ADHDの子どもと会話が噛み合わないのはなぜ?コミュニケーションをとる方法を解説

楽しそうなお母さんと男の子

ADHDの子どもは、注意が散漫になりやすかったり、話に割り込んでしまったりすることが多く、会話がスムーズに進まないことがあります。

ADHDのお子さんとの会話は、特性を理解し適切に対応することで改善できます。さらに、効果的なコミュニケーションのとり方を学ぶことで、より良い関係を築けるでしょう。

今回の記事では、ADHDのお子さんとの会話に困っている方へ向けて、その理由や特徴、効果的な接し方について解説します。

また、効果的なコミュニケーション方法や困ったときの対処法も紹介します。ADHDのお子さんとの円滑なコミュニケーションの参考として、ぜひ最後までお読みください。

ADHDやASDの子どもと会話が噛み合わない理由とは?

心配そうに子供の熱を測るお母さん

ADHDやASDの子どもと会話が噛み合わない原因は、おもに脳の機能の特性が関係しています。会話とは、話したい内容を脳内でまとめて言葉に出し、相手の反応や返答を理解して、適切な返事を返すといったプロセスのくり返しです。

脳がこれらの作業を瞬時に行うことで、スムーズな会話が成立します。しかし、ADHDやASDの子どもはこのような脳の作業を苦手としているため、会話のキャッチボールがうまくいかず、話が噛み合いにくくなります。

また、言葉の理解や表現の仕方が独特であることも、会話を難しくする要因です。しかし、これらは決して子どもの意図的な行動ではありません。適切なサポートと理解があれば、より円滑なコミュニケーションが可能になります。

ADHDで会話が噛み合わない子どもの特徴

遊ぶ子供二人

注意散漫で話が途切れてしまう

ADHDの子どもは、注意力の持続が難しいという特徴があります。会話中に周囲の刺激に反応してしまい、話の内容から逸れてしまうことがよくあります。例えば、会話中に窓の外を飛ぶ鳥や、隣の部屋のテレビの音に気を取られて会話が中断してしまうのです。

このため、会話の途中で突然別の話題に移ってしまったり、相手の話を最後まで聞けずに自分の関心事を話し始めたりすることがあります。また、長い説明を理解することが難しく、途中で話が分からなくなってしまうこともあります。

これらの特徴により、会話を続けることが困難になり、相手とのコミュニケーションがスムーズに進まないことがあります。

衝動的に相手の話に割って入ってしまう

ADHDの子どもは、自分の考えや感情を抑えることが難しく、衝動的に行動してしまうのが特徴です。

この衝動性は、会話の際にも現れます。相手の話を最後まで聞かずに、自分の意見や考えをすぐに話したくなるため、話の途中で割り込んでしまうことが多いのです。

このような行動は、相手にとっては失礼に感じられることがありますが、本人にはその自覚がない場合が多いです。また、会話の流れを断ち切ってしまうので、うまく会話が成り立たない原因にもなります。

空気が読めず、適切なタイミングで話せない

ADHDの子どもは、周囲の状況や相手の気持ちを把握するのが苦手です。そのため、場の空気を読むことや、適切なタイミングで会話に参加するのが難しい傾向があります。

例えば、静かにすべき場面でも大きな声で話してしまう、場の空気を読まずに不適切な発言をしてしまうといった行動を起こします。このような行動はコミュニケーションがとりにくい原因となり、相手に誤解を与えてしまうことが少なくありません。

適切なタイミングで話せないため、会話が噛み合わないことも多くなります。

ADHDとASD・LDの会話の違い

ASD LD ADHD

ADHDの場合

先ほど解説したとおり、ADHDの子どもの会話の特徴は、おもに注意力の散漫さと衝動性に関連しています。話題が次々と変わったり、会話の流れを追うことが難しかったりすることがあるのが特徴です。また、相手の話を最後まで聞かずに割り込んでしまうこともあります。

例えば、友達と好きな本の話をしていても、突然別の話題に飛んでしまったり、相手の質問に答える前に自分の経験を話し始めたりすることがあります。とはいえ、このような会話は、会話の一貫性を保つことを難しくしますが、熱意や創造性が豊かな発言につながることもあります。

ASDの場合

ASDの子どもの会話の特徴は、コミュニケーションの難しさに関連しています。相手の感情や意図を理解することが苦手で、言葉どおりの解釈をしがちです。この行動をしたら相手がどう感じるか、どのような意図で話をしているのかを想像するのが難しいのもASDの特徴です。

例えば、相手の表情や声のトーンから感情を読み取ることが苦手なため、冗談やたとえ話を理解できないことがあります。また、自分の好きな話題(例:車や電車など)について詳細に話し続け、相手が興味を失っていることに気づかないこともあります。

