
「質問しても同じ言葉が返ってくる」「CMのセリフばかり繰り返している」
そんな我が子の姿に、戸惑いや不安を感じていませんか。
周りの子は「ママ、これ見て!」と話しかけているのに、うちの子は会話にならない。
もしかして発達障害のサインなのかと、一人で悩みを抱え込んでしまう方も少なくありません。
実は、オウム返し(エコラリア)には子どもなりの理由があり、一見意味がないように見える繰り返しの中にも「伝えたい気持ち」が隠れていることが多いのです。
この記事では、オウム返しをする子どもの心理を5つの視点から解説し、発達障害との関係、そして家庭でできる具体的な接し方まで、専門的な知識をわかりやすくお伝えします。
子どもがオウム返しをする理由

オウム返し(エコラリア)とは?
オウム返しとは、相手が言った言葉をそのまま繰り返す行動のことで、専門用語では「エコラリア」と呼ばれています。
たとえば「ごはん食べる?」と聞くと「ごはん食べる?」とそのまま返ってきたり、テレビで聞いたCMのフレーズを何度も口にしたりするのが典型的な例です。
この行動は、言葉を獲得していく発達の過程で多くの子どもに見られるもので、必ずしも異常なことではありません。
ただし、その頻度や年齢、他の発達の様子によっては、自閉スペクトラム症(ASD)などの発達特性と関連している場合もあります。
大切なのは、オウム返しそのものを問題視するのではなく、子どもがなぜその言葉を繰り返しているのか、その背景を理解しようとすることです。
自閉スペクトラム症(ASD)の子に多く見られる理由
自閉スペクトラム症(ASD)の子どもにオウム返しが多く見られるのには、いくつかの理由があります。
まず、ASDの特性として「言葉の意味を理解する力」と「言葉を使ってコミュニケーションする力」の発達にアンバランスが生じやすいという点が挙げられます。
つまり、言葉を「音」として記憶する力は優れていても、その言葉が持つ意味や文脈を理解することが難しい場合があるのです。
また、相手の質問の意図を瞬時に理解して、適切な返答を組み立てるという一連の処理に時間がかかることも関係しています。
言葉の発達段階としての「オウム返し」の重要性
オウム返しは、実は言葉の発達において重要なステップの一つです。
赤ちゃんが「マンマ」「ブーブー」と大人の言葉を真似し始めるように、人間は言葉を「聞いて」「真似して」「使ってみる」というプロセスを経て言語を習得していきます。
1歳半から2歳頃の子どもがオウム返しをするのは、まさに言葉を覚えている最中の自然な姿といえます。
この時期、子どもは大人の言葉を繰り返すことで、音の響きやリズム、言葉の使い方を学んでいるのです。
定型発達の子どもの場合、成長とともに徐々にオウム返しは減り、自分の言葉で表現できるようになっていきます。
一方で、3歳を過ぎても頻繁にオウム返しが続く場合や、コミュニケーションの大部分がオウム返しで占められている場合は、専門家に相談してみることをおすすめします。
いつまで続く?自然になくなる時期
定型発達の子どもの場合、オウム返しはおおむね2歳半から3歳頃までに自然と減っていくことが多いです。
この頃になると、語彙が増え、簡単な会話ができるようになるため、オウム返しをする必要がなくなっていきます。
ただし、発達のペースには個人差があるため、3歳を過ぎてもオウム返しが残っている子どももいます。
重要なのは「いつなくなるか」にこだわりすぎないことです。
オウム返しをしながらも、少しずつ言葉のバリエーションが増えたり、場面に合った言葉を選べるようになったりしていれば、それは確実に成長している証拠です。
オウム返しの裏に隠された5つの心理

理由1:言葉の音やリズムを覚えている段階
子どもがオウム返しをする最も基本的な理由の一つは、言葉の音やリズムを学習している段階にあるからです。
子どもにとって、言葉は最初「意味を持つ道具」ではなく、「面白い音の連なり」として認識されています。
