3歳児のADHDチェックリスト|診断はまだ早い?気になる行動の理由と関わり方

公園で泣く男の子

「うちの子、とにかく落ち着きがない…」

「私の育て方が悪いのかな?」

片時も目が離せないわが子を前に、一人で自分を責めていませんか。

3歳児健診での指摘をきっかけに、周りの子と比べては落ち込んでしまう。

しかしその行動は、しつけの問題ではなく「ADHD(注意欠如・多動症)」という生まれ持った脳の特性が関係しているのかもしれません。

この記事では、気になる行動の目安がわかる3歳児向けのチェックリストを紹介します。

診断がまだ早い理由や、明日からできる関わり方のヒント、一人で抱え込まないための具体的な相談先までを詳しく解説するので、ぜひご覧ください。

知っておきたい「3歳児」の心と体の発達について

こっちを見ている男の子

3歳という年齢は、子どもの心と体が劇的に成長する、とてもエキサイティングな時期です。

「魔の3歳児」とも呼ばれるように、自己主張が強くなったり、エネルギーに満ち溢れて一時もじっとしていなかったりするのは、実は順調な発達の証でもあります。

この時期の子どもたちは、自我が芽生え「自分でやりたい」という気持ちが最高潮に達し、同時に好奇心も爆発的に旺盛になります。

言葉で自分の気持ちをうまく伝えられないもどかしさから、時にかんしゃくを起こしたり、衝動的に見えたりする行動をとることも少なくありません。

そのため、一見すると「落ち着きがない」と感じられる行動の多くは、この年齢の子どもにとってごく自然な姿なのです。

ADHDの特性と見分けるのが難しいのは、この「3歳児ならではの発達段階」が背景にあることを、まず心の片隅に置いておきましょう。

ADHD(注意欠如・多動症)とは?保護者が知っておくべき基本

泣き崩れる男の子

ADHDは「心の病気」でも「しつけの問題」でもない

ADHDは、決して親の育て方や愛情不足が原因で起こるものではありません

これは、生まれ持った脳の機能の発達による特性であり、情報を整理したり、行動をコントロールしたりする脳の一部の働きが、多数派の人と少し違うだけなのです。

例えるなら、利き手や髪の毛の色が人それぞれ違うように、脳の個性も一人ひとり異なります。

「心の病気」というよりも「発達の特性(個性)」と理解することが、正しいサポートへの第一歩となります。

ですから、「私のしつけが悪かったのかも」と自身を責める必要は全くありません。

まずは子どものありのままの姿を理解することが、何よりも大切です。

ADHDの主な3つの特性

不注意

「不注意」とは、一つのことに集中し続けるのが苦手だったり、注意が散漫になりやすかったりする特性を指します。

例えば、おもちゃで遊んでいてもすぐに飽きて別のものに手を伸ばしたり、話しかけても聞いていないように見えたりすることがあります。

また、物をどこに置いたか忘れてしまったり、片付けを始めても途中で他のことに気を取られてしまったりするのも、この特性の一例です。

ただし、3歳の子どもは元々好奇心が旺盛で集中力が短いのが普通なので、この時期に不注意の特性を正確に見極めるのは非常に難しいと言えます。

好きな遊びには驚くほど集中できる「過集中」という状態が見られることも、ADHDの不注意特性の複雑な一面です。

多動性

「多動性」とは、静かにじっとしていることが苦手で、常に体を動かしていたいという衝動を伴う特性のことです。

食事中や絵本の読み聞かせの時間など、座っているべき場面でもすぐに席を立ってしまったり、ソファーやベッドの上で絶えず飛び跳ねていたりします。

公園などでは、目的もなくひたすら走り回ったり、順番を待てずに遊具に駆け寄ったりする姿が見られるかもしれません。

また、おしゃべりが大好きで一方的に話し続けたり、声のボリューム調整が苦手で大きな声になってしまったりすることも、この多動性の一環として現れる場合があります。

これらの行動は、本人がふざけているわけではなく、内側から湧き上がるエネルギーをコントロールするのが難しいことから生じています。

衝動性

「衝動性」とは、何かを思いついた時に、それが適切かどうかを考える前に行動に出てしまう特性を指します。

例えば、お友達が使っているおもちゃを欲しくなった瞬間、いきなり奪い取ってしまったり、会話に割り込んで話し始めたりすることがあります。

順番を待つという社会的なルールを理解するのが難しく、列に並んでいてもつい割り込んでしまうことも少なくありません。

また、危険を予測することが苦手なため、道路にいきなり飛び出したり、高い場所から平気で飛び降りようとしたりするなど、ヒヤリとする場面も多く見られます。

この衝動性は、本人の「わがまま」ではなく、行動を抑制する脳の働きがゆっくりと発達していることが背景にあるのです。

3歳での診断は慎重である理由

エプロンをつけて遊ぶ男の子

理由1:典型的な3歳児の行動と見分けがつきにくい

3歳でのADHDの診断が慎重に行われる最大の理由は、その特性とされる行動が、ごく一般的な3歳児の発達過程で見られる行動と非常によく似ているためです。

例えば、好奇心の塊である3歳児は、興味の対象が次々と移り変わり、一つの遊びに長く集中しないことがよくあります。

また、体を動かす機能が著しく発達する時期なので、エネルギーに満ち溢れて走り回ったり、じっとしているのが苦手だったりするのもごく自然な姿です。

さらに、自我が芽生え、自分の欲求をうまくコントロールする術をまだ学んでいる途中であるため、順番を待てなかったり、おもちゃの取り合いになったりすることも日常茶飯事です。

