本ばかり読む子はアスペルガー症候群?気になる特徴と子どもの伸ばし方

本を読む男の子

「うちの子、一人で本ばかり読んでいて、他のことに興味を示さない…」読書好きは素晴らしい個性だと頭ではわかりつつも、このままでコミュニケーション能力や社会性が育つのか、不安を感じていませんか。

食事や宿題の時間になっても本の世界に没頭し、なかなか切り替えられずに、ついイライラしてしまう。そんな毎日に、親としてどう関わればよいのか悩んでしまいます。

その驚くほどの集中力の背景には、実は「アスペルガー症候群(ASD)」という生まれ持った脳の特性が関係しているかもしれません。

この記事では、子どもの「本好き」という才能を最大限に伸ばし、将来の可能性に繋げるための具体的な関わり方や声かけの工夫についてくわしく解説します。

ASDの特性を持つ子どもが本に没頭しやすい 4つの理由

本を見ている男の子

予測可能で「安心できる」世界だから

ASD(自閉スペクトラム症)の特性を持つ子どもが本の世界に夢中になるのは、そこが変化の少ない「予測可能な世界」だからです。

現実の対人関係では、相手の表情や声のトーンから気持ちを読み取る必要があり、次に何が起こるか予測が難しい場面が少なくありません。しかし、物語の中では出来事の展開に筋道があり、登場人物の行動や感情も文字で明確に説明されています。

このようなルールがはっきりしていて、結末まで予測できる世界は、変化を苦手とする子どもにとって非常に心地よい環境なのです。何度も同じ本を読み返すのも、毎回必ず同じ物語が展開されるという「変わらないこと」への安心感を求めているのかもしれません。

興味のある情報を効率的に収集できるから

本は、ASDの特性の一つである「特定分野への強い興味」を存分に満たしてくれる、最高の情報源となります。恐竜、宇宙、歴史上の人物など、一度興味を持つと専門家のように深く知識を掘り下げていく子どもにとって、体系的に情報がまとめられた本はまさに宝の山です。

インターネットのように情報が散乱しておらず、一つのテーマについて順序立てて解説されているため、効率的に知識を吸収できます。誰にも邪魔されずに効率よく集められる読書は、知的好奇心を満たすための最適な手段といえるでしょう。

曖昧な非言語的コミュニケーションが不要だから

本の世界は、言葉だけで完結しているため、ASDの特性を持つ子どもにとって非常に心地よい場所です。

日常の会話では、言葉そのものの意味だけでなく、相手の表情、声のトーン、身振り手振りといった非言語的な情報(いわゆる「場の空気」)を読み取る必要があります。

これらの曖昧な情報を読み解くのが苦手な子どもにとって、対人コミュニケーションは大きなエネルギーを消耗する活動です。

しかし、読書中は文字情報だけに集中すればよく、相手の気持ちを推し量るのに疲れてしまうこともありません。書かれた言葉だけで成り立つ本の世界は、コミュニケーションのストレスから解放され、心からリラックスできる貴重な時間なのです。

感覚過敏の子にとって心地よい環境だから

読書という行為は、ASDの特性として見られることがある「感覚過敏」を持つ子どもにとって、刺激の少ない快適な環境を提供してくれます。

大きな音、まぶしい光、人々のざわめきなど、特定の感覚刺激に対して過敏に反応してしまう子どもは少なくありません。集団の中にいるだけで、様々な刺激によって疲れ果ててしまうこともあります。

そのような子どもにとって、一人で静かに本を読む時間は、不快な感覚刺激から身を守るための安全な避難場所となります。自分の部屋や図書室の隅など、落ち着ける場所で読書に没頭することで、外部の刺激をシャットアウトし、心の平穏を保つことができるのです。

読書好きがもたらすメリット

本を一緒に見ている子供たち

語彙力と思考力が向上する

読書に没頭することは、子どもの言葉の世界を豊かにし、物事を深く考える力を飛躍的に向上させます。

本の中には、日常会話ではあまり使われないような多彩な言葉や美しい表現があふれています。それらに繰り返し触れることで、語彙が自然と増え、自分の気持ちや考えを的確に表現する力が身についていくでしょう。

また、物語の登場人物の心情を想像したり、複雑な話の筋道を追いかけたりする経験は、論理的な思考力や問題解決能力を育む素晴らしいトレーニングになります。たくさんの本を読むことで、知らず知らずのうちに、しなやかで力強い知性が養われていくのです。

知識が深くなる

一つのことに熱中できるという素晴らしい才能は、特定の分野において驚くほど深い知識を蓄積させます。好きなテーマの本を次々と読み進めることで、大人顔負けの専門知識を持つ「小さな博士」になることも珍しくありません。

この「知っている」という感覚は、子どもにとって大きな自信の源になります。例えば、恐竜の学名をすべて覚えていたり、歴史上の出来事の年月日を正確に記憶していたり、その知識量は計り知れません。

