
「朝になると子どもがお腹を痛がる」「学校に行きたくないと涙を流す」
発達障害のある子どもが不登校になったとき、共働き家庭では仕事と子どものケアの両立に頭を抱える親御さんが少なくありません。
日中、家に一人で子どもを残す不安。仕事を辞めるべきか続けるべきかという葛藤。その裏には、発達特性と学校環境のミスマッチという、見過ごされがちな原因が隠れています。
この記事では、発達障害と不登校の関係を丁寧に解説しながら、共働きでも実践できる具体的な対応策や、頼れる支援サービスまでを分かりやすくお伝えします。
発達障害と不登校の関係|なぜ学校に行けなくなるのか

発達障害の特性と学校環境の「ミスマッチ」が原因になる
発達障害のある子どもが不登校になる最大の要因は、子ども本人の問題ではなく「特性と学校環境のミスマッチ」にあります。
学校という場所は、集団行動・一斉指導・時間通りの生活が基本です。これは定型発達の子どもには自然でも、感覚過敏や注意の偏りを持つ子どもにとっては、毎日がフルマラソンのような負荷になります。
たとえば、チャイムの音や給食の匂いが耐えられない、急な予定変更にパニックになる、板書を写すのが極端に遅い、といった困りごとです。
周囲から見れば小さなことでも、本人にとっては「自分だけが頑張ってもうまくいかない」積み重ねとなり、やがて心と体が登校を拒むようになります。つまり不登校は、環境とのズレに限界がきたサインなのです。
ASD・ADHD・LDの特性別に見る不登校のきっかけ
発達障害といっても特性はさまざまで、不登校のきっかけもタイプによって異なります。子どもの困りごとを理解する第一歩として、代表的な3つのタイプを整理しておきましょう。
ASD(自閉スペクトラム症)は対人関係やこだわりに特徴があり、ADHD(注意欠如・多動症)は不注意や衝動性が目立ち、LD(学習障害)は読み書き計算など特定分野の学習に困難を抱える特性です。
| 特性タイプ | 不登校になりやすい主なきっかけ |
| ASD | 集団行動の苦痛、予定変更への不安、感覚過敏(音・光・匂い) |
| ADHD | 忘れ物や宿題忘れで叱られ続ける、授業中に集中できず疲弊する |
| LD | 読み書きや計算だけができず「怠けている」と誤解される |
同じ「学校に行きたくない」という言葉でも、その奥にある理由はまったく違います。子どもが何に困っているのかを特性の視点で見ることで、対応の糸口が見えてきます。
友人関係のつまずきと自己肯定感の低下
発達障害のある子どもは、友人関係で傷つく経験が積み重なりやすい傾向があります。その結果、自己肯定感がすり減り、不登校につながるケースが非常に多く見られます。
空気を読むのが苦手で場に合わない発言をしてしまう、こだわりが強くて遊びのルール変更に対応できない、衝動的に手が出てトラブルになる、こうした出来事が続くと、周囲から距離を置かれたり、からかいの対象になったりしがちです。
本人は悪気がないのに「変わった子」と扱われる経験は、「自分は他の子と違う」「自分はダメな人間だ」という自己否定に直結します。
たとえば、休み時間に一人で過ごす日が増える、友達の名前を家で話さなくなる、といった変化は要注意のサインです。心が削られ続けた結果、学校そのものが安心できない場所になってしまうのです。
不登校は「怠け」ではなく子どものSOSサイン
不登校になったとき、親が最も陥りやすい誤解は「うちの子が怠けているのでは」という捉え方です。しかし、発達障害のある子どもの不登校は、怠けではなく全身で発している緊急のSOSサインです。
毎朝腹痛や頭痛を訴える、夜眠れない、食欲が落ちる、感情が爆発しやすくなる、こうした症状は、心のストレスが体に現れている証拠です。無理に登校させようとすれば、二次障害としてうつ状態や不安障害に発展するリスクもあります。
