ADHDと診断されたら?親がまずやるべきこと完全ガイド

発達障害と書かれた紙をもつ医者

「ついにADHDと診断されたけれど、これからどうすれば…」診断名がついた瞬間、安堵よりも「障害児の親になってしまった」というショックや将来への不安で、胸が押しつぶされそうになっていませんか?

何から手をつけるべきか分からず、ネットの情報に翻弄され、一人で悩みを抱え込んでしまう保護者は少なくありません。

でも実は、その診断は絶望ではありません。お子さんの「生きづらさ」の正体を知り、その子らしく生きるための「羅針盤」を手に入れたということなのです。

この記事では、診断直後に親がやるべき手続きから、療育の選び方、家庭での具体的な関わり方まで、今必要な情報を完全ガイドとして解説します。

子どもがADHDと診断されたら…保護者に最初にお伝えしたいこと

ADHD

診断は「悪いこと」ではない。特性を理解するスタートライン

ADHDの診断は、決してネガティブなレッテルではなく、子どもの「生きづらさ」を解消するための大切な第一歩であると捉え直すことが、心の平安を得るための鍵になります。

この診断によって、これまで「わがまま」「努力が足りない」と誤解されがちだった子どもの行動や特性が、脳機能の特性に基づいていることが明確になったのです。

つまり、診断は「障害児の親になってしまった」というショックではなく、「わが子の個性を正しく理解し、その子に合ったサポート体制を築く羅針盤を手に入れた」と考えてみましょう。

特性を理解することから、具体的な対策や支援が始まり、結果的に子どもが社会の中で自分らしく、幸せに生きていくための土台作りができるのです。

「育て方が悪かった?」診断直後に親が抱える不安と誤解

診断を受けた直後、「自分の育て方が悪かったせいでこうなってしまったのではないか」という自責の念や、「誰かに責められるのではないか」という不安に押しつぶされそうになる保護者はとても多いです。

しかし、ADHDは親の愛情や教育、育て方によって引き起こされるものでは一切ありませんので、どうかご自身を責めないでください。

ADHDは、生まれつきの脳の機能的な特性であり、遺伝的な要因や発達の過程で生じるもので、これは科学的にも明らかになっています。

この知識をしっかり持つことで、「育て方のせい」という誤解や偏見からご自身を解放し、次に何をすべきかという建設的な行動へと意識を切り替えることができるようになります。

子どもの「自己肯定感」を守ることが最優先

ADHDの特性を持つ子どもは、他の子と同じように「当たり前にできること」が難しい場面が多いため、学校や家庭で叱られる経験が多くなりがちで、自己肯定感が低下しやすい傾向にあります。

診断が下りた今、保護者がまず優先すべきは、子どもに対して「あなたはありのままでよい」というメッセージを伝え続け、自己肯定感を徹底的に守り育むことです。

特性を理解した上で、できていないことではなく、少しでも努力した点や、得意なこと、良いところに積極的に目を向けて、具体的にほめる関わり方を意識してください。

親が不安や否定的な感情を出すと、子どももそれを敏感に察知してしまいますので、まずは保護者自身が診断を受け入れた上で、前向きな姿勢で子どもと向き合うことが大切です。

診断をどう活かす?「その子に合った」サポートを見つける羅針盤に

ADHDの診断は、子どもの苦手なことや困難な部分を明確にするだけでなく、子どもが持つ「強み」や「得意なこと」を見つけるための重要な手がかりにもなります。

「落ち着きがない(多動性)」という特性も、見方を変えれば「行動力がある」や「エネルギーにあふれている」という強みとして捉え直すことが可能です。診断を羅針盤として利用し、子どもの特性に合わせた環境調整や、専門的な療育の方向性を明確にしていきましょう。

ADHD診断後、親がまずやるべき3つの手続きと行動

ステップ1:医師からの「診断書」と「意見書」の役割

子どもがADHDの診断を受けた直後に、保護者が最初に行動すべきなのは、診断を受けた医師から「診断書」や「意見書」を作成してもらうことです。

これらの書類は、公的な福祉サービス(療育など)の申請時や、学校での合理的配慮(子どもが学校生活を送りやすくするための特別な配慮)を求める際に、子どもの状態を証明する最も重要な根拠資料となります。

