中学生になると学習面はより難しくなり、部活動など課外活動も活発になってきます。
また、様々なコミュニティの中で互いの思春期も相まって人間関係もより複雑化していくことでしょう。
小学生とはまた違った生活に不安を抱いている人も多いのではないでしょうか。
今回は、ADHD(注意欠如・多動性障害)の中学生によくある特性と対処方法、支援先などについて詳しく解説していきます!
ADHDの中学生の特徴とは
自分の持ち物を整理できない
整理整頓が苦手な傾向があり、物を置きっぱなしにしてしまったり元の場所に戻すことが難しかったりするところがあります。また、1つの空間に収まるように片付けるのが苦手なため、物があふれてしまうこともあります。苦手意識から整理整頓が億劫になってしまい、散らかしてしまいがちです。
学校ではロッカー内で物が煩雑状態になっていたり、持ち帰るべきものがそのままになって溜まっていく傾向があります。
そもそも片付け自体が面倒臭いと感じるタイプもいれば、いざ片付けをして整理整頓をしても、すぐに散らかしてしまうタイプもいます。
注意散漫になり集中力が続かない
注意が逸れてしまう特性から、授業中も集中できない姿が多く見られます。先生の話に集中して最後まで聞けず、聞き逃してしまったり内容がわからなくなることもしばしばです。
また、ADHDは感覚過敏を伴う場合があります。音や周囲の動きに敏感なため、集中力が途切れてしまうこともあるのです。
テストの解答などでも、本当はわかっているのに集中が途切れて間違えてしまったり、注意散漫になって解答欄を間違えたり問題を飛ばして解答してしまったりすることもあります。
忘れ物が多い
耳で聞いた情報を正しく記憶することが難しく、うっかり忘れてしまうということが多い傾向があります。注意を持続させることが困難なため、その時は忘れないようにしようと思っていても時間が経つと物を準備する段階で忘れてしまっているところがあります。
メモを書くようにしても、特性からメモを書くこと自体を忘れたり、メモに書いたということを忘れたりしてしまうこともあるため、対策してもなかなか難しいのです。
ただし予防策をするのは大切なことです。
「前日に持ち物を用意しておくこと」「荷物は数多くわけるのではなく1つにまとめる」「予定を紙にまとめ、目に見えるところに貼る」などが挙げられます。
保護者の声がけのもと中学生のうちに習慣化していくことで、将来社会に出た時にも役立ちます。
宿題をやらない等で内申点に影響する
中学校では内申点は学習の成績だけでなく、部活動や行事、生徒会や課外活動の面でも評価されます。
それ以外にも提出物を出さなかったり忘れ物が多いと内申点に響きます。内申点は高校受験の際には合否判定の参考材料の1つとなるため、提出物を期日までに出すことはとても大切です。
しかしADHDの特性として宿題を後回しにして溜め込んでしまったり、提出期限を守れなかったりということがあります。せっかく学習成績が良くても内申点が足りずに志望校の受験を諦めざるを得ないということもあるので、早急に対策をすることをおすすめします。
スケジュールや計画通りに進めることができない
ADHDの人は、特性上先にある目的を達成するためのスケジュールを組むことに難しさを感じます。
中学生であれば、テスト前の学習スケジュールを組む時に物事の優先順位がわからないため悩んでしまいます。また、スケジュールを組んだとしてもその計画通りに進めること自体が難しいのです。
「テスト前なのにゲームに夢中になり自分の意志でやめられない」「部屋の散らかりが気になり、テスト前日でも掃除を始めてしまう」などの計画倒れが見られます。
物事を進める際のペース配分が難しいため、提出物の期限を守ることに対しても困難さがあります。後回しにしてしまいがちで、結果期限に間に合わないということもよくあります。
勉強がついていけなくなる
中学校の学習になると小学校よりも求められる能力が複雑になってきます。
例えば国語であれば文章を読んで記載されていることを答えればよいのではなく、「背景から感情や気持ちを読み取る」「要点をまとめる」といった解答が必要であり、英語ではスペルなどを覚えなくてはなりません。
数学では図形問題が増え、文章題も長く読み取りが難しいものへと移行していき、解答も段取りを組んで答えを導き出す証明問題も出てくるため、ついていけなくなる可能性があります。
また、特性の1つに手先や体の不器用さもあるため、音楽や体育、美術といった実技教科で難しさを感じる子どももいます。