大切なのは、「行かせる・行かせない」の二択で考えず、「今、この子は何に耐えられなくなっているのか」を一緒に探る姿勢です。
子どもが安心して休めることこそ、回復への第一歩。休むことを許された子どもほど、自分のペースで次の一歩を踏み出せるようになります。
共働き家庭が直面する3つの壁|仕事・お金・子どもの居場所

【壁1】仕事を辞めるべき?続けるべき?親が抱える葛藤
共働き家庭で子どもが不登校になったとき、多くの親が最初にぶつかるのが「仕事を辞めるべきか」という重い問いです。
日中に子どもを一人にしておけない、付き添いが必要な面談が増える、子どもが情緒不安定で目が離せない、こうした状況が続くと、仕事を続ける罪悪感と、辞めたあとの不安が同時に押し寄せてきます。
しかし、結論を急ぐ必要はありません。短期的には休職や時短勤務などの制度を使って様子を見る選択肢もあります。
大事なのは、「今すぐ辞めなければならない」と思い込まず、選択肢を広げて考えることです。感情的に決めた決断は、後悔につながりやすい傾向があります。まずは会社の制度と家庭の状況を冷静に棚卸ししてみましょう。
【壁2】経済的な不安|支援サービスの費用と収入減のダブルパンチ
不登校対応で見落とされがちなのが、経済的な負担の大きさです。共働き家庭の場合、片方が仕事をセーブすれば収入が減り、同時に支援サービスの費用が増えるという「ダブルパンチ」が起こります。
たとえば、フリースクールの月謝は2万〜5万円、個別療育や家庭教師を利用すればさらに上乗せされます。通院や相談機関への交通費も積み重なります。
ただし、公的な支援制度を活用すれば負担を軽減できます。代表的なものを整理しておきましょう。
- 放課後等デイサービス:利用料の9割が公費負担(世帯収入に応じて月額上限あり)
- 自立支援医療制度:精神科通院の医療費が1割負担になる
- 特別児童扶養手当:一定の障害がある子どもを養育する保護者への手当
- 自治体独自の不登校支援助成金:市区町村によって制度あり
「知っているか知らないか」で家計への影響は大きく変わります。制度は申請しなければ使えないため、早い段階で自治体の窓口に相談することが重要です。
【壁3】日中の居場所がない|子どもだけの留守番問題
学校に行かない時間、親が働いている日中をどう過ごすか、これは共働き家庭にとって切実な問題です。
小学校低学年の子どもを一日中家で一人にするのは、安全面でも精神面でも大きな負担になります。かといって、親の勤務時間に合わせて毎日誰かが見守れる家庭も多くありません。
さらに、一人で過ごす時間が長くなると、生活リズムが乱れゲームや動画漬けになりやすく、昼夜逆転が固定化してしまうケースもあります。
この「居場所問題」は、親の努力だけで解決しようとすると必ず限界が来ます。だからこそ、放課後等デイサービスや適応指導教室、祖父母のサポートなど、外部の力を組み合わせて「日中を安心して過ごせる場所」を複数確保することがカギになります。
親が仕事を辞めることが逆に子どもの負担になるケースも
「子どものために仕事を辞める」一見、最も愛情深い選択に思えますが、実は逆効果になるケースも少なくありません。
親が仕事を辞めて家にいる時間が長くなると、子どもは「自分のせいでお母さん(お父さん)が仕事を辞めた」と敏感に感じ取ります。これが強い罪悪感となり、「早く学校に行かなきゃ」という焦りやプレッシャーにつながるのです。
また、親自身も社会との接点を失い、子どもの一挙一動に過剰に反応してしまい、家庭内の空気が重くなりがちです。収入減のストレスが夫婦関係に影響することもあります。
親が自分の人生を大切にしている姿を見せることは、子どもにとって「回復しても大丈夫」という安心材料になります。仕事を続けるか辞めるかは、愛情の大きさではなく、家族全体の持続可能性で判断する視点が必要です。
