
「最近、子どもの様子がおかしい。些細なことで激しく怒ったり、逆に部屋に塞ぎ込んだり…」
そんな変化に戸惑い、「もしかして、私の育て方が間違っていたの?」と悩んでいませんか?
実はその不安定な状態は、反抗期や性格の問題ではなく、発達障害の特性ゆえに傷ついた心が上げている「SOS」かもしれません。
これが「二次障害」と呼ばれる状態です。
「障害」と聞くと怖くなるかもしれませんが、正しく対応すれば、子どもの笑顔は必ず取り戻せます。
この記事では、二次障害のサインを見極めるチェックリストや、家庭で今日からできる具体的な回復方法、頼れる専門機関についてわかりやすく解説します。
発達障害の「二次障害」って何?特性そのものではなく「環境との摩擦」が原因

「わがまま」でも「しつけ不足」でもない。誤解され続けたストレスの結果
「二次障害」と聞くと、何か新しい病気にかかってしまったのかと不安になるものです。でも、これはウイルスの感染や、親のしつけが原因で起こるものではありません。
発達障害の特性(一次障害)を持つ子どもが、周囲の環境とうまくなじめず、誤解や叱責を受け続けることで心が傷つき、心身に不調をきたした状態を指します。
つまり、子どもが「わがまま」だからでも、親の「愛情不足」だからでもなく、頑張りすぎた心が限界を迎えたサインなのです。
「なまけている」「やる気がない」と誤解されやすいですが、本人は誰よりも悩み、苦しんでいます。まずは「この子は今、傷ついているんだ」と理解することが、回復への第一歩となります。
一次障害(生まれつきの特性)と、二次障害(後天的な心の傷)の違い
ここで、もともとの特性である「一次障害」と、後から生じる「二次障害」を整理しておきましょう。
一次障害は、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)といった、生まれつきの脳のタイプのことです。
「じっとしているのが苦手」「空気を読むのが難しい」といった特性そのものは、その子の個性の一部であり、悪いことではありません。
一方、二次障害は、その特性が周囲に理解されず、否定され続けた結果として後天的に現れる症状です。うつ状態や不安障害、不登校、暴力といった問題行動がこれにあたります。
重要なのは、一次障害は治すものではありませんが、二次障害は環境を整え、心のケアをすることで予防や改善ができるということです。
特性を変えようとするのではなく、傷ついた心をいやすことに目を向けていきましょう。
「どうして自分だけできないの?」自己肯定感がボロボロになるメカニズム
では、なぜ二次障害は起きてしまうのでしょうか。
その最大の要因は、「自己肯定感の極端な低下」にあります。
発達障害の特性がある子どもは、学校や家庭で「どうして普通にできないの?」「何度言ったらわかるの!」と叱られる経験を積み重ねがちです。
みんなと同じようにやりたいのにできない、という挫折感を毎日味わい続けます。
すると、子どもは次第に「自分はダメな人間だ」「何をやってもうまくいかない」と自分自身を信じられなくなってしまいます。
この自信の喪失が、心のエネルギーを奪い、無気力やパニックといった二次障害の症状を引き起こすのです。
放置するとどうなる?早めの気づきが回復への近道
「そのうち治るだろう」「ただの反抗期かもしれない」と様子を見ているうちに、症状が悪化してしまうことがあります。
二次障害を放置すると、不登校が長期化したり、引きこもりや家庭内暴力へと発展したりするリスクが高まります。
また、大人になってからも「自分には価値がない」という思い込みが消えず、社会に出るのが怖くなってしまうケースも少なくありません。
しかし、怖がりすぎる必要はありません。早期に気づき、適切な対応をとれば、心の傷は必ず回復へと向かいます。
