ADHDなどの発達障害を抱える子供は友達関係に悩むことが多い傾向があると言われています。
特に、ADHDを抱える子供は、ADHDの特性から、「わがままな子」や「乱暴な子」という認識を持たれ、周りから距離を置かれてしまうことが多くあります。
本記事ではADHDを抱える子供が友達関係に悩む理由や、どのようにサポートし接していくのが良いか、詳しく解説します。ぜひ最後までご覧ください
【特性別】ADHDの子供の友達関係が上手くいかない理由
冒頭にお伝えした通り、ADHD(注意欠如多動症)の特性は、友達関係に影響を与えるトラブルを及ぼすことがあります。
特性別に起こり得るトラブルと理由を解説します。
ADHDの特性①衝動性・多動性
「衝動性」とは、思いついたことや、外部からの刺激に対して、衝動的に反応や行動をしてしまう特性です。
「多動性」とは、じっとしていると落ち着かず、動き回ってしまう特性です。
以下は衝動性、多動性の特性が引き起こす可能性のあるトラブルです。
・順番待ちができず、他の友人を抜いて並んでしまう。
・思ったことをすぐに口にしてしまい友人とトラブルになる
・自分の話をしゃべり続けてしまう
・カッとなって友人に暴力をふるったり、暴言を吐いたりする
・自分がやりたいことができずに激昂してしまう
・授業中に動き回って友達に迷惑をかける
ADHDの特性②不注意
「不注意」とは、集中力が持続しない、忘れることが多い特性です。
以下は不注意の特性が引き起こす可能性のあるトラブルです。
・自分の好きなことだけに集中してしまい、周りが見えず、集団行動ができない。
・友達と話している最中に別の事を始めてしまう。
・友達とした約束を覚えていなかったり忘れてしまったりする。
保護者ができるサポート方法
友達付き合いが上手くいかないことは大きなストレスになります。
ここでは、保護者ができるサポート方法を4つご紹介します。是非、家庭で取り入れてみてください。
友達との関わり方を教えてあげる
友達との関わり方がわからない子どもには、親がかかわり方を教えてあげましょう。
自閉症の特性がある子供は、自分のペースで自分の好きなことをすることを好む傾向があるので、他者との遊びや気持ちの共有を通じた楽しさを体験することが重要です。
まず、親が子供と多くの会話をするようにしましょう。完璧な話だけでなく、時には失敗やミスも子供に見せてください。例えば、「今日はね、仕事を忘れて大ピンチになっちゃったんだ。焦ってパニックになりそうだったけど、○○さんが手伝ってくれて何とかなったんだよ。」といった具体例を挙げて、どのように問題を解決したかを伝えます。
子供はこうした会話を通じて、困難や失敗に対する解決策を学ぶと同時に、親には何でも話すことができると理解し、何か問題があれば相談してくれるようになります。そのため子供が困難や悩みを打ち明けてくれた時は、大切なチャンスです。
その時は共感し、「そっか、それは大変だったね」と子供の気持ちを受け止め、感謝の気持ちを示し、「困った時は誰かに助けを求めるのがいいんだよ」と提案します。子供の話をジャッジせず、まずは話してくれたことを肯定的に受け止め、次の対処法を提案してください。
親子関係は、楽しいことを共有するだけでなく、時にはお互いを指摘し合ったり、励まし合ったりする関係です。まずは、親子で「何でも話せる」友達のような関係を築いてください。
子供が自分の気持ちを子ど場にできるようにする
発達障害を抱える子供は、自分の気持ちや考えを理解するのが難しい場合があります。他人から話しかけられても、すぐに適切な答えを考え出せなかったり、相手からの情報が多すぎて思考が追いつかず、返答ができないこともあります。
また、自分の考えや感情を相手に理解してもらうための適切な言葉や表現が見つからず、うまく伝えられないことがあります。
この特性により、相手から「無視された」と誤解されたり、自分の意見や希望を言い出せずに我慢を余儀なくされたりすることがあります。また、大人になってもこの特性が残ると、会議や商談などの重要な場面で困ることがあります。
子供が今どのように感じているか、どのように考えているかをゆっくりと頭の中で整理し、言葉にできるようにサポートし、相手が理解しやすいように、自分の気持ちを適切な表現で伝える方法を一緒に考えてあげましょう。
