
「うちの子、他の子より勉強で苦労しているみたい… これってただの苦手なだけ?」
「親として何をしてあげればいいのか、具体的な方法が分からない…」
「もしかして学習障害? 私の育て方に問題があったの?」
そんなふうに、一人で悩んでいませんか?
学習障害は、その子の努力不足や親の育て方が原因ではありません。でも、周りからは分かりにくいため、「怠けている」と誤解されたり、どうサポートすれば良いのか分からなかったりと、正しい情報や具体的な対応策を見つけるのは難しいものです。
この記事では、学習障害の基本的な知識から、誤解されがちな原因、お子さんのタイプ別の特徴、そしてご家庭でできる具体的なサポート方法(声かけ、環境づくり、効果的な勉強の教え方)まで、丁寧に解説します。
お子さんが自信を持って学べるようになり、親御さん自身の不安も軽くなる、そんな親子関係を築くためのヒントを、ぜひこの記事で見つけてください。
学習が苦手な子どもは学習障害?

勉強についていけない…子どものサインを見逃さないで
子どもの様子を見て、「もしかして学習障害かもしれない」と感じる場面は多くあります。
とくに、学校から戻ったときに極端に疲れていたり、宿題にまったく手がつかなかったりする姿は見逃しがちです。心配になる一方で、「ただの勉強嫌いかもしれない」と思ってしまい、対策を後回しにしていることも少なくありません。
ただし、何が原因で勉強がうまくいかないのか、まずは子どもの行動や言動からヒントをつかむことが重要です。子どもに以下のような言動がないかチェックしてみましょう。
・宿題に対して極度の拒否感を示す
・読み書きや計算の課題だけ、特別に時間がかかる
・教科書の内容を読んでいるのに内容を理解できない
こうしたサインは学習障害を早期に疑うきっかけになることがあります。そこで最初の段階では、「子どもがどんなところで苦戦しているか」を一緒に確認し、つまずきの具体的な要因をつかむことが大切です。
学習障害かも?と感じたときに確認すべきこと
学習障害が疑われる場合、焦りは禁物です。まずは、子どもの学力全体というよりも、特定の科目や課題で著しい困難があるかどうかをしっかり観察してください。
読むのは得意でも書くのは苦手なのか、それとも文字全般に苦手意識があるのかなど、どこにつまずきがあるのかで対応方法が変わります。加えて、過去の成績表や学校での評価、習い事などの取り組み状況を振り返ると、「昔から読み上げがうまくできなかった」などの共通点が見えてくることもあるでしょう。
学校での様子を知るために、担任の先生に相談してみるのも良い方法です。家庭での様子と学校での様子を合わせて考えることで、より深く子どもの状況を理解できます。
学習障害は「親のせい」?誤解されがちな原因について
「自分の育て方が悪かったのかもしれない」と悩む親御さんは多いです。
しかし、学習障害は脳の情報処理の特性によるもので、親のしつけや家庭環境が原因ではないと考えられています。まわりから「しっかり教えないからだ」と言われ、辛い気持ちになることもあるかもしれませんが、学習障害は、その子の個性や特性の一つと捉えることが大切です。
「私のせいかも…」と悩む時間を、子どもの特性を理解し、どうすればその子が学びやすくなるかを考える時間に変えていきましょう。正しい知識を持つことで、不要な誤解や罪悪感から解放され、前向きな気持ちで子どもと向き合えるようになります。
学習障害の特徴

読字障害(ディスレクシア):文字を読むのが苦手
文字を読むことにとくに困難さを抱えている場合、「読字障害(ディスレクシア)」の可能性があります。読字障害の子どもは、教科書を読んでも内容を把握できないため、学習意欲が低下してしまうことが多いです。
文字の並びが混乱して「単語が逆さまに見える」「単語を途中で飛ばして読む」などの症状が出ることも報告されています。これらの困難さは、本人の努力不足や練習不足が原因ではありません。脳の文字情報を処理する部分の働き方に違いがあるためと考えられています。
周りからは「ふざけている」「やる気がない」と誤解されがちですが、本人は一生懸命読もうとしているのに、うまくできないことで苦しんでいることが多いのです。
書字表出障害(ディスグラフィア):文字を書くのが苦手
文字を書くときに、形が乱れたり、スペース配分がうまくいかなかったりする場合は、書字表出障害(ディスグラフィア)にあたる可能性があります。
ディスグラフィアの子どもは、文字を「見る」ことや、言葉を「話す」ことは問題なくても、それを「書く」という作業に困難が生じます。これも脳機能の特性によるもので、練習すれば必ずきれいに書けるようになる、というわけではありません。書くことへの強い苦手意識から、宿題やノートをとることを嫌がるようになる子もいます。
親としては、文字の形よりも「考えを伝えたい気持ち」を尊重し、書く以外の表現方法も積極的に認めることが大切です。
