ADHDにはさまざまな特性があり、この特性によって、ADHDを持つ子どもは勉強を苦手とする場合が多いです。
そのため、自分のこどもに合った対策をとることや、親がADHDの特性を理解して勉強のサポートをすることが有効的です。
今回の記事では、以下の3つについて解説します。
・ADHDの子は勉強が苦手になりやすい理由
・ADHDの子どもが勉強でよくある困りごとと勉強対策
・ADHDの子どもの親ができるサポート
ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
ADHDの子が勉強できない・嫌いになりやすい理由
ADHDとは?
ADHD(注意欠如・多動症)とは、脳の機能のバラつきによって、集中力が続かない、落ち着いていられないなどの症状を引き起こす発達障害の一つです。このため、学校の授業に集中するのが困難だったり、家庭での生活がしづらくなることがあります。
発達障害は、遺伝的な要素が強く、親の育て方や家庭環境のせいではありません。また、ADHDの子どもがいる家庭では、親の愛情や努力が足りないからではないと理解することが大切です。
ADHDの3つの特性と勉強の関係性
ADHD(注意欠如・多動症)の症状は、個人によって大きく異なります。一つの症状が特に目立つ場合もあれば、いくつかの症状が同時に見られることもあります。ADHDの特徴を理解して、それに合わせたサポートをすれば、個々に合った勉強法を見つけることができるでしょう。
不注意の場合
ADHDの「不注意」の特性として、以下などが挙げられます。
・少しの刺激で注意がそれてしまい、そこに注意が向いてしまう
・単純作業が苦手
・期日を守れなかったり、忘れ物が多い
・物をすぐ失くしてしまう
・順序立てて行動することが苦手
これらの特徴により、学校では「できない子」とみられてしまうこともあります。
また、ADHDの子どもは単純作業も苦手な特性もあるため、漢字練習などの繰り返し学習する分野も苦手な傾向があります。
このような特性を理解して、どのようにサポートしていくかが、ADHDの不注意傾向を持つ人の勉強を助けるポイントとなります。
多動性・衝動性の場合
ADHDの特性には、多動性と衝動性があります。
多動性は、じっとしていることが苦手で、食事中や授業中に体を動かしたり、一方的に話してしまうなどの症状があり、集団での学習が困難になります。
また、言葉が多かったり話が飛んでしまうため、伝えたいことを上手く伝えられずイライラしてしまうこともあります。
衝動性は、物事にのめりこみやすかったり、順番が待てない、思ったことをすぐ口に出してしまうことなどの症状が挙げられます。
これは本人の意思ではなく脳の機能障害の影響ですが、急に立ち上がったり大きな声を出したりしてしまうため、周囲からは「やる気がない」と誤解されることもあります。
周囲の理解とサポートがあれば、これらの特性を持つ人たちも、学校生活を楽しむことができるでしょう。
ADHDの子どもが勉強でよくある困りごと
興味のないことに集中できない
ADHDの子どもは、好きなことには驚くほど集中できますが、興味がないことにはすぐに集中力が切れてしまいます。
このため、授業中に先生の話に集中できず、内容を理解しづらくなることがあります。勉強に取り組むには、短い休憩を入れたり、面白い教材を使うなどして、子どもの注意を引く工夫が必要です。また、周りの大人の支援や、集中しやすい環境を作るのも効果的です。
勉強がなかなか手につかない
ADHDの子どもが勉強に集中しづらい理由は、いくつかあります。
まず、ADHDの特性として、注意散漫や集中力の低下が挙げられます。周囲の音や視覚的な刺激に気を取られやすく、ひとつのことに集中することが難しいのです。
また、ADHDの子どもは、持続力が弱いこともあります。同じことを続けるとすぐに飽きてしまい、勉強に集中する時間が短くなります。さらに、計画的に行動するのが苦手なため、勉強の時間や方法をうまく管理できないこともあります。
そのため、ADHDの子どもは、周囲の刺激を減らしたり、短い時間で集中できるように工夫したりすることが必要です。また、勉強の内容を工夫して、楽しく続けられるようにすることも効果的です。