特に、「療育の必要性」や「学校生活でどのような配慮が必要か」といった具体的な情報が記載されている意見書は、後の手続きをスムーズに進めるために必要です。

診断時に医師に相談して、必要な手続きに必要な書類の種類や枚数を確認し、早めに準備を進めていくことをおすすめします。

ステップ2:通所受給者証の申請方法と流れ

Step1、2、3と書かれた紙

ADHD などで発達に支援が必要と認められた子どもが療育サービスを利用するためには、居住する自治体で「通所受給者証」の交付を受ける必要があります。

これは、サービスを利用するために国や自治体が費用の一部を負担することを認める証明書です。これがなければ、公費負担による児童発達支援や放課後等デイサービスを利用することはできません。

具体的な申請の流れは、まず自治体の福祉窓口(役所の子育て支援課など)に相談することから始め、医師の診断書や申請書類を提出し、面談などを経て審査が行われます。

審査が通ると受給者証が交付され、これを持って希望する療育施設と契約を結び、初めてサービスを利用できるようになります。受給者証の交付までに時間がかかることも多いため、支援の利用を考えている場合は、診断後できるだけ早めに自治体の窓口に相談すると安心です。

ステップ3:学校・保育園(幼稚園)への情報共有

診断を受けたという事実は、子どもが日常生活を送る上で最も多くの時間を過ごす学校や園との連携を開始するための重要な情報になります。

子どもがより良い環境で過ごせるように、担任の先生や園長先生に対して、診断結果、医師からの具体的な所見、そして家庭で困っている具体的な行動を丁寧に伝えましょう。

この情報共有によって、学校側も子どもの行動の背景を理解し、適切な対応や環境調整を検討してくれやすくなります。

ADHDの子どもを伸ばす療育とは?

跳び箱を飛ぶ練習をする男の子

療育はいつから始める? 診断後すぐに検討すべき理由

療育とは、発達に特性のある子どもが、日常生活や社会生活をスムーズに送れるよう、必要なスキルを身につけるための専門的な支援のことです。

幼少期から学齢期にかけては脳の柔軟性が非常に高く、療育の効果が表れやすい「発達の黄金期」です。そのため、診断が確定したら、できるだけ早く検討を始めることが望ましいと言えます。

この大切な時期に適切な支援を受けることで、特性による困りごとを減らし、お子さんの自己肯定感を守ることができます。それが将来の社会適応へとつながっていくのです。

「児童発達支援」と「放課後等デイサービス」の違い

ADHDの子どもが利用できる公的な療育サービスには、主に「児童発達支援」と「放課後等デイサービス」の2種類があります。

未就学の子ども(0歳から小学校入学前まで)が利用するのが「児童発達支援」で、遊びを通して基本的な生活習慣や集団での関わり方を身につけることを目的としています。

一方、小学生から高校生まで(自治体によっては20歳まで認められることもある)の子どもが、学校の授業終了後や長期休暇中に利用するのが「放課後等デイサービス」で、社会性や学習面、生活能力の向上を目指します。

どちらのサービスも、子どもの成長段階や生活スタイルに合わせて選ぶことが重要であり、通所受給者証があれば利用可能です。

SST(ソーシャルスキルトレーニング)で何を学ぶのか

多くの療育施設で行われる重要なプログラムの一つに、SST(ソーシャルスキルトレーニング)があります。

SSTとは、集団生活や対人関係で必要となる社会的な技能(スキル)を、ロールプレイング(役割演技)などを通して練習し、身につけていくプログラムです。

例えば、「友達に遊びに誘われた時の断り方」「自分の気持ちを落ち着いて伝える方法」「順番を守る練習」といった、ADHDの子どもが特に苦手としやすいコミュニケーションやルールの理解を実践的に学びます。

このトレーニングにより、子どもは集団の中でよりスムーズに振る舞えるようになり、対人関係でのトラブルやストレスを減らす効果が期待できます。

認知行動療法(CBT)やペアレント・トレーニングという選択肢

療育や環境調整以外にも、ADHDの子どもや保護者が利用できる有効な支援方法として、認知行動療法(CBT)やペアレント・トレーニングがあります。

認知行動療法は、子ども自身が自分の衝動的な行動パターンや思考の偏りに気づき、より建設的な行動を選ぶ練習をするための心理療法です。

一方、ペアレント・トレーニングは、ADHDの子どもを持つ保護者を対象としたプログラムで、特性に応じた具体的な接し方やほめ方、適切な指示の出し方といった技術を学びます。

