発達障害の子どもとのコミュニケーション、どうすれば?家庭でできる関わり方と年齢別の伸ばし方を解説

じゃんけんをして遊ぶ親子

子どもとの会話が、なんだか一方通行になってしまう。

こだわりが強くて、かんしゃくが始まると、どう対応していいかわからなくなる。

学校での様子を話してくれず、お友達と上手くやれているか心配になる。

そんな悩みを抱え、「もしかして、自分の育て方が悪かったのでは…」と自分を責めていませんか?

この記事では、発達障害の子どもが見せるコミュニケーションのサインから、その背景にある理由、そして家庭で明日からすぐに実践できる具体的な関わり方まで、詳しく解説していきます。

発達障害の子どもに見られるコミュニケーションの5つのサイン

子供の手に乗っているハート

目が合いにくい、視線を合わせるのが苦手

相手の目を見て話すのが苦手、すぐに視線をそらしてしまうのは、緊張や不安を感じているサインかもしれません。発達障害の子どもの中には、相手の目から入ってくる情報(表情の変化など)が多すぎて処理しきれず、混乱してしまう子がいます。

また、視線を合わせることに集中しすぎると、かえって話の内容が頭に入ってこなくなることもあります。無理に「目を見て話しなさい」と叱るのではなく、「あなたの話を聞いているよ」という姿勢を見せることが大切です。

親御さんが子どもの手元や口元を見るようにしたり、隣に座って同じ方向を見ながら話したりするだけでも、子どもの安心感は大きく変わります。

視線が合わなくても、心は通じ合えるということを忘れないでください。

一方的に話し続け、会話のキャッチボールが難しい

自分の好きなことになると、相手の反応を気にせず、夢中になって一方的に話し続けてしまうことがあります。

これは、ASD(自閉スペクトラム症)の特性の一つで、「相手も自分と同じように、この話に興味があるはずだ」と思い込んでいる場合があります。

また、相手の「もうお腹いっぱいかも」という表情や声のトーンに気づきにくいのです。これは子どもの「話したい!」という意欲の表れでもあります。

話を無理にさえぎるのではなく、一区切りついたところで会話の順番を教えてあげるのが効果的です。

言葉の裏や冗談、皮肉が理解できない

言葉を文字通り、そのままの意味で受け取ってしまうため、冗談や皮肉、比喩(ひゆ)表現を理解するのが難しい傾向があります。

例えば、「猫の手も借りたい」と言われれば「本当に猫を連れてくるの?」と考えたり、「もう帰るよ!」と少し強めに言われたのを「本気で怒って追い出そうとしている」と捉えてパニックになったりします。

言葉の裏にある「文脈」や「相手の本当の意図」を読み取るのが苦手なのです。

これは、子どもの想像力の特性によるものです。

家庭では、できるだけストレートでわかりやすい言葉を選ぶように心がけましょう。

もし冗談を言った時は、「今のは冗談だよ。本当はこう思ってるよ」と後からきちんと説明を加えることで、少しずつ言葉の多様性を学んでいくことができます。

相手の気持ちを想像したり、空気を読んだりするのが苦手

相手の表情や声のトーン、しぐさなどから、「今、悲しそうだな」「怒っているな」と相手の気持ちを察することが、ASDの特性上、難しい場合があります。

また、「自分がこれを言ったら、相手はどう思うだろう?」と想像するのも苦手なため、悪気なく相手を傷つけるようなことを言ってしまうこともあります。

家庭では、絵本やアニメの登場人物を使って、「この子、今どんな気持ちだと思う?」と問いかける練習が役立ちます。また、「うれしい顔」「悲しい顔」などの感情カードを使って、「ママは今、こんな気持ち」と視覚的に伝えるのも一つの手です。

感情を「言葉」と「表情」で一致させて教えてあげることが、他者の気持ちを理解する手助けになります。

曖昧な表現がわからず、具体的な指示が必要

「ちゃんとして」「しっかり準備して」「適当に片付けて」といったあいまいな表現では、何をすればよいのか分からず、混乱したり固まってしまったりします。

これは、ADHD(注意欠如・多動症)の子どもの場合、やるべき事の優先順位や手順がわからないと、どこから手をつけていいか分からず、集中力が途切れてしまうこととも関連します。

