子どものADHDとは?特徴や対応方法について

2人の女の子が座っている写真

子どもたちの個性や特性は多様であり、それぞれが独自の魅力を持っています。

しかし中には、注意力を維持することや落ち着いて座っていることが苦手な子どもたちもいます。

これは注意欠如・多動性障害、通称「ADHD」と呼ばれる発達障害の可能性があります。ADHDは、思考を巡らせずに行動に移す傾向や、不注意さ、落ち着きのなさが特徴で、日常生活や学業に影響を与えることがあります。

特に学校の授業中や宿題の際、集中することが難しく、落ち着いて学ぶことが難しい場合があります。しかし、ADHDの子どもは創造的で柔軟な思考を持っていたり、独自の視点から物事を捉えることができるという長所があったりします。

ADHDの子どもたちには、理解あるサポートが不可欠です。本記事ではADHDの特徴や対応方法について詳しく解説していきます。正しい知識を持ち、家族、教育機関、医療専門家が協力し、個々の特性に合わせたケアを提供することで、子どもたちは自信を持ち、自身の可能性を最大限に引き出すことができるでしょう。

ADHDとは

赤ちゃんが椅子に座っている写真

ADHD(注意欠如・多動性障害)は、発達障害の一種で、不注意さや落ち着きのなさ、思考を巡らせずに行動に移す傾向が特徴です。この状態が継続すると、日常生活や学校生活、人間関係の中で様々な困難に直面することがあります。

特に子どもの場合、授業中や宿題の際に集中力を保つことが難しく、しばしば教室内で落ち着かずに動き回ることがあります。また、指示を聞き流すことがあるため、学業成績に影響が出る場合もあります。

一方で、ADHDの子どもたちは創造力や柔軟な思考力に優れる場合もあります。子どもたちの元気で好奇心旺盛な性格は、適切なサポートを受ければ素晴らしい才能を開花させることができるでしょう。

そして、家族や学校、医療専門家が連携し、個々の特性に合わせたアプローチを取ることで、子どもたちは健全に成長することがことができるでしょう。また、継続的なサポートと教育が、子どもたちの自信に繋がり、将来に向かって前向きに成長する手助けとなります。

ADHDの原因

ADHDは、生まれつきの脳の一部に機能障害があることで、「不注意」「多動性」「衝動性」といった特性が生じる発達障害を指しますが、正確な原因はまだ完全には解明されていません。しかし、研究により以下の要因が関与している可能性が示唆されています。

  • 遺伝的要因:親がADHDの場合、発症リスクが高いことが報告されています。
  • 脳の発達:特に注意や抑制を担当する脳の領域に関連する神経伝達物質の働きが異常である可能性があります。
  • 環境要因:妊娠中の母親の喫煙やアルコール摂取、過度のストレスなど。
  • 神経化学的要因:脳内の神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリンなど)のバランスが崩れているとする説もあります。これが注意や活動レベルの制御に影響を与えると考えられています。
  • 脳の構造的な変化:ADHDは脳の一部に構造的な違いが見られる場合があります。

要約すると、ADHDの原因は複合的であり、遺伝的、脳の発達、神経化学的な要素が組み合わさって影響を与える可能性があります。ただし、全ての症例で同じ原因が働いているわけではありません。
親の育て方が原因だろうか」と考える人もいますが、ADHDは脳機能の障害によるものであり、育て方やしつけが原因とされることはありません。

ADHDの種類や症状

子供の背中の写真

ADHDの症状は多岐にわたり、症状は個人差があり、また症状の程度も異なりますが、ADHDには「多動性」「不注意」「衝動性」という3つの主な行動特性が存在します。これらはそれぞれ異なる特徴を持ちますので順に解説していきます。

多動性

「多動性」は、静かにしていること・じっとしていることが苦手な特性です。
例えば、授業中や会議などにいつも落ち着きがなかったり、座り続けることが難しかったり、騒いだり動き回るなどの行動が見られます。