「これって反抗期?それとも…」見逃してはいけない子どものSOSサイン

自分を責めるタイプのSOS
二次障害のサインには、大きく分けて「自分を責めるタイプ」と「外に爆発するタイプ」の2つがあります。
まずは、自分の中にストレスを抱え込んでしまうサインを見てみましょう。
このタイプの子どもは、表面的にはおとなしく見えるため、親でも気づきにくいことがあります。
- 「お腹が痛い」「頭が痛い」と頻繁に訴える(特に朝)
- 表情が乏しくなり、以前好きだったことにも興味を示さない
- 爪を噛む、髪の毛を抜くといった癖が急にひどくなる
- 「どうせ僕なんて」「私なんていなくなればいい」とネガティブな発言が増える
- 部屋に閉じこもり、家族との会話を避けるようになる
これらは全て、言葉にならない「助けて」のサインです。
単なる体調不良や反抗期と片付けず、心の奥にある苦しみに目を向けてあげてください。
外に爆発するタイプのSOS
もう一つは、抱えきれないストレスを外に発散しようとするタイプのサインです。
こちらは行動が目立つため、「反抗的になった」「性格が悪くなった」と誤解されがちですが、これらもSOSの一種です。
- 些細なことで激しく怒り出し、手がつけられない(癇癪)
- 親やきょうだいに暴言を吐いたり、暴力を振るったりする
- 壁を叩く、物を投げるなどして壊す
- わざと親が嫌がることをして、反応を伺うような行動をとる
- 万引きや夜遊びなど、社会的なルールを破る行動に出る
こうした攻撃的な行動の裏には、「わかってほしい」「これ以上傷つけないで」という悲痛な叫びが隠されています。
叱りつけて行動だけを止めようとしても、根本的な解決にはなりません。まずは、その怒りのエネルギーが「不安の裏返し」であることを理解しましょう。
年齢別・SOSのサイン
子どもの年齢によっても、SOSの出方は変わってきます。
成長段階に合わせたサインを知っておくことで、より早く異変に気づけるようになります。
【幼児期~小学校低学年】
- 赤ちゃん返り(指しゃぶり、トイレの失敗など)が見られる
- 登園や登校を嫌がり、朝になると泣き叫ぶ
- チック症状(まばたき、咳払いなど)が出る
【小学校高学年~中学生】
- 学校の用意が進まない、宿題に手がつかない
- 友人関係のトラブルが増え、孤立する
- ゲームやネットにのめり込み、昼夜逆転の生活になる
【高校生以上】
- 完全な不登校や引きこもり状態になる
- 将来への絶望感を口にする、無気力で何もやる気が起きない
- 自傷行為(リストカットなど)が見られる
年齢が上がるにつれて、悩みは複雑になり、親に相談しにくくなる傾向があります。「大きくなったから大丈夫」と過信せず、日々の変化を観察することが大切です。
発達障害のタイプ別に見るストレスの出方
発達障害のタイプによっても、ストレスの感じやすいポイントや二次障害の傾向が異なります。
【ASD(自閉スペクトラム症)タイプ】
- ちゃんとやらなきゃ」と自分を追い込む
- 予定外のことが起きたり、マイルールが崩れたりするとパニックになりやすい
- 「0か100か」で物事を捉えるため、一度の失敗で全てを投げ出したくなる
【ADHD(注意欠如・多動症)タイプ】
- 衝動的な行動で叱られる回数が圧倒的に多く、自尊心を失いやすい
- 「何度言われても直せない自分」に絶望し、うつ状態になる
- イライラを抑えきれず、暴力や暴言といった形で爆発しやすい
「この子の特性が、今の環境でどう影響しているのか」という視点を持つことが、解決の糸口になります。
なぜ二次障害になってしまったの?子どもを追い詰める3つの原因

1. 過剰適応:学校で「普通の子」を演じすぎて、家でエネルギー切れ
「学校ではいい子にしてますよ」と先生に言われるのに、家では荒れている。そんなことはありませんか?
