子供がなにか問題行動をした際、「やめて!」と言っているにも関わらず、その問題行動を止めないことで悩んでいませんか?
子供の問題行動は、親にとって大きなストレスの原因ですが、問題行動が続く背景には、さまざまな原因があります。
本記事では、その原因や対処方法を解説します。記事の後半では、困ったときの相談先もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
障害別 なぜやめてと言ってもやめないのか
発達障害の種類によって、子供が何故、やめても言ってもやめない行動の原因や傾向が異なります。
発達障害の特性による問題行動は、脳の働き方の違いによって引き起こされるものであり、親の子育てが原因ではありません。
また、問題行動をキツく叱ったりするなど、間違った対応をしてしまうと、余計に問題行動が悪化してしまうことも。
ここでは障害別に何故、やめてと言ってもやめられないのかを解説します。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の場合
自閉症スペクトラム症(ASD)とは、対人関係が苦手・強いこだわりがあるなどの特徴をもつ発達障がいのひとつです。
ASDを持つ子供の場合、下記の特性からやめてと言っても問題行動をやめない場合があります。
•相手の気持ちがわからない
•注意に気づいていない
•人の顔色、声色の変化に全く気づかない
•感覚過敏がある
•強いこだわりがある
•ひとつのことに過剰に集中している
ASDは、言葉や他の方法(例えば、表情や視線、身振りなど)を使って相手の考えを読み取ったり、自分の考えを伝えたりすることが難しい特徴があります。また、特定のことに強い興味や関心を持ち、こだわり行動が見られることもあります。
言葉以外のコミュニケーションを用いたり、予定を細かく決めたり、予期せぬ変更を避けることが大切です。
注意欠陥多動性障害(ADHD)の場合
ADHDは、じっとしているのが苦手、思いつくとすぐ行動してしまうなどの症状が特徴です。注意欠如・多動性障害とも呼ばれます。
注意欠如多動性障害(ADHD)は、作業が不正確であったり、物をよくなくすことがある「不注意」、または体を絶えず動かしたり離席する、おしゃべりである、順番を待つことが難しい「多動性」「衝動性」の特性が特徴です。
幼い子どもの特徴と区別することが難しいため、幼児期にADHDを診断するのは難しく、通常、就学後に診断されることが多いとされています。
ADHDを持つ子供の場合、下記の特性からやめてと言っても問題行動をやめない場合があります。
•自分のことを見て欲しいという欲求が強い
•気が散りやすく、注意をしているときに別のことに気を取られている
•衝動的に行動してしまう
ADHDを抱える子供は、気が散りやすいので注意している際にも別のことに気を取られてしまうことがあります。予測可能なルーティンやスケジュールを作成し、タスクを明確にし、リマインダーやタイマーを使用して時間を管理したり、簡潔で明確な指示を提供し、必要に応じて視覚的な支援(ポスターやチェックリストなど)を使用しましょう。
学習障害(LD)の場合
学習障害は、知的発達に遅れはないが、聞く・話す・読む・書く・計算するなどを苦手とします。学習障害を持つ子供の場合、下記の特性からやめてと言っても問題行動をやめない場合があります。
•学業についていないストレスが問題行動を引き起こしている
学習障害を抱える子供は学習上さまざまな困難に直面するため、ストレスから問題行動を引き起こすことがあります。特性やニーズに合わせた個別指導を提供したり、視覚的支援(図やグラフ)を活用したり、理解を助けてあげることが重要です。
発達障害以外の理由
発達障害以外の理由として、子供の「試し行動」が挙げられます。
試し行動とは、子供が自分がどれだけ受け入れられるかを探るために、意図的に大人を困らせるような行動をすることを指します。
2歳くらいの子供では、物を投げたり、泣き叫んだり、噛みついたりする行動が見られます。4歳になると、以前に叱られたことをママの顔を見ながら繰り返すという行動もみられます。
試し行動は、子供が大人の反応を見ながら自分が「悪い」とわかっていることをあえてする行動です。この行動は成長とともに自然に消えるものではなく、親の愛情が確認されるまで続きます。
なので、「どんなあなたも大好きよ!」と伝え続け、悪いことをしても、良い子じゃなくても、どんな子供の姿も受け入れるつもりであることをしっかり伝えてあげましょう。
ありのままの我が子の姿を受け入れるのが、早ければ早いほど試し行動は早く消失します。
そして、良いことと悪いことははっきりと伝えることが大切です。試し行動をされたからと言って、子供の挑発に乗り、「あ~面倒くさい!」と悪いことまで受け入れてしまうと、解決を先延ばしするどころか、悪化させます。
良いものは良い、悪いことは悪い、このラインをはっきりとさせて関わり、子供の中で「ママは僕/私のことは好きだけれど、ダメな物はやっぱりダメなんだ」と理解することができます。この積み重ねが信頼関係を回復する近道です。
やめてと言ってもやめないときの良い対応例
では、実際にどのように子供に対応したらよいのでしょうか?
