
子どもが中学生になり、急に勉強につまずき始めると、親としては心配でたまらなくなります。
「家では真面目に机に向かっているのに、なぜテストの点が取れないの?」と疑問に思うこともあるはずです。
実は、これまで目立たなかった「学習障害(LD)」の特性が、中学校の学習内容の変化によって表面化することがあります。
この記事では、中学生特有の学習障害の特徴や、親ができる具体的なサポート方法、そして将来の進路について詳しく解説します。
正しい知識を持つことで、子どもの苦しみを理解し、親子で笑顔を取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。
もしかして学習障害(LD)?中学生になって目立つ「つまずき」のサイン

「努力不足」や「反抗期」と決めつけていませんか?
子どもの成績が上がらない原因は、本人の「努力不足」や「甘え」ではない可能性があります。
学習障害(LD)の特性がある場合、脳の情報処理の仕方が多数派と異なるため、一般的な勉強法では成果が出にくいのです。特に中学生の時期は反抗期と重なるため、勉強ができないイライラを親にぶつけてしまい、親子関係が悪化するケースも少なくありません。
しかし、本人が一番「やってもできない」ことに苦しみ、自信を失っているという事実に目を向ける必要があります。
親が「あなたのせいじゃない」と理解してくれるだけで、子どもの心は大きく救われるはずです。
中学生になると学習障害が顕在化しやすい理由
中学生になると学習障害がはっきり見えてくるのは、学校で求められることが、子どもの処理できる範囲を超えてしまうためです。
小学校の低学年では、親や先生のサポートでなんとかカバーできていたことも、より自立が求められる中学校では難しくなっていきます。定期テストの範囲は広くなり、計画を立てて勉強を進める力が必要になりますが、LDのある子どもにとって、これはかなり高いハードルです。
さらに、周りの友だちとの成績の差が順位や偏差値という数字ではっきり見えるようになるため、子ども自身も「自分は人と違うのかもしれない」と感じ始めます。特に英語学習が始まると、アルファベットの認識や単語の暗記でつまずき、そこで初めてLDに気づくケースも少なくありません。
「今までは普通にできていたのに」と驚かれるかもしれませんが、これは環境の変化によって、それまで見えにくかった特性が表に出てきたと考えるとよいでしょう。
【タイプ別】子どもの困難さはどれ?学習障害の3つの分類

読字障害(ディスレクシア)
読字障害は、知的能力に問題はないものの、文字の読み書き、特に「読む」ことに著しい困難を示す学習障害です。
文字が歪んで見えたり、二重に見えたり、まるで図形のように見えたりするため、読むスピードが極端に遅くなります。音読をさせると、たどたどしくなったり、文末を適当に変えて読んだり、行を飛ばして読んでしまうことが特徴です。
しかし、耳から情報を入れればスムーズに理解できることが多く、読み上げ機能を使えば成績が向上することも珍しくありません。「文字から情報を得るルート」が詰まっているだけで、理解力や思考力には問題がないという点が重要です。
書字表出障害(ディスグラフィア)
書字表出障害は、文字を正しく整えて書くことや、文字を使って文章を構成することに困難がある学習障害です。
手先の不器用さを伴うことが多く、筆圧が極端に弱かったり強すぎたり、マス目からはみ出してしまうことがあります。漢字の細かい部分を覚えられず、鏡文字(左右反転)を書いたり、独自の文字を作り出したりすることもあります。
また、頭の中では言いたいことがまとまっているのに、それを文章として書き出すことが難しく、作文や記述式問題が苦手です。ノートを取ることに集中しすぎると先生の話が全く頭に入らないため、授業の理解度が下がってしまう悪循環に陥ります。
「丁寧に書きなさい」と指導しても改善せず、書くこと自体が苦痛で学習意欲を失ってしまうリスクがあります。
算数障害(ディスカリキュリア)
算数障害は、計算や推論など、算数・数学的な領域に特異的な困難を示す学習障害です。
数の大小関係が直感的に分からなかったり、簡単な計算でも指を使わないとできなかったりすることがあります。繰り上がりや繰り下がりの計算ルールが定着しにくく、計算ミスではなく根本的な理解でつまずいていることが多いです。
また、図形やグラフの読み取りが苦手で、目盛りを正しく読めなかったり、立体図形の展開図がイメージできなかったりします。日常生活でも、時計が読めない、お釣りの計算ができない、地図が読めないといった困りごとが生じることがあります。
論理的な思考はできるのに、数字が絡むと急に分からなくなってしまうのが、このタイプの特徴です。
学習障害(LD)とADHD・ASD(自閉スペクトラム症)との違いと併発
学習障害(LD)は単独で存在することもありますが、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)と併発することが多いです。
たとえば、ADHDの「不注意」があると、ケアレスミスが増えたり、授業に集中できずに聞き逃したりして、学習の遅れにつながります。
ASDの「こだわりの強さ」や「文脈理解の弱さ」があると、国語の心情読解や、柔軟な思考が必要な問題でつまずくことがあります。
これらの発達障害が重なることで、学習の困難さがより複雑になり、親や先生にとっても原因が見えにくくなるのです。学習面だけの問題なのか、行動面や社会性の課題も絡んでいるのかを総合的に見ていく必要があります。
【教科別】中学生の学習障害(LD)具体的な特徴