算数障害(ディスカリキュリア):計算や数の理解が苦手
数の概念を理解したり、計算したりすることが、他の学習に比べて著しく難しい場合、「算数障害(ディスカリキュリア)」が考えられます。
ディスカリキュリアの子どもは、知的な遅れはないものの、算数や数学に関わる能力に困難を抱えています。「10より大きい数」と言われてもイメージできなかったり、計算式を覚えても実践の場面で使いこなせなかったりするのが特徴です。
算数以外の教科は問題なくこなせることも多いため、「算数だけができないのは、努力が足りないからだ」と誤解されてしまうこともあります。しかし、これも脳の数や量を処理する部分の働き方の違いによるもので、本人の頑張りだけでは解決しにくいでしょう。
家庭でできる学習障害のサポート方法

子どもの自己肯定感を育む声のかけ方
学習につまずきがちな子どもにとって、何よりも大切なのは「自分はダメじゃないんだ」と思える気持ち、つまり自己肯定感を育むことです。
そのために、大人からの温かい声かけは、何よりの応援になります。大切なのは、テストの点数や結果だけを評価するのではなく、子どもが頑張っているプロセスや、ほんの少しの成長を見つけて具体的にほめてあげることです。
そこで、まずは小さな成功体験にスポットを当て、「よく頑張ったね」「少し前より早く解けたね」と日々の前進を評価する声かけがポイントです。大きな成果がなくても、努力の過程に目を向けてみてください。
集中できる空間づくりのヒント
勉強に集中できないのは、本人のやる気だけの問題ではなく、周りの環境が影響していることも少なくありません。とくに学習障害のある子どもは、視覚や聴覚からの刺激に敏感な場合があるので、集中しやすい環境を整えてあげる工夫が大切です。
部屋のなかが散らかっていたり、テレビの音が聞こえたりすると、注意が散漫になりやすいです。まず、勉強する机の上や周りには、できるだけ勉強に関係のないものを置かないようにしましょう。
ただし、あまりにも隔離された空間だと不安を感じる子どももいるので、様子を見ながら、一緒に「集中できる場所」を探していくのがおすすめです。
勉強を嫌がる子どもへの効果的なアプローチ方法
勉強自体を強制すると、「どうせやってもできない」と子どもが感じてしまい、抵抗感がますます強まることがあります。なるべく「やらなきゃいけない」という否定的な雰囲気ではなく、「少し試してみようか」という前向きな空気を作ることが大切です。
具体的には、学習時間を短い単位に区切り、子どもが飽きる前に小休止をはさむ方法が効果的です。15分勉強して5分休むように設定すると、負担感が減り、集中力を保ちやすくなります。
また、子どもが成果を実感しやすい簡単な問題から取り組むと、「できるかも」という思いが生まれやすいでしょう。焦らず、子どものペースに合わせて、学習へのハードルを下げていきましょう。
読み書きが苦手な子へのサポート方法
文字の読み書きが苦手な子どもには、読む・書く以外の方法も活用しながら、学習の負担を減らしてあげる工夫が必要です。文章を音声で読み上げながら、指でなぞって文字を確認すると、記憶に定着しやすくなることがあります。
また、行間を広めに取り、文字を大きく印刷したプリントを使うだけでも、読みやすさは大幅に向上します。書く作業に関しては、無理に手書きをさせるのではなく、キーボード入力やタブレットの手書き機能を活用する方法もおすすめです。一つ一つのステップを確実に理解できているかを確認しながら、スモールステップで進めていきましょう。
計算が苦手な子へのサポート方法
算数が苦手な子には、視覚や体感を通じて数字や計算式の意味を理解させる工夫が効果的です。
具体的な例としては、ブロックや積み木などを用いて、数のまとまりを触りながら実感してもらう方法があります。
足し算であれば実際にブロックを追加していき、引き算ならブロックを取り除くなど、手を動かすことで「計算のプロセス」を体得しやすくなるわけです。
小数点や分数が絡む場合は、ピザやケーキなど身近なものを例に挙げて視覚的にイメージさせると、抽象的な数字が現実と結びつきやすくなります。
一度に難しい計算をまとめて解かせるのではなく、1問ずつ理解してから次に進むスモールステップを大切にしてください。
こうした段階的なサポートにより、子どもは計算への苦手意識を徐々に克服していくことができます。
学習障害の子どもへの勉強の教え方

子どもの特性に合わせた学習計画の立て方
学習障害のある子どもの力を最大限に引き出すためには、画一的な方法ではなく、その子の個性や得意・不得意に合わせたオーダーメイドの学習計画が不可欠です。まずは、子どもの特性をしっかり把握することから始めましょう。
すべてを同時に克服するのは難しいので、「今週は読み方を中心に」「来週は計算の基礎をメインに」というように目標を分割するのが理想です。さらに、学習のペース配分も子どもの集中力に合わせることが重要です。
