発達障害の子どもがすぐ手が出る理由とは?シチュエーションや対処方法を解説

親と楽しそうにしている子供

何か起きた時に言葉よりも先に手が出てしまうお子さんがいます。

小さいうちはまだ言葉が未発達で思いがうまく伝えられずに手が出てしまうこともあるでしょう。また、友だちとの関わり方を学ぶ上で時に手が出てしまうということもあるかもしれません。

しかし、成長してきても頻繁に手が出てしまうときには発達障害による特性の可能性があり、手立てや対処方法を考える必要があります。

今回は、発達障害のお子さんがすぐに手が出てしまうのにはどんな理由があるのか、また、今後どのように支援していけば良いのかを解説していきます。

発達障害の子どもがすぐ「手が出る」理由

積み木を楽しんでいる子供

うまく自分の気持ちを表現できない

発達障害の特性により言葉の発達がゆるやかであったり、言葉で自分の気持ちを伝えることが難しかったりする場合があります。

この場合自分の抱いている感情を細かく表現できる語彙力が備わっていないため、相手に伝えられず手が先に出てしまうことがあります。

「手が出る」と聞くと、不快な感情を叩く・蹴るなどの行動で示すといったイメージを持たれることがありますが、必ずしもそうとは限りません。

発達障害の子どもの中には、相手のことが好きだったり一緒に遊びに誘いたかったりする時にも手が出る場合があります。

また言葉での表現が難しい場合や、手を出して伝えたときに思いが通ってしまった経験のある子が「これが自分の正しい伝え方だ」と誤認してしまった場合に起こることもあります。

自分の感情を上手くコントロールできない

発達障害の子どもは自分のいま抱いている感情を分析するのが苦手な傾向があり、感情をどのように処理して良いかわからず手が出てしまうケースも少なくありません。

友だちとトラブルになってしまった時に怒りや興奮した気持ちを抑制するのが難しいことも理由の1つでしょう。

特性により相手の気持ちを汲み取るのも難しく、自分の気持ちもよくわからない状態となったためにどうしていいかわからず結果相手を傷つけてしまうという見方もあります。

特に気持ちがイライラしている時はより感情のコントロールが難しくなるため、イライラの原因となるものを明確にし、気持ちを落ち着かせる方法を事前に知っておくと予防につながるでしょう。

伝え方がわからずパニック状態になっている

友だちとの関わりの中でコミュニケーションを図る時には、相手の状況や表情を観察した上でどのように声を掛けたら良いかを考えたり、相手からの反応を見て言葉を選んだり自分はどのように立ち振る舞えば良いか、どんな言葉が適切かなども経験の中で子どもなりに考えることができるでしょう。

しかし発達障害の子どもの場合、このような段取りを通してやりとりをすることが難しく、どう伝えていけば良いのかがわからずパニック状態で手が出てしまう子もいるのです。

また、自分のしたいことと友だちがしたいことが違っていた場合、特性上相手に合わせたり自分のやりたいことをうまく伝えられなかったりした場合にもどうして良いかわからずパニック状態になってしまうことも考えられます。

友達との付き合い方がわからない

友達と付き合っていくには、ある程度の社会的スキルが必要となってきます。

「どのような場面でどう行動するのが適切なのか」といったところまで理解するには、日常生活の中で様々な経験を積み重ねていくことが大切となってきます。

他の人への興味関心が薄く、友だちとの関わりが少ないため付き合い方がわからず手が出てしまう場合があります。

また、すぐに手が出てしまう子の中には、相手に自分の気持ちや要求を伝える際に手を出すことで解決に導く経験を積んできた可能性があります。

また、言葉で伝えることと手を出して伝えることの違いを理解していないことも考えられます。

手を出すことによって自分の要求や思いを伝えるということがコミュニケーションツールの1つとなってしまっているかもしれません。

発達障害とは

発達障害とは、「自閉スペクトラム症」「ADHD(注意欠如・多動性障害)」「LD(学習障害)」「知的能力障害」などがあり、先天的な脳機能の発達に関係していると言われています。主に認知、言語、社会性、運動といった面において得意な部分と苦手な部分に偏りがある障害です。

同じ障害名でも特性は人によってさまざまで、障害の程度やひとりひとりの発達状況、生活環境でも異なっています。また、1つの発達障害だけではなく他の発達障害と重なって現れる場合もあります。

