
「発達障害はいつごろわかるものなの?」
「この行動、もしかして発達障害のサイン?」
「誰にも相談できなくて…どこに頼ればいいの?」
そんな出口の見えない不安を、ひとりで抱え込んでいるかもしれません。この記事では、発達障害の基礎知識から年齢別に現れやすいサイン、そして「相談してみよう」と思った日から診断に至るまでの流れを丁寧にお伝えします。
読み終えるころには、胸のモヤモヤが晴れ、次に取るべき一歩がはっきりと見えているはずです。診断は怖いものではなく、子どもの素晴らしい個性を理解し、明るい未来へ踏み出すための大切な手がかりなのです。
発達障害とは?主な種類と特徴

自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症(ASD)は、コミュニケーションや対人関係に特性が表れやすい発達障害です。
「スペクトラム」は「連続体」を意味し、虹の色がゆるやかに変化するように、ASDの特性も人によって幅広く異なります。
ASDかも?と感じるサインには以下のようなものがあります。
- 視線が合いにくい
- 名前を呼んでも振り向きにくい
- 言葉の発達がゆっくり
- ほかの子への関心が薄く、一人遊びを好む
- おもちゃを横一列に並べるなど独特のこだわりがある
- 急な予定変更や手順の違いを強く嫌がる
これらに当てはまるからといって、すぐにASDと決まるわけではありません。ただ、複数のサインが気になり、子育てが「やりづらい」と感じるときは、子どもからの「私の個性を理解してね」というメッセージかもしれません。
注意欠如・多動症(ADHD)
注意欠如・多動症(ADHD)は、脳の働きによって「不注意」「多動性」「衝動性」の3つの特性が目立つ発達障害です。やる気やしつけの不足ではなく、生まれ持った脳の特性が背景にあります。
それぞれの特性について、もう少し具体的に見ていきましょう。
- 不注意(集中しにくい):話しかけられても聞いていないように見える、忘れ物や失くし物が多い、集中力が続かず課題を最後までやり遂げられない
- 多動性(じっとしていられない):授業中など静かにすべき場面で席を離れてしまう、常にそわそわと手足を動かしている、おしゃべりが止まらない
- 衝動性(思いつくとすぐ行動する):質問が終わる前に答えてしまう、順番を待つことが苦手、他の子の遊びに割り込んでしまう
小さな子どもにはよく見られる行動でも、ADHDの場合は年齢相応とは思えないほど強く現れ、園や学校、家庭など複数の場面で生活に支障が出ることが目安になります。
「ただ元気なだけ?」と迷ったときは、どの環境でも同じ行動が続いているかを観察してみましょう。それが次のステップを考えるヒントになります。
学習障害(LD)
学習障害(LearningDisability/LD)は、知的な遅れがないのに「読む・書く・計算する」など特定の学習だけが極端に難しくなる発達障害です。決して怠けや努力不足ではなく、脳の働き方の違いが理由だと考えられています。
学習障害は、主に3つのタイプに分けられます。
- 読字障害(ディスレクシア):文字を一つずつ読むのはできても、文章をすらすら読めない。
- 書字障害(ディスグラフィア):お手本を見ても、同じ形に文字を書くのが難しい。
- 算数障害(ディスカリキュリア):簡単な足し算や引き算の暗算が苦手
学習障害は、ひらがなや計算など、本格的な学習が始まる小学校に上がってから気づかれることがほとんどです。もし、子どもが特定の勉強だけを極端に嫌がったり、一生懸命やっているのに成果が出なかったりする場合は、学習障害の可能性も少しだけ頭の片隅に置いてあげてください。
年齢別の主なサインと気づきのきっかけ

乳幼児期(0歳〜3歳頃)
発達障害のサインは、実はとても早い段階から現れることがあります。特にこの時期は、周りの大人とのコミュニケーションの取り方に特徴が見えやすいです。
「うちの子、もしかして…」と不安に思うとき、それはお母さんの考えすぎではなく、子どもを毎日注意深く見ているからこその、大切な気づきかもしれません。
例えば、以下のようなサインに心当たりはありませんか?