持ち物や予定をよく忘れる
ADHDの子どもは、整理整頓が苦手で、どこに物を置いたかをすぐに忘れてしまうため、物を紛失してしまうことが多いです。
例えば、授業に必要なものを忘れたり、直前になって宿題を思い出して間に合わないことが挙げられます。こうした忘れ物が続くと、学習に支障をきたすだけでなく、先生から叱られてしまったり、内申点に影響することもあります。
これに対して、親や先生が子どもたちと一緒にスケジュールを確認したり、持ち物リストを作成したりして、サポートしていくことが有効です。
内申点が悪い
ADHDの子どもたちが勉強でよく直面する困りごとの一つに、内申点が悪いという問題があり、その原因として、課題の締め切りを守れないことが挙げられます。ADHDの子どもたちの中には、スケジュール管理が苦手で、課題を先延ばしにしてしまう特性があります。対処法としては、親や先生が子どもたちのスケジュールを一緒に確認し、課題の進捗をサポートしたり、リマインダーを使うなどが効果的です。
ADHDの勉強対策
絵・記号・映像を使って勉強する
ADHDの子どもたちは、長い文章を読むのが苦手な傾向があるため、勉強するときは絵や記号、映像を使うと理解も深まり、集中しやすくなるでしょう。
たとえば算数では、計算する際に絵を使って説明することで、数字が実際にどのようなものを表しているのかを視覚的に理解することができます。また、英語では、英単語を絵と一緒に覚えると、意味がイメージとして頭に残るので、覚えやすくなります。
絵や映像を使うと、視覚的な刺激が加わるので、集中力が持続しやすくなります。さらに、ゲームや動画など、子どもたちが興味を持つものを勉強に取り入れることで、学ぶことへの意欲も高めることができます。
勉強の予定をリストにして視覚的に確認できるようにする
ADHDの子どもにとって、勉強の予定をリストにして視覚的に確認できるようにすることは、効果的です。ADHDの特性として、口頭で聞いた予定や、自分で覚えたつもりの予定をすぐに忘れてしまうことがあるため、リストにして書き出すと、忘れにくくなり、予定を確認しやすくなります。
また、リストに予定を書き出しておくと、「予定を忘れても、リストを見ればすぐに確認できる」という安心感が生まれ、集中もしやすくなります。また、勉強の合間に取る休憩のタイミングもリストに含めておくと、効果的に休憩を取ることができ、疲れを溜めずに勉強を続けることができます。
壁や仕切り板などでできるだけ勉強しやすい環境を準備する
ADHDの子どもは、勉強中に視界に入るさまざまなものに注意が向いてしまい、集中力が続かないことがあります。このような場合、勉強に集中するための環境を整えることが重要です。
例えば、仕切り板を使って勉強机を囲うと、視野に余計なものが入ってくることが少なくなり、集中力を維持しやすくなります。
仕切り板を用意するのが難しい場合は、「勉強するときに壁に向かって座る」だけでも、視野に入るものを制限できるので効果があります。また、壁に向かうことで、他の人や物音からの刺激が減り、勉強に集中しやすくなります。
視野に入るものを減らすことで、勉強内容に集中しやすくなり、授業や課題に取り組む際の注意散漫を軽減することができるでしょう。
短い期間の目標を設定する
ADHDの子どもは、集中力が長続きしにくいため、「短い期間の目標」を設定することが効果的です。
最初から長い時間で計画を立てると、集中が途切れてしまうことが多いので、「一問解く」や「10分間集中する」といった小さな目標を設定して、それを繰り返すのが良いでしょう。また、科目や内容によっては、「短時間の目標を繰り返す」ことで、集中力を維持し、達成感も味わうこともできます。
短い時間で集中して勉強する習慣をつけることで、少しずつ勉強のコツをつかみ、自分で計画を立てる力も養うことができます。これは将来的にも、自分で勉強する際に役立つスキルとなるでしょう。短期の目標を設定して、勉強に取り組むことは、ADHDの子どもにとって効果的な方法です。
家事の音や刺激の少ない環境にする
ADHDのこどものための勉強対策には、「刺激の少ない環境」を整えることが重要です。
