発達障害の子どもがベタベタしてくるのはなぜ?ベタベタする理由と上手く向き合う方法をご紹介

笑顔の親子

人との適度な距離感というのは、社会生活の中でお互い気持ちよく過ごすためには必要なことです。しかし、発達障害の子どもは相手との距離感がうまく取れず、近づきすぎてしまうことがあります。本人はそのようなつもりがなくても相手からは過剰なスキンシップと捉えられてしまうことがあるため、そのような子どもには大人が適切な距離感を保てるように繰り返し伝えていくことが大切です。

今回は、発達障害の子どもが必要以上にベタベタしてくる場合にはどのように対処していけばよいのか、原因と併せて解説していきます。

発達障害の子どもがベタベタしてくるのには理由がある

おもちゃで遊ぶ子供の手

不安な気持ちになっている

子どもは不安を感じると甘えたくなり、ベタベタしてきたりスキンシップを求めてくることが多くあります。こうして安心感を得ようとしたり、ストレスを緩和させたりするのです。

発達障害の特性として、不安感が強いといったものがあります。思考がネガティブになりがちで、相手の態度や言葉が悪い方に感じられて神経質になってしまう子もいます。

また、普段と違った生活の流れがあるとより不安を感じてパニック状態であることもベタベタしてくる理由の1つとして考えられます。そのような時にはまず落ち着かせることが大切です。環境を変えるために別の場所に移動し、落ち着くまで過ごすというのも効果的です。

自分の気持ちをわかってほしい

発達障害の子どもは、自分の気持ちを言葉にしなくても相手はわかってくれているだろうという誤解をしている可能性があります。

周囲の人が普段から気持ちを汲み取って代弁してくれたり、やって欲しいことを察して先回りしてくれたりすることによって、自分の気持ちをわかってほしい時に言葉で伝えずにベタベタすることでアピールするのです。

このような場合には、気持ちをわかっていたとしても先に言ったり行動したりせず、子どもが自分の言葉で伝えられるようアシストします。

同時に言葉での伝え方を知らせ、実際に言えるようにしていきましょう。

また、「自分を見てほしい」という気持ちからベタベタしてくる子もいます。

「ちゃんと見ているよ」ということを言葉にして伝えたり、離れている場所から手でOKマークを出すなどジェスチャーを送ったりアイコンタクトを送ったりすることで安心することがあります。

親のそばから離れたくない

親がいない環境に大きな不安を感じる「母子分離不安」というものがあります。成長するにつれて「保護者が見守っていてくれているから離れても大丈夫」「保護者が見えなくなっても大丈夫」ということが経験から身についていきます。

しかし、自閉スペクトラム症の子どもは相手の立場になって物事を捉えることが難しい特性があります。「お母さんはちゃんと見守ってくれている」という状況がわからないため、「大丈夫」という感覚になることが難しいのです。

また、自閉スペクトラム症には不安感が強いといった特性も持ち併せていることが多いため、親の側から離れることに強い抵抗を見せることがあります。

このような場合には、「見守っている」ということを態度だけで示すのではなく、言葉に出してしっかりと伝えていくことが大事です。焦らず少しずつ親との距離を取っていけるようスモールステップで進めていくことが大きなポイントとなってくるでしょう。

愛情をもっと感じたい

発達障害児は愛着形成がゆっくりな傾向があるとも言われています。愛着形成というのは、信頼できる特別な人(養育者など)からの“無条件な永遠の愛”を子どもが実感するということです。

この愛着形成は乳幼児期に確立されることがほとんどですが、発達障害児の場合には8歳~9歳頃から愛着関係を求めるケースも珍しくありません。乳幼児期にはスキンシップが薄かったのに、少し成長してからベタベタし始めた子どもはもしかするとこのケースである可能性が考えられます。「もう小学生なんだから」と距離を取りたくなるかもしれませんが、乳幼児期に確立が難しかった愛着形成をいま行なっているところだと考えましょう。

愛着形成ができている子どもとそうでない子どもとでは今後のコミュニケーションにおける様子が変わってくる可能性があるため、ゆっくりとはいえ確立させていくべきです。

しかしながら成長するにつれて他者に対しベタベタすることは社会のルールや相手の気持ちを考えたときにすべてよしとするのは危険です。他者とのスキンシップの取り方を同時に教えていく必要があるでしょう。

発達障害と愛着障害の違い

発達障害とは

発達障害とは、「自閉スペクトラム症」「ADHD(注意欠如・多動性障害)」「LD(学習障害)」「知的能力障害」などがあり、先天的な脳機能の発達に関係していると言われています。主に認知、言語、社会性、運動といった面において得意な部分と苦手な部分に偏りがある障害です。