1.【国語】長文読解が苦手、行を飛ばして読む、漢字が覚えられない
国語のテストで時間が足りなくなったり、極端に点数が低かったりする場合、読むこと自体に多大なエネルギーを使っている可能性があります。
読字障害(ディスレクシア)の傾向がある子どもは、文章を文字の塊として認識することが難しく、一文字ずつ拾い読みをしてしまいます。そのため、文章の内容を理解する前に脳が疲れてしまい、長文読解の問題にたどり着くことすらできないのです。
また、行を飛ばして読んだり、文末を変えてしまったりするため、正確な読解が困難になります。漢字に関しては、何度も書いて練習しても形が覚えられず、へんとつくりが逆になったり、存在しない漢字を書いたりすることがあります。
読むことや書くことに必死で、文章の意味を考える余裕がない状態になっていることを理解してあげてください。
2.【数学】文章問題の意味が取れない、図形や証明が理解できない
数学でつまずく場合、単純な計算ミスだけでなく、問題文の意味を理解する力や空間認識能力に課題があることが多いです。
文章題では、「何を聞かれているのか」「どの数字を使えばいいのか」が分からず、立式すること自体ができません。これは、算数障害(ディスカリキュリア)の特性だけでなく、読字障害による「読みの困難さ」が影響している場合もあります。
図形問題、特に関数や立体の切断などでは、頭の中で図形を回転させたり移動させたりするイメージ操作が苦手な傾向があります。「公式は覚えているのに解けない」という場合は、情報の整理や視覚的なイメージ処理でつまずいている可能性が高いです。
3.【英語】英単語や文法が覚えられない、読み書きが極端に苦手
中学生になって初めて直面する「英語」は、学習障害の子どもにとって最も高いハードルになりやすい教科です。
日本語のひらがなは「あ」という音と文字が1対1で対応していますが、英語は「a」を「ア」とも「エイ」とも読むため、ルールが複雑です。音と文字を結びつけるのが苦手なため、単語のスペルを覚えることが極めて難しく、何度書いても記憶に定着しません。
ローマ字読みならできるけれど、フォニックス(英語の綴りと発音のルール)が理解できず、英語を見るだけで拒絶反応を示すこともあります。
英語のつまずきは、本人の努力不足ではなく、脳の特性上、英語の音韻処理が苦手であることが主な原因です。
4.【その他】板書が間に合わない、定期テストの計画が立てられない
黒板の文字を見て、手元のノートに書き写す。一見簡単そうに見えるこの作業ですが、実は「見る・覚える・書く」を同時に行う、かなり複雑な処理です。
書字障害や不器用さがあると、板書が間に合わず、ノートが空白だらけになってしまったり、後で見返しても自分でも読めないような字になってしまったりします。
また、提出物の管理やテスト勉強の計画など、先を見通して行動することが難しい子どももいます。これは実行機能(物事を段取りよく進める力)の弱さからくるもので、忘れ物が増えたり、提出期限を守れなかったりして、結果的に内申点に影響が出てしまうこともあります。
勉強の内容が分かる・分からない以前に、「学校のシステムに合わせること」そのものに、大きなエネルギーを使っているのです。
学習障害(LD)と診断されたら?知っておくべき3つのステップ