共働きでもできる!発達障害の子どもへの対応策

「夫婦どちらか一方」に頼らない体制をつくる
不登校対応で最も避けたいのが、母親か父親、どちらか一方だけが抱え込む状況です。片方に負担が集中すると、その親が燃え尽き、結果的に家族全体が共倒れになります。
理想は、役割を固定せず、その日の状況や仕事の繁忙に応じて柔軟に分担する体制です。たとえば、朝の見送りは父親、学校との連絡は母親、病院の付き添いは交代制、といった具合です。
また、夫婦だけでなく祖父母や信頼できる親戚、地域の支援者なども含めた「チーム」として考えることが重要です。一人の親が抱え込む構図から、複数の大人で支える構図へ移行することで、子どもも「自分を見守ってくれる人がたくさんいる」と感じられます。
在宅勤務・フレックスなど働き方を柔軟に調整する
共働きを続けながら子どもを支えるには、働き方そのものを見直すことが現実的な第一歩になります。
近年は在宅勤務やフレックスタイム、時短勤務、週休3日制など、柔軟な働き方の選択肢が広がっています。子どもが不登校になったタイミングで、一度勤務先の制度を棚卸ししてみましょう。
- 在宅勤務:日中子どもの様子を見ながら仕事ができる
- フレックス:学校相談や通院に合わせて勤務時間を調整できる
- 時短勤務:一時的に負担を減らし、回復状況に応じて戻せる
- 有給の時間単位取得:面談のためだけに半日休む必要がなくなる
制度があっても言い出しにくい職場もありますが、子どもの状況は長期戦になりやすいため、早めに上司へ相談しておくことがその後の選択肢を広げます。
子どもの特性を理解した声かけを心がける
発達障害のある子どもには、「普通の励まし」が逆効果になることがあります。良かれと思って「頑張れ」「みんなも大変なんだよ」と声をかけても、子どもにとっては追い詰められる言葉になりかねません。
特性を理解した声かけのポイントは、以下の通りです。
- 抽象的ではなく具体的に伝える:「ちゃんとして」ではなく「先に歯を磨こう」
- 過去と比較しない:「前はできたのに」は自己否定を強めるだけ
- 気持ちを否定せず受け止める:「嫌だったんだね」とまず共感する
- 選択肢を与える:「AとB、どっちがいい?」で自己決定感を育てる
「正しい言葉」を探すより、「子どもが安心できる言葉」を選ぶことが何より大切です。日々の小さな声かけが、傷ついた自己肯定感を少しずつ回復させていきます。
担任・特別支援コーディネーターと情報共有する
不登校対応を家庭だけで抱え込むのではなく、学校と連携することは非常に重要です。特に共働き家庭の場合、学校側に状況を正確に伝えておくことで、後々の対応がぐっとスムーズになります。
また、状況を担任の先生だけでなく、特別支援教育コーディネーターやスクールカウンセラーにも共有しておくと、学校として継続的に支援しやすくなります。
面談の際は、子どもの特性・家庭での様子・困りごとをメモにまとめて持参すると、限られた時間でも要点が伝わりやすくなります。
夫婦で「相談する」習慣をつくる
不登校対応では、夫婦間のすれ違いが大きなストレス要因になります。片方が「休ませるべき」と考え、もう片方が「甘やかしすぎ」と感じれば、子どもは家庭の中でも居場所を失ってしまいます。
大切なのは、意見が違うこと自体ではなく、「定期的に話し合う時間を持つこと」です。週に一度でも、子どもが寝た後に15分だけ情報交換する時間を作るだけで、方針のズレを早い段階で修正できます。
夫婦が同じ方向を向いている家庭ほど、子どもの回復も早い傾向があります。支える側が孤立しないことが、長期戦を乗り越える最大のポイントです。
共働き家庭が頼れる支援先と外部サービス

放課後等デイサービス|日中の居場所と療育を同時にかなえる
共働き家庭にとって最も心強い支援の一つが、放課後等デイサービスです。これは、障害のある子ども(手帳がなくても医師の意見書等で利用可能な場合あり)が放課後や休日、長期休暇中に通える福祉サービスです。