これらの行動だけを見て、それがADHDの特性によるものなのか、あるいは年齢相応の発達の一部なのかを区別することは、専門家であっても極めて難しいのです。

理由2:環境の影響を受けやすい

子どもの行動は、その子が置かれている環境から大きな影響を受けるため、3歳の時点での行動だけでは発達特性の判断が難しい場合があります。

例えば、引っ越しや転園、弟や妹の誕生といった大きな生活環境の変化は、子どもにとって大きなストレスとなり得ます。

そのストレスが、一時的に落ち着きがなくなったり、かんしゃくが増えたり、大人を困らせるような行動として現れることは少なくありません。

また、家庭での過ごし方や、園での集団生活のルールに馴染めているかどうかによっても、子どもの行動は大きく変わってきます。

安心して過ごせる環境では落ち着いているのに、特定の場所や状況でのみ気になる行動が見られる場合、それは特性ではなく環境への不適応が原因かもしれません。

このように、様々な環境要因を丁寧に取り除いて考えなければ、その子の本質的な特性を見誤ってしまう可能性があるのです。

理由3:症状の持続性と広がりを確認する必要がある

ADHDと診断されるためには、その特性が一時的なものではなく、ある程度の期間にわたって継続して見られることが重要な基準となります。

さらに、その行動が「家庭だけ」「園だけ」といった特定の場面に限られるのではなく、家庭、園、公園など、複数の異なる状況(場所)で一貫して現れることも診断のポイントになります。

3歳の段階では、気になる行動が見られても、それが今後もずっと続くのか、それとも成長とともに自然と落ち着いていくのかを見極めるには、まだ時間が必要です。

また、家庭ではとても活発なのに、園では非常におとなしく過ごしているなど、場所によって様子が大きく異なるケースもよくあります。

そのため、専門家はすぐに診断を下すのではなく、少なくとも6ヶ月以上の期間、様々な場面で子どもの様子を注意深く観察し、多角的な情報を集めてから慎重に判断を下すのが一般的です。

3歳の子どもの気になる行動チェックリスト

チェックマークをもつ医者

ここからのチェックリストは、子どものADHDの可能性を診断するものでは決してありません

あくまで、保護者の方が子どもの行動を客観的に振り返り、専門家へ相談する際の「気づきのきっかけ」や「伝える材料」として活用するための目安です。

「うちの子、ちょっと気になるな」と感じたときに、どんな点に着目すればよいかを整理するのに役立ててください。

いくつかの項目に当てはまったからといって、過度に心配する必要はありません。

多動性に関する項目

  • 食事や絵本の時間など、座っているべき場面で立ち歩いてしまうか?
  • 静かに遊ぶことが難しく、常に走り回ったり高いところに登ったりしているか?
  • おしゃべりが止まらなかったり、大きな声で話し続けたりすることが多いか?

衝動性に関する項目

  • お友達のおもちゃをいきなり取ってしまったり、遊びの邪魔をしたりするか?
  • 順番待ちができず、割り込んでしまうことが多いか?
  • 危険を顧みず、道路に飛び出したり、高い場所から飛び降りようとしたりするか?

不注意に関する項目

この年齢の子どもは、本来的に集中力が短く、注意が散漫になりやすいのが特徴です。そのため、以下の項目に当てはまるからといって、それが直ちにADHDの「不注意」特性を意味するわけではないことをご理解ください。

  • 遊びに集中できず、次から次へとおもちゃを乗り換えるか?
  • 話しかけても、上の空で聞いていないように見えることが多いか?
  • 片付けの途中で他のことに気を取られ、最後までやり遂げられないか?