これらの支援を組み合わせることで、子どもだけでなく、保護者の関わり方にも変化が生まれ、家庭全体で良い循環を生み出すことができます。

信頼できる療育施設(事業所)の選び方と見学時のチェックポイント

通う療育施設(事業所)は、子どもの成長を支える上で非常に重要であるため、信頼できる施設を慎重に選ぶ必要があります。

施設を選ぶ際は、以下のポイントをチェックし、総合的に判断することが大切です。

  • 子どもが楽しく通えそうか
  • スタッフの専門性(資格や経験)は十分か
  • 自宅からの通いやすさはどうか

家庭でできるADHD特性への具体的な関わり方

服の説明が書かれた紙

「不注意」(忘れ物・集中できない)への対策

ADHDの特性の一つである「不注意」は、忘れ物が多い、話を聞き漏らす、集中が続かないといった形で現れ、学校生活や宿題で特に子どもを困らせます。

このような不注意特性に対しては、子ども自身の力で管理するのではなく、環境の力でサポートする環境調整が非常に有効です。

具体的には、「目に見える化」を徹底し、忘れ物をしやすいものにはチェックリストを貼る、ToDoリストを書いて見える場所に掲示する、部屋の片付け場所を色分けするといった方法が効果的です。

また、集中力が途切れやすい作業(宿題など)は、タイマーを使って短い時間で区切り、「10分頑張ったら休憩」といったルールを設けることで、集中を維持しやすくすることができます。

「多動性」(じっとしていられない)への対策

「多動性」は、授業中に立ち歩く、手足をそわそわ動かすなど、体を動かさずにはいられないという特性で、しばしば「落ち着きがない」と誤解されがちです。

この特性を持つ子どもは、無理に「座っていなさい」と押さえつけるよりも、適切な形でエネルギーを発散できる場を用意することが重要になります。

例えば、体を動かす役割(お使いや荷物運びなど)を積極的に与える、勉強の合間に軽い運動やストレッチを挟む、座っている間も手の中で握れるおもちゃを使うといった対応が有効です。

「衝動性」(カッとなる・待てない)への対策

「衝動性」は、順番を待てない、考えずに発言してしまう、すぐにカッとなって手が出てしまうなど、行動の前に立ち止まって考えることが難しい特性です。

衝動的な行動を減らすためには、「感情の波」を自分でコントロールするスキルを身につけさせる訓練が必要です。

子どもが感情的になっている時こそ、保護者は落ち着いたトーンで接することを心がけ、「深呼吸を3回しよう」「まずは気持ちを落ち着かせよう」といった具体的な行動を教えてあげましょう。

子どもの自己肯定感を育む「ほめ方」のコツ

ADHDの子どもは、失敗体験が多くなりがちであるため、自己肯定感の回復と育成が非常に重要で、そのためのほめ方には少しコツが必要です。

単に「えらいね」「すごいね」と結果だけをほめるのではなく、「具体的に、プロセス(過程)をほめる」ことを意識してください。

例えば、「忘れ物をしなかった」時ではなく、「忘れ物チェックリストを見て、自分で準備できたのが本当にすごいね」と、努力や工夫した行動に焦点を当ててほめるのです。

この関わり方を続けることで、子どもは「自分は努力できる人間だ」「工夫すればできることが増える」と感じ、困難に立ち向かう力を身につけていくことができるようになります。

学校・園生活をスムーズに!合理的配慮と連携のコツ

スーツを着て話を聞く女性

担任の先生に何をどこまで伝えるか?

学校の先生との連携をスムーズにするためには、まず、子どもの診断名、具体的な特性の状況を正直に伝える必要がありますが、それと同時に「困っている具体的な場面」を具体的に伝えることが非常に重要です。

「落ち着きがない」という抽象的な表現ではなく、「授業中、座席が窓際だと気が散りやすいようです」といった具体的な情報を共有しましょう。また、子どもの「強み」や「得意なこと」も忘れずに伝えることで、先生が子どもを多角的に理解する手助けになります。

先生はADHDの専門家ではない場合も多いので、専門家である医師の意見書を基に、学校と家庭が同じ方向を向いてサポートしていく姿勢を見せることが大切です。

合理的配慮の具体的な依頼例

合理的配慮とは、子どもが学校生活を送る上で、他の児童と同じように学べるように、学校側が行うべき調整や工夫のことです。

ADHDの子どもの場合、例えば以下の表のような具体的な配慮を学校に依頼することを検討してみましょう。

困っている特性合理的配慮の具体的な依頼例
不注意忘れ物が多いので、連絡事項を連絡帳だけでなく、口頭でも確認してもらう
多動性授業中、集中力が途切れた時に、教室後方で立って作業する時間を設けてもらう
衝動性席を離れやすいので、先生の目の届きやすい最前列または隅の席に配置してもらう
学習面長文の指示を一度に与えず、プリントの問題を一つずつ区切って出してもらう

通級指導教室や支援学級とは?

