ウィズ・ユー編集部 
子どもが発達障害と診断され、どうすれば良いか分からず、不安な日々を過ごされている親御さんも多いのではないでしょうか。
「普通に育てられなかった」と自分を責めたり、将来を案じて眠れない夜を過ごしたりしているかもしれません。
発達障害は「治る」という言葉で捉えるのではなく、その子の特性を正しく理解し、適切なサポートをすることで、本人がぐっと楽に生きられるようになります。
大切なのは、子どものありのままを認め、その子に合った環境を整え、自信を育んであげることです。
この記事を読めば、不安が少しずつ希望に変わり、今日から何ができるのか、具体的な関わり方のヒントがきっと見つかります。
「治る」の呪縛から抜け出そう。発達障害の正しい理解
発達障害は、風邪やケガのように薬を飲んだり手術をしたりして「治る」というものではありません。
なぜなら、発達障害は病気ではなく、生まれ持った脳の働きの違いによる「特性」だからです。
育て方やしつけが原因でなるものでは決してなく、親御さんが自分を責める必要は全くありません。
例えば、左利きの人が右手で字を書くのが難しいように、発達障害の子どもたちも、ある特定のことに対して苦手さを感じることがあります。
「治す」という考え方は、その子らしさを無理やり変えようとすることにつながり、かえって子どもを苦しめてしまう可能性があります。
大切なのは、「治す」のではなく、その子の特性を「活かす」という視点に切り替えることなのです。
【療育編】うちの子に合ったサポートを見つけるには？
代表的な療育のアプローチ
療育とは、子ども一人ひとりの発達の特性に合わせて、困難さを乗り越え、持っている力を最大限に伸ばすための専門的なサポートのことです。
治療というよりも、その子が社会でより良く生きていくためのスキルを学ぶ「トレーニング」と考えると分かりやすいかもしれません。
療育には様々なアプローチがあり、子どもの特性や年齢、目標によって最適な方法は異なります。
これから代表的な療育の方法をいくつかご紹介しますが、大切なのは「うちの子にはどれが合うだろう？」という視点で見ていくことです。
専門家と相談しながら、子どもが楽しく取り組めるサポートを見つけていきましょう。
応用行動分析（ABA）
応用行動分析（ABA）とは、子どもの「できた！」を増やして自信につなげる、科学的根拠に基づいたアプローチです。
この療育の目的は、望ましい行動をほめて増やし、パニックなどの不適切な行動が起こる原因を探って、起きないように環境を整えていくことにあります。
例えば、子どもができなくて困っている課題があれば、それをとても小さなステップ（スモールステップ）に分解します。
そして、一つひとつのステップがクリアできるたびに、すかさずほめたりご褒美をあげたりして、「やればできる」という成功体験を積み重ねていくのです。
この成功体験が、子どもの自己肯定感を育み、新しいことに挑戦する意欲を引き出します。
ソーシャルスキルトレーニング（SST）
ソーシャルスキルトレーニング（SST）は、子どもが周りの人たちと円滑な人間関係を築くための具体的な技術を学ぶプログラムです。
発達障害のある子どもは、相手の気持ちを読み取ったり、場の空気に合わせた言動をしたりすることが苦手な場合があります。
SSTでは、例えば「友達の遊びの輪に入りたい時、どう声をかけるか」「断られた時、どう気持ちを切り替えるか」といった具体的な場面を設定します。
そして、指導員と一緒にロールプレイング（役割演技）をしながら、適切な言葉遣いや行動を何度も練習していくのです。
このトレーニングを通して、社会のルールや人との心地よい距離感を学び、集団生活での自信をつけていきます。
作業療法（OT）
作業療法（OT）は、日常生活を送る上で基盤となる、様々な動作の改善を目指すリハビリテーションの一種です。
「作業」と聞くと仕事をイメージするかもしれませんが、食事や着替え、遊び、学習など、生活に関わる全ての活動が含まれます。