意見を求められた場面、嫌なことややりたいことがあって相手に伝えたい場面などを想定して、自分の気持ちや意見を伝える練習を自宅でしておくことや、急ぎの場合でなければ、自分の考えを言語化してまとめるための時間をもらってから話せるようにすると、相手に伝わりやすくなります。練習で会話に慣れておくことでメンタルが鍛えられ、実際の場面で話すときの緊張感が和らぐ効果もあります。
子供の予定を親もメモしておくようにする
ADHDの子どもは、友達との約束を忘れてしまうことがあります。
友達との約束や学校でのスケジュールを共有してもらい、親もその予定をメモして控えておくようにしましょう。
予定をたくさん詰めてしまうと、いつ何があるのか把握しきれなくなってしまいますので、無理のないスケジュールを組めるよう、親子で話し合うようにしましょう。
親が友達と遊ぶ機会を作ってあげる
子供が自ら友達を誘えない場合、親が同じクラスや学年の保護者との交流を通じて遊ぶ機会を提供するのも良い方法です。
学校行事などで知り合った保護者と連絡先を交換し、一緒に遊ぶ機会を設けました。大人数の場合、子供は話しかけるタイミングが分からなかったり、友達の輪に入るのが難しかったりすることがあります。そのため、2~3人での遊びが最適です。
ADHDを抱える子どもへの接し方
ADHDを抱える子供への接し方を意識することで、子供の人間関係もうまくいくことがあります。保護者が子供に接するときにのポイントを4つご紹介します。
ADHDの子供への基本的な接し方
ADHDの子どもの接し方で大切なことは、良いところ・できているところ・頑張っているところなどを褒める・認めることです。ADHDの子どもは叱られることが多くなりがちで、そのため自分に自信が持てなくなってしまうこともあります。成功体験を積むことで、やる気や自信がつきます。
できたら褒める
繰り返しになりますが、ADHDの子どもは叱られることが多くなりがちで、そのため自分に自信が持てなくなってしまうこともあります。成功体験を積むことで、やる気や自信がつきます。
スケジュールを決める
ADHDは特性から、物忘れをしやすい困難を抱えていることが多いです。
特に、「時間へのゆとりのなさ」が約束の時間や予定を忘れてしまう原因になるので、スケジュール管理を行うことが効果的です。時間単位、日にち単位、週単位など、今やるべき作業をいつまでにどれだけ進めていくかを計画し、その計画に基づいて取り組むようにしましょう。例えば、家でも時間割を作成し、「21時になったら就寝」など決めておきます。
生活のリズムができることで心が安定し、落ち着きを持つことができます。
視覚的な指示を出す
視覚優位とは、目からの情報を処理、理解、記憶しやすい特性です。
ADHDを抱える子供は視覚優位の傾向があると言われていて、図や絵、写真、動画などの視覚的な情報を見ることで、情報をより理解しやすくなります。例えば、九九を覚えるときには、九九の表を視覚的に覚える方法を選んだり、物事を映像として記憶したりします。例えば、「海」という言葉を聞いたとき、海の映像が頭に思い浮かぶことがあります。
年齢別の接し方
ADHDの子どもへの接し方で意識したい点を、年齢別にご紹介します
保育園児(3~5歳)の場合
ADHDを持つ幼少期の子供は、親の指示に従わず、動き回ることが多いです。危険を伴うことがあるため、横断歩道を渡る際のルールや、外出時に手をつなぐことなど、ルールブックを作成し、その都度指導することが重要です。
また、レストランや商業施設などの混雑した場所では、子供の行動に特に注意を払う必要があります。外出先では、子供にとって視覚的な刺激が多く、興奮しやすいため、事前にルールを確認し、落ち着いた行動を促すようにしましょう。
小学生への接し方
小学生になると、することが一気に増えます。勉強やクラブ活動など、気にかけなければならないことも多く、本人も保護者も疲れてしまいがちです。
言い争いやトラブルを避けるためには、日常行動のルールづくりが効果的です。一緒にルールづくりを行い、子供が関与することで自主性や責任感を育みます。
中高生への接し方
中学生や高校生になると、学校や社会で求められることがさらに高度化します。
この時期は、ADHDの子供にとっては苦手なことが増える時期ですが、自分で問題を解決できる能力も成長するチャンスです。親は辛抱強く、後ろ盾としてサポートしましょう。