まず、音に関しては、家の中の生活音を減らしたり、耳栓やイヤーマフなどを使うことで、勉強に集中しやすくなります。テレビや音楽の音を小さくする、あるいは図書館や市民センターなど、静かな場所で勉強するのも一つの方法です。
次に、温度に関しては、室内の空調を適切に調節することが大切です。また、暑い季節や寒い季節には、勉強しやすい場所を選ぶことも効果的です。
さらに、においについても、刺激を減らすことが効果的です。マスクをさせたり、お子さんの好きな香りを用意するなど、集中しやすい環境を作るための工夫ができます。感覚が過敏なお子さんの場合は、特にこのような配慮が有効です。
体を動かしながらできる勉強を取り入れる
ADHDの子どもにとって、じっと机に向かって勉強するのは難しいことがあります。このような場合は、無理にその特性を変えようとするのではなく、体を動かしながらできる勉強法を取り入れると、集中しやすくなるでしょう。
例えば、教科書や単語帳、自作の単語カード、歴史年表などを手に持って、歩き回りながら音読や黙読をするという方法があります。このように、体を動かしながら勉強することで、集中力を保つことができます。
また、体を動かすことでリラックスできる効果もあるので、勉強の負担を軽減して楽しく学べるようになるための一つの方法です。
疲れが溜まらないようにする
ADHDの子どもに限らず、誰にでも共通して言えることですが、疲れが溜まっているときは、勉強に集中するのが難しいものです。
例えば、体育の授業があった日や、長時間の部活の日、緊張する出来事があった日、よく遊んだ日などは、体が疲れているため、勉強に向き合うのが難しくなります。また、もし高校生であれば、アルバイトをした日なども疲労の原因になります。
疲れがたまっていると、集中できないだけでなく、勉強への意欲も低下することがあるので、お子さんが疲労しないように工夫することが、勉強への集中力を保つために重要です。
ADHDの子どもの親ができる支援
子どもの特性を理解する
ADHDの子どもを持つ親ができるサポートの一つは、「子どもの特性を理解し、受け入れる」ことです。発達障害の特性が努力でカバーできると考える方もいますが、ADHDは先天的な脳の機能の偏りによって生じるため、本人の努力だけでは解決しにくい部分が多いのです。
重要なのは、子どもが日常生活を送りやすくするために、親御さんが子どもの特性を理解して受け入れることです。周囲の人々から配慮を得られるよう、親が特性を受け入れることで、子ども自身も自分の特性を理解し、個性として受け入れることができるようになります。
「どんなことで困ってるか」「何が得意で、何が苦手なのか」といった理解を深めていくことが大切です。理解を深めることで、親子の信頼関係が強まり、子どもの成長を支える基盤を作ることができるでしょう。
担任や医師、カウンセラーに相談する
ADHDの子どもを持つ親ができるサポートの一つは、学校の担任やスクールカウンセラー、医師などの専門家に相談することです。
担任の先生に相談することで、学校生活での困りごとやADHDの特性に対するサポートを受けることができます。また、学校生活でのお子さんの行動や困りごとを共有してもらうことで、家庭での対応策を考えやすくなるでしょう。
発達障害であることが確定している場合、特別な教育プログラムや高校受験時の特別措置など、特性に応じたサポートなどの助言も得ることができます。
学校によっては、スクールカウンセラーの先生が在籍していることもあります。
発達障害の確定診断がなくても、まずは担任の先生やスクールカウンセラーに相談することで、よりいい解決策をみつけられるかもしれません。
支援機関や学習塾を利用する
支援機関や学習塾を利用することも効果的です。専門家の知見を得ることで、適切なサポートやアドバイスが受けられるでしょう。
すでに発達障害の診断を受けている場合は、かかりつけ医や専門医に相談して、お子さんに合ったアプローチを提案してもらうことができます。また、発達障害に関連する無料相談ができる支援機関も多く存在しているため、発達障害の特性を持っているかどうかの判断や、必要なサポートについて相談できる機関を探してみるとよいでしょう。