これは「過剰適応」と呼ばれる状態で、子どもが外で無理をして頑張りすぎている証拠です。発達障害の子どもにとって、集団生活は健常児の何倍ものエネルギーを使う戦場のような場所です。
周りから浮かないように、必死に「普通」を演じ、空気を読み、先生の指示に従おうと気を張り詰めています。
その結果、家に帰る頃には心のエネルギーが枯渇し、反動で暴れたり塞ぎ込んだりしてしまうのです。
家での姿こそが、限界まで頑張った後の「SOS」だと捉えてあげてください。
2. 失敗の積み重ね:「どうせやっても無駄」と自信を失ってしまう
私たちは、成功体験を積み重ねることで自信をつけていきます。
しかし、発達障害の子どもたちは、その逆の「失敗体験」を積み重ねてしまいがちです。
- 忘れ物をして先生に怒られる
- 友達の輪に入れず一人ぼっちになる
- 勉強についてもいけず、テストで悪い点をとる
こうした経験が日常的に繰り返されると、子どもは「学習性無力感」という状態に陥ります。
これは、「何をしてもどうせ失敗する」「自分には状況を変える力がない」と諦めてしまう心理状態です。
こうなると、新しいことに挑戦する意欲も湧かなくなり、無気力な状態が定着してしまいます。彼らに必要なのは、「もっと頑張れ」という励ましではなく、「今のままで大丈夫」という安心感と、小さな成功体験です。
3. 感覚過敏の苦しみ:周りには見えない「音・光・肌触り」のストレス
見落とされがちなのが、身体的な感覚の問題です。
発達障害の子どもの中には、音、光、匂い、触覚などに極端に敏感な「感覚過敏」を持つ子が少なくありません。
- 教室のザワザワした話し声が、耳元で叫ばれているような騒音に聞こえる
- 蛍光灯の光がまぶしすぎて、頭痛がする
- 体操服のチクチクした感触が耐えられない
これらは周囲には理解されにくく、「我慢が足りない」「神経質だ」と片付けられてしまうことがあります。
しかし本人にとっては、常に不快な刺激にさらされ続けている状態です。
この身体的なストレスが積み重なることで、イライラや体調不良が引き起こされ、二次障害へと繋がっていきます。「わがまま」ではなく「痛み」に近い感覚なのだと理解することが大切です。
今日からできる予防と回復方法

まずは「心の充電」が最優先。学校を休ませる勇気をもつ
子どもがSOSを出している時、最も大切なのは「休息」です。スマホの充電が切れたら何もできないように、心のエネルギーが切れた状態では、登校も勉強もできません。
しかし、学校に無理に行かせることは、骨折している足で走らせるようなものです。まずは「今は休む時期」と割り切り、安心して休める環境を作ってあげましょう。
「学校に行かなくていいから、ゆっくり休もう」と親が腹を括ることで、子どもは初めて心からリラックスできます。
焦らず充電期間を作ることで、結果的に回復への近道になります。
「できていないこと」より「できたこと」へ目を向ける
二次障害からの回復には、失われた自己肯定感を取り戻すことが不可欠です。そのために効果的なのが、ハードルを極限まで下げてほめることです。
- 朝、起きてきたこと
- ご飯を食べたこと
- 「おはよう」と挨拶できたこと
こういった「当たり前のこと」に注目し、「起きられたね」「食べてくれてうれしいな」と言葉にして伝えてください。
「できていないこと」を指摘して減点するのではなく、「できていること」を見つけて加点していくイメージです。
親からの肯定的な言葉のシャワーが、枯渇した子どもの心を満たしていきます。小さな「できた」の積み重ねが、やがて大きな自信へと繋がっていきます。
子どもの言い分を「否定せずに聞く」会話術
子どもが文句や不満を言ってきた時、つい「でもそれはあなたが悪いんでしょ」「言い訳しないの」と正論で返していませんか?
二次障害の状態にある子どもに必要なのは、アドバイスや説教ではなく「共感」です。まずは、子どもの言葉をそのまま受け止めてみてください。
「学校に行きたくない」と言われたら、「行きたくないんだね」とオウム返しをします。「先生が嫌いだ」と言われたら、「そうか、嫌いなんだね」と受け止めます。
否定も肯定もせず、ただ気持ちを認めるだけで、子どもは「自分の気持ちをわかってもらえた」と安心します。
「辛かったね」「大変だったね」という共感の言葉は、傷ついた心に効く一番の薬です。親が「味方」であると伝わることで、子どもは安心して本音を話せるようになります。
先生を味方につける。子どもが教室で「安心」して過ごすための環境調整
家庭でのケアと同時に、学校環境の調整も進めていきましょう。
担任の先生に子どもの特性や家での様子を伝え、連携してサポート体制を作ることが大切です。
- 座席を一番前にしてもらい、集中しやすい環境を作る
- クールダウンできる別室を用意してもらう