ステップ1:まずは「受容」から。本人の自己肯定感を守る
もし診断がついたら、親がまずできることは、その事実を否定的に捉えるのではなく、子どもの「特性」として受け入れることです。
診断名は決してレッテルではありません。むしろ「どうして勉強がこんなに辛いんだろう」という長年の疑問に対する答えであり、これからどうサポートしていけばいいかを知る手がかりになります。
子どもには、「あなたの努力が足りなかったわけじゃないよ。ただ、脳の使い方が人とちょっと違っていただけなんだ」と伝えてあげてください。
その言葉だけで、子どもは「自分はダメな人間だ」という思い込みから解放され、ほっとすることができます。
これまでの苦しさを一緒に振り返りながら、「これからは、あなたに合ったやり方を一緒に見つけていこうね」と声をかけてあげましょう。
ステップ2:学校との連携方法
次に重要なのは、学校に対して子どもの特性を正しく伝え、必要な配慮を求めることです。担任の先生だけでなく、学校に設置されている特別支援教育コーディネーターの先生にも相談を申し込みましょう。
その際、医師の診断書や検査結果(WISCなど)を持参し、「何ができて、何が難しいのか」を具体的に説明することが大切です。その上で、「個別の指導計画」の作成を依頼し、座席の位置、板書の工夫、課題の量の調整など、具体的な支援策を話し合います。
先生によって知識や理解度に差があるため、感情的にならず、「どうすれば子どもが学びやすくなるか」という視点で協力関係を築くことがポイントです。学校と家庭がチームとなってサポート体制を作ることが、子どもの学校生活を安定させるカギとなります。
ステップ3:専門機関での検査と相談
学校以外の専門機関ともつながりを持ち、より専門的な知見やサポートを得ることも重要です。
まずは自治体の教育センターや発達支援センターに相談し、必要であれば医療機関でWISC-IVなどの知能検査を受けます。
この検査を受けることで、子どものIQだけでなく、「得意な処理方法(視覚優位か聴覚優位かなど)」が数値として分かります。
また、学習支援を行っている「放課後等デイサービス」を利用するのも有効な手段の一つです。学習障害の特性に理解のあるスタッフが、学校の宿題を見たり、ソーシャルスキルトレーニングを行ったりしてくれます。
医療、福祉、教育の専門家とつながることで、親自身の孤立を防ぎ、多角的な視点で子どもを支えることが可能です。
思春期の中学生を支える家庭での学習サポート

本人の頑張りを認める声かけとは?
思春期の子どもに対して、「勉強しなさい」「もっと頑張れ」という言葉は、逆効果になることがほとんどです。結果(点数)ではなく、過程(プロセス)に注目し、本人が取り組んだ事実を具体的に認める声かけを心がけましょう。
「今日は机に30分向かっていたね」「この漢字、丁寧に書けているね」といった、小さな変化を見逃さずに伝えることが大切です。親からの「見ているよ」「認めているよ」というサインは、子どもにとって大きな安心感とモチベーションになります。
また、テストの点が悪くても、「難しかったのによく最後まで受けたね」と、挑戦したこと自体を評価してあげてください。親の評価軸を「他者との比較」から「過去の本人との比較」に変えるだけで、家庭内の空気がぐっと穏やかになります。
学習の負担を減らす工夫
学習障害の子どもにとって、通常のやり方で勉強することは、重い荷物を背負って走るようなものです。家庭学習では、タブレットやスマホなどを積極的に活用し、負担を減らす工夫を取り入れましょう。
また、宿題の量が多すぎて終わらない場合は、先生と相談して、「奇数番号の問題だけ解く」などの減量交渉をすることも可能です。
「楽をさせる」のではなく、「学びのバリアを取り除く」という視点で、便利なツールはどんどん活用すべきです。
本人の得意を伸ばし、自己肯定感を育む場所づくり
学校の勉強がすべてではありません。子どもが輝ける場所は、教科書の外にたくさん広がっています。絵を描くこと、ゲーム、スポーツ、料理、プログラミングなど、子どもが夢中になれることや得意なことを全力で応援しましょう。
「勉強は苦手だけど、これなら誰にも負けない」という自信があれば、学校での失敗によるダメージを回復することができます。また、学校以外のコミュニティ(習い事やボランティア、フリースクールなど)に参加し、多様な価値観に触れることも大切です。
得意なことを通して「人から褒められた」「役に立った」という経験を積み重ねることで、困難を乗り越える力が育ちます。勉強以外にも自分らしくいられる場所や、安心できる居場所を確保しておくことが、思春期の揺れ動く心を支える大切な支えになります。
二次障害(不登校、うつ、自信喪失)を防ぐためのメンタルケア
学習障害の対応で最も恐れるべきは、学習の遅れそのものではなく、そこから派生する「二次障害」です。
「どうせ自分はバカだ」という自尊心の低下は、不登校、引きこもり、うつ状態、さらには非行などの問題行動につながるリスクがあります。
子どもの顔色が暗い、食欲がない、眠れていないといったサインが見られたら、まずは勉強のことを一旦脇に置いてください。
家庭が「評価される場所」ではなく、「心から安らげる場所」であることが、メンタルケアの基本です。心のエネルギーが枯渇してしまっては、どんな支援も届きません。まずは心の健康を守ることを最優先にしてください。
学習障害(LD)のある中学生の進路と高校受験