不注意

「不注意」は、注意を継続することが難しく、細かい作業や長時間の集中が困難な特性です。日常生活での物事の見落としが多い傾向が見られます。

例えば忘れ物が多かったり、計算ミスや字脱字が頻繁に起こったり、長時間の集中が難しく、中途半端に物事に取り組むことがよく見られます。

衝動性

「衝動性」は、思考や行動が先走ってしまい、我慢ができない特性です。
例えば、順番を待てず割り込んだり、会話の流れや雰囲気を気にせず発言するなどの特徴があります。

自分の子どもが「ADHD」かも?特徴4つ

子供がお花畑を眺めている写真

子どもは元々、感情が激しく変わることや、活発に動き回ったすることがよくありますが、中にはADHDの可能性がある特徴的な症状があります。年齢によってそれぞれの特徴が現れますので紹介していきます。

乳児(0~1歳)の特徴・症状


乳児期には子どもの発達段階で見られる行動の幅が広いため、ADHDの診断は通常、幼児期以降に行われることが一般的ですが、後にADHDと診断を受けた人の多くは以下のような共通点があります。

  • 眠りが浅く、寝つきが悪い
  • 抱っこ嫌いで、母親に抱かれることも嫌がる
  • 音への反応が鈍い(生まれてからずっと多動は少数)
  • 過度の泣き叫び
  • 人やおもちゃに対する関心の欠如

もし、上記のような兆候が見られる場合、注意深く子どもの成長経過を観察していきましょう。

保育園・幼稚園(2~5歳)の特徴・症状

保育園や幼稚園に通う2~5歳の子どもの場合、以下のような行動が見られる場合があります。

  • 静座が難しく、みんなが静かにしている中でも騒いでしまう
  • 長時間の集中が難しく、園での活動になかなか集中できない
  • 友達からおもちゃを奪ってしまう
  • 常に体を動かしたり走り回ったり落ち着きがない
  • 指示に従わない
  • 順番を守れない
  • 食事中でも他に気になることができると動き回ってしまう

この頃になると、自分で行動することが増え、多動の兆候が見られるようになることがあります。

親が日常的に一緒に過ごすことで、子どもの様子をよく理解できるようになります。ですので、親だけが気づけるような部分もあるかもしれないため、親は特に注意深く子どもの様子を見て、気にかけてあげましょう。

小学生(6~12歳)の特徴・症状

小学生の子どもの場合、以下のような特徴が見られる場合があります。

  • 授業中に先生の話を聞くよりも、窓の外の景色に興味を持つことが多い
  • 席に座っている間でも、足をバタバタさせたり、いすをガタガタと動かしたりする
  • 思いつきで友達のものを取ってしまうことがある
  • 学校で使う教科書やノートを頻繁に忘れる
  • 自分の持ち物をどこに置いたか思い出せないことがよくある
  • 急に先生の話を遮ってしまったり、授業の途中で言葉を発することがある

ADHDの子どもたちは、持ち物を忘れたり、ルールを守れなかったり、友達とうまくやっていくのが難しかったりすることがよく見られます。多くの場合、家庭や学校で注意を受け続けることで、自己評価が低くなりがちです。

このような自己評価の低下や失敗の経験が積み重なると、うつや不安障害などの二次的な問題を引き起こしやすくなります。重篤な二次障害が発生すると、元の生活に戻るのが難しくなる場合もあります。

そのため、早期に気づき、適切に対処し、二次障害を予防することが重要です。

中学生~高校生(13〜18際)の特徴・症状

中高生になると、以下のような特徴が見られる場合があります。

  • レポートや宿題の締め切りや予定の把握が難しく、期日を守るのが苦手
  • 勉強や宿題をしていても、いつの間にか違うことをしている
  • 教科書やノートを学校に忘れたりすることが多い。
  • 忘れ物や失くし物、落とし物が多い
  • 好きなことにはとことん集中する
  • ケアレスミスがとても多い
  • 片付けや整理整頓が苦手

ADHDのような活発さや落ち着きのなさは、小学生の段階では一定数よく見受けられます。そのため、小学校時代では、多くのADHDの子どもも周囲に違和感を与えず、普通に過ごすことができます。

