発達障害のある子の中学受験、どう進める?学校選びのポイントやサポートまで解説

制服を着て勉強している男の子

発達障害のある子どもの中学受験について、「本当にこの子のためになるのだろうか」「無理をさせてしまうだけではないか」と、一人で悩みを抱えていませんか。

周りが受験モードに入る中、情報が少なく、誰に相談すれば良いのか分からず、不安な気持ちでいっぱいかもしれません。

この記事では、そのような親御さんの不安に寄り添い、発達障害のある子どもの中学受験を成功に導くための具体的なステップを、網羅的に解説します。

この記事を読み終える頃には、漠然とした不安が「これなら親子で挑戦できるかもしれない」という前向きな希望に変わっているはずです。子どもの輝かしい未来への第一歩を、一緒に踏み出しましょう。

発達障害の子どもが中学受験を選ぶ理由

勉強する女子高校生

発達障害の特性に合った環境を求めて

子どもの特性にピッタリ合った環境を求めて、中学受験という選択をする人がとても増えています。公立中学校は地域の子どもたちが集まるため、多様な生徒がいる一方、授業スタイルやルールは画一的になりがちです。

ですが、私立中学校には、少人数制で手厚いサポートが受けられたり、探求学習のようなユニークなカリキュラムがあったりと、学校ごとに特色豊かな教育が行われています。

子どもの「好き」や「得意」を存分に伸ばせる環境や、苦手なことをしっかりサポートしてくれる体制が整った学校を見つけられる可能性が、中学受験には広がっているのです。

高校受験の負担を軽減するため

高校受験で大きなカギとなる「内申点」のプレッシャーから、子どもを解放してあげられるというのも、中学受験を選ぶ大きな理由の一つです。内申点とは、テストの点数だけでなく、授業態度や提出物なども評価される成績のことで、発達障害の特性上、苦手と感じる子どもが少なくありません。

中高一貫校に進学すれば、この高校受験がないため、内申点を過度に気にすることなく、のびのびと6年間の学校生活を送ることができます。目の前の勉強だけでなく、長い目で見て子どもが安心して自分のペースで学べる環境を選んであげられるのは、大きなメリットと言えるでしょう。

新しい人間関係を作るため

小学校での人間関係に少し悩みを感じている場合、中学受験は環境をリセットして、新たなスタートを切る絶好のチャンスになります。新しい環境では、これまでの自分を知る人がいないため、まっさらな状態から友達作りを始めることができます。

特に、中学受験で入る学校には、同じような興味や目標を持つ仲間が集まりやすいという特徴があります。共通の話題で盛り上がれる友達と出会うことで、子どもが「自分らしくいられる」と感じられ、自信を持って学校生活を送るきっかけになるかもしれません。

発達障害のある子どもが中学受験に挑戦するメリット

笑っている女子高校生

特性に合った学校選びができる

中学受験の最大のメリットは、偏差値という一つのものさしだけでなく、子どもの特性という大切な軸で学校を主体的に選べる点にあります。例えば、探求心が旺盛な子どもなら、実験やフィールドワークが豊富な学校、一つのことにじっくり取り組むのが好きなら、ゼミ形式の授業がある学校といった視点で選べます。

公立中学校のように決められた学区に進むのではなく、子どもの「好き」や「得意」が輝く場所はどこだろう、と親子で一緒に探せるのです。これは、子どもの個性を最大限に尊重し、才能を伸ばすための、最高の機会だと言えるでしょう。

学力差によるストレスの軽減が期待できる

学力レベルがある程度そろった生徒が集まる環境で学べるため、授業についていけない」というストレスを感じにくいのも、中学受験の大きなメリットです。公立中学校では、どうしても学力に大きな幅が生まれがちで、授業が簡単すぎたり、逆に難しすぎたりすることがあります。

その点、受験を経て入学する私立中学校では、学力レベルが近い生徒が集まるため、授業のペースが合いやすい傾向にあります。「自分だけできない」という劣等感を抱くことなく、「みんなと一緒に頑張れる」という安心感が、子どもの学習意欲を支えてくれるでしょう。

新しい環境で自己肯定感が上がる

中学受験という大きな目標に向かって努力し、それを乗り越えたという経験は、子どもの自己肯定感を大きく育ててくれます。自己肯定感とは、「ありのままの自分でいいんだ」と自分を大切に思える気持ちのことです。

受験勉強は決して楽な道ではありませんが、その過程で得られる「自分はこんなに頑張れるんだ」という実感は、何にも代えがたい財産になります。そして、自分に合った学校という新しい居場所を見つけることで、「自分はここで認められている」と感じられ、大きな自信につながっていくのです。