発達障害は本人の努力や親のしつけや育て方に問題があるということでは決してなく、脳の働きの違いによるものです。

それぞれの特性を理解して支援していくことで、日常生活や社会生活に適応する力を高めていくことができます。

ASD(自閉スペクトラム症)

ASDは主に対人関係や社会的コミュニケーションが上手くできない発達障害です。

人や空間、特定の物事やルールに対するこだわりの強さも特性の1つであり、自分のやり方やペースを最優先にしようとする傾向があります。

その内容は人それぞれで個々の発達段階によっても異なり、成長に伴ってこだわりが変化することもあります。

他にも日常の変化や見通しの持てないことなどに対する不安感が強かったり、感覚が敏感もしくは反対に鈍感だったりする特性がある人もいます。

かつては言葉の遅れや知的障害がある「自閉症」と知的障害が目立ちにくい自閉症「アスペルガー症候群」「高機能自閉症」とでわけられていましたが、2013年より「自閉スペクトラム症」と総称されるようになりました。

ADHD(注意欠如多動症)

ADHDは注意を持続させることが難しく、落ち着きがないといった特性が見られる発達障害です。

具体的には、話を集中して聞くことが難しい、物を失くしやすい、正確に物事に取り組むことが難しい、気が逸れやすい、といった「注意欠如(AD)」と無意識的に常に体を動かしている、座っていられない、おしゃべりに夢中になり過ぎる、順番が待てない、感情・欲求のコントロールが難しいといった「多動性・衝動性(HD)」の特性です。

注意欠如(AD)の特性が強いタイプと多動性・衝動性(HD)が強いタイプ、そして両方の特性が見られるタイプにわけられることがほとんどとなっています。

ADHD(注意欠如多動症)は昨今の研究から、前頭葉の機能障害が関係しているとの見方が強まっています。

LD(学習障害)

LDは知的な発達に遅れはなく、「読む」「書く」「計算・推論」「聞く」「話す」ことの中で特定のものに対して習得や使用に極端な難しさが見られる特性があり、他の能力に関しては正常もしくは高い能力を持っています。

学習が始まる就学後に困難さに気付き診断につながるケースが多くありますが、幼児期に気付くケースもあり、その場合手先の不器用さや運動の苦手さなどの特徴が挙げられます。

LDは目や耳、皮膚といった感覚器官から入る情報を処理する脳の機能が通常と異なっていることが要因ではないかという説があります。

また、現在では限局性学習障害もしくは限局性学習症(SLD)と診断名が変更され、「読み」「書き」「計算」の分野に限定された診断定義となりました。

手が出てしまうシチュエーション

親と遊んでいる子供

遊んでいるおもちゃを取られた時

発達障害の特性の中には感情のコントロールの難しさを抱えている場合があります。

自分が使っているおもちゃを友だちが使ってしまったとき、「今使っていたよ」「おもちゃを取られて嫌だったよ」などすぐに言葉で相手に伝えられなかったり「自分の遊びを邪魔された」と自分の思い通りに物事が進まなかったりすると、衝動が抑えられず手が出てしまう子がいます。

このような場合には、一旦遊びの場から離れ、静かなところで話を聞きましょう。

嫌だった気持ちを受け止め、言葉での伝え方を知らせていきます。

理由はあっても手を出したらいけないこと、手を出したら友だちと楽しく遊びが続かないこと、手を出さなくても相手に思いを伝えられることを学んでいくのです。 

思っていることを伝えられない時

発達障害児には自分の感情を表現することが難しいといった特性の子どもが多く見受けられます。

不快な気持ちや困っていること、自分のしたいことなどをどのように伝えたら良いかわからず、手を出して思いを表現してしまう場合があります。

このような時にはその場に合った言葉の表現をその都度伝えていくと良いでしょう。

見合った言葉を相手に伝えてうまくいくという経験を繰り返すことで自信へとつながっていきます。

また、自分の思っていることをうまく言葉で伝えられず、手を出すといった表現方法になってしまう子どももいます。

その場合には仕草やポーズでの伝え方を知らせていく方法があります。

トラブルにならずに思いを伝えることができると手を出すことが減っていくでしょう。

嘘をつかれたり・バカにされた時

友だちにとっては冗談のつもりでも、発達障害の特性によって想像力が乏しく言葉を文字通りそのままの意味として受け取ってしまうことがあるため、真剣に取り合ってしまいがちです。