友達との関係が上手くいかなくなる
中学生になると大人との関わりよりも友達同士の関わりの方が基盤となってきます。
気の合う友達同士グループを作って行動したり、学校生活の中でも子ども中心で仲間意識や協調性を育てる活動も数多く取り入れるようになります。
ADHDの特性から、「思ったら状況や様子に関わらず言動に移してしまう」「みんなで会話していても一方的に話し続ける」「感情がコントロールできず怒ると手を出したり暴言のようなことを発したりしてしまう」「約束を覚えていられない、もしくは忘れてしまう」「友達と関わっている最中でも1人で行動し始めてしまう」などが目立ち、関係がうまくいかず友達が離れていってしまうことがあります。
なぜ友達が離れていってしまうのかわからず、どうしていいか悩みがちです。
頼まれても断ることができない
ADHDには人柄がよく正義感が強い面もあります。頼みごとをされる機会も多く、自分で手に追えなさそうなことでも目に見えないことを見通すことが難しいため、咄嗟の判断ができず衝動的につい引き受けてしまいがちです。
また、中には「断って嫌われたくない」気持ちが働いてしまうことも理由の1つとなっています。
そのため、なんでも引き受けてしまう傾向があり、結果的に数を多く抱えてパンクしてしまいます。
頼み事を引き受けてもすべてを遂行できなかったり、心身の体調を崩してしまうこともあるため注意が必要です。
そもそもADHD(注意欠如多動症)とは
注意欠如
注意欠如(AD)は年齢に比べると注意を持続させることが難しいといった特性が見られる発達障害です。
具体的には、話を集中して聞くことが難しい、物を失くしやすい、正確に物事に取り組むことが難しい、気が逸れやすいといった傾向が見受けられます。
集中することが難しい注意欠如は、本来やるべきことではない他のことに注意が逸れがちで、話が耳に入らず単独で別行動をし始めてしまうときがあります。
しかし、反対に何かに没頭している時は、周囲の声が耳に届かず反応がないこともあります。
注意欠如(AD)の特性が強いタイプは「不注意優勢型」と呼び、多動性や衝動性(HD)の特性はあまり見られません。
多動性や衝動性
多動性や衝動性(HD)は常に体を動かし、じっとしていることが難しいため、椅子に座って授業を受けることが難しいところがあります。体をそわそわさせたり、席を立ってしまうことがあります。
具体的には、無意識的に常に体を動かしている、座っていられない、おしゃべりに夢中になり過ぎる、順番が待てない、感情・欲求のコントロールが難しいといった行動が見受けられます。
体の動きだけではなく、話に夢中になって喋り続けてしまう傾向もあります。
また、衝動性は思いついたことをすぐ行動に移してしまう特性であり、最後まで話を聞かずに行動することもあり、人間関係がうまくいかないことが多くなります。
多動性や衝動性(HD)の特性が強いタイプは「多動性・衝動性優位型」と呼ばれ、注意欠如(AD)の特性はあまり見られません。
注意欠如、多動性、衝動性を全て満たしている
注意欠如(AD)と多動性や衝動性(HD)両方の特性を併せもつADHD(注意欠陥多動症)は「混合型」と呼びます。
基本的に落ち着きがなく、注意が逸れたり感情の衝動を抑えられないところがあります。
男児に多い傾向があると言われており、ADHDの3種類の中で最も多く見られる型となっています。
特性が著しい場合には医師との相談のもと、時に中枢刺激剤メチルフェニデート(コンサータ)による薬物療法が用いられる場合があります。
ADHDの中学生が上手く学校生活を送る方法
整理整頓の仕組みややり方を教えてあげる
物事を順序立てることが難しいため、明確でわかりやすく整理整頓の方法を伝えていくのが効果的です。
例えば片付けをする場所の中に、さらに細かく戻す位置を決めてラベリングしておくと片付けがしやすくなります。
また、片付ける場所が多ければ多いほどどこから手をつけてよいかわからず、中途半端な片付けになって整理整頓どころか余計に散らかしてしまうことがあります。
整理整頓するのは「その日1箇所だけ」などと決めて休憩を挟みながら取り組みましょう。
1度に宿題を済ませるのではなく小分けにする
特性としてするべきことを細分化して考えることが難しいため、一度にたくさんの宿題をこなそうとすると集中して取り組めないところがあります。
そのため宿題・課題が多いと自信がないと感じてしまったり、意欲が持てなくなる可能性があるのです。