「勉強」については、発達障害に理解のある学習塾や家庭教師を利用するのもおすすめです。特性に合わせて学習方法を工夫することで、子どもたちの勉強への取り組み方が大きく変わることがあります。
明日の予定や持ち物の確認を一緒にする
ADHDの子どもは、注意力や記憶力に問題があることが多く、予定を覚えたり、必要な持ち物を準備したりするのが難しいと感じることがあります。そのため、親としては、子どもと一緒に明日の予定や持ち物を確認することが効果的です。
まず、明日の予定を一緒に確認することで、子どもが何をするべきかを明確に理解でき、スケジュールを意識する習慣が身につきます。たとえば、学校の授業や部活動、家庭でのタスクなどをリストアップして、子どもに見せると効果的です。
持ち物の確認も重要です。子どもが必要な教材や道具を忘れないよう、リストを作成して一緒にチェックすることで、スムーズに準備ができます。こうすることで、子どもは自分で予定や持ち物を管理する力を育むことができます。
適度に休憩を取るよう声がけをする
ADHDの子どもを育てる親にとって、子どもに適度な休憩を取るように促すことが大切です。発達障害の子どもは、さまざまな場面でストレスを感じやすいため、疲れやすい傾向があります。
長時間の活動は、子どものストレスを増やし、うつ病や適応障害といった「二次障害」を引き起こす可能性もあります。特に、お子さんが「休みたい」と感じたときは、休ませることが重要です。また、親御さんが「活動」と「休み」のリズムを考えながら、無理のない範囲で過ごすように工夫することもお勧めです。
また、親御さんがストレスをためてしまうと、敏感なお子さんはその雰囲気を感じ取り、自分を責めてしまうかもしれません。親も自分の時間を持ち、リフレッシュすることで、子どもとの良好な関係を保ちやすくなります。
受験時の特例措置を申請する
ADHDの子どもを持つ親は、受験時の特例措置を申請することで、子どもの進路をより良いものにできます。
特例措置を申請するには、受験願書の提出より前に学校や支援機関に相談して、必要な書類を準備することが重要です。グレーゾーンの場合は受けられないこともあるので、その場合は、子どもの学力や学校の特徴を考慮して、無理なく進学できる学校を選ぶとよいでしょう。
どちらの場合も、受験の準備は早めに進めることが大切です。特例措置の申請や学校選びをしっかり行うことで、子どもが安心して受験に臨めるよう、親としてサポートしてあげましょう。
親の会などに参加して情報収集する
発達障害を持つ子どもの親をサポートするための団体がいくつかあります。たとえば、「全国LD親の会」は、保護者が集まって情報交換や学びの場を提供しており、子どもたちの交流やイベントも開催しています。
親の会に参加することで、他の保護者とつながり、悩みを共有したり、役立つ情報を得たりできます。よって、気持ちが楽になるため、子どもをより良く支えるヒントを得られるでしょう。
もし、最初の会が合わなくても、他にも多くの団体があるので、諦めずに自分に合う場所を探すことをおすすめします。
ペアレントトレーニングを受ける
ペアレントトレーニングは、ADHDの子どもを持つ親に、効果的な子育て方法を教えるプログラムです。
このプログラムでは、以下のような内容が含まれます。
・ADHDなどの特性について学び、適切な接し方を理解する
・子どもの行動を観察し、どのように対応すればよいかを知る
・子どもの長所を見つけ、前向きな姿勢を持つ
・効果的な指示の出し方や、問題行動への対処法を学ぶ
・ADHDの子どもを持つ他の親と情報交換し、悩みを共有する
このプログラムに参加すると、子どもとの関係を深め、育児スキルを高められます。また、他のADHDの子を持つ親とのつながりを通じて、子育ての不安を軽減できるでしょう。
まとめ
ADHDの子どもが勉強を苦手とする場合は、親や保護者のサポートが重要です。
また、学校の先生に子どもの様子を聞いたり、スクールカウンセラーや、医師、支援機関に相談するのもいいでしょう。
親が子どもをサポートすることによって、発達障害を持っていてものびのびとした生活を送ることにもつながります。