小学生男子のADHDにおける早期発見とサポートのポイント

男の子がカメラで写真を撮っている写真

ADHDは小学生になってからわかるケースが多いようです。

忘れ物が多かったり、授業に集中できないことで、「うちの子はもしかしADHD?」と心配されている保護者の方もいらっしゃるかもしれません。

もしADHDだった場合、学校の勉強についていけるのか、友達と仲良く過ごしていけるのかなど気になりますよね。

今回は小学生の男子のADHDについて、学校生活での影響や日常生活でのポイントなどを解説します。

ADHDが小学生男子に与える影響

男の子が抱っこされている写真

ADHDを抱えていると、「授業中に動き回る」「物をよく忘れる」「ルールを守らない」といった行動が目立つことがあり、これが原因でクラスで孤立したり友人関係に悩んだりすることがあります。

しかし、早くから発達支援や治療を受けることで、そういった行動を抑えることができ、友達とも良い関係を築けるようになることが期待できます。

この章では、ADHDの症状はどのような特徴がみられるのか、学年別に解説します。

小学校低学年(1・2年生)の発達障害

子どもの発達には個々のペースがあり、小学校低学年は、まだ幼児性が残る時期でもあります。なので、ADHDの特性からできないことでも、「練習やしつけが足りないだけ」と誤解されてしまい、失敗体験を繰り返すことがあります。

学校や日常生活での特徴

  • ずっと座っていることが難しい
  • 気持ちのコントロールが苦手で嫌なことがあると、他害行為や癇癪を起こす
  • 他人との距離感が過度に近い(初対面の人にも慣れ慣れしい)、あるいは遠い(特定の人物としか交流したがらない)など、人間関係において極端

小学校中学年(3・4年生)の発達障害

「9歳の壁」または「小3の壁」、または「10歳の壁」「小4の壁」とも表現されるこの時期は、学習面やコミュニケーションにおいて個人差が見えやすくなり、発達障害の特性による苦手がハッキリ現れてくる時期なので、発達障害と診断されるのもこの時期がピークです。

学校生活や日常生活での特徴

  • 友達グループ内でのルールを理解したり空気を読むことができず、友人関係がうまく築けない。
  • プリントがランドセルの奥からぐちゃぐちゃになって出てくることがある

小学校高学年(5・6年生)の発達障害

高学年になり、少しずつ自分自身を客観視できるようになり、「周りはできるのに、なんで自分はできないんだろう」と自己肯定感が低下することがあります。
失敗や劣等感からくるストレスが心身のバランスを崩す可能性もあるため、周囲との比較ではなく、子ども自身の良さを認識し、他者との違いを受け入れられるようにサポートしましょう。

学校生活や日常生活での特徴

  • じっとできないことは減ってきたが、集中力が続かずぼーっとすることが多く話を聞いていないように思われる
  • 場面に合わない話をすることがある

小学生のADHDの特徴とサイン

子どもたちが並んでいる写真

普段の生活で問題を抱えていても、子どもが親に伝えるのは難しいため、子どもの異変に親が気づいてあげられるよう、こどもの様子をよく観察するようにしましょう。

ここからは、小学生のADHDの特徴とサインを解説します。当てはまったからといって必ずしも発達障がいであるとは限りませんが、以下のようなサインがあったら気にかけてあげましょう。

不注意

重要な用事でも期限を守れない

日々の宿題や長期休暇の課題を期限内に仕上げることができない

物事を順序立てたり、やり遂げられない

子どもでは宿題中であるのにテレビやゲームなどのほかの刺激に気を取られ、1つの物事に集中できないことがあります。

必要なものをなくす、忘れ物が多い

学校に持っていくものを家に忘れたり、親に学校で配布された書類を渡し忘れたりします。しかし、子どもの場合は周りの環境(両親や学校の先生、友達)のサポートにより気づかず大人になってから気づくケースも見られる症状でもあります。

