期的な欲求や刺激に引き込まれやすく、その後の長期的な影響を考慮しない。

ADHDの原因

男の子が悩んでいる

ADHD(注意欠如・多動症)の正確な原因は完全には明らかにされていません。複数の要因が関与していると考えられていますが、ADHDは先天的な脳機能の障害によるものであり、育て方やしつけが原因とされることはありません。

主に原因と言われているものを2つ紹介します。

脳内の神経伝達物質の不足

脳内の「神経伝達物質」とは、神経細胞間で情報を伝達するための化学物質を指します。

特に、ドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の量が不足すると、神経細胞間の通信に障害が生じます。このため、情報が正しく伝わらず、ADHDの症状が現れると考えられています。

脳の機能調節の偏り

ADHDの人々の脳には、「前頭頭野」の領域の活動に偏りが見受けられることが多いです。

前頭前野とは人の前頭部に位置する大脳の一部を指します。

adhdの子供によくみられる行動

砂浜で遊んでいる男の子

ここまではADHDがどのようなものかご紹介しました。

実際にADHDを抱えている子どもによく見られる行動の具体例と対処方法を4つご紹介します。

忘れ物が多い

ADHDの困りごとの代表とも言えるのが「忘れ物・失くしものが多い」ことです。

物を忘れないようにしておくには、メモをしておくのがおすすめ。

メモは、常日頃持ち歩くようにしましょう。ただ、ADHDはマルチタスクな作業も苦手なので、話を聞くと同時にメモをとるという行動も簡単ではありません。そこで、相手に断った上で、テープレコーダを使用するということも考えられます。

幼い子どもには、親が一緒に確認するようにしましょう。くどいほど一緒に確認し、お手本を示すようにしましょう。

また、外出先に忘れ物をするときは、確認不足が原因です。

飲食店や外出先でどこかに立ち寄ったりした際は、荷物の確認をすることを義務付けましょう。確認を習慣化できるようになれば、外出先に何かを忘れる可能性はぐっと減ってくるはずです。

集中が続かない

ADHDの子どもには、飽きやすいという特性があり、衝動性や多動性、不注意の全ての特性からきており、最後までやり抜くのが難しいといわれています。

また、ADHDは1つのことに集中するのが苦手なので、ほかのことに注意が向いてしまいます。加えて、集中力持続時間が短いともいわれ、長引くほど疲れがたまりやすいです。

できるだけ気が散るものが目に入らないように工夫したりするのがよいでしょう。

整理整頓が苦手

ADHDの子供には、整理整頓が苦手な傾向が見られることが一般的です。

ADHDの特性として、順序立ててタスクを実行するのが困難というものがあります。このため、物の整理に関するスキルが不足していたり、注意を維持するのが苦手なので、物を適切な場所に戻す、または物を整理するという継続的なタスクに集中するのが難しいことがあります。

物の置き場所、片付けの方法やタイミングなどを決めておき、あらかじめ片付けルールを作っておくことで、考えるべきことが減り、片付けの負担を軽減することができます。

じっとしていられない

ADHDの子どもは特性から「じっとしていなければいけない場面」での我慢が難しい子が多いです。

無理に長い時間じっとしていることを求めず、短い間隔で休憩や動きのある活動を取り入れることで、集中を保ちやすくします。座ったままでの作業や学習が難しい場合、立ったままの作業や、フットスツールやバランスボールを使用して座ったままでも動ける環境を整えることが有効です。

年齢・性別ごとに現れ方の違いはあるの?

女の子が見つめている

年齢による違い

乳児期の場合・・・ADHDの症状は未発達であり、診断が難しいため、ADHDの診断が行われることはありません。

幼児期の場合・・・成長とともに、少しずつトラブルの原因となる特定の行動が顕著になってきますが、他の発達障害と症状が共通することも。

・他の子供たちに比べて、常に動き回る傾向が強い。

・ 短時間しか集中できず、すぐに興味を失ってしまう。

・ 簡単に気が散り、タスクや遊びの中断が多い。

・長時間の待機や静かな活動が苦手で、じっとしていられない。

・突然の怒りや感情の爆発、気分の変動が頻繁に見られる。

・ルールや指示を守るのが難しい。

学齢期の場合・・・小学校に進学する頃になると、ADHDの症状がより顕著になり、ADHDと診断されるケースが増加します。

・授業中に当てられていないのに発言してしまう

・注意が散漫になり、興味が次々と変わり気が散っている状態

・頻繁に物を忘れる、紛失する

・他者とのコミュニケーションが難しく、急な行動や怒りの制御が難しい

・友達関係でトラブルが生じやすい

成人期の場合・・・大人になった際、子どもの頃にADHDと診断された一部の人は、自らの特性を理解し、適切な対応策を身につけることで、日常の困難を乗り越えているケースも多いですが、大人としての生活の中で、ADHDの症状が前面に出やすくなる場面も多くあります。子どもの頃と異なり、親や教師のサポートが減少し、責任ある役割や日常の要求が増加する中で、生活の変動が影響を及ぼすことがよくあります。