短い時間を区切って休憩を入れる方式や、週末にまとめて取り組む方式など、子どもが無理なく続けられるスタイルを探してみてください。学習の進捗状況を記録に残し、少しでも進歩した部分を目に見える形で共有すると、「自分にもやれる」というモチベーションにつながります。
視覚的なサポートを活用した勉強の教え方
言葉による説明だけでは理解しにくいことも、図やイラスト、色などの目で見てわかる情報を効果的に使うことで、学習障害のある子どもの理解をぐっと深めることができます。
口頭での説明に加えて、これらの視覚的な手がかりを提示することで、子どもは情報を整理しやすくなり、「わかった!」という感覚を得やすくなります。どのような視覚的サポートが子どもに合っているかは、実際に試しながら見つけていくのがよいでしょう。
パワーポイントや簡単な作図アプリなどを使うと、手軽に視覚的な教材を作成することもできます。
ゲーム感覚で楽しく学べる工夫を取り入れる
「勉強=つまらない、やらされるもの」というイメージを、「勉強=楽しい、やってみたい!」に変える魔法、それが「ゲーム感覚」を取り入れる工夫です。
とくに学習に苦手意識を持っている子どもにとって、楽しみながら学べる仕掛けは、モチベーションを大きく引き上げてくれます。子どもの好きなキャラクターを登場させたり、好きなテーマ(電車、恐竜など)を学習内容に絡めたりするのも効果的です。
大切なのは、大人も一緒に楽しむことです。「勉強しなさい!」ではなく、「一緒にこのゲームやってみない?」というスタンスで誘ってみてください。
「できた!」を増やすスモールステップの設定方法
高い目標を前にすると、大人でも「できるかな…」と不安になります。学習に困難を抱える子どもなら、なおさらです。
最初から難易度の高い目標を立てると、挫折感が大きくなってしまいます。そこで、ほんの少しでも達成しやすい「スモールステップ」をこまめに設定してあげることが重要です。
例えば読み書きの練習なら、1行を完璧に読むのではなく、「文の最初の3文字だけ正確に読める」を合格ラインにするなど、ハードルを下げましょう。
スモールステップをクリアできたら、すぐに「よくがんばったね」「前よりスムーズに読めたね」と伝えると、子どものやる気は大きく高まります。この小さな「できた!」の積み重ねが、子どもの自信と「次もやってみよう!」という意欲を育てていきます。
発達障害の子どもが勉強でつまずきやすいポイント
学習障害が自閉症スペクトラムやADHDなど、ほかの発達障害と併存しているケースもあります。その場合、集中力の維持やコミュニケーション上の行き違いなど、複数の困難が同時に影響してくることがあります。
とくに、授業中に落ち着いて座っていられない、先生の話を聞き逃す、指示を見落とすなどの特性が重なると、勉強の遅れがさらに顕著になるかもしれません。周囲の子どもと同じペースを求めず、授業時間だけでは理解しきれない可能性を踏まえて追加のフォローが必要です。
また、提出物を忘れてしまうなどのミスも多いため、宿題やプリントを保管するルールづくりを親子で話し合い、サポート方法を工夫するとよいでしょう。子どもの様子をよく観察し、それぞれの特性に合わせた配慮を考えていくことが大切です。
一人で悩まずにサポートを活用するポイント

担任教師と情報を共有する
子どもの学習をサポートしていく上で、学校との連携、とくに担任の先生との情報共有は非常に重要です。家庭での様子と学校での様子、両方を把握することで、より効果的なサポートが見えてきます。
学校側では授業やテストの様子など、家庭では見えにくい子どもの姿を観察しています。「家では勉強に集中できない」「特定の科目だけ極端に苦手」などといった情報を正確に伝えれば、配慮した教材や課題、補助スタッフの活用などを検討してもらえるでしょう。
担任教師が理解を深めてくれれば、授業中の席替えや休み時間のサポート、評価方法の見直しなど、子どもに合った調整を提案してくれるケースもあります。学期ごとに面談を設定して、現在の状況や取り組んでいる工夫を共有し合うと、家と学校の双方で子どもをサポートしやすくなります。
スクールカウンセラーや特別支援コーディネーターに相談する
学校にはスクールカウンセラーや特別支援コーディネーターが配置されていることがあります。これらの専門家は、発達障害や学習障害に関する知識を持ち、親と教師をつなぐ役割を果たしてくれます。
子どもの心理面にも配慮しながら、家族の悩みを聞いてくれる点も大きなメリットです。子どもがカウンセリングを受けることで、勉強に対する不安や劣等感が和らぎ、学習への意欲が回復することも少なくありません。
一人で抱え込まずに、学校にいる専門家の力を借りることも考えてみましょう。きっと心強い味方になってくれるはずです。
放課後等デイサービスなどの外部支援を活用する