特にASDの子どもは、言葉の「音声的な側面」に対する感受性が高いことが多く、意味よりも先に音として言葉を取り込んでいることがあります。
焦らず、たくさんの言葉を聞かせてあげることが、この時期には大切です。
理由2:質問の意図が理解できず時間をかせいでいる
「今日、保育園で何したの?」と聞いたとき、「何したの?」と返ってきた経験はありませんか。
これは、子どもが質問の意味を瞬時に理解できず、返答を考える時間をかせぐためにとりあえず聞こえた言葉を返している状態です。
特に「いつ」「どこで」「なぜ」といった抽象的な質問は、子どもにとって答えを組み立てるのが難しいものです。
オウム返しが出たときは「質問が難しかったかな」と考え、聞き方を工夫してみてください。
理由3:正しい返し方がわからない
オウム返しをする子どもの中には、「どう答えればいいのか本当にわからない」というケースも多く見られます。
私たちは、質問されたら答える、挨拶されたら返す、という会話のルールを自然と身につけていますが、これは実は非常に複雑なスキルです。
相手の言葉を理解し、適切な返答を考え、言葉にして発するという一連の流れは、多くの認知能力を同時に使う必要があります。
発達に特性がある子どもの場合、この「暗黙のルール」を自然に習得することが難しいことがあります。
そのため、答え方がわからないときに「とりあえず聞いた言葉をそのまま返す」という対処法を取るのです。
理由4:安心感を得るための自己刺激行動
聞き慣れた言葉やフレーズを繰り返すことで、心を落ち着かせ、安心感を得ているケースもあります。
これは「自己刺激行動」と呼ばれるもので、不安やストレスを感じたときに、自分なりの方法で気持ちを調整しようとする行動です。
無理にやめさせようとすると逆にストレスが増してしまうことがあるため、まずは子どもが不安を感じている原因に目を向けることが大切です。
環境を整えたり、安心できる声かけをしたりすることで、自然と落ち着いていくことが多いです。
理由5:コミュニケーションへの反応の一つとして
意外に思われるかもしれませんが、オウム返しが「コミュニケーションの意図を持った反応」であるケースも少なくありません。
たとえば、「おやつ食べる?」という問いかけに「おやつ食べる?」と返す場合、「食べたい」という気持ちを伝えようとしている可能性があります。
「はい」や「食べる」という言葉の使い方がまだわからないため、聞いた言葉をそのまま返すことで意思表示をしているのです。
また、好きなアニメのセリフを繰り返すことで「僕はこれが好きなんだ」と共有しようとしていることもあります。
このように、一見意味のない繰り返しに見えても、子どもなりの「伝えたい気持ち」が込められていることは多いのです。
種類によって対応は違う!「即時エコラリア」と「遅延エコラリア」

質問をそのまま返す「即時エコラリア」の特徴
即時エコラリアとは、相手が言った言葉を直後にそのまま繰り返すタイプのオウム返しです。
このタイプのエコラリアは、質問の意図がわからないときや、どう答えていいかわからないときに起こりやすい傾向があります。
また、言葉を処理する時間をかせいでいたり、会話に参加しようという意思の表れだったりすることもあります。
即時エコラリアが多い場合は、質問の仕方を工夫したり、答えの見本を示したりすることで改善が期待できます。
「ごはん食べる?食べるときは『うん』って言ってね」のように、返し方を具体的に教えてあげると効果的です。
CMや動画のセリフを繰り返す「遅延エコラリア」の特徴
遅延エコラリアは、過去に聞いた言葉やフレーズを時間が経ってから繰り返すタイプのオウム返しです。
テレビCMのフレーズ、アニメのセリフ、過去に言われた言葉などを、その場の状況とは関係なく口にすることが特徴です。
このタイプのエコラリアは、記憶した言葉を使って自分の気持ちを表現しようとしているケースが多く見られます。
一見脈絡がないように見えても、子どもなりに場面と言葉を結びつけようとしている努力の表れかもしれません。
遅延エコラリアは「記憶力」が良い証拠?