例えば、手先が不器用でボタンがうまく留められない、力の加減が苦手で字がうまく書けない、といった困りごとに対して専門的なサポートを行います。
また、特定の音や光、触覚などに過敏な「感覚過敏」を持つ子どもに対して、その刺激に慣れるためのトレーニングを行うこともあります。
作業療法士という専門家が、遊びを通して、子どもが楽しみながら身体の使い方を学べるように工夫してくれます。
言語療法（ST）
言語療法（ST）は、言葉によるコミュニケーションの困難さを支援する専門的なアプローチです。
「言葉」というと話すことだけを想像しがちですが、相手の話を聞いて理解すること、自分の気持ちを伝えること、そして文字の読み書きも含まれます。
例えば、特定の音が正しく発音できない「構音障害」や、言葉の発達がゆっくりな子どもへのトレーニングを行います。
また、「学習障害 文字 見え方」で検索された方のように、文字が歪んで見えたり、文章を読むのが極端に苦手だったりする「読み書き障害（ディスレクシア）」への支援も言語聴覚士の専門分野です。
専門家が子どもの状態を的確に評価し、その子に合った方法でコミュニケーションの土台作りをサポートしてくれます。
療育を受けられる場所
子どもに合った療育を見つけたいと思ったら、一人で抱え込まずに専門機関に相談することが第一歩です。
療育を受けられる代表的な場所には、以下のようなところがあります。
- 児童発達支援センター／事業所: 未就学の子どもを対象に、日常生活の自立支援や集団生活への適応訓練などを提供する身近な施設です。
- 放課後等デイサービス: 小学生から高校生までの就学児が、放課後や夏休みなどの長期休暇中に利用できるサービスです。学習支援やSSTなど、事業所ごとに特色があります。
- 医療機関（小児科、児童精神科など）: 医師の診断に基づき、病院内で作業療法（OT）や言語療法（ST）などの専門的なリハビリテーションを受けられる場合があります。
- 自治体の相談窓口（保健センター、子育て支援課など）: どこに相談すれば良いか分からない場合、まずはお住まいの地域の窓口で情報提供を受けるのがおすすめです。
まずは、お住まいの自治体の福祉窓口や、診断を受けた病院で相談し、見学などを通して、子どもが安心して通える場所を探してみてください。
【家庭編】今日からできる！子どもの「自信」を育む関わり方
環境を「見える化」する
発達障害のある子どもは、次に何が起こるのか分からない状況に強い不安を感じることがあります。
その不安を和らげる最も効果的な方法の一つが、生活のあらゆることを「見える化」して、見通しを持たせてあげることです。
例えば、朝起きてから学校に行くまでの手順を、イラストや写真を使ったカードで示し、順番に並べて壁に貼ってみましょう。
終わったカードを裏返したり、ボックスに入れたりすることで、子どもは「あと何をすれば良いか」が一目で分かり、安心して行動できます。
また、おもちゃや文房具など、物の定位置を写真でラベリングすることも有効です。
「どこに何があるか」「使ったらどこに戻すか」が視覚的に分かることで、自分で片付けをする習慣も身につきやすくなります。
「行動」を具体的にほめる
子どもの自己肯定感を育む上で、「ほめる」ことは非常に重要ですが、そのほめ方には少しコツがあります。
「すごいね」「えらいね」と漠然とほめるのではなく、どのような「行動」が良かったのかを具体的に言葉にして伝えてあげましょう。
例えば、子どもが遊び終わったおもちゃを片付けた時には、「えらいね」ではなく、「ブロックを箱に戻してくれて、お母さん助かるよ」と伝えます。
そうすることで、子どもは「何をすればほめられるのか」を明確に理解でき、次も同じように行動しようという意欲につながるのです。
この「具体的にほめる」という関わりは、子どもが自分自身の良いところに気づき、自信を持つための大切なステップとなります。
パニックは「成長のサイン」と捉える