「気になる」と思ったら…保護者が次に取るべき4つのステップ

子供によしよしする大人

ステップ1:記録をつける

「もしかして?」と感じたら、まずは具体的な行動の記録をつけてみましょう。

「いつ」「どこで」「どんな状況で」「どのような行動があったか」を客観的にメモしておくことが、全ての始まりになります。

例えば、「○月×日、スーパーで走り回り、何度注意しても棚の商品に手を出す」「公園で順番を守れず、他の子を押しのけて滑り台を滑ってしまう」といった具合です。

この記録は、後々、園の先生や専門家へ相談する際に、子どもの様子を正確に伝えるための非常に貴重な資料となります。

感情的にならず、事実を淡々と書き留めることで、ご自身の頭の中も整理され、冷静に子どもの行動パターンを把握することにも繋がります。

ステップ2:園の先生に相談する

家庭での様子だけでなく、集団生活の中で子どもがどのように過ごしているかを知ることは、非常に重要です。

幼稚園や保育園の先生は、多くの子どもたちを見ている子育てのプロであり、子どもの発達を客観的な視点から見てくれています。

連絡帳や面談の機会を利用して、「家ではこういうところが気になっているのですが、園での様子はいかがですか?」と尋ねてみましょう。

ステップ1でつけた記録を見せながら話すと、より具体的で的確な情報交換ができます。

家庭とは違う一面が見えたり、先生からの思わぬアドバイスがもらえたりすることもあり、一人で抱え込んでいる悩みを共有できるだけでも、気持ちが楽になるはずです。

ステップ3:公的な相談窓口を活用する

病院へ行くのはハードルが高いと感じる場合、まずは無料で気軽に相談できる公的な窓口を利用するのがおすすめです。

お住まいの市区町村には、必ず子育てに関する相談窓口が設けられています。

具体的には、以下のような場所が挙げられます。

  • 保健センター:3歳児健診などを担当しており、保健師や心理士などの専門家が発達の相談に応じてくれます。
  • 子育て支援センター:地域の親子が集まる場所で、子育ての悩み全般を相談できるスタッフが常駐しています。
  • 発達障害者支援センター:より専門的な相談に対応しており、医療機関や療育機関の情報提供も行っています。

これらの窓口は、保護者の不安な気持ちに寄り添いながら、次に取るべき行動を一緒に考えてくれる心強い味方です。

ステップ4:専門医療機関を受診する

公的な窓口で相談し、専門家から受診を勧められた場合や、保護者自身が強く希望する場合には、専門の医療機関を受診することを検討しましょう。

子どもの発達を専門に診てくれるのは、主に以下の診療科です。

  • 児童精神科
  • 小児神経科
  • 発達外来を設けている小児科

どの科にかかればよいか分からない場合は、ステップ3の相談窓口で尋ねたり、かかりつけの小児科医に相談して紹介状を書いてもらったりするのがスムーズです。

初診は予約が取りにくいことも多いため、早めに連絡してみることをお勧めします。

受診の際は、ステップ1で作成した記録を持参すると、診察が円滑に進みます。

診断名がつかなくても始められる「早期療育」という考え方

高い高いして遊ぶ親子

早期療育とは

早期療育とは、発達に気がかりな点がある子どもに対して、できるだけ早い段階から個々の特性に合わせたサポートを行うことです。

これは、ADHDなどの診断名がついているかどうかに関わらず、利用することができます。

療育の目的は、苦手なことを無理やり克服させるのではなく、その子が本来持っている力を最大限に引き出し、日常生活や社会生活での困難を減らす手助けをすることです。

遊びや運動、コミュニケーションのトレーニングなどを通して、子ども自身が「できた!」という成功体験を積み重ね、自己肯定感を育んでいくことを大切にしています。

保護者にとっては、専門家から具体的な関わり方のアドバイスをもらえたり、同じ悩みを持つ親と繋がったりできる貴重な場でもあります。

早期療育のメリット

早期療育には、子どもと保護者の双方にとって、たくさんのメリットがあります。

まず子どもにとっては、自分の感情をコントロールする方法を学んだり、友達と上手に遊ぶためのスキルを身につけたりする良い機会になります。

また、専門のスタッフがその子の得意なことを見つけて伸ばしてくれるため、自信を持って様々なことに挑戦する意欲が育まれます。

一方、保護者にとっては、我が子の特性への理解が深まり、「なぜこの子はこんな行動をするのだろう」という疑問が「なるほど、だからだったのか」という納得に変わります。

子育ての具体的なコツを学ぶことで、日々のストレスが軽減され、親子関係がより良好になることも少なくありません。

一人で抱え込まずに悩みを相談できる場所があるという安心感は、何物にも代えがたい支えとなるでしょう。

早期療育を受けられる場所

早期療育は、主に「児童発達支援事業所」と呼ばれる場所で受けることができます。

これらの事業所は、お住まいの市区町村の福祉担当窓口で紹介してもらうことができます。

利用するには、まず市区町村の窓口に相談し、「通所受給者証」の交付を申請する必要があります。

申請にあたっては、医師の診断書や意見書が必要になる場合もありますが、まずは窓口で手続きの流れを確認してみましょう。

事業所によって、運動に力を入れているところ、学習支援が中心のところなど、プログラムの内容は様々です。

いくつかの事業所を見学してみて、子どもの特性や興味に合った、親子で安心して通えそうな場所を選ぶことが大切です。

まとめ

祭りの服をきて遊ぶ男の子二人

3歳児の落ち着きのない行動の多くは、素晴らしい成長段階の証であり、決して育て方が原因ではありません。

まずは、この記事のチェックリストを参考に、子どもの行動を客観的に記録することから始めてみてください。

そして、その記録を持って、園の先生や公的な相談窓口など、信頼できる誰かに話してみましょう。

一人で抱え込まず、外に助けを求めるその一歩が、子どもとあなた自身の未来を明るく照らすための最も大切な行動です。

たとえ発達に特性があったとしても、早くから気づき、適切な関わり方を学ぶことで、子どもは自分らしく、たくましく成長していきます。

この記事が、次の一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

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この記事を書いた人

ウィズ・ユー編集部

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