遅延エコラリアをする子どもは、聴覚的な記憶力が優れていることが多いといわれています。
一度聞いただけのCMのフレーズや、複雑なアニメのセリフを正確に覚えて再現できるのは、並外れた記憶力があってこそです。
この能力は、将来的に外国語の習得や音楽の分野で活かせる可能性を秘めています。
「なぜ同じことばかり言うの」とネガティブに捉えるのではなく、「こんなに覚えられるなんてすごい」という視点を持つことも大切です。
その優れた記憶力を、コミュニケーションに活かす方向にサポートしていくことが、子どもの可能性を広げることにつながります。
注意すべきは「不快な言葉」や「叱られた言葉」を繰り返すケース
遅延エコラリアの中で特に注意が必要なのは、過去に叱られた言葉や、ネガティブな言葉を繰り返すケースです。
「ダメでしょ!」「何回言ったらわかるの!」といった言葉を何度も口にしている場合、その言葉が子どもの心に強く刻まれている可能性があります。
これは、その出来事がトラウマのように残っているサインかもしれません。
子どもは、感情的に強いインパクトを受けた言葉ほど記憶に残りやすく、繰り返しやすい傾向があります。
このような場合、叱る頻度や言い方を見直し、ポジティブな言葉かけを意識的に増やすことが重要です。
家庭でできるオウム返しへの対応法

1. 答えの見本を示してあげる
子どもがオウム返しをしたときは、正しい答え方のお手本を見せてあげることが効果的です。
たとえば「ジュース飲む?」と聞いて「ジュース飲む?」と返ってきたら、「飲みたいときは『飲む』って言ってね」と教えます。
そして「ジュース飲む?」「……飲む」「上手に言えたね!」というやりとりを繰り返すことで、徐々に返し方を学んでいきます。
ポイントは、答えの見本を示した後に、もう一度同じ質問をして練習の機会を作ることです。
「はい」「いいえ」「ちょうだい」「いらない」など、よく使う返事から始めると取り組みやすいでしょう。
焦らず、毎日の生活の中で少しずつ練習を積み重ねていくことが大切です。
2. イエス・ノーや選択肢で答えられる質問にする
「今日何したの?」「どう思う?」といったオープンな質問は、答えを考えるのが難しいものです。
代わりに「今日、公園に行った?」「はい」「いいえ」で答えられる質問にしたり、「りんごとバナナ、どっちがいい?」と選択肢を示したりすると、答えやすくなります。
答えられる経験を積み重ねることで、子どもの自信にもつながっていきます。
3. 子どもの気持ちを「翻訳」して伝える
オウム返しの中に隠れた子どもの気持ちを読み取り、言葉にして返してあげることも効果的な方法です。
たとえば、おやつを見て「おやつ食べる?」と繰り返している場合、「おやつ食べたいんだね。『ちょうだい』って言ってみようか」と翻訳してあげます。
泣きながらCMのセリフを言っている場合は、「悲しいんだね」「困っているんだね」と気持ちを代弁します。
こうすることで、子どもは「自分の気持ちはこういう言葉で表現するんだ」と学んでいきます。
また、自分の気持ちをわかってもらえたという安心感が、コミュニケーションへの意欲を高めることにもつながります。
子どもの様子をよく観察し、その場の状況から気持ちを推測する習慣をつけていきましょう。
4. シンプルで短い言葉で話しかける
長い文章や複雑な言い回しは、子どもにとって処理が難しく、理解できない部分をオウム返しする原因になります。
「そろそろご飯の時間だから手を洗ってきて、それからテーブルに座ってね」という指示よりも、「手を洗おう」「座ろう」と一つずつ伝える方が伝わりやすいです。
言葉は短く、ゆっくり、はっきりと話すことを心がけましょう。
一度に伝える情報は一つに絞り、それができてから次の指示を出すようにします。
また、言葉だけでなく、ジェスチャーや実物を見せながら話すと、より理解しやすくなります。
子どもの理解度に合わせて、言葉のレベルを調整していくことが大切です。
5. 興味のあるものを使ったやりとりから始める
子どもが好きなおもちゃやキャラクターを使って、遊びの中で自然なやりとりを練習する方法も効果的です。
電車が好きな子なら電車のおもちゃで「出発しまーす!」「ガタンゴトン」と声をかけ合ったり、お人形遊びの中でごっこ遊びをしたりします。
興味があるものについては、子どもも積極的にコミュニケーションを取ろうとすることが多いです。
まずは子どもの「好き」を入り口にして、言葉のやりとりを広げていきましょう。
6. 無理に直そうとせず、言葉を使う努力を認める