特に問題集として渡されている場合には特性が顕著にあらわれやすいため、その日に取り組む分だけ渡すという方法があります。
小分けにして宿題に取り組むことを積み重ねていき、「自分にもできるんだ」という自信へとつなげていきましょう。
命令するのではなく達成感を感じさせる
注意が逸れがちな子には繰り返し伝える中で口調が強くなることもありますが、誰しも命令されるとより一層意欲がなくなるものです。
命令して伝えるよりも、うまくいった時に目に見えた達成感が得られるようにするのがおすすめです。
たとえばポイント制度を取り入れて、ポイントが貯まったらご褒美がもらえるなども1つです。この時にはイメージしやすい目標にすることが継続の鍵になってきます。
他にもクイズ形式やタイマーを使っていくつ答えられるかなどといったゲーム性のある学習方法もおすすめです。
わからない箇所は親も一緒になって考えてあげる
1人で学習に取り組むと集中力の持続が難しいですが、誰かと一緒なら遂行できる場合があります。
その際に長い文章を最後まで集中して読むことは難しいため、必要に応じて絵や記号・映像などを用いてあげることで理解度が増すことがあります。
保護者が一緒に取り組んでいく中で、「どういったところがつまづきやすいのか」「学習面のどんなところにその子の苦手があるのか」ということがわかるため、今後の手立てにつながるでしょう。
ADHDの中学生について相談する場所
児童福祉司や児童心理司などの専門家が在籍する「児童相談所」
児童相談所は18歳未満の子どものあらゆる問題に対する相談窓口となっているところです。発達障害全般に関する相談も対象です。
児童福祉司や児童心理司、医師などの専門家によって構成されており、面談や心理検査、行動観察を通して必要に応じて心理療法や心理教育を行なうことがあります。
児童相談所だけでなく周辺の専門機関とつながりを持ちながら適切な援助を行なう役割もあるので、相談先に迷ったら連絡してみるのもいいでしょう。
ショートステイなどのサービスをしている「子ども家庭支援センター」
妊娠期から18歳未満の子どもの様々な相談に応じる子どもと家庭の問題に関する相談窓口です。その中で、児童福祉として子どもの発達を含む子どもの育ちに係る支援も行なっています。
必要に応じて児童相談所などの機関と連携した地域密着型の福祉施設となっています。
また、ショートステイや一時預かり、在宅サービスも執り行っている機関です。
子ども家庭センターは、保健師や栄養士をはじめ、社会福祉士、臨床心理士などで構成されており、心理療法や専門的なアドバイスと援助を受けることができます。
医療・福祉・教育などの関連機関と連携できる「発達障害者支援センター」
発達障害の早期発見および発達支援についての相談窓口です。
保健および医療、福祉や教育、労働などといった関係機関と連携し、地域全体で包括的な支援ができるような役割を担っています。
また、発達検査の実施をしたり、ひとりひとりの特性に合わせた療育および教育、支援のアドバイスを行なう専門機関です。
相談支援や発達支援のほかに、就労支援までつなげてくれます。
各都道府県に1箇所以上設置しているので、気になることがあれば相談してみましょう。
発達障害に関する相談ができる「障害福祉窓口」
発達障害に関する相談窓口は種類は様々、全国に数多く設置されています。
児童相談所は全国に210箇所以上あり、保健所は469箇所以上に上っています。
また、各自治体の福祉事務所は1,000箇所以上、障害福祉の市町村担当課もあり、主に知的障害を伴う場合の福祉サービスについての相談受付やアドバイスを行なっている機関です。
発達障害児の教育面に特化した相談窓口としては、自分の住んでいる都道府県の教育委員会や特別支援教育センターが窓口となっているので、学習面や教育面に関する相談があればこちらに相談してみてもいいかもしれませんね。
まとめ
中学生になると、思春期真っ只中であったり反抗期だったりと親は対応の仕方に悩むことでしょう。
子ども中心の社会を築き始めて人間関係はより複雑化し、学習も難しくなっていくため子どもも自身の特性についてより一層自覚し考え込んでしまいます。
保護者との関わり方も中学生に見合ったものに移行していく必要があります。中学生のうちに対処方法を習得し習慣化できるようになると社会に出たときに活かされるので、専門機関の協力を得ながら適切な支援を心がけていきたいものですね。