愛着障害への接し方|子どもの成長と愛着の関係性、タイプについて解説

家で過ごす笑顔の3人家族の様子。

愛着障害とは、幼少期になんらかの原因で特定の人との愛着形成がうまくいかず、問題を抱えている状態のことです。タイプによってさまざまですが、愛着障害の子どもは過度に警戒心が強かったり、落ち着きがないなどの特徴があります。

そのような子どもに対して、「どのように接すれば良いか分からない」と悩んでいる養育者の方も多いのではないでしょうか。

本記事は、愛着障害の子どもへの接し方について詳しく解説します。子どもの成長と愛着の関係や障害のタイプについても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

愛着障害とは「愛着形成がうまくいかず問題を抱えている状態」

小学生の男の子の写真。

愛着障害とは、子どもが両親などの養育者や特定の人と愛着形成できず問題を抱えている状態のことです。
原因はさまざまですが、虐待や養育者との離別など、愛着形成が不十分な養育環境であることが背景にあります。

愛着障害の定義と子どもの成長との関係性について、それぞれ解説します。

愛着障害の定義

愛着障害は医学的に子どもが診断対象となっており、5歳以前に発症するといわれています。「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」と「脱抑制型愛着障害」の2タイプに分けられ、前者は人に対して過度に警戒するのに対し、後者は人に対して過度に慣れ慣れしいのが大きな違いです。

タイプに関わらず、子どものころに愛着障害であることに気づかないまま大人になるケースも珍しくありません。大人の愛着障害はうつ病や心身症、不安障害など他の障害を引き起こす可能性があり、子どもだけが抱えている問題ではないといわれています。

子どもの成長と愛着の関係性

そもそも愛着は、幼少期の子どもと両親などの養育者との間に形成されるものです。生後3ヶ月を過ぎたころには、自分をお世話してくれる養育者とそうでない人の区別ができるようになります。

自分の要求を受け入れ、守ってくれる存在に対して本能的に愛着を形成するため、その時期に養育者によるネグレクトや虐待などがあると、愛着障害になる可能性が高いです。幼いころの愛着形成は、身体と心の成長や社会生活を送るために欠かせません。

愛着形成によって自分自身の存在を肯定し、子どもは自身の価値を感じられます。愛着形成がうまくされなかった子どもは、自尊心や自己評価が非常に低くなったり、落ち込みやすくなったりする場合が多いです。

【7つの接し方】愛着障害への関わり方

保護者が赤ちゃんを抱きかかえている様子。

愛着障害の子どもへの関わり方として、以下7つの接し方が大切です。

  • 愛着障害のメカニズムを理解
  • スキンシップの時間を増やすように心がける
  • しっかりと顔を合わせてコミュニケーションを取る
  • 子どもの感情に寄り添う
  • 親子関係にどう取り組むかに焦点を当てる
  • 愛着障害は環境によって改善する
  • 家族の支援や保育サービスを利用する

愛着障害は適切な対処で、症状の改善が期待できます。
7つの接し方について、詳しく解説します。

愛着障害のメカニズムを理解

愛着障害は、以下のような養育環境が背景となって引き起こされる障害です。

  • 養育者と死別または離別した
  • 養育者から虐待やネグレクトを受けていた
  • 養育者が子どもに対して無関心だった
  • 他の子どもと差別されて育てられた
  • 養育者が頻繁に変わっていた

障害の特性やその子に適した接し方をするために、愛着障害のメカニズムを理解しましょう。そもそも愛着が形成されるプロセスは、安全や安心を感じられる人や場所がある環境で、子供が精神的に自立し形成されていきます。

しかし、心の拠り所である「安全基地」が不十分であると、愛着がうまく形成されません。その結果、愛着障害を引き起こします。

子どもの成長において、愛着は「人への安心感や信頼感」「自己表現力やコミュニケーション力の向上」「自己の存在を肯定」という点で必要な心の結びつきです。

スキンシップの時間を増やすように心がける

愛着障害の子どもは、愛情深いスキンシップが不十分な環境が原因で、過度にスキンシップを求めることがよくあります。

スキンシップは愛着形成において重要な要素のひとつとされており、積極的に子どもと過ごす時間を増やすことが大切です。

握手やハイタッチ、ハグなど、子どもの年齢に合わせてスキンシップを選び、じゃんけん列車やおしくらまんじゅうのように、遊びの中にもスキンシップを取り入れてみましょう。