周りの友達や大人から「物知りだね!」と認められる経験は、自己肯定感を高め、さらに知的好奇心を刺激するよい循環を生み出します。

得意分野を持つことが自己肯定につながる

「これだけは誰にも負けない」という得意な分野を持つことは、子どもの心を支える太い幹となります。

ASDの特性を持つ子どもは、周りの人とのコミュニケーションや集団行動で、自信を失いそうになる場面があるかもしれません。

そのような時に、「自分にはすごい知識がある」という自信が、困難を乗り越えるための大きな力になります。読書を通じて得た深い知識を誰かに教えたり、クイズで活躍したりすることで、「自分は価値のある存在だ」と実感できます。

この自己肯定感は、新しいことに挑戦する勇気や、様々な人々と関わっていく上での大切な土台となってくれるでしょう。

子どもの知的好奇心をさらに伸ばす親の関わり方

お父さんと絵本を見る女のこ

興味・関心を否定せず、共有する

子どもが夢中になっている世界を、「またその話?」と遮るのではなく、最高の聞き手になって一緒に楽しむ姿勢を見せることが大切です。子どもが読んでいる本を手に取り、「面白いところを教えてくれる?」と声をかけてみましょう。

子どもはきっと、目を輝かせながら専門家のように詳しく解説してくれるはずです。その知識を褒めたり、驚いたりすることで、子どもは「自分の好きを認めてもらえた」と感じ、親子の信頼関係が深まります。

子どもの興味を共有することは、子どもの世界を広げる第一歩であり、自己肯定感を育む最高の関わり方となります。

本の世界から現実世界へ橋渡しをする

子どもの興味を、本の中だけで完結させずに、実際の体験へとつなげてあげましょう。これは、子どもの世界を広げ、社会との接点を作るための素晴らしい機会になります。

例えば、以下のような働きかけが考えられます。

図鑑や物語に出てきた場所へ行く

  • 恐竜の図鑑が好きなら、博物館の化石展へ足を運ぶ
  • 海の生き物の本に夢中なら、水族館へ出かける
  • 物語の舞台になった街や城を実際に訪れてみる

本の内容に関連した活動をする

  • お菓子のレシピ本を読んだら、一緒にそのお菓子を作ってみる
  • 工作の本を参考に、何かを創作してみる

本で得た知識が現実世界と結びつくことで、学びがより深く、立体的なものになっていきます。

コミュニケーションの練習として読書を活用する

読書後の時間を、親子の大切なコミュニケーションの時間として活用してみましょう。一方的に感想を求めるのではなく、クイズを出し合うような楽しい雰囲気を作ることがポイントです。

「この主人公は、どうしてこんな行動をしたんだと思う?」と問いかけることで、相手の気持ちを推測する練習になります。また、「もし君が主人公だったら、どうする?」と尋ねれば、自分の考えを整理し、言葉で表現するよいトレーニングになります。

物語という共通の話題があるため、普段は無口な子どもも、自分の意見を話しやすくなるかもしれません。読書を通じて、楽しみながら社会性を育む手助けができるのです。

生活のメリハリをつけるルールを作る

集中しすぎてしまう子どもには、強制的に中断させるのではなく、見通しを立てやすいルール作りが効果的です。切り替えが苦手なのは、次に何をすればよいか分からず、今の安心できる世界から離れたくない気持ちが強いからです。

そこで、子どもと一緒に相談しながら、生活の中にメリハリをつけるための簡単なルールを決めてみましょう。

時間の見える化

 「長い針が6のところに来たら、本はおしまいにしてご飯にしようね」と、時計やタイマーを使って具体的に時間を示す。

キリのよい区切りを提案する

 「この章を読み終えたら、お風呂の時間にしようか」と、子どもが納得しやすい区切りを提案する。

事前に声かけをする

 「あと10分でやめようね」と、終わりの時間を前もって知らせることで、心の準備ができます。

さらに、「次にやることを選ばせる」のも有効な手段です。

「本を終わりにしたら、夕飯の準備とお風呂掃除、どっちを手伝ってくれる?」というように、次にすべきことの中から選択肢を示してみましょう。自分で決めたという納得感が生まれるため、指示されたという抵抗感を和らげることができます。

また、「この本を片付けたら、後で一緒に好きなアニメを見ようね」と、切り替えた後の楽しい予定を伝えるのもよいでしょう。気持ちを切り替えることへの見返りが明確になるため、子どもも前向きに行動しやすくなります。