子どもが突然かんしゃくを起こしたり、パニックになったりすると、親としてはどうして良いか分からず、途方に暮れてしまいます。
しかし、パニックは、子どもが言葉でうまく表現できない「助けて！」という心の叫びであり、決してあなたを困らせようとしているわけではありません。
むしろ、自分の気持ちを伝えようと必死になっている「成長のサイン」と捉えてみてください。
パニックが起きたら、まずは安全を確保し、子どもが落ち着くまで静かに寄り添いましょう。
そして落ち着いた後に、「さっきはびっくりしたね。何が嫌だったのかな？」と、パニックの原因を一緒に探ってあげることが大切です。
その原因が分かれば、次からはその刺激を避けたり、事前に子どもに伝えたりするなど、パニックを防ぐための対策を立てることができます。
「二次障害」を防ぐことこそ、親ができる最大のサポート
二次障害とは？
二次障害とは、発達障害の特性そのものではなく、その特性が原因で周りから繰り返し注意されたり、うまくいかない経験が続いたりすることで、後から生じてくる心や行動の問題のことです。
生まれ持った脳の特性が「一次障害」であるのに対し、環境とのミスマッチによって引き起こされる、いわば「二次的」な問題といえます。
具体的には、自信をなくしてうつ状態になったり、常に不安を感じる不安障害になったりすることがあります。
また、学校に行けなくなる不登校や、自分を守るために攻撃的な行動をとってしまう非行なども、二次障害の一つとして考えられています。
子どもの将来を考えた時、この二次障害を防ぐことは、親ができる非常に重要なサポートなのです。
なぜ二次障害が起きるのか？
二次障害が起きてしまう最大の原因は、本人の努力不足や性格の問題ではなく、周囲の無理解や不適切な対応にあります。
発達障害のある子どもは、悪気なく忘れ物をしたり、集中力が続かなかったり、相手を怒らせるようなことを言ったりすることがあります。
そのたびに周りから「なぜできないの」「またやったの」と叱られ続けると、子どもは「自分は何をやってもダメな人間なんだ」と思い込んでしまいます。
このような自己肯定感が著しく低い状態が続くと、物事への意欲を失い、心を閉ざしてしまいます。
つまり、子ども自身が抱える「生きづらさ」に誰も気づかず、適切なサポートが受けられないままでいることが、二次障害の引き金となってしまうのです。
二次障害を防ぐための3つのカギ
絶対的な味方でいること
二次障害を防ぐために最も大切なことは、親が子どもの「絶対的な味方」であり続けることです。
たとえ学校で失敗したり、友達とトラブルになったりしても、「お母さん（お父さん）だけは、何があってもあなたの味方だよ」という強いメッセージを伝え続けてください。
子どもは、自分には安心して帰れる場所がある、無条件に自分を受け入れてくれる存在がいる、と感じることで、外の世界で傷ついても立ち直る力を得ることができます。
結果や能力で評価するのではなく、子どもの存在そのものを丸ごと肯定してあげましょう。
その揺るぎない安心感が、子どもの自己肯定感の土台となり、困難に立ち向かう勇気を育みます。
スモールステップで成功体験を積ませること
自信を失いがちな子どもには、「やればできる！」という小さな成功体験を意図的に積ませてあげることが非常に効果的です。
いきなり高い目標を設定するのではなく、子どもが少し頑張ればクリアできるような、ごく簡単な課題（スモールステップ）を用意しましょう。
例えば、宿題が苦手な子どもなら、「全部終わらせる」のではなく、「まずは漢字を一文字だけ書いてみよう」と声をかけます。
そして、その一文字が書けたら、「すごい！書けたね！」と思いっきりほめてあげるのです。
この「できた！」という喜びの積み重ねが、苦手なことへの挑戦意欲を引き出し、「自分はダメじゃない」という自信を少しずつ取り戻させてくれます。
SOSをキャッチすること
子どもは、自分のつらさや困難さを、うまく言葉で表現できないことがよくあります。