内申点や定期テストへの不安にどう向き合うか
学習障害の子どもを持つ親にとって、内申点は非常に大きな悩みですが、過度に悲観する必要はありません。また、提出物や授業態度を真面目にこなすことで、テストの点数以上の評価をもらえるケースもあります。
先生に特性を理解してもらい、提出物の形式を変えてもらう(手書きではなくプリント入力など)ことで、評価を落とさない工夫もできます。
「今の内申点で行ける高校がない」と諦める前に、様々な評価基準を持つ学校があることを知り、視野を広げることが大切です。
完璧な成績を目指すのではなく、子どもの現状で勝負できるフィールドを探すという戦略的な視点を持ちましょう。
高校受験で受けられる合理的配慮とは
高校入試においても、障害者差別解消法に基づき、「合理的配慮」を受ける権利が認められています。
具体的な配慮の内容としては、試験時間の延長、別室受験、問題用紙の拡大コピー、ルビ振りなどがあります。また、読み書きが困難な場合には、代読(問題を読んでもらう)や代筆(答えを書いてもらう)、タブレット端末の使用が認められるケースも増えています。
これらの配慮を受けるためには、事前の申請が必要であり、中学校での支援実績や医師の診断書が求められることが一般的です。
早めに中学校の先生や教育委員会に相談し、どのような配慮が可能かを確認し、申請の準備を進めておく必要があります。合理的配慮は「特別扱い」や「ズル」ではなく、子どもが本来持っている力を発揮するための正当な権利です。
子どもの特性に合った進路を選択するには
高校選びにおいては、「偏差値」という単一の物差しを捨て、子どもの特性にマッチした学校を選ぶことが重要です。
普通科の進学校だけでなく、専門学科(工業、商業、農業、芸術など)や、総合学科を持つ高校も有力な選択肢です。
オープンキャンパスや学校説明会に足を運び、先生の雰囲気や生徒の様子を見て、「ここなら通えそう」という直感を大切にしてください。
「みんなと同じ普通の高校」にこだわるよりも、子どもが笑顔で3年間を過ごせる環境を選ぶことが、将来の成功につながります。
将来の自立に向けたキャリア教育の考え方
高校卒業後の未来を見据えた時、学習障害は決して「社会で通用しない」ということを意味しません。
むしろ、苦手なことがはっきりしている分、得意な分野を突き詰めることで、特定の職業で高い能力を発揮する人がたくさんいます。
大切なのは、自分の「得意」と「苦手」を正しく理解し、苦手な部分はツールや人の手を借りてカバーするスキル(処世術)を身につけることです。
「何ができるか」だけでなく、「どう工夫すればできるか」を考える力を育てることが、自立への一番の近道です。勉強ができることだけが優秀さではありません。子どもだけのユニークな才能が、社会で輝く場所は必ずあります。
まとめ

成績不振や反抗的な態度の裏には、子どもなりの「できない苦しさ」や「助けてほしい」というSOSが隠れている可能性があります。
親がそのサインに気づき、「あなたのせいじゃない」と受け止めてあげるだけで、子どもの世界は大きく変わります。
診断を受けることや学校に配慮を求めることは、決して恥ずかしいことではなく、子どもの未来を守るための愛情ある行動です。
専門家や学校と連携しながら、子どもに合った学び方や生き方を一緒に探していってください。焦らず、一歩ずつ進んでいけば、必ず子どもが自信を取り戻し、笑顔で自分の道を歩める日が来るでしょう。