LDの場合

LD(学習障害)の子どもたちは、ADHDやASDの子どもたちとは違う会話の特徴があります。聞く、話す、読む、書くなどの特定の能力が苦手なため、会話の中でもそれが目立つことがあります。

LDの子どもは、具体的な事例や視覚的な情報など、実際的な情報を理解するのが得意ですが、抽象的な概念や難しい言葉を理解するのには苦労しがちです。言葉を理解するのに時間がかかることが多いので、話すスピードを調整することも大切です。

また、言葉を通じて他人の感情や意図を理解するのが難しい場合があります。これは、言葉の裏にある意味を読み取る能力、「推論能力」が発達していないためです。しかし、視覚的な情報を用いるなど、適切なサポートがあれば、より円滑なコミュニケーションが可能になります。

ADHDで会話が噛み合わない子どもとコミュニケーションをとる方法

楽しそうにお母さんと遊ぶ子供

ゆっくり、わかりやすく話す

ADHDの子どもは、情報を処理するペースが他の子どもと異なるため、速すぎると情報をつかみきれず、理解しきれないことがあります。そのため、ゆっくりと、わかりやすい言葉で話すことが大切です。複雑な言い回しや専門用語は避け、シンプルな表現を心がけましょう。

また、ADHDの子どもは集中力が途切れやすいため、一度に多くの情報を伝えるよりも、小さな情報を少しずつ伝える方が効果的です。これにより、子どもが全体の情報を把握しやすくなります。さらに、話す際には子どもの反応を見ながら、理解できているか確認することも大切です。

例えば、「明日の朝、学校に行く前に、青い表紙の国語の教科書を忘れずにバッグに入れてね」というような、一度に多くの情報を含む指示は避けましょう。代わりに、「明日は国語の教科書が必要だよ」「国語の教科書は青い表紙だね」「朝、バッグに入れるのを忘れないでね」と、情報を分けて伝えると理解しやすくなります。

具体的な指示を与える

ADHDの子どもは、抽象的な指示を理解しにくい傾向があります。そのため、具体的で明確な指示を与えることで、行動に移しやすくなります。

例えば、「部屋をきれいにしてね」という抽象的な指示ではなく、「おもちゃを箱に入れて」「洋服をクローゼットにかけて」など、具体的な行動を指示します。また、「5分後に始めよう」というような時間の目安を教えることも効果的です。

視覚的なサポートを活用する

ADHDの子どもは、視覚的な情報を理解しやすいところが特徴です。言葉だけでなく、絵や図、写真などを使って情報を伝えることで、より効果的なコミュニケーションを図ることができます。ジェスチャーのような動きを取り入れるなども有効です。

例えば、一日のスケジュールを絵や写真を使って視覚化したり、手順を示す際にフローチャートを使ったりすることが効果的です。また、重要なポイントはメモに書いて渡しておけば、後から確認することもできます。

また、ADHDの子どもが話すときにも、視覚的なサポートが役立ちます。子どもが何かを説明しようとしているときに、図やイラストを描いてみせると他の人が内容を理解しやすくする助けにもなるでしょう。

褒め言葉や励ましの言葉をたくさん使う

ADHDの子どもは、しばしば自己肯定感が低くなりがちです。そのため、できたことやがんばったことを具体的に褒めることが大切です。ポジティブな声かけは、子どもの自信を育み、コミュニケーションの意欲を高めます

例えば、「話をよく聞いていたね」「宿題を一生懸命やったね、よく頑張った!」など、具体的な行動を褒めます。また、失敗した時も「次はきっとできるよ」「一緒に考えてみよう」など、前向きな言葉をかけることが大切です。子どもの挑戦心や努力を称えてあげてください。

褒め方は大げさかな?と感じるくらいでも大丈夫です。よかったよ!という気持ちがしっかり伝わるようにたくさん褒めてあげましょう。

焦らず、根気強く待つ

ADHDの子どもと効果的なコミュニケーションをとるには、大人が安定した対応を心がけることが重要です。特に、集中力が短く興味が急に別のところに行ってしまうことが多いため、会話が噛み合わないように感じることも多いでしょう。しかし、このような特性は子どもの個性であると理解して対応することが求められます。

まず、一つの話題に対して時間をかけて取り組むことが難しい彼らに対して、焦らず根気強く待つことが大切です。一度に多くの情報を与えると混乱を招くため、少しずつ伝えて理解を確認していきましょう。

例えば、質問をした後は、答えを急かさずに十分な時間を与えます。また、指示を出した後も、すぐに行動に移れない場合は、「準備ができたら教えてね」と声をかけ、子どものペースを尊重します。待つ間も、穏やかな態度を保ち、子どもが安心して考えられる環境を作ることが大切です。