特徴は、単なる預かりではなく、療育(発達を促す専門的な関わり)が受けられる点にあります。社会性を育てるグループ活動、個別の学習支援、運動療育、SST(ソーシャルスキルトレーニング)など、施設ごとに多彩なプログラムが用意されています。
不登校の子どもも利用可能で、日中の居場所として通う子も増えています。料金は前述の通り公費負担があり、世帯収入に応じた月額上限が設定されているため、比較的利用しやすい制度です。
利用には受給者証が必要なので、まずは自治体の福祉窓口に相談するところから始めましょう。
フリースクール・適応指導教室(教育支援センター)の活用
学校に戻ることだけを目標にせず、子どもに合った学びの場を選ぶという考え方も広がっています。代表的な選択肢として、フリースクールと教育支援センター(旧・適応指導教室)があります。
フリースクールは民間が運営する施設で、子どもの興味や個性を尊重した柔軟な学びを行うところが多く、費用は施設によって差がありますが月数万円程度の例がよく見られます。発達特性に配慮したスクールもあります。
教育支援センターは自治体や教育委員会が設置する公的な支援の場で、原則として費用負担は少なく、在籍校との連携を前提に、状況によっては出席扱いにつながる場合があります。
どちらも見学や体験ができる場合があるので、子どもが「ここなら通えそう」と感じる場を一緒に探すことが大切です。
スクールカウンセラー・自治体の相談窓口
子どものことで悩んだとき、まず頼ってほしいのが、気軽に利用しやすい無料の相談窓口です。費用をかけずに専門家の意見を聞けるため、共働き家庭にとっても心強い存在です。
代表的な相談先を整理します。
- スクールカウンセラー:学校に配置される心理の専門家で、保護者からの相談も可能
- 発達障害者支援センター:都道府県・政令指定都市に設置され、発達障害の本人や家族の相談・支援を行う
- 子ども家庭支援センター:家庭環境や子育て全般の悩み、児童虐待などに対応
- 児童相談所:虐待、不登校、発達の悩みなど、より深刻なケースに対応する公的機関
「こんなことで相談していいのかな」と思うような小さな悩みこそ、早めに話すことで大きな問題になる前に気づきやすくなります。多くの相談窓口は無料で、守秘義務が原則にされているため、一人で抱え込まず、まずは相談してみることをおすすめします。
オンライン学習・通信教育で学びの遅れを防ぐ
不登校で保護者が最も心配するのが、学習の遅れです。しかし今は、家庭にいながら自分のペースで学べる仕組みがたくさんあります。
発達障害のある子どもに向いているのは、視覚的でゲーム感覚で進められる教材や、動画で繰り返し視聴できる講座です。代表的な選択肢は以下の通りです。
- タブレット教材:自動採点で達成感が得られる
- 映像授業:つまずいた単元に戻って復習できる
- オンライン家庭教師:発達障害に理解のある講師を選べるサービスも増加
- 不登校専門のオンラインスクール:学校の出席扱いになる場合もある
学習の遅れを取り戻すことより、「勉強は嫌なものではない」という感覚を取り戻すことが最優先です。子どもが興味を持てる教材を、無理のないペースで続けることが回復の近道になります。
まとめ

発達障害のある子どもの不登校は、怠けではなく特性と環境のミスマッチから生じるSOSです。共働き家庭では仕事・お金・居場所という3つの壁に直面しますが、親一人で抱え込む必要はありません。
働き方を柔軟に調整し、夫婦で役割を分担しながら、放課後等デイサービスや相談窓口、オンライン学習などの外部支援を組み合わせることで、共働きを続けながら子どもを支える体制はつくれます。完璧を目指さず、家族全体が持続可能な選択を重ねていきましょう。