また、それが嘘であったと知ったときには、「嘘はいけない」という強いこだわりから怒り出して手を出してしまうこともあります。

自閉スペクトラム症には嘘をつかれることを極端に嫌がる特性がある子どもがいることを覚えておきましょう。

また、会話の前後や背後の関係をつかむのが難しい特性があり、話をわかりやすく説明しようとするためのたとえ話もかえって伝わりにくい傾向があります。

たとえ話をするとやりとりに誤解が生じてしまい、トラブルにつながるケースもあるため注意が必要です。

すぐに「手が出る」子どもの対処方法

積み木をしている子供の手

子どもが手を出してしまう理由を聞いてあげる

言葉より先に手が出てしまうことは、相手のこともあるので良くないこととして対処していくに越したことはありません。

つい頭ごなしに注意してしまいがちですが、まずは子どもの話を聞きましょう。善し悪しはもちろんありますが、子どもの行動の裏には必ず理由が存在するのです。

理由を聞き、事実を一旦受け止めてから「どのように行動する必要があったのか」を一緒に考えて紐解いていきましょう。

子ども自身も落ち着いた状況で感情や行動を見つめ直すことにも繋がりますし、話を聞くことで信頼関係が深まり自分のしてしまったことについて向き合おうとする子どももいます。

強く注意するよりも話に耳を傾けて返していくことが解決への近道といえるでしょう。

行動パターンを見直したり、レパートリーを増やす

発達障害の子どもの特徴の1つとして、何かが起こった時に対処しようとする際の行動パターンが少ないことが挙げられます。

何か1つ問題が起こった場合に軌道修正を図って「だったらこうしてみよう」と気持ちを切り替えていくつかの代替案を考え、再度挑戦すると思います。

しかし発達障害の子どもはこういったことが難しく、うまくいかないことが1つ2つ重なると、数少ない行動パターンのうち「自分の思い通りにうまくいかなかったから手を出す」といったところにすぐ行き着くのです。

代替案として行動のレパートリーが増えれば、自分の初めの思いと多少異なっていたとしても落としどころを見つけて気持ちを落ち着かせられることも増えていくでしょう。

行動のレパートリーは日頃の身近な出来事を通して子どもと一緒に考えていきながらトレーニングすることができます。

手を出さなかった時に褒めてあげる

手を出さずに友だちとやりとりができた時や、手を出すこと以外での行動のレパートリーを実践していた時には十分に褒めていくことが大切です。

褒め方にもポイントがあり、なんとなく「すごいね」では伝わりにくくなってしまいます。

「〇〇(名前)、貸してって言葉で言えたね!」というように名前を呼んで、うまくいったその時すぐ具体的に褒めるのが重要です。

子どもにとって日々積み重ねてきたことが結果として表れると自信へとつながっていきます。うまくいった経験を積んでいく中で褒められることにより、一層実感が湧いてくるものです。

また、同じような場面に出会った場合に「次も今回のように対処すれば大丈夫なんだ」という理解にもなります。

保護者の方にも情報共有しながら一緒に褒めてもらうのも効果的ですね。

まとめ

親と子供の手

小学校に入ってから頻繁に友だちに手が出る子どもは、発達障害であることを視野に入れておく必要があります。

自閉スペクトラム症やADHDといった発達障害の特性には、他者とのコミュニケーションを取ることに難しさを感じる特性により、自分の思いが伝えられず咄嗟に手が出てしまうことがあります。

家庭で取り組める対応策もありますが、児童発達支援デイサービスや放課後デイサービスなど集団の中で専門家による療育を受けることで今後どのような手立てが必要なのかが明確になるのでおすすめです。

また、ソーシャルスキルワークを含め、一人一人に合った支援を受けられるため、今後の生活の改善につながるでしょう。 

周囲の協力を得ながらできることから1歩ずつ、子どもがより良い将来を歩めるよう最善を尽くしていけたらいいですね!

ご利用のお問い合わせはコチラ
ウィズ・ユーで働いてみませんか

この記事を書いた人

ウィズ・ユー編集部

ウィズ・ユー編集部