また、ADHDの子どもは自分の興味のある話題に対しては長い時間をかけても集中できます。そのため、子どもが興味を持つ話題を見つけ、それを通じてコミュニケーションをとることも有効な手段となります。

ADHDの子どもとの会話で困ったときの対処法

悩むお母さんを見つめる子供

冷静さを保つ

ADHDの子どもとの会話で困難を感じる場面は多いですが、まず大切なのは自分自身が冷静さを保つことです。子どもが話すスピードが速かったり、話の内容がつかみにくかったりすることがありますが、それを受け止める大人の冷静さが、子どもの安心感につながります。

また、ADHDの子どもはしばしば感情の起伏が激しく、思ったことをそのまま発言してしまう傾向があります。そのような場合でも、大人が怒ったりせずに冷静に対処することで、子どもは自分の感情をコントロールする方法を学びます。大人が感情的になると、子どもも不安になり、さらにコミュニケーションが難しくなる可能性があるので注意しましょう。

また、ADHDの子どもは自分の話を中断されると不安に感じることが多いです。大人が途中で話をさえぎらず、子どもが話し終わるのを待つことで、子どもは自分の意見を尊重されていると感じ、コミュニケーションがスムーズになります。

相手に共感する

ADHDの子どもが困っている様子を見せたら、その気持ちに共感することが大切です。子どもの感情を否定せず、理解しようとする姿勢を示すことで、信頼関係を築くことができます。

ADHDの子どもと会話をしにくいと感じるのは、他人と異なる方法で情報を処理し、反応するからです。多くの刺激に敏感で、一度に多くの情報を処理するのに苦労します。そのため、会話が速すぎるとついていけなくなることがあります。

例えば、「難しく感じるんだね」「困っているんだね」といった言葉をかけ、子どもの気持ちを受け止めます。その上で、「一緒に考えよう」「どうすれば良いと思う?」など、解決に向けた前向きな声かけをすることが効果的です。

定期的に休みを入れる

ADHDの子どもにとって、長い時間集中するのは難しいことがあります。そのため、会話の途中でも適度に休憩を入れることが大切です。これにより、子どもがリフレッシュし、再び集中力を取り戻すことができます。会話が途切れたときや、子どもが疲れた様子を見せたときは、短い休憩を取り入れることをおすすめします。

例えば、15分ほど会話をしたら、5分程度の休憩を入れるといった具合です。休憩中は、軽い体操をしたり、水を飲んだり、窓の外を眺めたりするなど、リフレッシュできる活動を提案しても良いでしょう。

一回の会話で、要件を1つに絞る

ADHDの子どもは、複数の情報を同時に処理することが苦手な傾向があります。そのため、一回の会話では要件を1つに絞ることが効果的です。これにより、子どもが混乱せずにより確実に情報を伝えることができます。

例えば、宿題のことと明日の予定を同時に伝えるのではなく、まずは宿題について話し合い、十分理解できたことを確認してから、別の機会に明日の予定を伝えるといった具合です。「明日は体育の授業があるね。今日の夜は算数の宿題を忘れずにやろうね」ではなく、「今日は算数の宿題をやろうね」「明日は体育の授業があるよ」と話しましょう。

途中で相手にちゃんと伝わっているかどうか確認

ADHDの子どもは、聞いているように見えても実際には内容を理解していないことがあります。そのため、会話の途中で適宜、内容が伝わっているかを確認することが大切です。

例えば、「ここまでで分からないことはある?」「今の説明を自分の言葉で言ってみてくれる?」といった質問をすることで、理解度を確認できます。また、「うんうん」と頷いているだけでなく、具体的な返答があるかどうかに注目することも大切です。理解が不十分な場合は、別の言い方で説明し直したり、視覚的な補助を加えたりするなどの工夫をしましょう。

まとめ

お母さんと楽しそうに会話する子供

ADHDの子どもとの会話で困ったとき、今回紹介した方法を実践することで、コミュニケーションの質を向上させることができます。しかし、これらの方法がすべての子どもにとって有効とは限らず、その子の特性に合わせてアプローチを変えることが重要です。また、ADHDの子どもが社会的な状況や人間関係を理解するのに時間がかかることを理解し、忍耐強く対応することも大切です。

さらに、子どもが自分の言いたいことを表現するのに苦労している場合、会話以外のコミュニケーション方法を導入するのもおすすめです。絵や手話、音楽などを通じて、子どもが自分の感情や思考を表現できる環境を作りましょう。

ADHDの子どもとのコミュニケーションは、難しい場面もありますが、理解と対応を深めることで、その子の個性を引き立て、より深い絆を築くことができます。ぜひ愛情深くお子さんとのコミュニケーションを楽しんでください。

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ウィズ・ユー編集部

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