苦手なことに焦点を当てるのではなく、自信をつけられる得意な分野を見つけ、その力を伸ばしていくことが、将来につながる生きる力を養います。
さらに、お金の管理や時間の使い方も自分で管理できるよう、お金の計画的な使い方を学ぶためには、お小遣いを管理できるアプリなどのツールを活用したり、時間の管理をするためには、提出物や予定を忘れないようにTODOリストやリマインダーを活用できるようにすることがおすすめです。
ADHDのソーシャルスキルトレーニング(SST)について
「対人関係や社会生活を営むために必要な技能(スキル)」と定義されることが一般的です。
この概念は、身の回りのことや交通機関の利用など、基本的な生活スキルを含む場合もありますが、ここでは主に「対人関係上で相互作用するために必要なスキル」に焦点を当てて説明します。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは
ソーシャルスキルトレーニングは、対人関係や集団生活を円滑に進めるための技能を身につけるプログラムです。特に発達障害の子供たちにとっては、自身の状況を理解し、適切な行動を取ることが難しいことがあります。そのため、ソーシャルスキルトレーニングで子供の個性や感情面、周囲の環境などを考慮しながら、社会的なスキルの不足を補い、子供が自分らしく集団の中で適応できるよう支援します。
ソーシャルスキルトレーニングの内容
では実際にソーシャルスキルトレーニングとは、どのようなことをするのでしょうか?
ソーシャルスキルトレーニングの具体例を3つ挙げます。
・挨拶をする練習
ソーシャルスキルトレーニングでは、子供に対して最初は簡単な目標から始めます。
例えば、家族や親しい友人と目が合ったら挨拶する、言葉をかけるなどです。挨拶は自己主張が少なく、濁りのない形で行われるため、幼少期から習慣化しやすい場面です。←
・相手の気持ちを思いやる練習
子供が「無視された」と感じた場合、トレーニングでは相手の立場を考えてみる練習をします。相手が忙しかったり、考え事をしていたりする可能性を想像し、自分の気持ちだけでなく相手の状況も考えるように促します。また、ゲームやロールプレイを通じて、表情や反応から感情の変化を読み取る練習を行います。
発達障害や精神障害を持つ子供たちは、相手の気持ちを理解することが難しい場合がありますが、幼少期からのソーシャルスキルトレーニングにより、共感力や思いやりの心を養うことができます。
・相手の都合を考えて頼みごとをする
お母さんが買い物から帰ってきたばかりの状況で遊びたいと思った場合、ソーシャルスキルトレーニングではまず、お母さんの状況を理解することから始めます。適切なタイミングや方法で頼みごとをする練習をし、相手が快く受け入れられるように心がけます。子供が成功体験を積むことで、相手の立場を考えたコミュニケーションが身につきます。
他にも、色々なソーシャルスキルトレーニングがあります。以下は具体例です。
・目を見て話す練習
・聞き手になり、相手の話を注意深く聞く練習
・感情をコントロールする方法の学習
・問題解決の手法を練習するゲームやロールプレイ
・パートナーとの共同作業や役割分担の練習
・目標を共有し、共同で課題に取り組むトレーニングム
・自分の意見や希望をはっきりと伝える練習
・自分の権利を守る方法を学ぶせ
・リラックスした状況で自分の考えを表現する訓練
・共感や同情を表現する方法を学ぶ
ソーシャルスキルトレーニングが受けられる施設
子供がソーシャルスキルトレーニングを受けられる場所はいくつかあります。
一般的には、専門の療育施設や発達支援センター、特別支援学校、または心理療法士や臨床心理士などの専門家が提供するサービスがあります。
まずは地域の医療機関や福祉センターなどで情報を収集し、専門の支援を提供している場所を見つけることが大切です。
まとめ
本日はADHDの子供の友達関係がうまくいかない理由や、対処法をご紹介しました。ADHDの子供も適切なサポートを受けることで、少しずつ友達を作ったり、他人とのコミュニケーションをうまく取れるようになります。
保護者の方も1人で抱え込まず、サポート団体への相談を前提としながら、本記事を参考に家庭でもトレーニングを試みてください。本記事が、子供と保護者の皆さんに役立つことを願っています。