- あまり目が合わない、または視線が合いにくい
- 名前を呼んだり、あやしたりしても反応が薄い
- 親の後を追ってこない、一人でいても平気そう
- 抱っこされるのを嫌がる、または体を反らせる
- 言葉の発達が他の子と比べてゆっくりだと感じる
- ミニカーをひたすら並べるなど、同じ遊びをずっと繰り返している
- 特定の音や光、肌触りなどを極端に嫌がる
もちろん、これらは赤ちゃんの個性や成長のペースの違いであることも多いです。一つ当てはまるからといって、すぐに心配する必要はありません。
ただ、複数のサインがずっと続いていて、育児の中で「どうしてだろう?」と感じる場面が多いなら、それは専門家に相談してみるタイミングを知らせるサインの可能性があります。
幼児期(3歳〜就学前)
3歳を過ぎて集団生活が始まると、お友達との関わりの中で、発達障害の特性がよりはっきりと見えてくることがあります。園の先生から「少し落ち着きがないですね」「お友達とトラブルになりやすいです」などと指摘され、ハッとすることもあるかもしれません。
この時期に気づかれやすいサインには、以下のようなものが挙げられます。
- コミュニケーションの難しさ:ごっこ遊びが苦手、一人遊びが多い、会話が一方通行になりがち、友達の輪に入ろうとしない
- こだわりの強さ:いつも同じ服を着たがる、決まった道順でないとパニックになる、遊びのルールを絶対に変えようとしない
- 多動・衝動性:順番を待てずに割り込んでしまう、急に走り出してどこかへ行ってしまう、静かに座っていなければいけない場面で立ち歩く
- 感覚の過敏さまたは鈍感さ:特定の音をひどく怖がる、服のタグや素材を嫌がる、逆に、ケガをしても痛がらない
こうした行動を目にすると、「私のしつけが悪いのかも」と自分を責めたくなるかもしれません。でも、決して親のせいではありません。これらの行動には子どもなりの理由があり、その背景にある特性を理解することがサポートの第一歩です。
学童期(小学生)
小学校に進むと、授業や集団行動など新しいルールの中で過ごす時間が増えます。そのため、幼児期には目立たなかった発達特性が、「困りごと」として表れやすくなります。
- 学習面:授業内容が理解しにくい/板書を写すのが極端に遅い/特定の教科だけ成績が著しく低い
- 対人関係:友だちの気持ちを想像するのが苦手で、思ったことをそのまま言ってしまう/場の空気が読めず不適切な発言をしてしまう
- 集団行動:忘れ物や失くし物が多い/先生の指示を一度に覚えられない/体育や図工など手順のある活動が苦手
まわりの子が当たり前にできることが、わが子には難しい-そのような場面に直面すると、親として焦りや不安を覚えるのは自然なことです。しかし、その行動は子どもからの「助けてほしい」というサインかもしれません。学校の先生と連携しながら、何につまずいているのかを一緒に見つけていくことが大切です。
思春期(中学生・高校生)
思春期は、心も体も大きく変化する、誰もが複雑な気持ちを抱える時期です。この時期に、それまで隠れていた発達障害の特性が、勉強の難しさや友人関係の複雑さをきっかけに表れやすくなります。また、自分だけが「どこか違う」と感じて深く悩む子も少なくありません。
この時期に見られるサインには、以下のようなものがあります。
- 心の不調:周囲になじめず、不登校やひきこもりになる/不安感やうつ状態が続く
- 対人関係の悩み:冗談や皮肉が通じず孤立する/グループ行動が苦手で一人で過ごすことが増える
- 授業についていけなくなる/将来が見えず無気力になる
それまで必死に周りに合わせてきた子ほど、思春期になってエネルギーが尽き、突然心身の不調が表面化することがあります。「疲れた」「学校へ行きたくない」という言葉は、単なる反抗ではなく、発達特性ゆえの生きづらさのサインかもしれません。子どもの言葉の奥にある“本当のつらさ”に、静かに耳を傾けてあげてください。
発達障害の種類によって「わかる時期」に違いはある?