発達障害のある子どもが中学受験に挑戦するデメリット

机で寝ている生徒

受験勉強の負担がかかる

発達障害の特性によっては、中学受験の勉強が大きな負担になってしまう可能性があることは、覚悟しておく必要があります。

例えば、長時間じっと座って集中することや、複数の教科を計画的に進めること、大量の情報を暗記することなどが、特性上とても苦手な子どももいます。

保護者が「勉強しなさい!」とあせるほど、子どもはプレッシャーを感じてしまい、親子関係までギクシャクしてしまうことも少なくありません。子どものペースを無視して無理強いしてしまうと、勉強そのものが嫌いになってしまう危険性もあるため、注意が必要です。

学校選びが難しい

子どもに最適な学校を見つけ出すためには、膨大な情報を集めて比較検討する必要があり、これが非常に難しい作業になることがあります。学校のホームページやパンフレットだけでは、発達障害への具体的な支援体制や、実際の校内の雰囲気まではなかなかわかりません。

多くの学校説明会に足を運んだり、時には学校に直接電話をして個別の相談をしたりと、かなりの時間と労力がかかってしまうのが現実です。「配慮します」という言葉だけでなく、本当に信頼できるサポートが受けられるのか、その見極めがとても重要で、保護者の負担も大きくなります。

授業についていけない可能性がある

頑張って志望校に合格できたとしても、入学後、学校の授業スタイルが子どもの特性に合わず、ついていけなくなる可能性も考えておく必要があります。例えば、授業の進度が非常に速かったり、先生が話す内容を素早くノートに書き写す「板書」が中心だったりすると、情報の処理が追いつかないことがあります。

また、グループでのディスカッションや発表が多い授業では、コミュニケーションが苦手な子どもは、大きなストレスを感じてしまうかもしれません。入学がゴールではありませんから、入学後の3年間を楽しく過ごせるかどうか、学習環境をしっかり見極めることが大切です。

中学受験に踏み出す前親子で確認すべきこと

みんなで勉強している家族

子どもの意思を確認する

中学受験という長い道のりを走り抜くためには、何よりもまず、子ども自身の「この学校に行きたい!」という強い気持ちが大前提になります。親御さんの「子どもの将来のために」という熱意だけで話を進めてしまうと、子どもはやらされていると感じ、勉強へのモチベーションが続きません。

なぜ中学受験をしたいのか、その学校で何をしたいのか、子どもの言葉で話せるようになるまで、じっくりと対話する時間を持つことが不可欠です。あくまで主役は子ども自身であり、親は一番の応援団長なのだというスタンスを忘れないでください。

子どもの特性を客観的に把握する

感情に流されず、子どもの「得意」と「苦手」を客観的に整理することが、支援を考えるうえでの第一歩です。例えば「集中力は抜群だけれどケアレスミスが多い」と気づいたら、紙に長所と短所を書き出してみましょう。

まとめ方の例は次のとおりです。

得意なこと

  • 好きなことへの集中力が高い
  • 記憶力が良い
  • 探求心が旺盛
  • こだわりが強い

苦手なこと

  • スケジュール管理が苦手
  • ケアレスミスが多い
  • コミュニケーションが苦手
  • 急な変更に対応しにくい

このように整理して可視化すると、子どもに必要なサポートや適した環境が具体的に見えてきます。

専門家の意見を聞く

親子だけで悩みを抱え込まず、学校の先生や医師、カウンセラーといった、第三者の専門的な意見を積極的に取り入れましょう。普段の子どもの様子をよく知る学校の先生や、診断を受けた主治医、地域の療育センターの専門家などは、心強い味方になってくれます。

親御さんだけでは気づかなかった子どもの長所や、効果的なサポートの方法など、客観的な視点からのアドバイスがもらえるはずです。たくさんの専門家をチームに加え、「チームで子どもを支える」という体制を築くことが、安心して受験に臨むためのカギとなります。

学校選びのポイント

select 積み木

子どもの特性と合っているか

学校選びでいちばん大切なのは、偏差値よりも「校風がわが子に合うかどうか」です。例えば好奇心旺盛で探究心が強い子なら、自由研究や体験学習が充実している学校の方が力を発揮しやすいでしょう。

以下に、代表的な特性と相性の良い学校環境をまとめました。

  • 探究心が強く「なぜ?」を突き詰めたい:自由研究・探究学習・実験が豊富
  • 視覚的な情報処理が得意:図・映像・ICT機器を多用する授業
  • 体を動かすのが好き:フィールドワークや体験学習、部活動が盛ん
  • マイペースにじっくり取り組みたい:少人数制で個別進度に対応してくれる

学校説明会などで、子ども自身が「この学校、なんだか楽しそう!」とワクワクできるかどうかを、一番の判断基準にしてあげてください。

発達障害への理解と支援体制があるか

「発達障害への配慮があります」という言葉だけでなく、具体的にどのような支援体制が整っているのかを、必ず確認することが重要です。学校説明会や個別相談の場で、勇気を出して質問してみましょう。その際の学校側の対応の丁寧さも、大切な判断材料になります。

以下のチェックリストを参考に、具体的なサポート内容を確認してみてください。

  • 相談体制:スクールカウンセラーやソーシャルワーカーは常駐していますか?
  • 学習支援:個別の学習計画の作成や、補習などのサポートはありますか?
  • 環境調整:教室の座席の配慮や、クールダウンできる静かな場所はありますか?
  • 情報共有:保護者との定期的な面談など、連携は密に行ってもらえますか?