オウム返しであっても、子どもが言葉を使ってコミュニケーションを取ろうとしていることには変わりありません。
「また同じこと言って」「ちゃんと答えて」と否定するのではなく、まず言葉を発したこと自体を認めてあげましょう。
正しい言い方に直すことばかりに注力すると、子どもは「間違えると怒られる」と感じ、話すこと自体を避けるようになってしまうことがあります。
まずは言葉を使う意欲を大切にし、その上で少しずつ正しい表現を教えていくというスタンスが効果的です。
7. ストレスや不安を軽減する環境づくり
オウム返しが増えるタイミングに注目してみると、ストレスや不安を感じている場面であることが多いです。
新しい環境、騒がしい場所、予定の変更などが引き金になっていることがあります。
そうした場合は、まず環境を整えることが先決です。
事前にスケジュールを伝える、静かな場所を確保する、見通しを持たせるといった工夫が効果的です。
8. 繰り返しの中にある「意味」を理解しようとする
オウム返しを「困った行動」と捉えるのではなく、子どもからのメッセージとして受け取る姿勢が大切です。
繰り返している言葉やフレーズには、子どもなりの理由や意図が隠れていることが多いです。
いつ、どんな場面で、どんな言葉を繰り返すのか、観察してみてください。
パターンが見えてくると、「この言葉は『嬉しい』という意味かもしれない」「これは『やめて』のサインかも」と理解が深まります。
子どもの言葉を理解しようとする姿勢は、親子の信頼関係を築く基盤になります。
オウム返しが悪化してしまう親のNG行動

「ちゃんと答えて!」と叱ったり否定したりする
オウム返しをしたときに「ちゃんと答えなさい!」と叱ることは、逆効果になることが多いです。
子どもは、答え方がわからないからオウム返しをしているのであって、わざとふざけているわけではありません。
叱られることで、「話すと怒られる」という恐怖心が生まれ、コミュニケーション自体を避けるようになってしまうことがあります。
また、叱られた言葉自体が記憶に残り、遅延エコラリアとして繰り返されてしまうケースもあります。
イライラする気持ちは自然なことですが、深呼吸をして、まずは「何を伝えたいのかな」と考えてみてください。
否定せず、正しい答え方を穏やかに教えてあげることが、成長への近道です。
オウム返しを無視する・相手にしない
子どもがオウム返しをしたときに反応しないで無視することも、避けたい対応の一つです。
オウム返しであっても、子どもはコミュニケーションを取ろうとしています。
それを無視されると、「自分の言葉には意味がない」「話しても聞いてもらえない」と感じてしまいます。
その結果、コミュニケーションへの意欲が低下し、ますます言葉の発達が遅れてしまう可能性があります。
たとえオウム返しでも、目を見て頷いたり、「そうだね」と相槌を打ったりして、聞いているよというサインを示すことが大切です。
他の子と比較してプレッシャーをかける
「◯◯ちゃんはちゃんとお話しできるのに」といった比較は、子どもにとって大きなプレッシャーになります。
発達のペースは子どもによって異なり、比べること自体に意味がありません。
他の子と比べるのではなく、以前の我が子と比べて成長している部分を見つけてあげてください。
「前より言葉が増えたね」「上手に言えるようになったね」という声かけが、子どもの自信を育てます。
あせって無理に会話を強要する
「早く話せるようにならないと」と焦って、無理に会話の練習を強要することも避けたい行動です。
言葉の発達は、楽しい経験やリラックスした環境の中で促進されます。
プレッシャーの中での練習は、子どもにとってストレスになり、言葉を使うことへの抵抗感を生んでしまいます。
「話さなきゃ」という緊張感があると、かえってオウム返しが出やすくなることもあります。
毎日の生活の中で、自然な形で言葉のやりとりができる場面を作っていくことが大切です。
まとめ

オウム返し(エコラリア)は、言葉を学ぶ過程で見られる自然な行動であり、必ずしも発達障害のサインとは限りません。
その裏には、言葉を覚えている段階、質問が難しくて時間をかせいでいる、安心感を得ようとしているなど、さまざまな理由が隠れています。
家庭では、答えの見本を示す、質問の仕方を工夫する、子どもの気持ちを翻訳して伝えるといった接し方が効果的です。
叱ったり無視したりせず、焦らず子どものペースに寄り添いましょう。
一人で抱え込まず、気になるときは言語聴覚士などの専門家がいる療育施設への相談も検討してみてください。