他にも、「協調運動症」「チック症」「吃音」「トゥレット症」も含まれるとされています。

同じ障害名でも特性は人によってさまざまで、障害の程度やひとりひとりの発達状況、生活環境でも異なっています。また、1つの発達障害だけではなく他の発達障害と重なって現れる場合もあります。

これらは本人の努力や親のしつけや育て方に問題があるということでは決してなく、脳の働きの違いによるものです。

それぞれの特性を理解して支援していくことで、日常生活や社会生活に適応する力を高めていくことができます。また、薬の服用により症状の安定につながることもあります。

さらに、発達障害は気持ちや感情によって特性が現われるわけではありません。

例えば多動であれば、気持ちや感情に関わらず常に体が動いたり、急な予定変更による環境の変化による不安からくる動きの多さであったりします。

またルールを守ったり片付けをする場面では、頭ではやらなくてはいけないということを理解しているものの、適切な行動を実行に移したりやり遂げたりすることが難しいところがあります。反対に適切でない行動を抑え切れないことが多いのです。これらは本人の意欲や感情によるものではありません。

よく特性が似ている愛着障害と誤解されることがありますが、愛着障害はその時々の感情に左右されて特性の出方にムラが生じるため、発達障害とは異なります。

愛着障害とは

乳幼児期の子どもと養育者との間で健全な愛着関係が形成されず、情緒面や対人関係に問題が生じてしまったことを指します。何らかの理由で乳幼児期に養育者と離れて生活をした人や、虐待を受けた人、きょうだい間の差別を受けた人、褒められる経験が極端に少なかった人に多いとされています。

愛着障害は主に2種類に分類され、助けが必要な状況下においても人に頼る努力ができない「反応性愛着障害」と、誰にでも馴れ馴れしく甘える「脱抑制愛着障害」とがあります。

愛着障害の子どもは、愛着形成の過程で培われる自尊心や自立心、社会性などが育ちにくく、大人になってからコミュニケーションなど社会生活に影響が出てきます。

愛着障害の子どもは、意図的にいたずらなど良くないことをして相手がどのような反応をするのかお試し行動をしてみせることがあります。

主に「物を投げる」「物を壊す」「よく嘘をつく」「暴力をふるう」「言われたことと反対のことをしてみる」「声を掛けても嫌だと言って行動しない」などが挙げられます。

愛着障害の子どもによく見られる自尊心や自己肯定感の低さがこのような確認方法を取ってしまう要因と考えられています。注意されたり叱られたりすることで自分に注目が向いていると捉え、気に掛けてもらえている喜びとして感じ取ってしまうのです。

愛着障害の中には、安心を得るために特定の人に過剰な甘えを見せる子どももいます。時に性被害の対象となる場合もあり、注意が必要です。

発達障害の特徴と似ているところがありますが、愛着障害は後天的なものであり、生まれつきである発達障害とは異なります。

子どもがベタベタしてきた時の対処方法

手を繋いでいる親子

子どもがベタベタしてきたらまずは受け入れてあげる

年齢が上がってくるにつれて過剰なスキンシップをされると「そろそろやめさせた方がいいのでは」とつい止める方への気持ちが強くなってしまいますが、まずは一旦受け入れましょう。

スキンシップに対し急な突き放しや否定をしてしまうと、子どもにストレスなどの負荷がかかり、別の面での問題を抱えかねません。

例えば暴力や暴言、物を壊すなどの行動に出ることもあります。また、思春期であれば口を聞かなくなったり、摂食障害を起こす子どももいてデリケートな問題へと発展してしまう可能性もあるため注意が必要です。

また発達障害の子どもにとって、愛情表現の方法が身体接触であると捉えている可能性も高くあるため、この場合にはベタベタする以外の心地良いスキンシップ方法を知らせていくことも1つです。

例えば握手やハイタッチなどでも良いでしょう。

ベタベタするよりも別の嬉しい関わり方を理解し体感していくことで、適度な距離感のスキンシップへの効果が期待できますね。

言葉に表現してあげて理解させてあげる

子どもがベタベタしてきた時にはそのまま受け入れるのではなく、「そばでくっついていたかったんだよね」とベタベタしてきた行動の理由を言葉に換えて伝えることが重要です。

必要以上のスキンシップが日常的なコミュニケーションとして癖のようになっている場合もあるので、どんな理由で自分がベタベタしているのかを認知させましょう。

「ベタベタされるのが嫌な人もいる」ということを理解した時にはその衝動的な気持ちを抑えることもできるようになってきますよ。

他にも、パーソナルスペースについて距離感の目安を具体的な言葉を使って知らせていく方法もあります。パーソナルスペースとは、「その人の心地よい距離感」であり、日頃のその人との関わりの中でわかっていくものですが、発達障害の特性によってはその距離感をつかむのは難しい子どももいます。