しかし、年齢が進むごとに、周囲の子どもたちは年齢相応に落ち着いてきます。この時にADHD特有の活発さや衝動的な行動が、友達とのトラブルに繋がることがあります。

中高生は、まさに大人への入口です。以前は保護者が子どもの身の回りの世話をしていましたが、ある程度は自分で問題を解決する能力が求められます。中学生の時期から「自力で対処する」スキルを磨くことで、将来的な生活がずっとスムーズになります。

ADHDの子どもへ接し方

子供が絵を描いている写真

ADHDの子どもは、興味や好奇心がある分野に集中力を発揮することができる場合があります。自分が得意で興味を持っていることに取り組むことで、周囲を驚かせるほどの成果を上げることもあります。

何事も「できない」ということに固執せず、得意な分野や好きなことを伸ばしていくことが大切です。成功体験は自信を育む一翼を担い、少しずつ成果を実感できるようになるでしょう。自分の才能を信じ、積極的に取り組むことで、将来への希望も膨らむことでしょう。

1つずつわかりやすい指示を出す

ADHDの子どもに対しては、具体的で明確な指示が効果的です。
ADHDの子どもにとって、長い説明や抽象的な言葉が伝わりにくいことがあります。

ポイントは「何のために」「何を」「いつまでに」「どのように」などを明確にして伝えることです。
その他に、「なぜダメなのか」「どうすれば良いのか」といった子どもたちが理解しやすい言葉で注意してあげるようにしましょう。

ルールを決めてご褒美制でやる気を保つ

子どものやりやすさ、約束の守りやすさを考慮し、実現可能なルールや目標を共に考えましょう。子どもが納得したら、それを守る約束を交わします。

ADHDの子どもはご褒美でやる気を引き出すことができるので、約束を守れた際にはご褒美を用意するのも良い方法です。これは「目標を定めて実行する」という訓練にもなりますし、達成できることで子どものやる気や行動を育む一助になるでしょう。

子どもの我慢できる時間や取り組めることは、少しずつその子のペースで増やしていくように心掛けましょう。

イラストなどで視覚的に見せてあげる

ADHDの子どもたちは、言葉での指示がなかなか理解しにくい場合があります。中には、文字よりも絵やイラストなどの視覚的な情報から物事を理解するのが得意な子どももいます。
視覚的な情報を活用することは、自分の意志や思考を伝えたり、理解したりする上で効果的な方法です。

例えば、やることリストやスケジュールを図やカラーコーディングで表現することで、やるべきことを明確に理解できるようになります。
また、言葉だけでなく、具体的な行動や姿勢を示すことで、具体的なイメージを持たせることができます。例えば、「教室での静かな座り方をするから見ててね」と言い、実際の姿勢をやって示すことで、理解が深まります。

さらに、視覚的な情報を用いることで、彼らが自分の感情や状態を表現しやすくなります。感情を絵やシンボルで示すボードを利用することで、コミュニケーションがスムーズになる場合もあります。

視覚的な情報を活用する際には、その子の好みや得意な方法を考慮し、最適な手法を選ぶことが重要です。
子どもたちと一緒に工夫し、視覚的な情報を通じて効果的なコミュニケーションを築いていきましょう。

目標を達成した・良いことが出来た時は褒める

子どもが何かを達成した際には、できるだけ早く褒めましょう。「もしかしたら少しオーバーかも?」と思うぐらい褒めてあげることが重要です。

子どもは褒められることで気分が良くなり、良い行動を繰り返すようになります。もし子どもができない場合でも、「〇〇する準備をしなきゃってちゃんと考えているようだね。」と動かないことを褒めてあげ、ちょっとでも動き出したら、「おー、早速やり始めたね!行動できて偉いね。」など終了するまでの途中経過を褒めることを意識してみましょう。

褒められることで、本人は自分がどのような行動をすべきかを自覚し、達成感や認められたという実感が自己評価を高める一助となります。

普段、注意や叱りが多いADHDの子どもにとって、成長のためには褒めることが極めて重要です。日常の中で当たり前のことや良いこと、達成したことがあれば積極的に褒めてあげましょう。