しっかりと顔を合わせてコミュニケーションを取る

愛着障害の子どもは、虐待や常に養育者が代わる環境などから、人との関係を維持することが苦手な子どもが多くいます。

また、大人との信頼関係をうまく築けず、わざと嘘をついて大人を試すような行動を取ることも珍しくありません。これは、自分への興味を集める言動と言えます。

そのため、愛着障害の子どもと接するときは、顔を向かい合わせてコミュニケーションを取ることを意識しましょう。しっかりと向き合ったコミュニケーションの機会が増えれば相手を信頼できるようになるため、子どもは少しずつ心を開けるようになります。

子どもの感情に寄り添う

愛着障害の子どもは、感情のコントロールが難しいことがあります。気持ちが不安定になりやすく、自分の感情を理解できない子どもが多いのです。

そこで養育者は子どもの感情に寄り添い、子どもに対して感情を言葉で伝えてあげましょう。
たとえば、子どもにハグするだけでなく、「こうやってぎゅっとすると、気持ちが落ち着いてくるね」など、具体的に感情を表現してあげます。

反対に、ネガティブな感情が芽生えているときにも寄り添うことが大切です。「お気に入りのおもちゃは他のお友達が使ってたから使えなかったね。悲しかったね」など、子どもの感情を養育者が言葉で表現してあげます。子どもは、自分の気持ちを理解できるようになり落ち着いた行動を取れるでしょう。

親子関係にどう取り組むかに焦点を当てる

愛着障害の子どもと関わるときは、親子関係にどう取り組むかに焦点を当てることが大切です。子どもが成長してから密にやり取りするのは難しく、できるかぎり早期に親子関係を修復する必要があります。

たとえば、子どもを過剰に怒鳴ったり、スキンシップやコミュニケーションが少なかったりしないかなど、日頃の子育てを振り返ってみましょう。

愛着障害は環境によって改善する

愛着障害は「安全基地」と呼ばれる心の拠り所を作ってあげることで、症状が改善される場合があります。なぜなら、愛着障害は幼少期に安心できる居場所や困ったときに頼れる環境がないのが原因で発症するからです。

愛着を形成するには、子どもが養育者に対して安心できたり、信じられたりする存在(安全基地)だと認識してもらう必要があります。

安全基地を作るためには、スキンシップの時間を増やしたり、しっかりと顔を合わせてコミュニケーションを取ったりする方法が効果的です。

家族の支援や保育サービスを利用する

子どもが愛着障害を発症するという養育環境には、家族も何らかの支援が必要であったり、問題を抱えていたりするケースが多くみられます。

そこで、子どもだけではなく家族を含めた支援や保育サービスを利用する方法も有効です。

たとえば、虐待を受けている場合は子どもと養育者の距離を遠ざけたり、親へのカウンセリングや家族療法を取り入れたりすると、愛着障害が改善することもあります。このように、医師を中心として周りの人々が、家族を支援することは大切です。

また、保育サービスでは、療育を必要な子どもに対して学校や家庭とは異なる空間や時間、体験などを提供しています。経済的な負担がある場合は、行政や民間で提供している育児・家事のサポートを検討してみましょう。

養育者が安全基地であると認識してもらえるように、かかりつけの医者や施設などの周りに支援を求めることが大切です。

愛着障害の子どもに「してはいけない」対応

子どもに保護者が注意している様子。

愛着障害の子どもに対してしてはいけない対応は、主に以下の3つです。

  • 本人に理由や気持ちを尋ねる
  • 追い詰めるように叱る
  • 腫れ物にさわるような対応をする

それぞれ詳しく解説します。

本人に理由や気持ちを尋ねる

愛着障害の子どもは感情の障害を抱えているため、自分の気持ちや感情の適切な表し方が分かりません。相手の気持ちも分からないので、理由や気持ちを聞かれると暴力的な行動を取る可能性があります。