そういった子どもには「前ならえをした時にぶつからない距離を取ろうね」であったり、身近なものをものさしにして「クッション1つ分は空けて座ろうね」などと実際に目で見てわかるように伝えます。ちょうどよい距離感が保てた時には褒めて伸ばしていきましょう。

子どもの言いなりではなくダメなことはダメと伝える

前述に一旦受け止めると解説しましたが、場合によってははっきりといけないということを伝えることも重要です。

小学校高学年くらいになってからも異性に抱きついてしまったり他の人の髪の毛を触ってしまったりするときには社会のルールをもとにしっかりと伝えていきましょう。相手が仲の良い子どもで許してくれていたとしても、そのままにせず話をしていくことが大切です。同様に他の人にしてしまった場合には大きなトラブルへと発展しかねません。周囲の協力を得ながら、お子さんの今後の社会生活のことを考えて根気強く伝えていくようにしましょう。

ダメと伝える場面では、「くっついちゃダメ」「抱きついちゃダメ」などといった否定的な言葉を使うと、「接近回避葛藤」と呼ばれるもっと近づきたいという衝動となる場合があります。手本を示したりどういう関わり方をしたらお互いいいのかということを中心に話をしていきましょう。

発達障害の子どもを甘やさずにしっかり叱る場面

学校の授業中

他の人やお友達に迷惑をかけた時

人は迷惑をかけずに生活していくことはできません。発達障害の子どもの場合には特に、理解や協力を求める場面は多くなるでしょう。しかしながら、あらゆることを「発達障害だから許容して欲しい」というのは考えものです。相手が許してくれたとしても、我が子には“迷惑をかけてしまったこと”、“なぜ、どんなところが迷惑であったのか”“この迷惑によってどのような影響が出るのか”についてしっかりと伝えていくことは大切です。

発達障害のある子どもは、言葉によるコミュニケーションや相手の気持ちや様子を想像することに難しさを感じるところがあります。できるだけ簡単な言葉でやっていいこととそうでないことを整理してわかりやすく伝えていくことが望ましいといえます。

相手があることなので感情的に叱ってしまいそうになることもあるかもしれませんが、感情的な言葉は使わず論理的にしっかりと伝えていく中で社会的な善悪を身に付けられるようにしていきましょう。

集団や学校のルールを守れなかった時

発達障害の特性によって、ソーシャルスキルやコミュニケーションスキル、社会性を習得することに時間がかかるところがあります。

しかし集団生活の中ではルールを守っている周囲の人からすれば不快に感じたり、集団行動がうまく成り立たなかったりして迷惑となってしまうことがあります。

その都度ルールを確認し伝えていくことはもちろんですが、その他にも日々の取り組みが必要となってきます。

社会性を育むには、ソーシャルスキルトレーニングを受けることが効果的です。ソーシャルスキルトレーニングとは、周囲の人に対する態度や話の仕方など適切な表現の仕方を身につけていくものです。

ソーシャルスキルトレーニングは、専門家の力を借りながら進めていくことをおすすめします。

自分自身の体を痛めつけている時

ストレスや困難を感じた時やパニックになった時、特性によっては欲求不満を消化するために自傷行為をする発達障害の子どもは少なくありません。体をつねる・噛む、髪をむしる、壁や床に頭を打ち付けるなどの行為をすることが多く、危険が伴います。子どもの思いを受け止めながらも、自分自身の生命や健康に影響のある行為については“なぜしてはいけないのか”を丁寧に話をしましょう。

子どもが自傷行為をしている姿を見てしまうと保護者としては心が痛み、そして慌ててしまいます。しかし必死なあまり大きな声を出したり声を荒げたりするのは逆効果です。努めて冷静に対応しましょう。

自分の感情や思いを言葉で表すのが難しい子どもに関しては、自傷行為ではない別の方法でコミュニケーションを取れる方法を見出していくのも1つです。絵カードやサイン、そのほかその子にとって伝えやすい方法を探していきます。自傷行為以外で伝えられた時には十分に褒めることも忘れずに行なっていきましょう。

まとめ

ジャンプする4人の子供

子どもがある程度の年齢になってからも必要以上にベタベタと身体接触をする場合には、発達障害である可能性があります。

発達障害の特性によるものだとはいえ、家族以外の人への過剰なスキンシップは社会的ルールとしても少しずつ控えていかなければなりません。

「ベタベタする」という行動1つ取っても色々なケースが考えられます。子どもそれぞれの理由や特性に合わせて対処していきたいものですね。

そういったことを含むソーシャルスキルトレーニングや、日常生活における困難さを緩和していく手立てを一緒に考えてくれる児童発達支援デイサービスや放課後デイサービスなどを利用してみるのもいいでしょう。学校以外の集団生活の場でさまざまな経験を通して、より成長していくことが期待できます。

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ウィズ・ユー編集部

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