そのため、親が子どもの発する小さな「SOS」のサインを敏感にキャッチしてあげることが重要です。
例えば、「お腹が痛い」「頭が痛い」といった身体の不調を頻繁に訴える、大好きだったゲームに興味を示さなくなる、爪を噛むなどの癖が出始める、といった変化は、何らかのストレスを抱えているサインかもしれません。
そのような変化に気づいたら、「最近、何か嫌なことあった？」と、子どもの気持ちに寄り添い、話を聞く時間を作ってみてください。
問題が大きくなる前に早期に対応することが、二次障害の予防につながります。
その子の「好き」が、未来を照らす「才能」になる
「苦手」は工夫で乗り越え、「好き」は最強の武器になる
発達障害のある子どもを育てる上で、つい「苦手」なことを克服させようと躍起になってしまうことがあります。
しかし、視点を変えてみてください。苦手なことは、無理に人並みにさせようとするのではなく、便利な道具を使ったり、周りの人に助けてもらったりと、「工夫」で乗り越えることができます。
それ以上に大切なのは、その子が持つ「好き」なことや「得意」なことを、思いっきり伸ばしてあげることです。
好きなことに対して発揮される驚異的な集中力や、ユニークな発想力、あきらめない探求心は、やがて他の誰にも真似できない「才能」という最強の武器になります。
「苦手」を平均点に引き上げる努力よりも、「好き」を突き詰めて120点を目指す方が、子どもの未来は遥かに明るく輝くのです。
特性が「強み」になる仕事の例
発達障害の特性は、環境や仕事内容によっては、唯一無二の「強み」として発揮されることがあります。
子どもの将来を具体的にイメージできるよう、特性が才能として活かされやすい仕事の例をいくつかご紹介します。
| 特性の例 | 強みとして活かせる点 | 向いている仕事の例 |
| こだわりが強い・探求心が旺盛 | 専門分野を深く掘り下げ、正確で質の高い仕事ができる | 研究者、プログラマー、経理、職人、校正者 |
| 好奇心旺盛・行動力がある | 新しいアイデアを次々と考え、失敗を恐れず挑戦できる | 起業家、営業職、ジャーナリスト、イベントプランナー |
| 視覚優位・独創的な発想力 | 物事を映像やイメージで捉え、ユニークなものを生み出す | デザイナー、アーティスト、建築家、映像クリエイター |
| 聴覚優位・音への敏感さ | 細かな音の違いを聞き分けることができる | 音楽家、調律師、声優、音響エンジニア |
もちろん、これはあくまで一例です。大切なのは、子ども自身が何に興味を持ち、どんなことなら夢中になれるのかを見つけてあげることです。
子どもの「才能の芽」を育むために今できること
子どもの「好き」という気持ちを、未来の「才能」へと育むために、家庭でできることはたくさんあります。
まず、子どもが夢中になっていることを、決して否定せずに、温かく見守ってあげてください。
そして、可能であれば、その「好き」を親子で一緒に楽しんでみましょう。子どもは、自分の好きなことを一番身近な親が認めてくれるだけで、大きな自信を得ることができます。
焦らず、子どものペースを大切にしながら、才能の芽が大きく花開く日を信じて応援してあげましょう。
まとめ
子どもが発達障害と診断され、今はただただ不安で、暗闇の中にいるような気持ちかもしれません。
しかし、発達障害は「治す」ものではなく、その子の素晴らしい個性を「活かす」ことで、未来は大きく変わっていきます。
大切なのは、親であるあなたが「治らない」と絶望するのではなく、「この子だけの才能がある」と信じてあげることです。
療育でスキルを学び、家庭で自信を育み、二次障害を防ぐ関わりを続けることで、子どもは自分らしく輝ける道を必ず見つけ出します。
そして、どうか「育て方のせいだ」と自分を責めないでください。あなたは一人ではありません。
この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、子どもと共に前を向くための希望の光となれば、幸いです。