学校が終わった後や、夏休みなどの長期休暇中に、学習障害など発達に特性のある子どもたちをサポートしてくれる「放課後等デイサービス」という福祉サービスがあります。学校とはまた違った視点から、子どもの成長を支援してくれる心強い存在です。
放課後等デイサービスでは、専門スタッフが子どもの特性に合わせた学習・生活指導を提供し、社会性やコミュニケーション力の向上をサポートしてくれます。見学や体験利用ができる事業所も多いので、まずは子どもと一緒にいくつか見に行ってみて、雰囲気やプログラム内容が合いそうなところを探してみるのがおすすめです。
医療機関に相談する際に知っておくべきこと
学習の困難さが顕著で、学習障害の可能性が高いと感じられる場合や、他の発達障害との関連も考えられる場合には、医療機関に相談することも選択肢の一つです。
どの科を受診すればよいか迷うかもしれませんが、まずはかかりつけの小児科医に相談してみるか、あるいは児童精神科、発達外来などを探してみましょう。
医療機関で診断を受ける目的は、単に「学習障害」という名前を付けることではありません。子どもの困難さの原因となっている特性を医学的な視点から理解し、より適切な支援や配慮につなげていくためのものです。
診断はゴールではなく、子どもに合ったサポートを見つけていくためのスタートラインと捉えましょう。医師からのアドバイスは、学校や家庭での支援を考える上で、とても役立つ情報になります。
発達障害者支援センター
発達障害に関する専門的な相談に応じ、様々な支援を行っている公的な機関として「発達障害者支援センター」があります。各都道府県および指定都市に設置されており、発達障害のある本人や家族、関係機関からの相談を無料で受け付けています。
「専門的なアドバイスが欲しい」と感じたときに、まず頼れる相談先の一つです。医療、保健、福祉、教育、労働などの関係機関と連携しながら、一人ひとりの状況に合わせた支援計画の作成などもお手伝いしてくれます。
居住地域の発達障害者支援センターの場所や連絡先は、インターネットで検索したり、市区町村の福祉窓口で尋ねたりすることで確認できます。
精神保健福祉センター・保健所
より身近な相談窓口として、地域の「精神保健福祉センター」や「保健所」も活用できます。
おもに心の健康や精神的な問題に関する相談を幅広く受け付けており、子どもの発達に関する相談にも対応しています。
他機関とのネットワークが充実しているので、「どこに相談すべきかわからない」ときの窓口として利用しやすいです。また、親自身がストレスを感じている場合に、カウンセリングの案内を受けられることもあります。
どちらの機関にも、医師、保健師、精神保健福祉士、臨床心理士などの専門職が在籍しており、子どもの発達の遅れや学習面での心配事、育児の悩みなどについて相談できます。
市区町村の福祉窓口
市区町村の役所にある福祉担当の窓口も、困ったときに頼りになる身近な相談先です。担当する課の名称は自治体によって異なり、「障害福祉課」「子育て支援課」「こども家庭課」など様々ですが、子どもの発達や学習に関する相談を受け付けています。
「学習障害かもしれないけれど、まず何から始めればいいの?」「どんな支援が受けられるの?」といった疑問がある場合に、最初に訪ねてみる窓口として適しています。
また、自治体独自の支援制度があるケースもあるので、こまめに情報を収集して活用してみてください。
教育関連の相談窓口
学校教育に関する悩みや、就学に関する相談については、教育委員会や教育センターといった教育関連の専門窓口も頼りになります。学校での配慮だけでは難しい場合や、より専門的な教育支援が必要だと感じた場合に相談してみましょう。
学区内で利用できる特別支援教室の情報や、研修を受けた先生の紹介を受けられることもあります。必要に応じて、担任教師やスクールカウンセラーと連携し、授業や評価方法の改善策を検討してくれるところも少なくありません。
学校での学習や生活について、担任の先生やスクールカウンセラーに相談しても解決が難しい場合や、より客観的・専門的なアドバイスが欲しい場合に活用を検討してみるとよいでしょう。
まとめ

学習障害を持つ子どもが安心して学習を続けられるには、家庭や学校、医療機関、地域の支援体制が連携してサポートすることが大切です。
子どもが勉強でつまずく場面があっても、特性を理解し、無理のないステップで支援を続ければ、「少しずつでも前に進める」という自信につながりやすくなります。
「勉強ができないのは親の責任」といった誤解を解き、子どもを取り巻く環境全体で温かく見守る姿勢を整えていくことが大事です。
公的な相談窓口や専門機関を活用すれば、悩みを一人で抱え込む必要はありません。
さまざまな方法を試しながら、子どもの特性を生かした学習スタイルを確立していくことで、子どもが自分らしく学びを楽しめる未来が広がっていきます。