これらの具体的な支援体制を確認することが、子どもが安心して学校生活を送るためのポイントとなります。

子どもがついていける学習カリキュラムかどうか

子どもが入学後、授業のスピードや宿題の量に無理なくついていけるかどうか、カリキュラムの内容をしっかり見極めましょう。憧れの学校であっても、授業のレベルが高すぎたり、進度が速すぎたりすると、子どもは劣等感を抱き、勉強が苦痛になってしまいます。

とくに、発達障害のある子どもは、自分のペースでじっくり学ぶことで力を発揮することが多いです。

「少し頑張ればついていける」というレベルの学校を選ぶことが、入学後の自信と成長につながります。入学がゴールではないことを忘れないでください。

無理なく通学できるか

感覚が過敏な子どもにとって、毎日の満員電車や長時間の通学は、想像以上に大きな心身の負担になることがあります。学校生活を元気に楽しむためには、この通学ストレスをできるだけ軽くしてあげることが非常に大切です。

机の上で地図を見るだけでなく、実際に平日の朝、子どもと一緒に通学路をたどってみることを強くおすすめします。電車の混雑具合や乗り換えのスムーズさ、駅から学校までの道のりの安全性などを、子ども自身の感覚で確かめることが重要です。

発達障害のある子どもの親ができるサポート

先生と笑顔で勉強する女の子

勉強のすすめかたを工夫する

「勉強しなさい!」と頭ごなしに言うのではなく、子どもの特性に合わせて勉強の方法を工夫することで、驚くほど学習がスムーズに進むことがあります。

例えば、以下のような工夫を取り入れてみてはいかがでしょうか。

  • 時間:集中力が続きにくいなら、タイマーを使い「15分集中して5分休む」を繰り返す
  • 場所:周囲の刺激に弱いなら、余計な物がない静かな机を用意したり、パーテーションで仕切ったりする。
  • 方法:聴覚より視覚が優位なら、図やイラストが多い参考書を選んだり、大切な部分を色分けしたりする

「どうすればやりやすいかな?」と子どもと一緒に作戦会議をするような気持ちで、最適な学習スタイルを見つけてあげてください。

発達障害にくわしい塾や家庭教師を選ぶ

中学受験のノウハウだけでなく、発達障害の特性への深い理解と指導経験を併せ持つプロの力を借りることは、合格への非常に有効な手段です。

生徒数が多い塾よりも、子ども一人ひとりのペースに合わせてくれる個別指導塾や、マンツーマンで見てくれる家庭教師が向いている場合が多いでしょう。

体験授業などを積極的に利用して、先生が子どもの特性をきちんと理解しようとしてくれるか、子ども自身が「この先生となら頑張れそう」と感じるか、相性をしっかり見極めることが大切です。信頼できるプロは、勉強面だけでなく、精神的な支えにもなってくれる心強いパートナーになります。

子どものメンタルケアを行う

受験期の子どもの心は、大人が思う以上にデリケートで、大きなプレッシャーと戦っています。親の最も大切な役割は、子どもの心の安全基地でいることです。

テストの結果に一喜一憂するのではなく、目標に向かって努力しているその過程をたくさんほめてあげてください。「頑張っているね」その一言が子どもの力になります。また、意識的に勉強から離れて、一緒に遊んだり、好きなことをしたりする時間を作り、気持ちをリフレッシュさせることも重要です。

そして何より、親御さん自身があせったり不安になったりせず、「あなたらしく頑張れば大丈夫」という笑顔と安心感を、子どもに与え続けてあげてください。

まとめ

やる気のある女子高校生

発達障害のある子どもの中学受験は、決して簡単な道のりではありませんが、親子で乗り越えられない壁ではありません。大切なのは、子どもの特性を正しく理解し、それに合った環境とサポートを粘り強く探してあげることです。

受験という経験を通して、子どもは自分の強みを知り、努力することの尊さを学び、大きな自信を手にすることができます。

何よりも、子どもの「この学校に行きたい」という気持ちを尊重し、親子で同じ目標に向かって進んでください。その経験は、合否の結果以上に、かけがえのない宝物になるはずです。

この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、子どもと共に前向きな一歩を踏み出すきっかけになれば、幸いです。心から応援しています。

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この記事を書いた人

ウィズ・ユー編集部

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