過活動性・衝動性の傾向

そわそわ手足を動かす

机や椅子をがたがた動かしたり、貧乏ゆすりをしたりします。

じっと座っていられない

授業中にじっと座っていられず、立ち歩きます。

しゃべりすぎることが多い

思ったことをすぐに口にしてしまったり、相手が話の途中であるのに話始めてしまったりしてしまいます。

すぐにイライラする

自分の思い通りにならなかったり、欲求が満たされなかったりすると、すぐにイライラしてしまい大声を出したり、モノにあたったりしてしまいます。

学校での注意力の維持困難さ

ぼーっとして話を聞いていない

何か好きなことを考えたりしていると、その他の情報を処理することができなくなってしまいます。

外からの刺激ですぐに気が逸れる

外からの刺激に敏感に反応してしまう傾向があります。

例えば、大きな音や明るい光、人の話し声、動くものなどが挙げられます。

早期発見の重要性とメリット

子どもがパソコンで勉強している写真

男の子は不注意優勢型よりも多動性、衝動性優勢型が多いと言われています。

ADHDの多動・衝動優勢型の「落ち着かない」「動き回る」といった特性は、「男の子はそれくらい元気な方がいい」と思われ見過ごされてしまうケースがありますが、早くから発達支援や治療を受けることで、ADHDの特性から起こるトラブルや、生活の様々な場面で感じる困難から他の精神疾患を併発することを未然に防ぐことができます。

ADHDの正確な診断方法

ADHDを含む発達障害の診断には、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)が用いられることが多いです。厚生労働省のページでは、下記のような条件でADHDと診断されると記述されています。

  • 「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること
  • 症状のいくつかが12歳以前より認められること
  • 2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること
  • 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
  • その症状が、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと

出典:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

ADHDの診断は診察した際の行動上の特徴に基づいて行われ、それ単独で診断ができるような確立した医学的検査はありませんが、一部の精神疾患・虐待・不安定な子育て環境などが子どもにADHDのような症状を引き起こすケースがあり、小児科や精神科医師による医学的な評価は非常に大切です。

なぜ早期発見が重要なのか?

発達障害を抱える子供たちは、その特性から、家庭や学校で褒められるよりも叱られたり注意されたりすることが多い傾向にあり、自己肯定感が十分に育たないまま成長してしまうことがあります。
それが原因で、大人になってからも対人関係の問題や様々な心理的な障害が発生してしまうことも。

そのため、ADHDなどの発達障害は早期発見が重要です。
現在、全国的にも、5歳児健診など、早期発見から治療・支援できるような取り組みが進んでいます。

早期発見がもたらすメリット

ADHDを抱えていると、日常生活で困難となる場面が多く、ストレスとなり、うつ病やその他の精神障害などの「二次障害」を発症してしまうことも珍しくありません。発達障害の発覚が遅れると、遅れた分だけ当事者の心の病のリスクも高まるため、早期発見が大切といえます。

ADHDの子供を持つ親も、医療機関や専門家のサポートを受けることで安心感を得ることができます。
実際に、ADHDの子どもを持つ母親の68.5%が「医療機関に行ってよかった」と感じ、59.7%が「症状の原因がわかってほっとした」という調査結果があります。

悪い部分が目立ってしまいがちなADHDですが、ADHDの子どもは頭の回転が速かったり、好きなことにはずば抜けた集中力を発揮することがあります。
「障害」と捉えず、ADHDを一つの「個性」として認め、持っている才能を伸ばすにはなるべく早くから家族や周囲の方の協力や理解が不可欠です。

日常生活でのサポート方法

親子で鳥を眺めている写真

日常生活でのサポートにおいて重要なことは、子どものチャレンジ精神を養いつつ、自信を持たせていくことです。

ADHDの子どもを支える保護者ができる日常でのサポート方法を4つご紹介します。

環境を整える

ある程度すぐに実施ができ、効果の期待ができる方法として、「環境調整」という方法があります。
環境調整とは、子どもの周囲を介した間接的な働きかけを行うことです。子どもの周囲の環境とは、学習環境や生活環境などを指し、子どもの良い行動を引き出しやすくするために調整する方法です。