「発達障害のある子どもを注意することは禁物」という考え方が広まっていますが、子どもの成長に注意することは欠かせません。適切な接し方をすることで、子どもたちは成長する機会を得ることができます。自己肯定感を傷つけることや自信を失わせることにつながると心配する保護者もいますが、適切なアプローチが成長のポイントになります。
ポジティブな声掛けをする
日常生活で重要なのは、「否定的な言葉を使わない」ことを意識することです。例えば、「〜しない」「〜しちゃダメ」というよりも、「〜しようね」と言い換えると良いでしょう。
たとえば、口に物を入れたり、虫刺されがあるとその場所を搔きむしるという傾向がある場合、「食べない!」「掻かない!」という指示ではなく、「口から出そうね!」「手はお膝にね!」というような言葉を使います。
視覚的に伝える
発達障害を抱える子どもは、言葉での指示を理解しにくい場合があります。そのため、視覚的な情報を活用することが重要です。一部の子どもたちは文字よりも絵やイラストから情報を理解しやすい傾向があります。具体的な指示を伝える際にはイラストを使用したり、視覚的な方法で示すことが効果的です。
子供の言いなりにならない
子どもに指示したり注意したりすると、激しい抵抗や癇癪を引き起こすこともあります。
例えば、「おもちゃを片づけなさい」と言っても、「まだテレビを見たい!」や「もっと遊びたい!」と拒否されることがあります。その場合、親は「もう疲れたから好きにしていいか…」と屈服してしまうこともあります。
しかし、これでは子どもが「抵抗すれば自分のやりたいことができる」と学んでしまうため、注意が必要です。
あえて無視をする
もし子供が指示や注意を無視してふざけている場合は、あえてそれを無視することも必要です。このようなケースでは、子供が注目されたいがために問題行動をとっている可能性が考えられます。
注意をせずに放置すると、子供が注目されないことに気づいて問題行動をやめることもあります。判断が難しい場合は、日頃から子供の様子を観察し、「このケースはふざけている」「このケースは注意喚起が必要」といったように対応することが重要です。
やめてと言ってもやめないときにしてはいけないこと
では逆にどのような対応をするとよくないのでしょうか。具体例を交えながら3つご紹介します。
漠然とした指示をする
「ちゃんと〇〇しなさい!」「しっかり〇〇しようね」といった漠然とした指示は、発達障害の子どもにとっては理解しづらく、混乱を招くことがあります。
また、同時に複数のことを指示することも、子どもが「何をどうしたらいいんだろう…」と混乱してしまい、癇癪などの問題行動につながる可能性があります。
たとえば部屋のおもちゃを片づけてほしいとき、「片づけて!」だけでは十分な指示とは言えません。具体的に何をどのように片づけるか、わかりやすく指示する必要があります。
例えば、子どもと目が合う位置まで行って、「遊びは終わり。片づけの時間だよ」と声をかけます。その後、どのおもちゃをどこに片付けるかを具体的に指示します。「このおもちゃはこの箱に戻そう」「ぬいぐるみはソファの上に置こう」といった具体的な指示が重要です。
怒鳴ったり、きつく叱る
怒鳴ったり、キツく叱ることは子供にストレスを与え、問題行動を悪化させる可能性があります。発達障害の子供は、ストレスに敏感であり、怒鳴ることでさらなる不安や混乱を引き起こすことがあります。そのため、冷静に対処し、穏やかな声で指示を与えることが重要です。
なぜを多用して叱る
「なんでやったの?」や「なぜそんなことをしたの?」といった言葉は、子供を叱るときによく使われますが、これは発達障害のある子供にとって適切ではありません。
特に自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子供は、言葉通りに受け取る傾向があり、「なぜ」という質問は、行動の理由を尋ねられていると解釈しますが、時に理由がなかった時、理由を問われることで混乱し、自己肯定感が傷つくことがあります。
また、怒りながら「なぜ?」と聞くのは、反省を促すためだと思いますが、発達障害を抱える子供にとってはその意図が理解できないこともあります。その結果、彼らはパニックに陥ったり自己肯定感を失ったりすることがあります。
具体的に問題行動を指摘し、その行動の結果や影響について説明することが重要です。
子供の問題行動に悩んだ時の相談先
子供が問題行動を繰り返すことで悩んだら、保護者だけで抱えこまず、専門家に相談することが大切です。