ADHDの子どもと接する時の注意するポイント

子供がパソコンを見ている写真

ADHDについて正しく理解する

ADHDは生まれつきの脳の発達に起因し、個々の脳機能の違いがもたらすものであり、ADHDの行動は、本人の意志やしつけの問題とは異なります。単に努力や意志で修正できるものではありません。親の育て方が原因というわけでもありませんので、このような誤解が生まれると、本人や親御さんを苦しめることになります。

またADHDは個人差が大きく、同じ診断を受けても、症状や程度は異なる場合があります。例えば、不注意の症状が強い子どももいれば、多動性や衝動性が主に現れる子どももいます。

また、それぞれの生活状況や環境によっても症状が異なる場合があります。そのため、個別のケースごとに適切な支援や対処法を考えることが重要です。

ADHDは個々の特性であり、人格の一部ではありません。偏見や差別を排除し、理解と尊重を醸成することが必要です。

「全てのADHDのある子どもにうまく対応できる」というマニュアルはありませんが、周囲の人に障害について知ってもらう機会を設けたり、トラブルがあれば、年齢や理解度に応じて話し解決できるよう支援をするようにしましょう。

ストレスが溜まらないよう注意する

繰り返し注意する側もよい気分ではありませんが、ADHDのこどもはADHDの特性から失敗を重ねることで、周りからよく叱られ、挫折感や自己嫌悪を繰り返し経験しているケースが多く、ストレスがたまりやすい傾向にあると言われています。

そして、叱られて自信を失うことで、より症状が悪化し、悪循環に陥ることがよくあります。特に、ADHDは不安や緊張、疎外感が強まると症状が激しくなる傾向があります。
このような経験が積み重なると、うつ病や不安障害などの精神的な健康の問題が併発する場合があります。

感情を聞いて理解し、解決策を一緒に考える時間を持つなどADHDの子どもがストレスをためないように家族全体で子どもを受け入れ、愛情と理解を示してあげましょう。

傷付けない叱り方を心がける

感情的な言葉をぶつける行為は、悪意がないのに同じ失敗を繰り返し、どうしたらよいかわからず困っている子どもを傷つけ孤立させてしまうことがあります。威圧的な態度や表情は避け、子どもに対して優しく理解を示すようにしましょう。
叱る際には、どのように改善すれば良いかを具体的に伝え、ポジティブな言葉を使い、子どもの自信を傷つけないよう心がけましょう。

叱る際のタイミングも重要です。子どもが落ち着いている時やリラックスしている時に話すようにしましょう。

環境を変えてあげる

できない場合やトラブルが起きた際、叱るだけでなく、その背景や理由を考える環境を整えてみましょう。
ADHDの子どもに適切な環境を提供することで、以下のような変化が見られる場合があります

  • 静かで刺激の少ない環境や、個人の学習スペースを提供することで、集中力が向上
  • 家庭や学校などの環境を調整することで、子どものコミュニケーションや対人関係が改善
  • 運動をする場所を確保し、適度な運動を取り入れることで、過剰なエネルギーを発散
  • 予定ややることを目に見える形で示すことで、計画の実行がスムーズに

上記は一般的な例であり、個々の子どもの特性やニーズによって適した環境が異なる場合があります。柔軟なアプローチで、子どもが最適な環境を見つけてあげましょう。

まとめ

子供が走っている写真

本記事では、ADHDの基本的な理解から具体的な特徴、対応方法までを解説しました。

ADHDは注意欠如・多動性障害であり、生まれつきの脳の機能障害が原因です。子どもの日常生活や学校生活に影響を及ぼし、家族や教育者の理解と適切なサポートが重要な障害です。

特徴については、不注意、多動性、衝動性の3つの行動特性があり、それぞれが異なる影響を与えます。
対応方法では、環境の調整や視覚的なサポート、具体的な指示の与え方などが有効です。また、子どもの自己肯定感を育てるための褒め方や、適切な目標の設定も重要です。

全体を通して、子どもの個々の特性を理解し、それに合わせたサポートを提供することが鍵となります。また、家族や教育者との連携が良好であることも、子どもの成長と発達にとって必要不可欠です。

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ウィズ・ユー編集部

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