学校生活における支援の選択肢として、「通級指導教室(通級)」や「支援学級」といった制度があります。

通級指導教室は、通常の学級に在籍しながら、週に数時間だけ別室で個別の指導を受ける場であり、SSTなどのソーシャルスキルや、学習の遅れを補う指導が行われます。

一方、支援学級は、主に学習や生活面で大きな困難がある子どもが在籍し、少人数のクラスで、子どものペースに合わせた学習や生活指導を受ける場です。

どちらを選ぶかは、子どもの困り具合や必要な支援の内容によって異なり、学校や教育委員会とよく相談して決める必要があります。

スクールカウンセラーや専門家の活用法

学校には、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーといった専門家が配置されている場合がありますので、積極的に活用しましょう。

スクールカウンセラーは、子ども自身のメンタルヘルスのサポートや、学校生活での悩みの相談に乗ってくれる専門家です。

スクールソーシャルワーカーは、家庭と学校、そして外部の福祉サービスや医療機関との連携をサポートしてくれる重要な役割を担っています。

保護者自身が抱える不安や、学校との連携で困っていることなども相談できるため、一人で悩まずに専門家の力を借りることを検討してみてください。

一人で抱え込まないで。保護者のための相談先とメンタルケア

胸に手を当てる女性

地域の相談窓口

ADHDの診断を受けた直後は、まず「どこに相談すればいいのか」と混乱しがちですが、身近な地域にも保護者の強い味方となる公的な相談窓口が複数存在します。

居住する自治体の福祉窓口(子育て支援課、障害福祉課など)では、通所受給者証の申請手続きや、地域の療育施設、医療機関の情報を提供してもらえます。

また、児童相談所や保健センターでも、専門のスタッフによる発達に関する相談や、育児のアドバイスを受けることが可能です。

親の会や自助グループ、オンラインコミュニティの活用

同じようにADHDの子どもを持つ保護者同士で情報交換や悩みを共有できる「親の会」や「自助グループ」、オンラインコミュニティの存在も、孤立を防ぐためにとても重要です。

同じ経験をしている仲間と話すことで、「自分だけが悩んでいるのではない」という共感や安心感を得ることができ、精神的な負担が大きく軽減されます。

ここでは、実体験に基づいた具体的な対処法や支援制度の活用ノウハウといった、書籍には載っていない生きた情報を得ることも可能です。これらのコミュニティに参加することは、保護者自身の心のケアであると同時に、専門家とは異なる「味方」を見つけることにつながります。

パートナーや家族との「正しい情報共有」の重要性

家族に診断結果を伝える際、「育て方が悪かったのでは」と責められたり、偏見を持たれたりすることを恐れて、一人で抱え込んでしまう方は少なくありません。

しかし、家族で情報を共有することは、子どもへの接し方を統一するためにとても大切です。不安はあると思いますが、正しい知識をもとに落ち着いて伝えることを心がけましょう。

「ADHDは生まれつきの脳の特性であること」「誰のせいでもないこと」「今後は家族全員で理解し、サポートしていくことが大切であること」を明確に伝えましょう。

家族で話し合う機会を作り、医師からもらった資料やこの記事のような信頼できる情報を一緒に読んでもらうと、感情的にならず、事実に基づいた理解を深めてもらいやすくなります。

親自身の息抜きも大切

子どもの特性への対応や、日々の生活、手続きなどに追われ、「保護者自身の心と体が疲弊してしまう」ことは、実は最も避けなければならない状況です。

保護者自身が心の余裕を失ってしまうと、子どもへの関わり方も厳しくなりがちで、悪循環を生んでしまうことにつながります。

ショートステイやレスパイトケア(介護者の休息のためのサービス)などの福祉サービスを利用して、意識的に自分のための時間を確保しましょう。

まとめ

手のひらにハート

ADHDの診断を受けたとき、多くの保護者の方がショックを感じるのは自然なことです。けれども同時に、この診断はお子さんの生きづらさを和らげ、その子ならではの素敵な強みを見つけていくための「新しいスタート」でもあります。

診断を受けたら、まずは受給者証の申請や学校への相談など、必要な手続きを少しずつ進めていきましょう。特性に合った療育(児童発達支援や放課後等デイサービス)を受けられる環境を整えることが、これからの第一歩になります。

そして、日々の暮らしの中では、お子さんの自己肯定感を育てるほめ方や、特性に寄り添った環境づくりを心がけてみてください。

すべてを一人で頑張ろうとしなくて大丈夫です。地域の相談窓口や親の会、専門的な療育施設といった「専門チーム」の力を借りながら、希望を持って子どもの成長を見守っていきましょう。

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この記事を書いた人

ウィズ・ユー編集部

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