以下に困ったときに相談できる機関をご紹介します。
児童発達支援センター
児童発達支援センターは、子どもの発達に関する相談や支援を行う施設です。発達の遅れや障害を持つ子どもやその家族に対し、専門のスタッフが様々な面で支援を提供します。
児童発達支援センターには、「福祉型」と「医療型」の2つがあります。法律上は、両者とも基本的なサービスを提供しますが、医療型では訓練に加えて「治療」も行われます。
放課後等デイサービス
放課後等デイサービスは、放課後や休日などに、発達障害や身体障害を持つ子どもたちに対して提供される支援サービスです。小学校に入学する6歳から18歳までの就学児が対象となっています。
また、お子さまの状況次第では、20歳まで放課後等デイサービスが利用でき、遊びや学習を通じて社会性や生活技能の向上を促し、保護者の働きやすさをサポートします。
放課後等デイサービスは、2012年に制度が開始された際の利用者数が51,678人から、2016年7月には139,718人に増加し、2022年には306,490人にまで上昇しています(厚生労働省統計情報「障がい福祉サービス等の利用状況について」より)。
民間事業者の参入により、放課後等デイサービスの数が増え、障がいのある子どもたちの放課後の支援が拡大しました。ただし、一部のサービスでは療育的な関わりが不十分で、単なるお預かりに留まることが問題視されています。
現在、厚生労働省は放課後等デイサービスのガイドラインを策定し、療育の質の向上に取り組んでいます。
児童相談所
児童相談所は、子どもの権利を保護し、安全を確保するための機関です。
虐待や家庭内の問題など、子どもの福祉に関する相談や支援を受け付け、必要に応じて保護や支援措置を行ってますが、児童相談所は地域の子育ての相談や支援も行っており、保護者が子供の成長や教育、健康、安全などに関する悩みや困りごとを相談することができます。専門の相談員が親身になって話を聞き、適切な支援やアドバイスを提供してくれます。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害のある人の日常生活を支援しています。診断を受けている大人や子ども、そしてその家族だけでなく、まだ診断を受けていないものの発達障害の可能性がある人の支援も行っています。
窓口は各都道府県や政令指定都市の自治体となっており、一つの自治体に複数のセンターがある場合もあります。また、それらから委託された事業所が窓口となる場合もあり、どちらも無料で相談を受け付けています。
サービスの内容は自治体によって異なりますが、主なものは以下の通りです。
・各種障害福祉サービスや制度の利用方法の紹介
・家庭や学校、職場での支援方法の助言
・就労機関との連携による就労支援
・医療機関への紹介など
専門の職員の他に、社会福祉士、公認心理師・臨床心理士、言語聴覚士、精神保健福祉士、医師などの専門家も在籍しており、それぞれの専門知識に基づいたサポート(診断や相談、個別支援計画の作成、カウンセリング、トレーニングプログラムなど)が提供され、発達障害の特性に合わせた支援が行われます。
また、地域社会や学校との連携も重視され、総合的なサポートが展開されています。
病院(小児科・児童精神科・小児神経科・発達外来)
子供の発達障害に関する相談を受け付ける病院は、精神科や児童精神科などの専門施設があります。こうした病院では、専門医や心理士が子供の発達に関する問題を評価し、必要に応じて診断や治療を行います。
子供の発達障害の診断ができるのは医師(医療機関)のみです。そのため、発達障害について診断を受ける場合には、医療機関を受診する必要があります。
発達障害の診断は、小児科、精神科や児童精神科、小児神経科や発達外来、または大学病院や総合病院などでも可能です。
まとめ
本日はやめてと言ってもやめない子供への対処法をお伝えしました。発達障がいの種類によってやめてと言ってもやめない原因や傾向は異なり、それぞれに合った対処法が必要です。
発達障害を抱える子供との関係は、理解と忍耐を要するかもしれませんが、適切なサポートとコミュニケーションによっては、問題行動を減らすことができます。保護者が子供たちと協力し、ポジティブに接することで、子供たちの成長と発達を促進し、良い親子関係を築くことができます。発達障害の子供たちが持つ素晴らしい才能や個性を引き出すためには、保護者の愛と理解がなによりも大切です。