・注意が行き届かずケアレスミスが多い

・計画や順序づけが苦手

・約束や時間に適切に対応できない

・片づけが苦手で乱雑になりがち

・仕事の優先順位づけが難しい

・多くの情報を同時に処理するのが難しく混乱する

・手間や時間のかかる作業は後回しになりがち

要約すると、子どものADHDは、過活動、衝動的な行動などが主に表れます。

一方、大人のADHDでは、これらの症状が内向的になり、外部からは見えにくくなることが多いです。

男女による違い

男性は多動・衝動優勢型の人が多く、女性は不注意優勢型の人が多い傾向があると言われています。

そのため女性のADHDの症状は、外部からは見えにくいと言われています。

ADHDの治療

子供と遊ぶお母さん

「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること

症状のいくつかが12歳以前より認められること

2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること

発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること

その症状が、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと

出典:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

厚生労働省のページでは、上記のような条件でADHDと診断されると記述されています。

診断にはアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)が用いられることが多いです。ここでは、もしADHDと診断された際にどのような治療をしていくのか、方法をご紹介していきます。

環境調整

実施がしやすく、効果の期待ができる方法として、「環境調整」があります。

環境調整とは、子どもの周囲の環境を改善するための手法やアクションのことを指します。具体的には、物理的な変更(照明や音の調整)、人間関係の改善、制度の見直し、心理的なサポートなどが含まれます。目的は、環境の機能性や快適さを高めることです。

具体的な環境調整の例を下記に記載します。

・注意をひきやすい物(ゲーム・漫画・おもちゃなど)がある場合、布を被せたりして目に入りらないようにする

・勉強机を壁に向かって配置し、他のものが目に入りにくいようにする

・椅子をがたがたしにくいように足が床につかない椅子を使用する

・衝動的に物を投げてしまうような子どもには、当たると危険な物、壊れやすい物は、あらかじめ手の届かないところにしまっておくようにする

・クラスメイトや掲示物などの目に入るものが少なくなるよう、教室での席を一番前にしてもらう

ソーシャルスキルトレーニング

「ソーシャルスキル・トレーニング」とは、子どもが周囲の人にどのように振る舞うべきかをロールプレイなどを通して実践的に学ぶというものです。ソーシャルスキルトレーニングで扱われるスキルは大きく4つに分類されます。

・コミュニケーションに関するスキル・・・相手の話を聞く、自分の意見を説明する、会話を始め方・続け方・終わらせ方など

・社会的なマナーやルールの理解、対人関係に関するスキル・・・自己紹介、挨拶をすること、時間や順番を守ること、相手を助けること、お礼を言うことなど

・感情の理解と対処のスキル・・・自分の理解をすること、相手の感情を理解すること、気持ちの切り替え方、ストレスに対処することなど

・問題解決のスキル・・・誰かに依頼する、誘う、断る、謝る、相談するなど

これらのスキルは成長に伴い、自然と身に付けていくものですが、ADHDの子どもにはスキルの獲得・使用が難しい場合があるので、「トレーニング」をする必要性があります。

子ども向けのソーシャルスキルトレーニングが行われている場所は、教育機関(幼稚園・保育園・小中学校など)、放課後デイサービスなどが挙げられます。カウンセラーや相談員が巡回して実施するケースもあるようです。

ペアレンタルトレーニング

薬物治療

ADHDを完治させる治療法は確立されていませんが、特性の一部を緩和・改善する薬が存在します。

薬を上手く活用できれば、日常生活の困難が軽減し、さまざまな生活のスキルも獲得しやすくなります。

ADHDに使用する薬は下記の4種類があります。

コンサータ・・・、脳内のドーパミンという物質を増やすことで、脳の覚醒度を上げ、症状を改善

アトモキセチン(ストラテラ)・・・脳内のノルアドレナリンという物質を増やすことで、症状を改善

インチュニブ・・・前頭葉の働きをよくし、情動を安定させる働きがあり、イライラ・癇癪・衝動性・ルールが守れないなどの症状が強く出ている際に処方される

ビバンセ・・・欧米では第一選択で使用されている薬剤

どれもADHDの症状を改善するという共通点がありますが、使い分けが必要で、副作用が現れることも。

専門医としっかり相談し慎重に取り扱うことが重要です。

まとめ

子供を抱っこするお母さん

いかがでしたでしょうか。この記事では、ADHDによくみられる行動や症状を詳しく解説しました。ADHDへの理解を深めることで、子どもに対して正しいサポートを提供できるようになります。この記事を通じて、ADHDの基本的な特徴や症状、そしてその影響についての理解が深まったことでしょう。ADHDは一見すると単なる子供の「わがまま」や「注意散漫」として捉えられがちですが、その背後には複雑な神経学的な特性や生活上の困難が存在します。このような症状や行動は、子どもだけでなく、その家族や周囲の人々にも影響を及ぼすことがあります。

症状の理解や適切な対応は、ADHDの持続的なサポートや、関係者との良好なコミュニケーションを築く上で欠かせないものです。今回の解説を通して、ADHDに対する偏見や誤解を排除し、個々のニーズや特性を尊重することの大切さを再確認する機会となれば幸いです。

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ウィズ・ユー編集部

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