- 感覚過敏への配慮(イヤーマフの使用など)をお願いする
- 叱責するのではなく、できたことを褒めてもらうよう依頼する
「特別扱いをお願いするのは気が引ける」と思う必要はありません。これは「わがまま」を通すことではなく、子どもが学ぶ権利を守るための「合理的配慮」です。
スクールカウンセラーや特別支援コーディネーターも交えて相談すると、より具体的な対策が見つかりやすくなります。
外の刺激から離れてホッとできる場所づくり
子どもにとって、家庭は最後の砦であり、エネルギーを回復するための「安全基地」でなければなりません。
外の世界で戦って傷ついた子どもが、武装解除して羽を伸ばせる場所を作りましょう。
そのためには、家の中での「刺激」を減らし、「要求」を下げることです。
- テレビの音量を下げる、部屋の照明を少し暗くするなど、感覚刺激を和らげる
- 「宿題やりなさい」「お風呂に入りなさい」といった指示出しを極力減らす
- 子どもが一人になれるスペースや時間を確保する
子どもが好きなゲームや趣味に没頭している時は、邪魔をせずに見守ってあげてください。それが彼らにとっての癒やしの時間であり、心の回復に必要なプロセスです。
親だけで抱え込まないで。専門家とチームで支える方法

病院に行く目安は?医師や薬(服薬)との上手な付き合い方
「病院に行くべきかどうか」の目安は、「眠れない」「食欲がない」「自傷行為がある」など、命や健康に関わる症状が出ている場合は、早急に受診することをおすすめします。
児童精神科や心療内科では、子どもの話を聞くだけでなく、必要に応じて環境調整のアドバイスや薬の処方を行ってくれます。
薬に対して「怖い」「依存するのではないか」と抵抗感を持つ方もいるかもしれません。薬は、脳内の神経伝達物質のバランスを整え、辛い不安やイライラを和らげるための「補助輪」のようなものです。
一生飲み続けるものではなく、心が安定してくれば減薬や断薬も可能です。医師とよく相談し、お子さんが楽になるための選択肢の一つとして考えてみてください。
学校以外の居場所を見つける
学校が合わないと感じたら、無理に学校へ戻そうとするのではなく、別の居場所を探すのも一つの手です。
「放課後等デイサービス」は、発達障害のある子どもたちのための療育・居場所施設です。
ここでは、同じような悩みを持つ仲間と過ごしたり、ソーシャルスキルトレーニング(SST)を受けたりすることができます。
「学校だけが全てではない」と知ることは、子どもにとって大きな救いになります。
また、不登校の子どもたちが通うフリースクールや、地域の適応指導教室などもあります。勉強ができなくても、子どもが笑顔で過ごせる場所があれば、そこから自信を取り戻していくことができます。
複数の居場所を持つことは、精神的なリスク分散にもつながります。
「ペアレント・トレーニング」で関わり方のコツを学ぶ
「どう対応すればいいか分からない」と悩む親御さんにおすすめなのが、「ペアレント・トレーニング(ペアトレ)」です。
これは、親が子どもの特性を理解し、具体的な褒め方や指示の出し方、困った行動への対処法を学ぶプログラムです。
「しつけの勉強」ではなく、「親が楽になるための技術」を学ぶ場所です。具体的な対応スキルが身につくと、子育ての悪循環が断ち切られ、親子の笑顔が増えます。
自治体の保健センターや発達障害者支援センター、医療機関などで実施されているので、ぜひ問い合わせてみてください。
カウンセラーや相談機関の活用法
二次障害の悩みは、家庭内だけで抱え込むには重すぎます。親戚やママ友に相談しても、「甘やかしすぎじゃない?」などと理解のない言葉をかけられ、余計に傷つくこともあるでしょう。
だからこそ、プロの第三者を頼ってください。
- 発達障害者支援センター: 発達障害に特化した相談機関で、専門的なアドバイスが受けられます。
- 児童相談所: 子育て全般の悩みや、親子関係の調整について相談できます。
- スクールカウンセラー: 学校での様子を踏まえた具体的な助言をもらえます。
誰かに話を聞いてもらうだけで、張り詰めていた気持ちがフッと楽になることがあります。
「助けて」と言うことは、弱さではなく、子どもを守るための強さです。専門家とチームを組み、みんなでお子さんを支えていきましょう。
まとめ

発達障害の「二次障害」は、決して手遅れな状態ではありません。それは、子どもが一生懸命に生きようとして、環境との摩擦で傷ついた心のSOSです。
回復への道のりは、一進一退かもしれませんが、あせる必要はありません。
お子さんのペースで、少しずつエネルギーを充電していけば、必ずまた笑顔を見せてくれる日が来ます。
まずは今日、お子さんがそばにいてくれることに感謝し、「大好きだよ」と伝えてあげてください。