大切なのは、親が一方的に決めるのではなく、子どもが自分で納得してルールを守れるようにサポートすることです。

読書以外の「安心できる場所」を増やす

本の世界が唯一の避難場所にならないように、読書以外にも子どもが「安心できる」「楽しい」と感じられる活動を見つけてあげましょう

読書と同じように、一人で静かに集中でき、かつ先の展開が予測しやすい活動がおすすめです。

例えば、以下のようなものが考えられます。

  • パズルやジグソーパズル
  • レゴブロックや積み木
  • お絵かきや塗り絵、粘土遊び
  • プログラミング
  • 特定の音楽を聴くこと

選択肢が増えることで、子どもは気分や状況に合わせて自分で心のバランスを取れるようになります。

無理に友達と遊ばせるのではなく、まずは一人で楽しめる活動の幅を広げていくことが、結果的に社会性を育む土台作りにも繋がります。

電子書籍やオーディオブックも活用する

読書の形にこだわらず、子どもの特性に合わせて様々なツールを取り入れてみるのも一つの方法です。

例えば、紙の本よりもタブレットの画面の方が見やすい、集中しやすいという子どももいます。電子書籍であれば、文字の大きさを変えたり、背景色を調整したりできるため、視覚的な刺激に敏感な子どもには合うかもしれません。

また、文字を読むこと自体に疲れを感じやすい子どもには、「耳で聞く本」であるオーディオブックもおすすめです。物語を音声で楽しみながら、想像力を膨らませることができます。

子どもにとって最も快適な方法で本の世界に触れられるよう、様々な選択肢を提示してあげてください。

専門家と繋がることで、もっと親子が楽になる

先生に教えてもらっている男の子

相談は「答え合わせ」ではなく「ヒント探し」

専門家への相談は、自分の育て方が正しかったかどうかの「答え合わせ」をしに行く場所ではありません。毎日子どもと向き合っているお母さん、お父さんのやり方を否定する人は誰もいません。

専門家への相談は、親子にとってよりよい関わり方を見つけるための「ヒント」を探しに行く場所だと考えてみてください。子育てに唯一の正解はなく、子どもの特性や家庭の状況によって最適な方法は異なります

たくさんの親子を見てきた専門家から客観的なアドバイスをもらうことで、今まで気づかなかった新しい視点や工夫が見つかるかもしれません。一人で抱え込まず、様々な知恵を借りるという気持ちで、気軽にドアを叩いてみましょう。

専門家に相談するメリット

専門家につながることは、子どものためだけでなく、保護者の方自身の心を支える上でも非常に大きな意味を持ちます。客観的で専門的な視点からアドバイスをもらえるため、子どもの行動の理由が理解でき、冷静に対応できるようになります

具体的なメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

メリット具体的な内容
客観的な視点が得られる家庭の中だけでは気づきにくい、子どもの特性や行動の背景を客観的に分析してもらえます。
具体的な対応策がわかる日常生活での困りごとに対して、専門的な知見に基づいた具体的な声かけや環境調整の工夫を教えてもらえます。
利用できる支援を知れる公的な福祉サービスや療育プログラムなど、親子をサポートしてくれる制度や機関の情報を得ることができます。
親の不安が和らぐ同じような悩みを持つ他の保護者の話を聞いたり、専門家に共感してもらうことで、「一人じゃない」と安心でき、精神的な負担が軽減されます。

日々の不安や悩みを共有できる場所があるというだけで、心にゆとりが生まれるはずです。

おもな相談窓口

どこに相談すればよいか分からない場合、まずは身近な窓口から気軽に連絡を取ってみてください。子どもの発達について相談できる場所は、決して敷居の高いところではありません。

以下に代表的な相談窓口を挙げます。

市区町村の保健センター・子育て支援課

地域で最も身近な相談窓口です。保健師や専門の相談員が話を聞き、必要に応じて専門機関につないでくれます。

児童発達支援センター

発達に支援が必要な子どものための専門機関です。療育プログラムの提供や、日常生活に関する相談に応じています。

かかりつけの小児科

子どもの成長を継続的に見てくれている医師に相談するのもよい方法です。専門の医療機関を紹介してもらえることもあります。

学校のスクールカウンセラーや特別支援教育コーディネーター

学校生活での様子について、専門的な視点からアドバイスをもらうことができます。家庭と学校が連携する上での重要な窓口です。

まずはお住まいの地域の情報を調べて、電話一本かけることから始めてみましょう。

まとめ

ママと楽しそうに絵本を見ている女のこ

子どもが本の世界に没頭するのは、そこに安心できる予測可能な世界があり、尽きることのない知的好奇心を満たしてくれるからです。

その姿は、周りと同じようにできないという「短所」ではなく、一つのことを深く探求できる素晴らしい「才能」の表れです。

読書を通じて得られる豊かな語彙力、深い知識、そして「自分はこれが得意だ」という自己肯定感は、子どもが将来、自分らしく生きていくための大きな力となるでしょう。大切なのは、その才能の芽を摘むことなく、興味を共有し、本の世界と現実の世界を繋いであげることです。

もちろん、日々の生活とのバランスに悩むこともあると思います。そのような時は、決して一人で抱え込まず、専門家の力も借りながら、子どものペースに寄り添って歩んでいきましょう。親子の関わり方一つで、子どもの持つ可能性は無限に広がっていきます。

ご利用のお問い合わせはコチラ
ウィズ・ユーで働いてみませんか

この記事を書いた人

ウィズ・ユー編集部

ウィズ・ユー編集部