具体的な環境調整の例を下記に記載します。

  • 周りにおもちゃや漫画などの注意をひきやすい物がある場合、上から布を被せたりして目に入りらないようにする
  • 壁に向かって勉強机を配置し、他のものが目に入りにくいようにする
  • 衝動的に物を投げてしまうような子どもの場合、壊れやすい物や当たると危険な物はあらかじめ手の届かないところにしまう
  • 授業中にクラスメイトや掲示物などの目に入るものが少なくなるよう、学校のクラスでの席を一番前にしてもらう
  • 椅子をがたがたしにくいように足が床につかない椅子を使用する

成功体験を増やす

成功体験を積み重ねていくことは、ADHDの子供に限らずすべての子供に大切なことです。
苦手なことより、得意なこと・できることを見つけて増やしていくことで、「自分にも出来るんだ!」という自信がつき、生きる力につながります。そのために、保護者が子どもに寄り添い、一緒に周囲の理解を得るために、ADHDの症状を隠そうとせずに受け入れ、周囲に伝えましょう。

加えて、子ども自身に自分の症状がどういったものか理解してもらい、それに対しどのように行動すべきか、一緒に考えていくことも必要です。

ADHDが影響して問題を感じることはたくさんあるかもしれませんが、そのなかでも成功体験を積むためには、「本人や保護者がきちんと症状を知ること」が重要です。

そして、できたことはたくさん褒めてあげましょう。子どもにとって、保護者の声かけが果たす役割はとても大きく、できたことやチャレンジしたことを褒めると、子どもの自己肯定感アップや自信につながります。

ソーシャルスキルトレーニングを受ける

子どもが集団のなかでどのように振る舞うことが望ましいかをロールプレイなどを通して実践的に学ぶ「ソーシャルスキル・トレーニング」というものがあります。ソーシャルスキルトレーニングで扱われるスキルは大きく4つに分類されます。

  1. 社会的なマナーやルールの理解、対人関係に関するスキル(挨拶や自己紹介、時間を守ること、順番を守ること、相手を助けること、相手にお礼を言うことなど)
  2. コミュニケーションに関するスキル(相手の話を聞くこと、自分の意見を説明すること、会話を開始・維持・終わらせることなど)
  3. 問題解決のスキル(誰かに依頼する、誘う、断る、謝る、相談するなど)
  4. 感情の理解と対処のスキル(自己理解、相手の感情の理解、気持ちの切り替え、ストレス対処など)

上記のスキルは親子・友人・社会とのかかわりの中で、自然と身に付けていくものですが、ADHDの子どもには自然にはスキルの獲得や使用が難しい場合があるため、「トレーニング」をする必要性があります。

子ども向けSSTが行われている場所は幼稚園・保育所、小中学校などの教育機関、放課後デイサービスなどが挙げられます。各所を巡回する相談員やカウンセラーが実施するケースもあるようです。

薬を処方してもらう

ADHDには今のところ完治させる治療法はありませんが、特性の一部を緩和・改善する薬が存在します。薬を上手く活用できれば、日常生活の困難が軽減し、さまざまな生活のスキルも獲得しやすくなります。

ADHDに使用する薬は下記の4種類があります。

  • コンサータ
  • アトモキセチン(ストラテラ)
  • インチュニブ
  • ビバンセ

どれも集中力を上げる・衝動を抑える、などの効果があり、ADHDの症状を改善するという共通点がありますが、使い分けが必要で、副作用も現れることがあります。
なので、専門医としっかり相談し慎重に取り扱うことが重要です。

まとめ

家族で道を歩いている写真

本日は小学生の男の子に焦点を当ててADHDの子どものサポート方法や症状をまとめました。

重要なのは、個々の子どもの症状が異なるため、個別のサポートが必要であるということです。
保護者が早くから子どもの異変や問題に気づき、専門家につなげてサポートすることで、子どもが持つポテンシャルを最大限に引き出してあげることができます。

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この記事を書いた人

ウィズ・ユー編集部

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