指示が通らないと感じる時は、言葉があいまいすぎないかどうか見直してみましょう。

「ちゃんとして」ではなく、「使ったおもちゃを、赤い箱に戻してね」のように、具体的かつ短い言葉で伝えることが非常に重要です。やるべきことを細かく分解し、一つずつ具体的に伝えることで、子どもは安心して行動に移せるようになります。

発達障害の子どもがコミュニケーションが苦手な理由

照れて顔を隠す女のこ

ASD(自閉スペクトラム症)の場合

ASDの子どもは、おもに「社会性の理解」と「想像力」の部分に生まれつきの特性があります。

これが、コミュニケーションの難しさに直結しています。

例えば、相手の気持ちを表情から読み取ったり、その場の「暗黙のルール(今は静かにする時間など)」を察したりすることが、本能的に苦手です。

また、興味や関心が特定の分野に強く向かうため、自分の好きな話題(電車の型番、歴史の年号など)に夢中になると、相手の興味や状況を想像することが難しくなります。

言葉を文字通りに受け取る特性も、冗談や皮肉が通じにくい理由です。「こだわりの強さ」や「かんしゃく」も、この特性と関連しています。

自分の決めた手順やパターンが変わることを極端に嫌うため、予定の急な変更や、コミュニケーションの中での想定外の反応に対応できず、パニックになってしまうのです。

ASDの子どもには、私たちが無意識に理解している「対人関係のルール」そのものを、具体的に言葉や絵で教えてあげる必要があります。

ADHD(注意欠如・多動症)の場合

ADHDの子どもの場合は、「不注意(集中力のコントロール)」や「多動性・衝動性(行動や感情のコントロール)」といった特性が、コミュニケーションに大きく影響します。

「不注意」の特性が強いと、相手の話を最後まで集中して聞いているのが難しくなります。途中で別のことに興味が移ってしまい、話が飛んだり、大事な部分を聞き逃したりしがちです。

「多動性・衝動性」の特性が強いと、相手がまだ話している途中でも、自分が思いついたことをさえぎって話し始めてしまうことがあります。

また、感情のコントロールが苦手で、思ったことをそのまま口にしてしまい、友達とトラブルになることも少なくありません。

出来事を順序立てて思い出すのが苦手だったり、話したいことはたくさんあるのに、どれから話せばいいか分からなくなったりしている可能性があります。決して「話したくない」わけではなく、「うまく話せない」のです。

明日からできる!家庭で子どものコミュニケーション能力を伸ばす6つの方法

笑顔の子供と大人

見てわかる「視覚支援」を取り入れる

耳から入る言葉だけの指示は、すぐに消えてしまい、記憶に残りにくいものです。特に発達障害の子どもには、目で見て理解できる「視覚支援」が非常に効果的です。

「何を」「いつ」「どのように」するのかが目で見てわかると、子どもは見通しを持つことができ、安心して行動できます。

かんしゃくを起こしそうな時も、「静かにして!」と大声で言うよりも、「今はクールダウンの時間です」と書いたカードを見せる方が、落ち着きやすい場合があります。

言葉での声かけと視覚支援を組み合わせることで、子どもの理解は格段に進みます。

「短く・具体的に・肯定的に」伝える

子どもに何かを伝える時、私たちはつい多くの言葉を一度に伝えてしまいがちです。しかし、情報処理が苦手な子どもには、指示が長ければ長いほど、最初の言葉しか頭に残りません。

伝える時のコツは、「短く」「具体的に」「肯定的にの3つです。

  • 短く:
    「ご飯だから手を洗って、テレビ消して、席について」
    →(一度に言わず)「まず、手を洗いに行こう」(終わったら)「次は、テレビを消そう」
  • 具体的に:
    「ちゃんと片付けて」
    →「ブロックを、青い箱に入れてね」
  • 肯定的に(してほしい行動を伝える):
    「廊下を走らないで!」
    →「廊下は、ゆっくり歩こうね」