自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症(ASD)は、比較的早い時期に気づかれやすい発達障害です。多くの場合、1歳半健診や3歳児健診で言葉の遅れやコミュニケーションの取りづらさを指摘されることが、最初のきっかけになります。ASDの中核となる「対人関係の難しさ」や「強いこだわり」は、人間関係の基礎を築く乳幼児期に行動として表れやすいからです。
例えば「目が合いにくい」「指さしをしない」「他の子に関心を示さない」といったサインは、早い段階から気づくことができます。確定診断は3歳以降になることが多いものの、2歳ごろに診断がつくケースも少なくありません。
もし子どもの様子に「あれ?」と感じたら、その直感を大切にしてください。早めに気づいて子どもの特性に合った関わり方を始めれば、子どもに安心感を与え、今後の成長をより豊かにサポートできます。
注意欠如・多動症(ADHD)
注意欠如・多動症(ADHD)は、幼児期に「落ち着きがない」「話を聞かない」といった行動で気づかれることもありますが、正式な診断が下りるのは就学後がほとんどです。乳幼児の多動や衝動は発達の一環としてよく見られるため、個性なのか特性なのかを見極めにくいからです。
ところが小学校に入ると、「授業中に席に座り続ける」「先生の指示どおりに行動する」といった集団生活のルールが求められるようになり、ADHDの特性が“困りごと”として表れやすくなります。授業に集中できない、忘れ物が多い、友達と衝突しやすい―こうした状況が続くと、診断を検討するケースが一般的です。確定診断は早くても5〜6歳、多くは小学生になってからと考えられます。
「ただ元気がいいだけかも」と思っていても、集団生活で子ども自身が困っている様子が見られたら、一度専門家に相談してみることをおすすめします。
学習障害(LD)
学習障害(LD)は、読み書きや計算など学習のつまずきから気づかれるため、診断はほかの発達障害より遅れがちです。読み書き・計算が本格化する小学校入学後、特に2〜3年生ごろに周囲との差がはっきりしてくることが多いでしょう。
例えば、
- みんながスラスラと音読しているのに、うちの子だけつっかえつっかえで読む
- 何度も練習しているのに、簡単な漢字が覚えられない
- 指を使わないと、簡単な計算ができない
といった状況が続く場合、学習障害の可能性が考えられます。
知的発達には問題がないため、就学前は気づかれにくく「努力不足」「やる気の問題」と誤解されやすいのが現実です。もし特定の教科だけ極端に苦手な様子が続くなら、本人の努力では埋められない“特性”が背景にある可能性を念頭に置き、専門家へ相談することが大切です。
「発達障害かもしれない」と思ったら?相談から診断までの流れ

まずは相談してみる
「発達障害かもしれない…」そのような不安をどうか一人で抱え込まないでください。あなたの気持ちを受け止めてくれる場所は、必ずあります。診断を受けるかどうかは別として、まず専門家に相談することが、解決への第一歩です。
「どこに相談すればいいの?」と迷ったら、身近な公的機関を活用してみましょう。
- 市区町村の保健センター:保健師が育児全般の相談に応じ、必要に応じて専門機関へつないでくれる最初の窓口
- 子育て支援センター:親子が集まる場で、同じ悩みを抱える保護者と話すだけでも気持ちが楽になります。専門の相談員が常駐していることも多い
- かかりつけの小児科:生まれたときから子どもを見守っている医師だからこそ、発達のペースについても気軽に相談できる
これらの窓口は「診断をつける」ことではなく、あなたの不安に耳を傾け、一緒に考えることを大切にしています。家族にさえわかってもらえない思いも、まずは専門家に打ち明けてみませんか。「心配しすぎですよ」と否定されることはありません。「相談してくれてありがとう」と、あなたの勇気を受け止めてくれるはずです。