これらの行動は、自分を守るための自己防衛反応です。そのため、養育者に対して恐怖心や警戒心が強くなるケースも多いため、理由や気持ちを尋ねることは避けましょう。

追い詰めるように叱る

愛着障害の子どもを追い詰めるように叱ると自己防衛反応を示してしまい、解離症状や教師や親への暴力につながる可能性があります。

叱る場面があるときは「〇〇はダメ」という叱り方ではなく、「〇〇しようね」といった肯定的な表現を使うことが重要です。

たとえば、走ることに対して叱るのであれば、「走ってはダメ」よりも「歩こうね」と前向きに提案するようにしましょう。

腫れ物にさわるような対応をする

腫れ物にさわるように、子どもが何をしても叱らないのは絶対にやめましょう。また、子どもの命令や支配に従うだけという対応も避けるべきです。

相手が命令に従っても再度同じように従ってくれる保証がないので、愛着障害の子どもは安心できず心が満たされません

愛着障害の子どもと接するときは、状況や子どもの年齢に合わせて接する方法を変えましょう。
たとえば、年齢が上がってもハグを求めてくる子がいます。しかし、年齢とともにスキンシップの方法を変えていく必要があるため、養育者からは握手を求めるようにするということです。

ハグより時間を長く取り、目を合わせて会話をすれば、「ハグよりも握手の方が満足できる」と安心してくれます。

子どもの要求に応えるのではなく、常にこちらから適切な方法を提案することが大切です。

2つのタイプ|愛着障害の種類と具体的な特徴

泣いている赤ちゃんを抱きかかえる保護者の様子。

愛着障害には、「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」と「脱抑制型愛着障害」の2タイプがあります。特徴は異なりますが、共通する行動は以下のとおりです。

  • 5歳より前に発症する
  • わがままの度が過ぎている
  • 養育者に頼ることがほとんどない
  • 嘘をつきやすい

このように、養育者にうまく甘えらない子や、養育者を安全基地と認識していないため視線や行動に違和感を覚える子は愛着障害の特徴といえます。

ここでは、「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」と「脱抑制型愛着障害」、それぞれ具体的な特徴を解説します。

反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)

反応性アタッチメント障害は、他人に対して警戒心が強いことが特徴です。たとえ相手が養育者であっても、極端に距離を取ろうとします。また、養育者へ安心するために抱きついたり、泣きついたりすることがほとんどありません。

この原因は、幼少期に養育者からネグレクトを受けたり無関心な態度をされたりした場合が多くみられます。その他の特徴は、以下のとおりです。

  • 表情がない
  • 笑顔が見られない
  • 他の子どもとの交流がない
  • 自己評価が低い
  • 人の言葉に傷つきやすい
  • 落ち込みやすい

このタイプの子は、喜びや悲しみなどの感情をうまく表に出すことはほとんどありません。また、他人を信じられないため、声がけに対しても基本的に無反応です。

反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)の症状は、自閉症スペクトラム障害(ASD)と似ている部分があり、はっきりと区別することが難しいといわれています。

脱抑制型愛着障害

脱抑制型愛着障害は、自分の愛着範囲が分からずに誰にでも愛着を求める傾向があります。わがままな言動や周囲の気を引くための大袈裟な行動も代表的な特徴です。

その他、以下のような特徴が挙げられます。

  • 見知らぬ大人についていこうとする
  • 誰にでもスキンシップを取ろうとする
  • 落ち着きがない
  • 場にそぐわない言動をとることが多い
  • 謝罪することがない
  • 理由なしに嘘をつくことが多い
  • 暴力的かつ衝動的な振る舞いを見せることがある

他人へ積極的に接近しようとする言動は、反応性アタッチメント障害と正反対です。

また、常に自分の欲求を優先し、思い通りにいかないと暴力的な行動を取ることも多くみられます。たとえば、家族や友達に対して暴力をふるったり、物を投げたりといった行動です。

この脱抑制型愛着障害は、情緒的な行動や落ち着きのない行動から、注意欠如・多動性障害(ADHD)との区別が難しいといわれています。

まとめ

保護者が子どもを抱きかかえている様子。

愛着障害とは、幼少期に特定の人と愛着形成されず、情緒や行動においてさまざまな問題を抱えている状態のことです。

愛着障害の子どもと接するときは、まず愛着障害のメカニズムを理解し、スキンシップや顔を合わせたコミュニケーションを増やすようにしましょう。一人で抱え込まず、家族の支援や保育サービスを利用することも大切です。

全基地を形成することが、愛着障害の改善につながります。時には叱りたくなることもありますが、子どもの行動を否定せず、常に「〇〇しようね」など前向きな提案を心がけてください。

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ウィズ・ユー編集部

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