特に「〜しないで」という否定的な言葉は、何をすべきかがわからず、子どもを混乱させます

「泣き止みなさい!」ではなく、「まず、ソファに座ろうか」と、今できる具体的な行動を一つだけ、短く伝えてみてください。

スモールステップで「できた!」を積み重ねる

コミュニケーション能力は、一朝一夕には身につきません。高い目標をいきなり設定してしまうと、子どもも親御さんも疲れてしまいます。

目標を細かく分け(=スモールステップ)、「できた!」という小さな成功体験を積み重ねていきましょう

ゴールを細かく分けて、ステップ1ができたら「お友達の近くにいられたね!すごい!」のように具体的にほめます。この「できた!」の積み重ねが、子どもの自己肯定感を育みます。

「自分はできるんだ」という自信が、「次はもう少し挑戦してみようかな」という意欲につながります。

遊びの中に「SST(ソーシャルスキル・トレーニング)」を取り入れる

SST(ソーシャルスキル・トレーニング)という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、社会で人と上手に付き合っていくための技術(ソーシャルスキル)を学ぶ練習のことです。

療育機関などでも行われますが、家庭でも遊びを通して簡単に取り入れることができます。勉強として堅苦しく教えるのではなく、楽しみながら体験的に学ぶのがコツです。

<家庭でできるSSTの例>

  • お店屋さんごっこ:
    「いらっしゃいませ」「〇〇をください」「ありがとうございました」といった、決まったやり取りを練習します。
  • カードゲーム(UNOやトランプなど):
    「順番を待つ」「ルールを守る」「負けても怒らない」といった、集団でのルールを学ぶ絶好の機会です。
  • ロールプレイング:
    ぬいぐるみや人形を使って、「お友達におもちゃを貸してほしい時、なんて言う?」「断られたらどうする?」といった場面をシミュレーションしてみます。

友達とのトラブルも、こうした練習で予防できることがあります。「もしこう言われたら、こう返そうね」と事前練習しておくことで、子どもは実際の場面でも落ち着いて対応しやすくなります。

子どもの「好き」をコミュニケーションの入り口にする

子どもが夢中になっていること、それこそがコミュニケーションの最大のチャンスです。一方的に話し続けてしまう「好きなこと」も、親御さんが上手に間に入ることで、会話のキャッチボールの練習に変えることができます。

ポイントは、「質問攻め」にするのではなく、まず「あなたの好きなことに、私も興味があるよ」という姿勢を伝えることです。

「話を聞いてもらえた」「好きなことを共有できた」という喜びが、子どもが人との関わりに前向きになる原動力となります。子どもの世界に親御さんが飛び込み、共通の話題で盛り上がる時間を大切にしてください。

パパ・ママが聞き役になる「対話の時間」を意識的につくる

学校での様子を話してくれない、と悩まれている方も多いでしょう。そんな時、「今日はどうだった?」「誰と遊んだの?」と質問攻めにしていませんか?

発達障害の子どもは、出来事を順序立てて話したり、自分の気持ちを言葉にしたりするのが苦手な場合があります。質問されると、うまく答えられずに黙り込んでしまうこともあります。

大切なのは、「あなただけの話をじっくり聞くよ」という特別な時間を、意識的につくることです。

たとえ1日10分でも構いません。スマホやテレビを消し、家事の手を止めて、子どもと一対一で向き合う時間を作りましょう。親御さんがリラックスして話す姿を見ると、子どもも安心して話しやすくなります。子どもが話し始めたら、途中で遮らずに最後までじっくり耳を傾けましょう。

子どもの成長に合わせたコミュニケーションサポートのポイント

ハートを持つ手

幼児期(〜6歳):安心できる環境で「やりとり」の楽しさを知る

幼児期は、言葉での高度なやり取りを学ぶことよりも、まず「人と関わるのは楽しい」「ママ(パパ)といると安心する」という、コミュニケーションの土台を作ることが最優先です。