専門機関での詳しい検査を受ける
身近な窓口で相談し、より詳しい検査が必要と判断された場合は、専門機関を紹介されます。ここからは、子どもの特性を深く理解するためのステップが始まります。紹介される主な機関は次のとおりです。
- 児童精神科・小児神経科がある病院:医師の診察と心理士の発達検査など、医学的な視点から評価
- 発達障害者支援センター:診断に加え、生活や就学に関する幅広いサポートを提供する専門機関
- 児童相談所:心理判定の専門家が在籍し、発達検査を受けられる
これらの機関では「発達検査」を行います。パズルのような課題や質問を通し、知的発達や得意・不得意のバランスを把握するための検査で、決して子どもを試すものではありません。むしろ、子どもの「取扱説明書」を手に入れる大切なプロセスと考えてください。
検査は時間がかかり、予約が数か月待ちになることもありますが、焦らなくて大丈夫です。
医師による診断が判明する
検査や行動観察、さらに保護者への詳しい聞き取り(生育歴の確認)を経て、医師は総合的に判断し、診断名を伝えます。その瞬間はどうしても緊張します。「やっぱりそうだったんだ」と納得すると同時に、「これからどうしよう」と不安が押し寄せ、頭が真っ白になるかもしれません。
でも、診断名は子どもにレッテルを貼るものではないことを覚えておいてください。これまで感じていた「育てにくさ」の理由がわかり、子どもが抱えていた「生きづらさ」の正体が見える―その大きな手がかりになるのです。
なぜかんしゃくを起こすのか。なぜ強いこだわりがあるのか。それを「発達特性」の視点で理解できれば、お母さん・お父さんの気持ちもきっと軽くなるはずです。
診断はゴールではなく、子どもの個性を理解し、最適なサポートを探していくための新しいスタートラインです。
発達障害の診断は「いつ」受けるべき?

発達障害の診断を受けるタイミングに「唯一の正解」はありません。年齢や置かれた環境、ご家族の考え方によって最適な時期は変わります。
もし「診断を受けるべきか」で迷ったら、まず「今、子ども自身が困っているかどうか」に着目してみてください。
- 友だちとのトラブルが絶えない
- 学校へ行きたがらない
- 学習につまずいて自信をなくしている
こうした状況で笑顔が減り、「その子らしく過ごすこと」が難しくなっているなら、診断には大きなメリットがあります。
診断を受ける主なメリットは以下のとおりです。
- 困りごとの理由がはっきりし、周囲が理解しやすくなる
- 療育など専門的な支援や公的サービスにつながりやすくなる
- 親として特性に合った関わり方がわかり、子育てが楽になる
診断は可能性を狭める「レッテル」ではなく、子どもらしい未来を切り拓く「パスポート」です。焦る必要はありませんが、「困った」というサインを見逃さず、サポートへの第一歩として診断を検討する価値は十分にあります。
まとめ

「発達障害は、いつになったら分かるのだろう?」その問いの裏には、子どもへの深い愛情と、「何とか力になりたい」という切実な願いが隠れています。
この記事では、発達障害のサイン、診断時期、相談先についてお伝えしてきましたが、本当に大切なのはいつ診断されるかではありません。子どもの小さなサインに気づき、「もしかして?」と感じたとき、その直感を信じて一歩踏み出すことです。
一人で抱え込まず、まずはお住まいの保健センターや子育て支援センターで気持ちを打ち明けてみてください。専門機関につながったとしても、診断は決して絶望の始まりではありません。むしろ、子どもの個性を正しく理解し、その子に合ったサポートを見つけるための希望のスタートラインです。
この記事が、不安を少しでも軽くし、前に進む勇気を届けられたなら、これほどうれしいことはありません。