スキルを教え込む時期ではありません。この時期の目標は、「言葉」ではなく「やりとり」そのものの楽しさを知ることです。

かんしゃくを起こした時も、まずは「嫌だったね」「びっくりしたね」と気持ちを受け止め、安心できる場所で落ち着かせることを優先してください。

「伝えたい」「伝わった」という喜びの原体験を、安心できる環境でたくさん育てていきましょう。

小学生(7〜12歳):ルールの理解と「友達の輪」に入るスキル

小学生になると、学校という集団生活が本格的に始まります。

遊びや会話にも「ルール」が生まれ、「順番を守る」「相手の話を聞く」「自分の意見を言う」といった、より複雑なソーシャルスキルが求められます。

友達とのトラブルも増えやすい時期です。

家庭では、集団生活のルールを具体的に教え、練習するサポートが必要になります。

トラブルが起きた時は、子どもを責めるのではなく、「そんなことがあったんだね。大変だったね」と気持ちを受け止めた上で、「じゃあ、次からはどう言えばよかったかな?」と、一緒に「作戦会議」をする時間を取りましょう。

中学生以降(13歳〜):自分の特性理解と「相談する力」を育む

思春期を迎えるこの時期は、子ども自身が「周りの子と自分は、何だか違うかもしれない」と気づき、悩みやすい時期です。

サポートの重点は、「親が教える」から「子ども自身が対処法を身につける」ことへと移行します。

最も重要なポイントは、子ども自身が自分の「得意」と「苦手」を客観的に理解し(=自己理解)、困った時に「助けて」と他者に発信できる力(=相談する力)を育むことです。

親子の距離感も難しくなる時期ですが、干渉しすぎず、「何があっても、パパとママはあなたの絶対的な味方だよ」というメッセージを、言葉と態度で伝え続けることが、子どもの心の支えになります。

自立に向けて、自分で自分をコントロールし、必要な時に支援を求められるスキルを身につけるためのサポートが中心となります。

発達障害とコミュニケーションに関するQ&A

Q &A

Q1. コミュニケーションの苦手さは、いつか治りますか?

発達障害は、脳機能の特性であり、病気ではないため「治る」という表現は適切ではありません。生まれ持った特性そのものが、完全になくなることはないでしょう。

しかし、コミュニケーションの「スキル」は、適切なトレーニングや関わりによって、いくつになっても伸ばしていくことが可能です。子どもの頃は一方的に話しがちだった子どもも、成長と共に「今は相手が話す番だな」と判断するスキルや、相手の表情を読み取る経験値を積んでいくことができます。

大切なのは治すことではなく、子ども自身が自分の特性とうまく付き合いながら、社会生活を送りやすくなるための技術と自信を身につけることです。

子どものペースで確実に成長していく力を信じ、長期的な視点でサポートを続けていきましょう。

Q2. きょうだいへの接し方はどうすればいいですか?

これは非常に切実な問題です。

親御さんが発達障害のある子どもの対応に追われていると、きょうだい(発達障害のない子ども)は、知らず知らずのうちに我慢を重ねていることが少なくありません。

「自分は後回しだ」「よい子でいなければ」と感じ、寂しさや不満を抱えている可能性があります。

すべての子どもに平等に接するのは現実的に難しいかもしれませんが、「あなたも、私にとって同じように大切な存在だ」というメッセージを、言葉と行動で示し続けることが何よりも大切です。

Q3. 将来、仕事に就いたり、社会生活を送ったりできますか?

はい、もちろん可能です。

多くの方が、自分の特性を正しく理解し、その特性に合った環境や、得意なことを活かせる分野で活躍されています。

コミュニケーションが苦手でも、例えば「ルールが明確で、変更が少ない仕事」「一人で集中して取り組める緻密な作業」「特定の分野への深い知識やこだわりが強みになる仕事」などで、大きな力を発揮する人はたくさんいます。

大切なのは、子どもの「苦手」を無理に矯正しようとするだけでなく、同時に「好き」や「得意」を思い切り伸ばしてあげることです。

それが将来、子どもの「強み」になります。希望を持って、子どものできることに目を向けていきましょう。

まとめ

家族みんなでたのしそうな時間

発達障害の子どもとのコミュニケーションは、確かに一筋縄ではいかないかもしれません。

会話が一方通行になったり、かんしゃくにどう対応していいか分からず、途方に暮れてしまう日もあると思います。

子どもには、子どもなりの「伝わりやすい方法」があります。この記事でご紹介した方法を、まずは一つでもご家庭で試してみてください。

子どもの力を信じ、その子に合った方法でサポートを続ければ、コミュニケーションの道は必ず開けていきます。

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この記事を書いた人

ウィズ・ユー編集部

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